オメガの王 

むつみ

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5話 編入

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 専用の早馬の馬車を利用したが、屋敷から学園まで3日もかかった。学園は国の外れに位置しており、外部からはほぼ孤立状態になっていると言う。

 だからこそ、兄様がどうしてあんな目に合ったのか、全く情報が入って来なかったのだ。こうして内部から探るしか犯人を捕まえる手段はない。

 「クリス様、目的地に到着いたしました。」

 御者から声がかかり、扉を開けてもらう。そのまま降りようとするとスッと目の前に手が差し伸べられた。

 エスコートのつもりなのだろうけど、僕はドレスなんて着ていない。気遣いのつもりだろうが、かえってバース性を意識させられ不快になる。

 オメガだからと、性別は男なわけで、女扱いはゴメンだ。
 
 一族の嫡男としてアルファとして生まれたかった。月に一度ある発情期に翻弄され、子供を産む能力しかないオメガになんてなりたくなかった。

 (まあ、今更だし、僕はちょっと普通とは違うからまだましだけど・・)


 御者を手で制し、必要ないと首を振る。物分かりの良い御者は、主人に一礼するとそのまま元の位置に戻る。

 

 場所が去り、クリスは今日から戦いの舞台となる学園を見上げた。学園というには、まるで古城を思わせる荘厳な外観をしている。

 クイッと顎を上げた先に見えたのは、石造りの小窓が立ち並んだ渡り廊下から、チラチラと気にするようにこっちを見てくる不躾な多くの視線。

 オメガたちの探るような視線とアルファたちの舐めるような視線。


 どちらにしても気持ちの良い物ではない。

 季節外れの編入生が物珍しいのだろうか。

見るな!っと言ってやりたいがこんな事でいちいち反応しては今後生きていけない。クリスは顎を上げたツンとした表情を保ち、煩わしい視線の中でも気にしないように余裕の笑みさえ浮かべ優雅に振る舞う。

 「あの子初めて見るね。綺麗~」

 「高貴な感じだけどアルファかな?それともオメガー?」

 「ハッ、オメガなら喰っちまおうぜ!」

 「いいねー!ヤッちゃおうぜ!ギャハハ!」

 「オメガなんて性奴隷だからなぁ~」

 学園の生徒たちは言いたい放題言う。

 オメガが虐げられていた時代はもう終わったと言うのに・・

 この学園に在籍するアルファは、未だに自分たちがバース性の支配階級にいると踏ん反り返っているのだろうか。

 自身がオメガだからというのもあるかもしれないが、狡猾かつ傲慢な性格が多いアルファの人種には嫌悪感がわく。
 
 それに、努力しなくても、生まれながらに勝ち組と決まっているというのも面白くない。

 それにしても・・

 オメガを奴隷扱いって、王都と比べて差別化がかなり酷い気がするが・・

 ここには、オメガの王が僕以外にも2人いるはずなのに、


 ・・いったいどうなっているんだ?
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