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第三章 新たなる地
森の終わり
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山を降り始めて幾晩か過ぎると、ふたたび森の中になった。
この森は麓近くまで続くがその先は荒地。
実りがあるのはこの森が最後になりそうだ。
クレイダは懸命に働いてくれた。
俺が知らずに発している催淫で、よろよろになってるらしい獣を何匹も生捕り、紐でくくりつけて背負っている。
酔っている獣たちは涎を出して小さな声で切なげに唸っているものだから、俺は気になって仕方なかった。
「なぁ、そいつら気を失わせるわけにはいかないのか?」
「そんな上等なことアタシにゃ無理だ、殺しちまう」
「しかし」
虚ろな目や逆に爛々とした視線でこちらをじっと見つめてくる獣たちに俺は知らずに身震いした。
「気になるなら森を抜けたら全部絞めて、あとは干し肉にするさ。歩きながら干せるかも?」
「なるほどな」
「でも、このガッコだけはなんとしても生かすぞ」
「ガッコ?」
「この中の白に黒の斑点のある鳥さ、コイツはどんどん卵を産むぞ」
俺はクレイダの背負う中に目当てのガッコを見つけフフと笑った。
「卵か、いいな、久しぶりにオムレツも食べたいな」
「なんだって、それは淫魔の卵料理か!良い響きだな!」
そうだよと言ってクレイダの期待に微笑んだ。
クレイダには、俺は淫魔ではないことをあれから何度も説明した、だが、違う世界からやってきたことを彼女が理解することはなかった。
淫魔の力で目当ての男をさらってきただけだろう、と必ずそう結論付けるのだ。
確か、そのような異能があったはずだと。
たしかに、他種族に妊娠をさせるか精をうけるしか次世代を生み出せないはずなのに、あんな深い森の中に彼らはいた。
瞬時にどこかに移動するような、そんな能力がなくてはなかなか他種族には出会わないだろう。
だけど、その謎は永遠に解けない、すでに淫魔は絶滅したのだから。
「森が開けるな」
クレイダの声でふと前を見ると、プツリと線を引いたように突然荒地が始まっているのが見えた。
森から出たら水もそうそう手に入らなさそうだ。
さて、どうするか。
俺は考えを巡らせながらクレイダの背負う獲物をもう一度見た。
ふむ。
「クレイダ」
「どうした?」
「ここで、十分に準備をしよう」
「ここで?」
俺は頷き、足を止めた。
ちょうど視界が開けたのだ。
ついに森は終わった。
乾いてひび割れた大地は灰色だった。
ここから先は不毛の土地、何も期待できないだろう。
心に湧き上がる期待感が俺を急かせる。
早くこの土地に足を踏み入れたいと。
だが、待て、ここには準備なしに足を踏み入れてはいけない。
そうやすやすと人を受け入れてはくれない土地だ。
「準備って、これだけじゃやっぱ足りない?」
「足りないよ、水だって」
「そうか、水は……たしかにこの土地には水が無さそうだ」
クレイダはしゃがみ込み、乾いた大地をトントンと叩いた。
「とりあえず、ここならば、森の恵みを得ながらそれを広げていけるかもしれない、策を練ろう」
「了解だ」
クレイダは慣れた様子でそこらの木を切り蔓を編んで、即席の柵を作り始めた。
小さめに囲われた柵の中に鳥を放すと、他の獲物たちはサッサと首を捻り血抜きを施していく。
相変わらずの無駄のない動きに感心しながら、俺は後ろを振り向き森を観察した。
まずは、水源……か。
さわさわと吹いてきた風が、俺の伸びた髪をさらう。
爽やかな葉の匂いがして、また、ジルの笑顔を思い出した。
この森は麓近くまで続くがその先は荒地。
実りがあるのはこの森が最後になりそうだ。
クレイダは懸命に働いてくれた。
俺が知らずに発している催淫で、よろよろになってるらしい獣を何匹も生捕り、紐でくくりつけて背負っている。
酔っている獣たちは涎を出して小さな声で切なげに唸っているものだから、俺は気になって仕方なかった。
「なぁ、そいつら気を失わせるわけにはいかないのか?」
「そんな上等なことアタシにゃ無理だ、殺しちまう」
「しかし」
虚ろな目や逆に爛々とした視線でこちらをじっと見つめてくる獣たちに俺は知らずに身震いした。
「気になるなら森を抜けたら全部絞めて、あとは干し肉にするさ。歩きながら干せるかも?」
「なるほどな」
「でも、このガッコだけはなんとしても生かすぞ」
「ガッコ?」
「この中の白に黒の斑点のある鳥さ、コイツはどんどん卵を産むぞ」
俺はクレイダの背負う中に目当てのガッコを見つけフフと笑った。
「卵か、いいな、久しぶりにオムレツも食べたいな」
「なんだって、それは淫魔の卵料理か!良い響きだな!」
そうだよと言ってクレイダの期待に微笑んだ。
クレイダには、俺は淫魔ではないことをあれから何度も説明した、だが、違う世界からやってきたことを彼女が理解することはなかった。
淫魔の力で目当ての男をさらってきただけだろう、と必ずそう結論付けるのだ。
確か、そのような異能があったはずだと。
たしかに、他種族に妊娠をさせるか精をうけるしか次世代を生み出せないはずなのに、あんな深い森の中に彼らはいた。
瞬時にどこかに移動するような、そんな能力がなくてはなかなか他種族には出会わないだろう。
だけど、その謎は永遠に解けない、すでに淫魔は絶滅したのだから。
「森が開けるな」
クレイダの声でふと前を見ると、プツリと線を引いたように突然荒地が始まっているのが見えた。
森から出たら水もそうそう手に入らなさそうだ。
さて、どうするか。
俺は考えを巡らせながらクレイダの背負う獲物をもう一度見た。
ふむ。
「クレイダ」
「どうした?」
「ここで、十分に準備をしよう」
「ここで?」
俺は頷き、足を止めた。
ちょうど視界が開けたのだ。
ついに森は終わった。
乾いてひび割れた大地は灰色だった。
ここから先は不毛の土地、何も期待できないだろう。
心に湧き上がる期待感が俺を急かせる。
早くこの土地に足を踏み入れたいと。
だが、待て、ここには準備なしに足を踏み入れてはいけない。
そうやすやすと人を受け入れてはくれない土地だ。
「準備って、これだけじゃやっぱ足りない?」
「足りないよ、水だって」
「そうか、水は……たしかにこの土地には水が無さそうだ」
クレイダはしゃがみ込み、乾いた大地をトントンと叩いた。
「とりあえず、ここならば、森の恵みを得ながらそれを広げていけるかもしれない、策を練ろう」
「了解だ」
クレイダは慣れた様子でそこらの木を切り蔓を編んで、即席の柵を作り始めた。
小さめに囲われた柵の中に鳥を放すと、他の獲物たちはサッサと首を捻り血抜きを施していく。
相変わらずの無駄のない動きに感心しながら、俺は後ろを振り向き森を観察した。
まずは、水源……か。
さわさわと吹いてきた風が、俺の伸びた髪をさらう。
爽やかな葉の匂いがして、また、ジルの笑顔を思い出した。
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