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47話
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健太がチハルの部屋を出て数分後、また貴志優人が部屋を訪れた。
しかし先程までの甘い雰囲気は両者の間には無い。
「稲垣君とはゆっくりお話し出来ましたか?久々の再会ですし積もる話もあったでしょう。」
「あんたに関係ない!それに聞かなくても、どうせ聞き耳立ててたんじゃないの!?」
「ふふっ、小尻君は私を全く信用してないのですねえ。身体を重ねた仲なのに寂しいものです。」
完全に否定しないことから、やはり何らかの手段で聞いていたに違いない。この男は見た目に反して誠実とは程遠い。信用してないのはお互い様だ。現に言葉では寂しいと表現しても表情はいつもと同じく微笑を浮かべるだけ。何を考えてるのかわからない男だ。
「それにしても、先程は見事な演技力でしたね。正直ボロが出るのではと思っていましたが、完璧ですよ。まるで本当に私に恋をしているかの様な愚かで可愛い姿、素晴らしい。」
「あんたが変なこと考えるなって釘を刺すから!それに、、ああでもしないと健太はまた自分を責めるから、、。」
貴志優人に優しくされたからといって盲目的に恋をするほどチハルは愚かではないしバカでもない。襲われた後の甘さは彼の計画の内だろう。この男は誰にでも優しく聖人君子の様な顔をしてその実は蛇の様な人間だ。簡単に絆されてしまえばパクっと一口で喰われてしまう。そもそも自分はノンケ、いくら身体が堕ちようと心までは変えられない。
「身体は勿論、簡単に懐柔されないところも気に入ってはいますが、あなたにとって私は必要でしょう?稲垣君を守りたいのでは?」
そうだ。健太を守りたい。大切な友人を。もう失いたくなんてない。だからこの男と契約を結んだんだ。
今回わかった事は今の自分じゃ何もできないと言うこと。外部の自分が健太の側にいてはまた人質に取られて逆に足手まといになってしまう。健太をあの悪魔達から守る事なんて出来ない。
ならば、内部に入り込めばいい。この貴志優人という男の側に入れば、必然と健太の近くにいられる。今のままでは何も出来ないが、いずれ機会は訪れるはずだ。健太を救うチャンスが。その時に逃す、けどまだその時じゃない。
「あなたの考えている事はだいたい分かりますよ。ですが、少し前に話した通り、稲垣君は今狙われています。若の親衛隊隊長ですから当然ですが。こちら側にいた方が守れるので変な事は考えないで下さいね。」
「それはあんた達のせいでしょ!?健太が狙われるのわかってたんじゃないの?」
「ええ。ですがこれから強くなれば良いだけのこと。身体的にも精神的にも。若の近くにいれば常に危険は伴うのですから。」
淡々と言うこの男は健太の意志なんて全く考えていない。
「ねえ、一つ聞かせて。どうして健太なの?」
「若が望むからですよ。稲垣君を手中に収めることを。そしてそれを叶えるのが私と西園寺の役目です。」
すんなり答えてくれるとは思っていなかった為に少し驚く。しかし、理由はあまりにも身勝手、健太はものではない。
「若はあまり欲の無い方でしたから後継争いには名乗りは挙げないものと思っていましたが・・ふふっ・・私の夢は若が頂点に立つこと。そして側近として仕えること。若は約束してくれました。稲垣君さえいれば後継になる為に惜しみ無く力を振るうと。だから私は彼を捧げるのですよ。彼の犠牲により我々の若は更なる高みに進み私もまた多くの恩恵を得られる。ああ、待ち遠しいですねえ。」
つまり、この男の野望の為に健太に犠牲になれと言うのだ。そしてそれを当然だと思っている。本当に誠実とは程遠い人物だ。
うっとりと恍惚とした表情で夢を語る貴志優人はチハルに微笑を浮かべると優し気に目を細める。それがまた天女の様は妖艶な雰囲気となりチハルを堕落へと誘う。・・ああ、ダメだ。この男によって開発された身体はすぐに熱く疼き始める。
「世の中give and takeです。貴方は少しの情報を得られたのですから、さあ、脚を開きなさいーー」
身体が押し倒される中チハルは誓う。
ーーこの男を利用して健太を悪魔の思惑から救うのだとーー
しかし先程までの甘い雰囲気は両者の間には無い。
「稲垣君とはゆっくりお話し出来ましたか?久々の再会ですし積もる話もあったでしょう。」
「あんたに関係ない!それに聞かなくても、どうせ聞き耳立ててたんじゃないの!?」
「ふふっ、小尻君は私を全く信用してないのですねえ。身体を重ねた仲なのに寂しいものです。」
完全に否定しないことから、やはり何らかの手段で聞いていたに違いない。この男は見た目に反して誠実とは程遠い。信用してないのはお互い様だ。現に言葉では寂しいと表現しても表情はいつもと同じく微笑を浮かべるだけ。何を考えてるのかわからない男だ。
「それにしても、先程は見事な演技力でしたね。正直ボロが出るのではと思っていましたが、完璧ですよ。まるで本当に私に恋をしているかの様な愚かで可愛い姿、素晴らしい。」
「あんたが変なこと考えるなって釘を刺すから!それに、、ああでもしないと健太はまた自分を責めるから、、。」
貴志優人に優しくされたからといって盲目的に恋をするほどチハルは愚かではないしバカでもない。襲われた後の甘さは彼の計画の内だろう。この男は誰にでも優しく聖人君子の様な顔をしてその実は蛇の様な人間だ。簡単に絆されてしまえばパクっと一口で喰われてしまう。そもそも自分はノンケ、いくら身体が堕ちようと心までは変えられない。
「身体は勿論、簡単に懐柔されないところも気に入ってはいますが、あなたにとって私は必要でしょう?稲垣君を守りたいのでは?」
そうだ。健太を守りたい。大切な友人を。もう失いたくなんてない。だからこの男と契約を結んだんだ。
今回わかった事は今の自分じゃ何もできないと言うこと。外部の自分が健太の側にいてはまた人質に取られて逆に足手まといになってしまう。健太をあの悪魔達から守る事なんて出来ない。
ならば、内部に入り込めばいい。この貴志優人という男の側に入れば、必然と健太の近くにいられる。今のままでは何も出来ないが、いずれ機会は訪れるはずだ。健太を救うチャンスが。その時に逃す、けどまだその時じゃない。
「あなたの考えている事はだいたい分かりますよ。ですが、少し前に話した通り、稲垣君は今狙われています。若の親衛隊隊長ですから当然ですが。こちら側にいた方が守れるので変な事は考えないで下さいね。」
「それはあんた達のせいでしょ!?健太が狙われるのわかってたんじゃないの?」
「ええ。ですがこれから強くなれば良いだけのこと。身体的にも精神的にも。若の近くにいれば常に危険は伴うのですから。」
淡々と言うこの男は健太の意志なんて全く考えていない。
「ねえ、一つ聞かせて。どうして健太なの?」
「若が望むからですよ。稲垣君を手中に収めることを。そしてそれを叶えるのが私と西園寺の役目です。」
すんなり答えてくれるとは思っていなかった為に少し驚く。しかし、理由はあまりにも身勝手、健太はものではない。
「若はあまり欲の無い方でしたから後継争いには名乗りは挙げないものと思っていましたが・・ふふっ・・私の夢は若が頂点に立つこと。そして側近として仕えること。若は約束してくれました。稲垣君さえいれば後継になる為に惜しみ無く力を振るうと。だから私は彼を捧げるのですよ。彼の犠牲により我々の若は更なる高みに進み私もまた多くの恩恵を得られる。ああ、待ち遠しいですねえ。」
つまり、この男の野望の為に健太に犠牲になれと言うのだ。そしてそれを当然だと思っている。本当に誠実とは程遠い人物だ。
うっとりと恍惚とした表情で夢を語る貴志優人はチハルに微笑を浮かべると優し気に目を細める。それがまた天女の様は妖艶な雰囲気となりチハルを堕落へと誘う。・・ああ、ダメだ。この男によって開発された身体はすぐに熱く疼き始める。
「世の中give and takeです。貴方は少しの情報を得られたのですから、さあ、脚を開きなさいーー」
身体が押し倒される中チハルは誓う。
ーーこの男を利用して健太を悪魔の思惑から救うのだとーー
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