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第五章 アオアイへ
船上で
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船に乗る人数は約10名。
王のお付きに護衛としては少ない人数かもしれないが、魔物の気配を消すことに苦労する者たちはこれ以降は連れていけない。
アオアイに入国する際はかなり厳しく検査があると聞いている。
「阿羅彦様」
玲陽がそっと俺の横に立った。
船室は一番広い豪華な造りだ、ユーチェンの父の計らいで乗ることになったこの高速船ならば5日ほどでアオアイに到着できるそうだ。
この大きな部屋には私と玲陽、ユーチェンと百合彦は隣の部屋だ、そこもまた豪華な設えだと聞いている。
「どうかしたのか?」
「その……」
言いにくそうに口ごもった玲陽をじっと見た。
日が沈むころに出発した船だったが、今ではすっかりと日が暮れて辺りは薄暗い。
何もさえぎるものの無い海の上にいて、大きな青い月の優しい光だけが部屋に差し込んでくる。
「ユーチェン様が、『王妃という立場は私かもしれないが、実質の伴侶はあなただから』と、そうおっしゃって」
「部屋のことか?」
「はい、部屋のこともですが、アオアイに着いた後も、阿羅彦様のお隣に立つのは私であるべきだと、そうおっしゃるのですよ」
困ったように少し笑って、そして、ティーカップを並べていく姿は、すっかりと寛ぐスタイルになってゆったりとした白いシャツが似合っている。
こんな姿をしていると痩せて見えるが、鍛えられた体は美しい筋肉に覆われて引き締まっているのを俺は知っている。
「そうか……伴侶……なあ」
俺はバルコニーに出て、備え付けの椅子に座った。
潮風が吹いてきて、なんとも心地よい。
「しかし、王妃様を差し置いて、私が公式の場でお隣に立つなどあってはならぬことですから」
「ユーチェンはどういうつもりでそう言ったのだろうか?こうやって無理をして連れてきている意味がわからないでもあるまいに」
「そのことは私もお話しましたが、ユーチェン様は百合彦様のためにここに一緒に来ているにすぎないと、そうおっしゃって」
「ふむ……まあ、百合彦のような幼子は一人ではまだなにもできないのだ。世話をするお付きの者や母親が近くにいるほうが良いに決まっているが……それとこれは違うのだがな」
俺は考えることを放棄して玲陽の入れてくれた紅茶を飲んだ。
香り高い紅茶はラハーム産のものだ。
高級なそれも、当然のように部屋に備え付けてあった。
玲陽はラハーム王国の貴族の出身だ。
紅茶は本国にいたことから普通に身の回りにあったもので、実家にいたころから良く飲んでいたそうだ。
色素が薄く堀の深い顔つきは、元日本人である俺から見ると、まるで西洋人のようで、紅茶や今着ているような白くゆったりとしたシャツがとても似合う。
儚くて、そして美術品のように高貴で美しかったジルとはまた違って、健康的で溌剌とした強さもある。
イバンとは同じ出身で同じ蛇族だ。
人型の今でも服を脱げば鱗が肩や背にある。
それを指で撫でるのが俺は好きだ。
「こちらにおいで」
俺の誘いに玲陽は静かに微笑んで隣に座った。
「阿羅彦様」
玲陽の冷たい手に自分の手を重ねた。
彼は蛇族で、いつもこんな風に冷たい、当たり前だがイバンと同じだ。
「お前のことを軽んじるつもりはないよ、だが、第一子を産んだユーチェンを王妃としてアオアイでは活動をするつもりだ。しかし、愛しているのはお前だ。わかるな」
「はい、それはもう」
お互い、指を絡ませて強く握りあって、どちらからともなくキスをした。
「お前はこのことをどう思っている? 本音では傷ついているということはないか?」
「いえ、私は阿羅彦様にこうして愛していただけるだけで、満足でございます」
「そうか」
俺は玲陽のシャツのボタンを一つずつ開けていって、手を滑り込ませた。
滑らかな肌は吸いつくようで、固く思える筋肉の盛り上がりは弾力があって頼もしい。
胸の先を少しつねると「……っ」っと声にならない声をあげた玲陽がかわいらしい。
「ベッドにいこうか」
「はい……阿羅彦様」
玲陽は月の光を受けて怪しく輝いていた。
王のお付きに護衛としては少ない人数かもしれないが、魔物の気配を消すことに苦労する者たちはこれ以降は連れていけない。
アオアイに入国する際はかなり厳しく検査があると聞いている。
「阿羅彦様」
玲陽がそっと俺の横に立った。
船室は一番広い豪華な造りだ、ユーチェンの父の計らいで乗ることになったこの高速船ならば5日ほどでアオアイに到着できるそうだ。
この大きな部屋には私と玲陽、ユーチェンと百合彦は隣の部屋だ、そこもまた豪華な設えだと聞いている。
「どうかしたのか?」
「その……」
言いにくそうに口ごもった玲陽をじっと見た。
日が沈むころに出発した船だったが、今ではすっかりと日が暮れて辺りは薄暗い。
何もさえぎるものの無い海の上にいて、大きな青い月の優しい光だけが部屋に差し込んでくる。
「ユーチェン様が、『王妃という立場は私かもしれないが、実質の伴侶はあなただから』と、そうおっしゃって」
「部屋のことか?」
「はい、部屋のこともですが、アオアイに着いた後も、阿羅彦様のお隣に立つのは私であるべきだと、そうおっしゃるのですよ」
困ったように少し笑って、そして、ティーカップを並べていく姿は、すっかりと寛ぐスタイルになってゆったりとした白いシャツが似合っている。
こんな姿をしていると痩せて見えるが、鍛えられた体は美しい筋肉に覆われて引き締まっているのを俺は知っている。
「そうか……伴侶……なあ」
俺はバルコニーに出て、備え付けの椅子に座った。
潮風が吹いてきて、なんとも心地よい。
「しかし、王妃様を差し置いて、私が公式の場でお隣に立つなどあってはならぬことですから」
「ユーチェンはどういうつもりでそう言ったのだろうか?こうやって無理をして連れてきている意味がわからないでもあるまいに」
「そのことは私もお話しましたが、ユーチェン様は百合彦様のためにここに一緒に来ているにすぎないと、そうおっしゃって」
「ふむ……まあ、百合彦のような幼子は一人ではまだなにもできないのだ。世話をするお付きの者や母親が近くにいるほうが良いに決まっているが……それとこれは違うのだがな」
俺は考えることを放棄して玲陽の入れてくれた紅茶を飲んだ。
香り高い紅茶はラハーム産のものだ。
高級なそれも、当然のように部屋に備え付けてあった。
玲陽はラハーム王国の貴族の出身だ。
紅茶は本国にいたことから普通に身の回りにあったもので、実家にいたころから良く飲んでいたそうだ。
色素が薄く堀の深い顔つきは、元日本人である俺から見ると、まるで西洋人のようで、紅茶や今着ているような白くゆったりとしたシャツがとても似合う。
儚くて、そして美術品のように高貴で美しかったジルとはまた違って、健康的で溌剌とした強さもある。
イバンとは同じ出身で同じ蛇族だ。
人型の今でも服を脱げば鱗が肩や背にある。
それを指で撫でるのが俺は好きだ。
「こちらにおいで」
俺の誘いに玲陽は静かに微笑んで隣に座った。
「阿羅彦様」
玲陽の冷たい手に自分の手を重ねた。
彼は蛇族で、いつもこんな風に冷たい、当たり前だがイバンと同じだ。
「お前のことを軽んじるつもりはないよ、だが、第一子を産んだユーチェンを王妃としてアオアイでは活動をするつもりだ。しかし、愛しているのはお前だ。わかるな」
「はい、それはもう」
お互い、指を絡ませて強く握りあって、どちらからともなくキスをした。
「お前はこのことをどう思っている? 本音では傷ついているということはないか?」
「いえ、私は阿羅彦様にこうして愛していただけるだけで、満足でございます」
「そうか」
俺は玲陽のシャツのボタンを一つずつ開けていって、手を滑り込ませた。
滑らかな肌は吸いつくようで、固く思える筋肉の盛り上がりは弾力があって頼もしい。
胸の先を少しつねると「……っ」っと声にならない声をあげた玲陽がかわいらしい。
「ベッドにいこうか」
「はい……阿羅彦様」
玲陽は月の光を受けて怪しく輝いていた。
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