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第二章 遠くの国
真湖紗王と天の遣い
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少年は、一見普通の子に見えた。
栄養状態が心配になるほどの細さが気になるが、肌艶の良さから見て、痩せているのは体質なのであろうと想像できた。
なにより、どこかの王子ではないかと見まがうほどの優雅さと後光を感じるようなその表に、誰もが一瞬息をのんだ。
赤子の時に負った片腕損傷が気にならないほどの威厳だった。
「そなたは……名は?」
「栄でございます」
栄と名乗った少年は黄緑色に輝く美しい瞳を真っすぐに白銀の王に向けた。
真湖紗王は一瞬たじろいた後、ゆっくりと座していた椅子から立ち上がり、栄のそばまで歩み寄った。
「翼がはえたと申しておったが、見たところ、そのようなものは無いようだな」
「はい、神殿長様をお助けしたのち、すぐに翼は消えました」
栄は声変わり前のかわいらしい声で、薄く微笑みながら目を伏せた。
期待されていた翼が今はないことに恥ずかしさを覚えたのかもしれない。
「まあ、とにもかくにも、姉上は盲目だ、その姉上を助けてくれたことには感謝するぞ、栄」
紗国の神殿長には、王族の女子がなる。
代々、その多くは盲目、もしくはほとんど見えていない状態で生まれついた王女だ。
「おほめいただき、嬉しく思います」
栄は美しい黄緑の目を閉じて、頭を下げた。
真湖紗王はそんな彼の肩をぽんぽんと叩き、微笑んだ。
その時だった。
周りがまばゆい白い光に包まれ、誰もが目を瞑った。
とても開けていられる状況ではなかった。
そしてその閃光のようなものが収まり、真湖紗王が再び目を開いた時、そこにあったものは、一匹の鹿のような生き物だった。
背中から、大きな美しい翼を生やし、巻いた美しい角は輝いていた。
「な……」
異変を感じた近衛が、ドタドタと室内に踏み込んで来た。
しかし真湖紗王は彼らを手で制し、ぽつんと立ちすくむ小鹿に手を差し出し、そしてつぶやいた。
「なんと栄……そなた、麒麟であったのか」
周囲の人々は瞠目し、白銀の王と翼を持つ小鹿らしきものを順番に見つめた。
「栄、そなたは本当に天から遣わされた我の守護なのだな」
「私は、その……よくわかりません……」
小鹿は不思議なことに人の言葉を話した。
栄のかわいらしい声のまま。
「わからずとも良い、よく、生きていてくれた。麒麟の姿になると腕はもとに戻るのだな……不思議なことよの」
見ると、麒麟の足は4本きちんとあった。
そして、恥ずかしそうに翼を折りたたみ、体にピタリと寄せた。
「そなた、我の近くで暮らさぬか?それとも、願いは森の民らと共にあることだろうか?」
真湖紗王は優し気な声で麒麟に問いかけた。
このような王の姿は誰も見たことがなかった。
「私は……できることならば陛下のそばにあって、お守りしたいと存じます。私などに何ができるかわかりませんが」
黄緑色のつぶらな瞳を輝かせ、麒麟は言った。
白銀の王はにこやかに微笑み、そして麒麟を抱き上げた。
「栄よ、よくぞ参った。感謝する」
栄養状態が心配になるほどの細さが気になるが、肌艶の良さから見て、痩せているのは体質なのであろうと想像できた。
なにより、どこかの王子ではないかと見まがうほどの優雅さと後光を感じるようなその表に、誰もが一瞬息をのんだ。
赤子の時に負った片腕損傷が気にならないほどの威厳だった。
「そなたは……名は?」
「栄でございます」
栄と名乗った少年は黄緑色に輝く美しい瞳を真っすぐに白銀の王に向けた。
真湖紗王は一瞬たじろいた後、ゆっくりと座していた椅子から立ち上がり、栄のそばまで歩み寄った。
「翼がはえたと申しておったが、見たところ、そのようなものは無いようだな」
「はい、神殿長様をお助けしたのち、すぐに翼は消えました」
栄は声変わり前のかわいらしい声で、薄く微笑みながら目を伏せた。
期待されていた翼が今はないことに恥ずかしさを覚えたのかもしれない。
「まあ、とにもかくにも、姉上は盲目だ、その姉上を助けてくれたことには感謝するぞ、栄」
紗国の神殿長には、王族の女子がなる。
代々、その多くは盲目、もしくはほとんど見えていない状態で生まれついた王女だ。
「おほめいただき、嬉しく思います」
栄は美しい黄緑の目を閉じて、頭を下げた。
真湖紗王はそんな彼の肩をぽんぽんと叩き、微笑んだ。
その時だった。
周りがまばゆい白い光に包まれ、誰もが目を瞑った。
とても開けていられる状況ではなかった。
そしてその閃光のようなものが収まり、真湖紗王が再び目を開いた時、そこにあったものは、一匹の鹿のような生き物だった。
背中から、大きな美しい翼を生やし、巻いた美しい角は輝いていた。
「な……」
異変を感じた近衛が、ドタドタと室内に踏み込んで来た。
しかし真湖紗王は彼らを手で制し、ぽつんと立ちすくむ小鹿に手を差し出し、そしてつぶやいた。
「なんと栄……そなた、麒麟であったのか」
周囲の人々は瞠目し、白銀の王と翼を持つ小鹿らしきものを順番に見つめた。
「栄、そなたは本当に天から遣わされた我の守護なのだな」
「私は、その……よくわかりません……」
小鹿は不思議なことに人の言葉を話した。
栄のかわいらしい声のまま。
「わからずとも良い、よく、生きていてくれた。麒麟の姿になると腕はもとに戻るのだな……不思議なことよの」
見ると、麒麟の足は4本きちんとあった。
そして、恥ずかしそうに翼を折りたたみ、体にピタリと寄せた。
「そなた、我の近くで暮らさぬか?それとも、願いは森の民らと共にあることだろうか?」
真湖紗王は優し気な声で麒麟に問いかけた。
このような王の姿は誰も見たことがなかった。
「私は……できることならば陛下のそばにあって、お守りしたいと存じます。私などに何ができるかわかりませんが」
黄緑色のつぶらな瞳を輝かせ、麒麟は言った。
白銀の王はにこやかに微笑み、そして麒麟を抱き上げた。
「栄よ、よくぞ参った。感謝する」
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