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48話
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エレベーターが最上階に着きドアが開く。奥に扉が一つあるのに気づいた。チハルや健太の部屋の扉とは違い重厚感がある。緊張感が増してきて手に汗が滲む。
インターフォン・・はないな。
その代わりに厳重なセンサーが付いている。よく見るとレンズの様な物が内蔵されているのがわかる。
・・小さいけど監視カメラだろうな。流石最上階のセキュリティーは万全なんだな。だけどインターフォンが無いならどうやって入ったら良いんだろう?
扉前で戸惑っていると電子音が響き、青白い枠が現れた。生体認証システムと文字が浮かび上がる。
へえ、なるほど。ここに手を当てれば良いのか。あれ?でも指紋認証って部屋の主だけが使えるもんだよな?チハルの所の扉も客用にボタン付いてたし。
ピロン
『稲垣健太 親衛隊隊長 認証確認 認識確認 扉が開きます』
重厚感のある扉が二つに分かれる様にゆっくりと開いて行く。
え?俺の指紋で開いた。
「入れ」
奥から大雅の低い声がする。
ゴクりと唾を飲み込むと健太は勇気を振り絞り足を進めた。
・・大丈夫だ。今は特に大雅の気に触れるようなことはしていない。流石に前の様な事は起きないだろう。それにしても薄暗いな。よく見えない。なんだろ動悸がしてきた。
急に手が震え出す。今までは学校生活や訓練の毎日で忘れていたのにこの部屋に来た事でいろいろ思い出してしまった。
ーーこれは恐怖だ。あの時、男としての矜持を砕かれ、踏み躙られた感覚が忘れられない。お仕置きと称して性欲処理の道具としていいように使われた事。抵抗してもなす術は無く、本当は屈辱と羞恥心でいっぱいで、その夜は悔しくて泣いた。他でも無い大雅にあんな辱めを受けるなんて絶望もした。昔も暴君だったけど、今の様な怖さは無かった。いじめからも守ってくれたりカッコいい所もあったんだ。
ダメだ。これ以上は進めない。
そう思った時、背後でガシャんと扉が閉まる音が聞こえた。肩がビクつく。もう戻る事もできない。
「何してる。早く来いよ。」
悪魔が待っている。
「・・うん」
声音は普通だ。だけど、もたもたしていたらいつ不機嫌になるかわからない。なんとか顔を上げて無理矢理足を動かす。
俺はチキンじゃない。俺はチキンじゃない。心の中で何度もそう唱える。
声の方へ向かおうにも部屋が薄暗いのと広すぎて大雅が何処にいるのかわからない。それでも、目は慣れてくる。やっと全体が見えてきた。
部屋の中は上質な空間が広がっている。高級そうな革製のソファーに繊細な絵が描かれた絨毯。部屋のインテリアも上質な物ばかり。チハルの部屋もシンプルではあったけど、備え付けの家具や寝具はそれなりの物だった。ここはそれ以上に広くて豪華な内装となっている。少しでも汚せば高額な請求をされそうだ。電気が消されているのか薄暗いが、大きな窓からの月明かりが差し込み綺麗だと感じた。
その奥に人影が見えた
こちら側にゆっくりと歩いてくる
窓前まで来ると月明かりに照らされて大雅の顔がはっきりと見えた。直接会うのは久々だ。健太の鼓動がまた速くなる。
「よく来たな。」
「・・呼んでるって聞いたから。でもできるなら早く帰りたい。何か用?」
・・やばい。思わず反抗心が蘇り噛み付いた言い方をしてしまった。
「生意気な返事だな。気に食わねえ。」
そう言うと大雅にいきなり首根っこを掴まれ床に引き倒された。反撃しようと身体を捻ろうとするが、隙がなく逆に横倒しにされる。そのまま絞技を仕掛けられた。
「うぐっ・・ぐぁ」
身体ごと体重をかけられ重苦しさで呻き声が漏れる。強気な返答は大雅の機嫌を損ねるとわかっていた。だけど、手の震えがバレるのが嫌だった。
「チッ・・虫がついたか」
乱暴に健太の頸周りの髪を掴むと、匂いを嗅ぐように鼻を寄せる。眉を寄せた大雅は不機嫌そうに舌打ちをした。
「テメェ昼間誰と会った。臭え匂いつけられやがって。」
「え、匂い?」
訳がわからず、とりあえず自分の首の後ろ髪の匂いを確認すると、僅かだが香水の香りがした。
「あ、良い匂い。」
それがいけなかったのか。大雅の顔から表情が消えた。
インターフォン・・はないな。
その代わりに厳重なセンサーが付いている。よく見るとレンズの様な物が内蔵されているのがわかる。
・・小さいけど監視カメラだろうな。流石最上階のセキュリティーは万全なんだな。だけどインターフォンが無いならどうやって入ったら良いんだろう?
扉前で戸惑っていると電子音が響き、青白い枠が現れた。生体認証システムと文字が浮かび上がる。
へえ、なるほど。ここに手を当てれば良いのか。あれ?でも指紋認証って部屋の主だけが使えるもんだよな?チハルの所の扉も客用にボタン付いてたし。
ピロン
『稲垣健太 親衛隊隊長 認証確認 認識確認 扉が開きます』
重厚感のある扉が二つに分かれる様にゆっくりと開いて行く。
え?俺の指紋で開いた。
「入れ」
奥から大雅の低い声がする。
ゴクりと唾を飲み込むと健太は勇気を振り絞り足を進めた。
・・大丈夫だ。今は特に大雅の気に触れるようなことはしていない。流石に前の様な事は起きないだろう。それにしても薄暗いな。よく見えない。なんだろ動悸がしてきた。
急に手が震え出す。今までは学校生活や訓練の毎日で忘れていたのにこの部屋に来た事でいろいろ思い出してしまった。
ーーこれは恐怖だ。あの時、男としての矜持を砕かれ、踏み躙られた感覚が忘れられない。お仕置きと称して性欲処理の道具としていいように使われた事。抵抗してもなす術は無く、本当は屈辱と羞恥心でいっぱいで、その夜は悔しくて泣いた。他でも無い大雅にあんな辱めを受けるなんて絶望もした。昔も暴君だったけど、今の様な怖さは無かった。いじめからも守ってくれたりカッコいい所もあったんだ。
ダメだ。これ以上は進めない。
そう思った時、背後でガシャんと扉が閉まる音が聞こえた。肩がビクつく。もう戻る事もできない。
「何してる。早く来いよ。」
悪魔が待っている。
「・・うん」
声音は普通だ。だけど、もたもたしていたらいつ不機嫌になるかわからない。なんとか顔を上げて無理矢理足を動かす。
俺はチキンじゃない。俺はチキンじゃない。心の中で何度もそう唱える。
声の方へ向かおうにも部屋が薄暗いのと広すぎて大雅が何処にいるのかわからない。それでも、目は慣れてくる。やっと全体が見えてきた。
部屋の中は上質な空間が広がっている。高級そうな革製のソファーに繊細な絵が描かれた絨毯。部屋のインテリアも上質な物ばかり。チハルの部屋もシンプルではあったけど、備え付けの家具や寝具はそれなりの物だった。ここはそれ以上に広くて豪華な内装となっている。少しでも汚せば高額な請求をされそうだ。電気が消されているのか薄暗いが、大きな窓からの月明かりが差し込み綺麗だと感じた。
その奥に人影が見えた
こちら側にゆっくりと歩いてくる
窓前まで来ると月明かりに照らされて大雅の顔がはっきりと見えた。直接会うのは久々だ。健太の鼓動がまた速くなる。
「よく来たな。」
「・・呼んでるって聞いたから。でもできるなら早く帰りたい。何か用?」
・・やばい。思わず反抗心が蘇り噛み付いた言い方をしてしまった。
「生意気な返事だな。気に食わねえ。」
そう言うと大雅にいきなり首根っこを掴まれ床に引き倒された。反撃しようと身体を捻ろうとするが、隙がなく逆に横倒しにされる。そのまま絞技を仕掛けられた。
「うぐっ・・ぐぁ」
身体ごと体重をかけられ重苦しさで呻き声が漏れる。強気な返答は大雅の機嫌を損ねるとわかっていた。だけど、手の震えがバレるのが嫌だった。
「チッ・・虫がついたか」
乱暴に健太の頸周りの髪を掴むと、匂いを嗅ぐように鼻を寄せる。眉を寄せた大雅は不機嫌そうに舌打ちをした。
「テメェ昼間誰と会った。臭え匂いつけられやがって。」
「え、匂い?」
訳がわからず、とりあえず自分の首の後ろ髪の匂いを確認すると、僅かだが香水の香りがした。
「あ、良い匂い。」
それがいけなかったのか。大雅の顔から表情が消えた。
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