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第三章 新たなる地
子
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「ユーチェンと、アリがどうやら、子を身ごもったようだ」
ある日、俺が畑にする予定の土地を魔法で耕していると、クレイダがやってきてそう告げた。
俺はポカンとしてクレイダをただ見つめ返した。
「だから……なあ、聞いてるのか?」
「うん、まあ聞いてるけど」
仁王立ちになっているクレイダは俺を睨んだ。
たくましいクレイダの体は大きくて、一目見ただけでは恐ろしささえ感じるかもしれないが、俺が連れ帰った女たちは皆クレイダを頼りにして懐いていた。
俺なんかよりもよほど、クレイダの方がこの地の王らしくもあるなと、ふと思った。
「とうとうか……」
「うん、イバンに伝える?」
「なぜかイバンは、俺の子にこだわるからな、伝えたら喜ぶだろうけど」
「そりゃな、でも、アタシからじゃない、アラトから言うべきだよ」
「いつ頃なんだろう、生まれるのは……俺の記憶だと十月十日とか言ってたけど、こちらでは事情が違うんだろうか」
「ユーチェンが狐で、アリは鹿だから、ユーチェンは再来月あたりに産むかもしれないな」
「え、そんなに早いのか?」
俺はふぅとため息をついて思わず腰を下ろした。
その横にクレイダがドカリと座って優しくポンと背中を叩いてきた。
「なあ、アラト、なんでだ、あまりうれしそうじゃない」
クレイダは心配げに俺の顔を覗き込んだ。
「嬉しいとかそういうのは……なんだかあまり実感がないからな。そもそも俺は子がほしいとかあんまり思ってないんだ」
「なんというか……」
クレイダはあきれたように空を見上げた。
「あのさ、その言葉は絶対に女たちの前で言うなよ?今や8人にもなる女たちがみな敵になるぞ」
「はぁ?」
「女たちは皆、競っていたんだ。誰が最初にアラトの子を授かるか?とな。そしてその栄えある懐妊を遂げたユーチェンとアリをとにかく労われ。彼女らなくしてアラトの国はできないんだ、これは、国民第一号の誕生でもあるし、この国の王の子の誕生でもあるんだ」
「……」
俺はクレイダの語る内容に恐れをなした。
女たちの扱いは難しく、遠巻きにしていたし、あまり話しもしないために彼女らの夢や希望が何なのか知らなかったのだ。
「それ……ほんとに俺の子なんだろうか」
「あーーーあああああ!もう最低!!」
クレイダは大声で叫んで俺の背中を力いっぱい叩いた。
「それさ、一番言っちゃいけない言葉だよ!あのさ、あんた意外に誰がいるんだ!」
「クレイダ……は女か」
「そうだよ!いくらなんでもアタシは妊娠させられないよ!」
「んじゃあ……んー……」
「まあ、おめでとうってことだよアラト」
「うん、ありがとうクレイダ、その……女らの前では言葉に気を付けるよ」
クレイダはカカカカと大きな笑い声を響き渡らせた。
彼女たちを夢の力でここに引き寄せたのは確かに俺だが、俺は8人もの女をここに連れてきてあることに気づいていた。
彼女らはみな、元居た場所で孤独だったということだ。
ユーチェンのように大きなお屋敷のお嬢様だったものも、貧しい農村の娘だったものも等しく。
親からは愛されておらず、その身の置き所がないものばかりだった。
そもそも、イバンがそうだった。
夢で見た見知らぬ男にすがりつきたくなるほど、皆、寂しく辛い思いをしていた者たちだ。
子がほしいと願うのは、血のつながりのある家族がほしいという心からの叫びなのかもしれないなと思った。
「俺から言うよ、イバンは、間に合うかな。ユーチェンの子なら、見せれるかもしれないな」
「あぁ、イバンにたくさん、優しくしてやりな」
「わかってる」
俺は立ち上がってお尻についた土を払った。
スゥーっと深呼吸して土の匂いを吸い込む。
俺が作った台地、掘り返し、石を取り除き、栄養を与え、水を与えて。
大切に育ててきたこの台地に、俺の子が生まれる。
ジル……俺は、この国に名前を付けよう。
そして、王になる。
そよそよと吹いてきた風はやわらかく頬を撫でていく、まるでジルが甘えているようだった。
ある日、俺が畑にする予定の土地を魔法で耕していると、クレイダがやってきてそう告げた。
俺はポカンとしてクレイダをただ見つめ返した。
「だから……なあ、聞いてるのか?」
「うん、まあ聞いてるけど」
仁王立ちになっているクレイダは俺を睨んだ。
たくましいクレイダの体は大きくて、一目見ただけでは恐ろしささえ感じるかもしれないが、俺が連れ帰った女たちは皆クレイダを頼りにして懐いていた。
俺なんかよりもよほど、クレイダの方がこの地の王らしくもあるなと、ふと思った。
「とうとうか……」
「うん、イバンに伝える?」
「なぜかイバンは、俺の子にこだわるからな、伝えたら喜ぶだろうけど」
「そりゃな、でも、アタシからじゃない、アラトから言うべきだよ」
「いつ頃なんだろう、生まれるのは……俺の記憶だと十月十日とか言ってたけど、こちらでは事情が違うんだろうか」
「ユーチェンが狐で、アリは鹿だから、ユーチェンは再来月あたりに産むかもしれないな」
「え、そんなに早いのか?」
俺はふぅとため息をついて思わず腰を下ろした。
その横にクレイダがドカリと座って優しくポンと背中を叩いてきた。
「なあ、アラト、なんでだ、あまりうれしそうじゃない」
クレイダは心配げに俺の顔を覗き込んだ。
「嬉しいとかそういうのは……なんだかあまり実感がないからな。そもそも俺は子がほしいとかあんまり思ってないんだ」
「なんというか……」
クレイダはあきれたように空を見上げた。
「あのさ、その言葉は絶対に女たちの前で言うなよ?今や8人にもなる女たちがみな敵になるぞ」
「はぁ?」
「女たちは皆、競っていたんだ。誰が最初にアラトの子を授かるか?とな。そしてその栄えある懐妊を遂げたユーチェンとアリをとにかく労われ。彼女らなくしてアラトの国はできないんだ、これは、国民第一号の誕生でもあるし、この国の王の子の誕生でもあるんだ」
「……」
俺はクレイダの語る内容に恐れをなした。
女たちの扱いは難しく、遠巻きにしていたし、あまり話しもしないために彼女らの夢や希望が何なのか知らなかったのだ。
「それ……ほんとに俺の子なんだろうか」
「あーーーあああああ!もう最低!!」
クレイダは大声で叫んで俺の背中を力いっぱい叩いた。
「それさ、一番言っちゃいけない言葉だよ!あのさ、あんた意外に誰がいるんだ!」
「クレイダ……は女か」
「そうだよ!いくらなんでもアタシは妊娠させられないよ!」
「んじゃあ……んー……」
「まあ、おめでとうってことだよアラト」
「うん、ありがとうクレイダ、その……女らの前では言葉に気を付けるよ」
クレイダはカカカカと大きな笑い声を響き渡らせた。
彼女たちを夢の力でここに引き寄せたのは確かに俺だが、俺は8人もの女をここに連れてきてあることに気づいていた。
彼女らはみな、元居た場所で孤独だったということだ。
ユーチェンのように大きなお屋敷のお嬢様だったものも、貧しい農村の娘だったものも等しく。
親からは愛されておらず、その身の置き所がないものばかりだった。
そもそも、イバンがそうだった。
夢で見た見知らぬ男にすがりつきたくなるほど、皆、寂しく辛い思いをしていた者たちだ。
子がほしいと願うのは、血のつながりのある家族がほしいという心からの叫びなのかもしれないなと思った。
「俺から言うよ、イバンは、間に合うかな。ユーチェンの子なら、見せれるかもしれないな」
「あぁ、イバンにたくさん、優しくしてやりな」
「わかってる」
俺は立ち上がってお尻についた土を払った。
スゥーっと深呼吸して土の匂いを吸い込む。
俺が作った台地、掘り返し、石を取り除き、栄養を与え、水を与えて。
大切に育ててきたこの台地に、俺の子が生まれる。
ジル……俺は、この国に名前を付けよう。
そして、王になる。
そよそよと吹いてきた風はやわらかく頬を撫でていく、まるでジルが甘えているようだった。
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