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第四章 阿羅国
噂
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「阿羅彦様、さきほど荷が届きました」
玲陽は宮殿前に降り立った俺を目ざとく見つけ、説明していく。
阿羅国の名を伏せて、とある地方の豪商だという事にし、他国の特産品を仕入れることがある。
玲陽は出身国のラハームから紙や布、そして薬などを仕入れるルートを確立してくれた。
その他には、ルカリスト王国から塩と紅茶、紗国からは美しい薄絹といくつかの木の苗を仕入れた。
どれも紗国で織った布や、その布を使って仕立てた物を出店で売り元手を稼いだ。
何もかもを自力で賄うことなど到底できやしない、こうやって交易をしていくほかないのだ。
今も、各国に潜伏して、情報やさらなる物品を求めている者がいて、それらを仕切っているのが飛翔隊の玲陽だった。
物を仕入れたとしても阿羅国まで運ぶには飛翔しなければならない、かなりの長距離を休みなく飛ばなければならない。
荷が重かったり大きかったりすると、それは簡単なことではない。
「それと、潜伏しているものからの連絡で、良からぬ噂が立っていることがわかりまして」
玲陽は言いづらそうに俺をチラリと見た。
「ん?」
「以前、ユーチェンや、アリ、それからうちの実家にも文や使者を送ったことがありましたよね、私たちが阿羅国で暮らしているということを知らせるために」
「ああ、そうだな」
「その報告を聞いた家族らの中に、娘、または息子が攫われた、そう言いふらしている者たちがいるそうです。しかも、その者らには阿羅国という名を伝えているものですから、その噂には、阿羅国という国名がついていて……つまり、阿羅国の悪評がたってしまっているようです」
玲陽は緊張してこわばった顔で俺をじっと見つめた。
「つまり……我らは人攫い国家と、そう言われているのか?」
「はい」
俺は咄嗟に何と言っていいのかわからなくなって、黙ってしまった。
「すみません、我らがうまく伝えられなかったために、こんなことに」
「……いや、お前たちのせいではないだろう……しかし、困ったな、その噂はどの程度広がっているのだ?」
「詳しくは調査中ですが、ある程度の階級には広まっている可能性もあります」
「ある程度の階級とは?」
「つまり貴族です」
玲陽は俺を真っすぐに見て自分の手を胸に置いた。
「ユーチェンも私も、実家はそれなりの貴族ですので……それから、おそらく、昨日到着した子も、貴族の出身かと」
「ああ、名は何といったか、クレイダからあの子のそばにいってやってくれと頼まれて帰ってきたんだ」
「まだ、自分の名を語りません。世話をした者の話では体中に傷があるようで、つまり心にも傷を負っているのでしょう、とても警戒心が強く、何も語らないのです」
「そうか……警戒心が強いようには見えなかったが」
俺は迎えに行ったときに抱きついてきた少年を思い出した。
連れ帰った際に気を失ってしまったので、そのまま後宮の者に世話を頼んだ、なのでその後のことは全くわからない。
「それは、阿羅彦様だからですよ」
玲陽は切なげにそうつぶやいて、寂しそうに微笑んだ。
「行ってあげてください。我らとて実家で大切にされて育ったわけではありませんが、あそこまでボロボロではなかった。癒してあげてほしいのです」
俺は玲陽を引き寄せて抱きしめて、背中をポンポンと叩いた。
「わかった」
玲陽は宮殿前に降り立った俺を目ざとく見つけ、説明していく。
阿羅国の名を伏せて、とある地方の豪商だという事にし、他国の特産品を仕入れることがある。
玲陽は出身国のラハームから紙や布、そして薬などを仕入れるルートを確立してくれた。
その他には、ルカリスト王国から塩と紅茶、紗国からは美しい薄絹といくつかの木の苗を仕入れた。
どれも紗国で織った布や、その布を使って仕立てた物を出店で売り元手を稼いだ。
何もかもを自力で賄うことなど到底できやしない、こうやって交易をしていくほかないのだ。
今も、各国に潜伏して、情報やさらなる物品を求めている者がいて、それらを仕切っているのが飛翔隊の玲陽だった。
物を仕入れたとしても阿羅国まで運ぶには飛翔しなければならない、かなりの長距離を休みなく飛ばなければならない。
荷が重かったり大きかったりすると、それは簡単なことではない。
「それと、潜伏しているものからの連絡で、良からぬ噂が立っていることがわかりまして」
玲陽は言いづらそうに俺をチラリと見た。
「ん?」
「以前、ユーチェンや、アリ、それからうちの実家にも文や使者を送ったことがありましたよね、私たちが阿羅国で暮らしているということを知らせるために」
「ああ、そうだな」
「その報告を聞いた家族らの中に、娘、または息子が攫われた、そう言いふらしている者たちがいるそうです。しかも、その者らには阿羅国という名を伝えているものですから、その噂には、阿羅国という国名がついていて……つまり、阿羅国の悪評がたってしまっているようです」
玲陽は緊張してこわばった顔で俺をじっと見つめた。
「つまり……我らは人攫い国家と、そう言われているのか?」
「はい」
俺は咄嗟に何と言っていいのかわからなくなって、黙ってしまった。
「すみません、我らがうまく伝えられなかったために、こんなことに」
「……いや、お前たちのせいではないだろう……しかし、困ったな、その噂はどの程度広がっているのだ?」
「詳しくは調査中ですが、ある程度の階級には広まっている可能性もあります」
「ある程度の階級とは?」
「つまり貴族です」
玲陽は俺を真っすぐに見て自分の手を胸に置いた。
「ユーチェンも私も、実家はそれなりの貴族ですので……それから、おそらく、昨日到着した子も、貴族の出身かと」
「ああ、名は何といったか、クレイダからあの子のそばにいってやってくれと頼まれて帰ってきたんだ」
「まだ、自分の名を語りません。世話をした者の話では体中に傷があるようで、つまり心にも傷を負っているのでしょう、とても警戒心が強く、何も語らないのです」
「そうか……警戒心が強いようには見えなかったが」
俺は迎えに行ったときに抱きついてきた少年を思い出した。
連れ帰った際に気を失ってしまったので、そのまま後宮の者に世話を頼んだ、なのでその後のことは全くわからない。
「それは、阿羅彦様だからですよ」
玲陽は切なげにそうつぶやいて、寂しそうに微笑んだ。
「行ってあげてください。我らとて実家で大切にされて育ったわけではありませんが、あそこまでボロボロではなかった。癒してあげてほしいのです」
俺は玲陽を引き寄せて抱きしめて、背中をポンポンと叩いた。
「わかった」
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