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第三章 新たなる地
旅の仲間
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食事が終わっても、クレイダは帰らなかった。
離れがたそうな様子を見せて、俺のそばに居続けた。
仕方なく食後に作ったハーブティーも差し出すと、嬉しそうに受け取りフウフウと冷まして少しずつ飲んでいる。
体は大きくていかついが、大型犬のような可愛さも併せ持ってなんとも憎めない。
「お前たちは、一族のものと一緒に暮らしているのではないのか?」
「確かにそうだが、父とけんかして出てきたところだ」
なんとも人間臭いことをいうと思って少し笑った。
「お前は成人してるのか?」
「もちろんだ、アタシは結婚を拒否したから父に怒られたんだ」
「……へぇ」
何も言えなくなって木の枝を火にくべた。
意外にもちゃんとした文化があるんだなって。
野生の獣みたいなものかと思っていたが、認識を改める必要がありそうだった。
「アラトは?成人してるよな?どんな種族に子を産ませたい?」
「いや……」
俺は考え込み、そしてまたジルの顔を思い浮かべた。
「俺はとくに、子を産ませたいとかそういうのは……さきほども言ったが……」
「だけど、問題だよその催淫の匂い、なんとかしないと」
「でも、どうやって出しているかも知らないんだから、抑えようもないないんだが」
「今だって、アラトが知らないだけで、この周りには酔ってふらふらで発情してる小動物だらけなんだよな」
そういってカカカと豪快に笑った。
「アラトといたら、命を取られる心配はなさそうだけど、貞操の危機はいつでもありそうだ」
そういえば、ジルと暮らしたあの場所からここまで、俺は実に平和に歩いてきた。
途中獣に会ったこともなければ、他の魔族だってクレイダが初めてだ。
「その匂いに気づいたら、魔族は普通逃げるからな」
「では、クレイダはなぜ近づいてきた?」
「んー、アタシはさ、なんか引っ張られたみたいに、足が勝手にこっちに向いたんだよ」
そういってニカッと笑顔になって犬歯の目立つ歯列を見せてきた。
「で、今はどうなんだ?まだ発情中なのか?」
「いや?さっきも発情しかけってところで踏みとどまったし、今はなんともない。腹に物を入れたからだろう」
「関係あるんだろうか?」
「なくはないだろうが……アラトのその匂いは間違いなく淫魔のものなのに、どうも何かが違うようにも思えるな」
そういって俺をじっと見つめてきた。
俺が現代日本からやってきたなんて言う説明は、ここではできないよな……と内心困った。
「まあ……お前がいうように俺は半魔なんだろうから、そのせいだろう。お前が正気を保っていられるのなら、その程度なんだろうな」
「いや……なんていうか、その……もっと凄い何かを想像させるのだが、まあいいか」
そういってクレイダはドカドカと敷物に乗ってきて、足を伸ばした。
「アタシは休ませてもらうよ、明日は早くに発つんだろう?」
「え?休むってここに?」
「そうだ、アタシ決めたんだ。アラトについていくよ、もちろん体目当てなんかじゃない、ただ、なんていうか、興味があるんだ」
ダメか?と言いつつ、おやつのおねだりをする犬のような顔をするものだから、俺はつい笑ってしまった。
「まあ、いいけど、特に目的はないんだぞ、だけどそうだな……俺は自分の国を作りたいとは思ってる」
「はあ?!」
クレイダは目を丸くして身を乗り出した。
「ほんとはさ、気になることがあって、それを調べるために旅に出たんだけど、それを調べるのはゆっくりでいいと思ってるんだ、その前に、俺は俺の居場所を作ろうって思ってて……ある人と約束したんだ」
「へえ」
クレイダはポリポリと首筋を掻いて、それからあくびをして背を木に預けてゆったりと座った。
「わかったよ、じゃあアタシはそれを見届けようじゃないか」
俺は予定外の旅の仲間の出現が、思いのほかうれしかった。
それだけ、孤独だったんだろう。
俺はまた心の中のジルに微笑みかけた。
離れがたそうな様子を見せて、俺のそばに居続けた。
仕方なく食後に作ったハーブティーも差し出すと、嬉しそうに受け取りフウフウと冷まして少しずつ飲んでいる。
体は大きくていかついが、大型犬のような可愛さも併せ持ってなんとも憎めない。
「お前たちは、一族のものと一緒に暮らしているのではないのか?」
「確かにそうだが、父とけんかして出てきたところだ」
なんとも人間臭いことをいうと思って少し笑った。
「お前は成人してるのか?」
「もちろんだ、アタシは結婚を拒否したから父に怒られたんだ」
「……へぇ」
何も言えなくなって木の枝を火にくべた。
意外にもちゃんとした文化があるんだなって。
野生の獣みたいなものかと思っていたが、認識を改める必要がありそうだった。
「アラトは?成人してるよな?どんな種族に子を産ませたい?」
「いや……」
俺は考え込み、そしてまたジルの顔を思い浮かべた。
「俺はとくに、子を産ませたいとかそういうのは……さきほども言ったが……」
「だけど、問題だよその催淫の匂い、なんとかしないと」
「でも、どうやって出しているかも知らないんだから、抑えようもないないんだが」
「今だって、アラトが知らないだけで、この周りには酔ってふらふらで発情してる小動物だらけなんだよな」
そういってカカカと豪快に笑った。
「アラトといたら、命を取られる心配はなさそうだけど、貞操の危機はいつでもありそうだ」
そういえば、ジルと暮らしたあの場所からここまで、俺は実に平和に歩いてきた。
途中獣に会ったこともなければ、他の魔族だってクレイダが初めてだ。
「その匂いに気づいたら、魔族は普通逃げるからな」
「では、クレイダはなぜ近づいてきた?」
「んー、アタシはさ、なんか引っ張られたみたいに、足が勝手にこっちに向いたんだよ」
そういってニカッと笑顔になって犬歯の目立つ歯列を見せてきた。
「で、今はどうなんだ?まだ発情中なのか?」
「いや?さっきも発情しかけってところで踏みとどまったし、今はなんともない。腹に物を入れたからだろう」
「関係あるんだろうか?」
「なくはないだろうが……アラトのその匂いは間違いなく淫魔のものなのに、どうも何かが違うようにも思えるな」
そういって俺をじっと見つめてきた。
俺が現代日本からやってきたなんて言う説明は、ここではできないよな……と内心困った。
「まあ……お前がいうように俺は半魔なんだろうから、そのせいだろう。お前が正気を保っていられるのなら、その程度なんだろうな」
「いや……なんていうか、その……もっと凄い何かを想像させるのだが、まあいいか」
そういってクレイダはドカドカと敷物に乗ってきて、足を伸ばした。
「アタシは休ませてもらうよ、明日は早くに発つんだろう?」
「え?休むってここに?」
「そうだ、アタシ決めたんだ。アラトについていくよ、もちろん体目当てなんかじゃない、ただ、なんていうか、興味があるんだ」
ダメか?と言いつつ、おやつのおねだりをする犬のような顔をするものだから、俺はつい笑ってしまった。
「まあ、いいけど、特に目的はないんだぞ、だけどそうだな……俺は自分の国を作りたいとは思ってる」
「はあ?!」
クレイダは目を丸くして身を乗り出した。
「ほんとはさ、気になることがあって、それを調べるために旅に出たんだけど、それを調べるのはゆっくりでいいと思ってるんだ、その前に、俺は俺の居場所を作ろうって思ってて……ある人と約束したんだ」
「へえ」
クレイダはポリポリと首筋を掻いて、それからあくびをして背を木に預けてゆったりと座った。
「わかったよ、じゃあアタシはそれを見届けようじゃないか」
俺は予定外の旅の仲間の出現が、思いのほかうれしかった。
それだけ、孤独だったんだろう。
俺はまた心の中のジルに微笑みかけた。
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