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第四章 阿羅国
つややかな角
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ユーチェンはじっとクレイダを見つめ、上から下まで姿を確認するように何度も視線を行き来している。
「なんなんだ?」
クレイダは本気でわからないというようにユーチェンに尋ねた。
「いえ……こう申しては何ですが……危険ではありませんか?」
「だから、なにがだ?逆だろうに、アタシがいれば武力で劣ることは滅多にないぞ」
「そうではなく……」
そこまで言って、チラリと俺を見て困ったように眉を下げた。
「あれだよクレイダ、ユーチェンはお前のその姿を心配してるんだろ、いかにも魔物って姿だからな」
俺はユーチェンの気持を代弁するようにそう伝えた。
クレイダは眉を跳ね上げ、真ん丸な目を目をして一瞬固まって、そして自分の体をあちこち触って確かめだした。
「アタシ……おかしいか?」
「いや、おかしいとは思わぬが、そう思うのは我らだけかもしれん、見慣れぬ者からすれば、やはり少々警戒を持ってしまうだろうよ」
「足?足か!ならば、長い着物と足先を覆い隠すくつを履いて、それから顔や腕の獣毛を剃ったっていいぞ!そうすれば人に見えるだろ、な?」
「クレイダ、あなた、獣毛を剃ることに抵抗はなくて?」
「ああ、特に剃る必要性もなかったからそのままだっただけだ、目は二つに鼻があって口がある。そなたらと同じ数だぞ」
「だけどそれだけじゃないわ、私たち獣人はね、匂いで種族がわかるの。あなたの発する匂いは私の知るどの獣人とも違うわ……でも、あなたのような魔物の種を深く知る人もそれほどいないかもしれないから、ごまかせるかもしれないわね、クレイダはとても優しい雰囲気だもの、普通私たちは魔物とは意思を通じ合ったりできない恐ろしい悪魔だと思っているのよ、あなたからそんな雰囲気が漂ってきたことはないものね」
ユーチェンは立ち上がってクレイダのそばに寄り、真剣な顔をして顔面の獣毛をかきわけている。
「そうね……多少毛深いけれど、クレイダの顔は何か珍しい種族の獣人と言えなくもないのかな……足は、着物と履物でなんとか……そうね、なんとかしてみせるわ。でも、問題は角ね」
「角か」
クレイダは額に生える大きな角をスリスリとさすった。
「……もし……あれなら……切ろうか?」
「え!クレイダ、そんな!痛いでしょう!」
「いや、痛くはないぞ、それにしばらくしたらまた生えるしな」
「なんですって」
ユーチェンと俺は思わず目を合わせた。
「では、クレイダには悪いけれど、外見をなるべく獣人に近づけるよう努力しましょうね、それから、あなたは王の付き人で女性なのだから、少しはなんというか礼儀も……ね」
「ああ……ん、そうだな、それはなんとなく察していた」
何とも言えない顔をして空を見上げたクレイダの様がおかしくて俺とユーチェンは笑った。
「寄せ集めではなく、人の集団として、だけどこの台地特有の種も多少はまざっている、そういうこじつけが必要なのでしょう?私は狐族ですが、紗国を自分の意思で出奔しここに来た貴族の娘、そして今は王と愛し合う夫婦だと言わねばなりませんね」
「そうだな、そなたには詳しい説明は不要のようだな、聡いな」
「いえ、私など。学もそれほどございません」
「クレイダの外見や装いのことはそなたに任せる、よろしく頼むぞ」
「はい、お引き受けいたします。それと、飛翔の練習はどうしましょう。クレイダに習うのでしょうか?」
クレイダは角をスリスリしながらユーチェンを見つめた。
「アタシでよければ教えるが……魔物と獣人では魔力の使い方に差がないだろうか?」
「対して差はございませんでしょう」
「なら、アタシが教えるとするか」
「お時間はございます?」
「いつでもいいぞ、アタシは時折アラトの相談相手になるくらいで、その他は今でも家畜の世話人だ」
そういってクレイダはカカカカと大きな声で笑った。
「なんなんだ?」
クレイダは本気でわからないというようにユーチェンに尋ねた。
「いえ……こう申しては何ですが……危険ではありませんか?」
「だから、なにがだ?逆だろうに、アタシがいれば武力で劣ることは滅多にないぞ」
「そうではなく……」
そこまで言って、チラリと俺を見て困ったように眉を下げた。
「あれだよクレイダ、ユーチェンはお前のその姿を心配してるんだろ、いかにも魔物って姿だからな」
俺はユーチェンの気持を代弁するようにそう伝えた。
クレイダは眉を跳ね上げ、真ん丸な目を目をして一瞬固まって、そして自分の体をあちこち触って確かめだした。
「アタシ……おかしいか?」
「いや、おかしいとは思わぬが、そう思うのは我らだけかもしれん、見慣れぬ者からすれば、やはり少々警戒を持ってしまうだろうよ」
「足?足か!ならば、長い着物と足先を覆い隠すくつを履いて、それから顔や腕の獣毛を剃ったっていいぞ!そうすれば人に見えるだろ、な?」
「クレイダ、あなた、獣毛を剃ることに抵抗はなくて?」
「ああ、特に剃る必要性もなかったからそのままだっただけだ、目は二つに鼻があって口がある。そなたらと同じ数だぞ」
「だけどそれだけじゃないわ、私たち獣人はね、匂いで種族がわかるの。あなたの発する匂いは私の知るどの獣人とも違うわ……でも、あなたのような魔物の種を深く知る人もそれほどいないかもしれないから、ごまかせるかもしれないわね、クレイダはとても優しい雰囲気だもの、普通私たちは魔物とは意思を通じ合ったりできない恐ろしい悪魔だと思っているのよ、あなたからそんな雰囲気が漂ってきたことはないものね」
ユーチェンは立ち上がってクレイダのそばに寄り、真剣な顔をして顔面の獣毛をかきわけている。
「そうね……多少毛深いけれど、クレイダの顔は何か珍しい種族の獣人と言えなくもないのかな……足は、着物と履物でなんとか……そうね、なんとかしてみせるわ。でも、問題は角ね」
「角か」
クレイダは額に生える大きな角をスリスリとさすった。
「……もし……あれなら……切ろうか?」
「え!クレイダ、そんな!痛いでしょう!」
「いや、痛くはないぞ、それにしばらくしたらまた生えるしな」
「なんですって」
ユーチェンと俺は思わず目を合わせた。
「では、クレイダには悪いけれど、外見をなるべく獣人に近づけるよう努力しましょうね、それから、あなたは王の付き人で女性なのだから、少しはなんというか礼儀も……ね」
「ああ……ん、そうだな、それはなんとなく察していた」
何とも言えない顔をして空を見上げたクレイダの様がおかしくて俺とユーチェンは笑った。
「寄せ集めではなく、人の集団として、だけどこの台地特有の種も多少はまざっている、そういうこじつけが必要なのでしょう?私は狐族ですが、紗国を自分の意思で出奔しここに来た貴族の娘、そして今は王と愛し合う夫婦だと言わねばなりませんね」
「そうだな、そなたには詳しい説明は不要のようだな、聡いな」
「いえ、私など。学もそれほどございません」
「クレイダの外見や装いのことはそなたに任せる、よろしく頼むぞ」
「はい、お引き受けいたします。それと、飛翔の練習はどうしましょう。クレイダに習うのでしょうか?」
クレイダは角をスリスリしながらユーチェンを見つめた。
「アタシでよければ教えるが……魔物と獣人では魔力の使い方に差がないだろうか?」
「対して差はございませんでしょう」
「なら、アタシが教えるとするか」
「お時間はございます?」
「いつでもいいぞ、アタシは時折アラトの相談相手になるくらいで、その他は今でも家畜の世話人だ」
そういってクレイダはカカカカと大きな声で笑った。
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