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腹黒彼氏

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「ねえ、いい加減僕にも笑顔を見せてよ」

会社の定時を過ぎてもう2時間は超えただろうか

本来なら仕事を終えた私もすぐに帰宅できるはずなのに・・・

何故か目の前にいる男をデスクを挟んで眺めなくてはいけない

ただでさえ疲れきった表情筋を、あんたの為になんで更に酷使しなくちゃいけないのよ


目の前に頬杖をついてこっちに向けてウインクする男

見た目は一言で言えば美形

世に言う王子様的な感じ

女でも嫉妬するような白くて綺麗なキメ細かい肌、キャラメル色のゆるふわパーマ、そして何より極め付けは、大人の女を虜にする切れ長二重のアーモンドアイ

どこぞのアイドルかよっていう男

性格も良くて職員にも優しく、お得意様には、外見だけでなく人柄も素晴らしいとか褒め称えられ、今じゃ会社でトップの業績を誇る期待のエース

完璧で完全なる男



・・・だけどこれは表向き


私だけが、彼が優男美男子ではなく性悪腹黒男だと言うことを知っている




最初の出会いは、新人研修の時。

爽やかな王子スマイルで私たち新人を出迎えてくれた3年上の新人担当の先輩だった。

彼の説明は本当にわかりやすいし優しかった

優しすぎて怖いくらい


でも

何となく違和感を覚えた

新人は私を含めて5人

彼は覚えが悪い子にも優しく丁寧に教えていた

でも、優しく丁寧に教えているのは会社でも上位権力者が近くにいる時だけ

その他の時に聞いても、自分の仕事に専念したいからとものすごく申し訳なさそうに言われた

そう言えば・・・


本当に丁寧に教えてくれたのは重役が近くにいる時だけだった気がする


ある時、いつも年下にキツく当たっているお局がミスをした

彼は優しくフォローし、責められるのが可哀想だからと自分が取引先に謝りに行くと言った

職場の人は皆んな彼に感心した

あの後、お局が担当していたその取引先の担当が彼に変更された

どうやら、先方に大層気に入られたようで

でも、私は知っている

彼がお局のミスに気づいていた事に


この前、彼の担当ではない取引先の代表取締役と何故か彼はジムで出会った。

意気投合した彼らは、仲良くなりにも連携会社であることを知る

彼の担当がまた新たに増えたのは言うまでもない


私だけが知っている

彼は性悪な腹黒で

会社でのし上がるためにいつも狡猾な思考を持ち合わせている

だけど、私は知っている


彼が本当に優しくなれるのは私の前だけだということを


「これで明日から、君の担当が増えるよ。君だけに教えてあげているんだからね。」

私は細く微笑んだ
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