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第五章 アオアイへ
アオアイの審査官
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アオアイの入国審査は、思っていたよりも簡単だった。
俺の身元を保障してくれたのが紗国の貴族であることが効いたようだ。
驚くことにアオアイの民は皆小さな体の獣人で、審査官はなんとリスの獣人だった。
小さな体に大きな尾、ふわふわのそれはやたら目を引き、どうしても触りたくなるので困った。
「なるほど、アオアイの王に会われると……」
玲陽のまとめた書類を読んで何度もうなずくリスの審査官は、鹿の角を持つ助手にページをめくらせてくまなく読んだ。
「そうだ」
「国を興されたと……」
リスの審査官は小さな眼鏡をクイっと上げて俺を仰ぎ見た。
「ああ、そうだ」
「あなたがその王と名乗る阿羅彦様ですね」
「うむ」
審査官はようやく書類に署名をして、返してくれた。
「ここから先はアオアイの地です。問題行動の無いように……というか、ここは沈滞石に守られた地ですからね、滅多なことはできやしませんがね」
そう言ってさらに別紙にさらさらとインクを走らせて、それを渡してきた。
「こちらは、身分の証明を求められたときにお見せください。あなた方がアオアイ王の客人であることを証明するものですから。それと、王宮からお迎えが到着しております。その馬車にお乗りになって、迎賓館へお向かいください」
「そうか、世話になった」
「いえ、仕事ですから」
そう言ってリスの審査官は微笑んだ。
「では、阿羅彦様」
「ああ、そうだな」
俺は3日ぶりに会うクレイダ達と共に船を降りた。
クレイダ一族は船に乗っている間、食事に出ることもせず船室に閉じこもっていた。
なぜかと問うと、行儀見習いが済んでいないので、万が一周りに感づかれないようにという配慮ということだった。
俺はそこまでする必要があるのか?と正直疑問だったが、玲陽が頑なにその方が良いと周りを説得した。
その代わり彼らは部屋で覚えたばかりのカードゲームに興じていて、それなりに楽しんでいたようだ。
「アラト……」
クレイダが柄にもなく小さな声で声をかけてきた。
「どうした?」
「アタシら、うまく獣人になれているか?」
どこか不安そうな表情のクレイダはユーチェンにより薄化粧が施され、屈強な女戦士という風情を漂わせていた。
「その……外見を変えてまで努力したのだ、うまくいくさ、そう不安がるな」
「ふむ……しかし、敏感な者らは、アタシらが魔物だと気づくのではないかと、不安でな」
「大丈夫だと玲陽も言っていただろう?」
「それはそうなのだが」
クレイダの後ろを歩くクレイダ一族らもそれぞれに緊張した面持ちで、その様子は可愛げがある。
「お前たちもそんなに緊張するな。逆に疑われるぞ」
俺は皆の顔を順番に見て頷いて見せた。
「はい」
元気のない声だったが、俺の励ましで少しは安心できたようなそぶりを見せた。
「阿羅国の御一行様でしょうか?」
「ああ、そうだ」
船から港に繋がる橋を降りると、3台の馬車がそこに待機していた。
黒塗りの豪華な装飾の付いた馬車で、とても大きい。
「お迎えに上がりました。迎賓館までお送りいたします」
迎えに来た者は、鹿の獣人のようだった。
俺の身元を保障してくれたのが紗国の貴族であることが効いたようだ。
驚くことにアオアイの民は皆小さな体の獣人で、審査官はなんとリスの獣人だった。
小さな体に大きな尾、ふわふわのそれはやたら目を引き、どうしても触りたくなるので困った。
「なるほど、アオアイの王に会われると……」
玲陽のまとめた書類を読んで何度もうなずくリスの審査官は、鹿の角を持つ助手にページをめくらせてくまなく読んだ。
「そうだ」
「国を興されたと……」
リスの審査官は小さな眼鏡をクイっと上げて俺を仰ぎ見た。
「ああ、そうだ」
「あなたがその王と名乗る阿羅彦様ですね」
「うむ」
審査官はようやく書類に署名をして、返してくれた。
「ここから先はアオアイの地です。問題行動の無いように……というか、ここは沈滞石に守られた地ですからね、滅多なことはできやしませんがね」
そう言ってさらに別紙にさらさらとインクを走らせて、それを渡してきた。
「こちらは、身分の証明を求められたときにお見せください。あなた方がアオアイ王の客人であることを証明するものですから。それと、王宮からお迎えが到着しております。その馬車にお乗りになって、迎賓館へお向かいください」
「そうか、世話になった」
「いえ、仕事ですから」
そう言ってリスの審査官は微笑んだ。
「では、阿羅彦様」
「ああ、そうだな」
俺は3日ぶりに会うクレイダ達と共に船を降りた。
クレイダ一族は船に乗っている間、食事に出ることもせず船室に閉じこもっていた。
なぜかと問うと、行儀見習いが済んでいないので、万が一周りに感づかれないようにという配慮ということだった。
俺はそこまでする必要があるのか?と正直疑問だったが、玲陽が頑なにその方が良いと周りを説得した。
その代わり彼らは部屋で覚えたばかりのカードゲームに興じていて、それなりに楽しんでいたようだ。
「アラト……」
クレイダが柄にもなく小さな声で声をかけてきた。
「どうした?」
「アタシら、うまく獣人になれているか?」
どこか不安そうな表情のクレイダはユーチェンにより薄化粧が施され、屈強な女戦士という風情を漂わせていた。
「その……外見を変えてまで努力したのだ、うまくいくさ、そう不安がるな」
「ふむ……しかし、敏感な者らは、アタシらが魔物だと気づくのではないかと、不安でな」
「大丈夫だと玲陽も言っていただろう?」
「それはそうなのだが」
クレイダの後ろを歩くクレイダ一族らもそれぞれに緊張した面持ちで、その様子は可愛げがある。
「お前たちもそんなに緊張するな。逆に疑われるぞ」
俺は皆の顔を順番に見て頷いて見せた。
「はい」
元気のない声だったが、俺の励ましで少しは安心できたようなそぶりを見せた。
「阿羅国の御一行様でしょうか?」
「ああ、そうだ」
船から港に繋がる橋を降りると、3台の馬車がそこに待機していた。
黒塗りの豪華な装飾の付いた馬車で、とても大きい。
「お迎えに上がりました。迎賓館までお送りいたします」
迎えに来た者は、鹿の獣人のようだった。
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