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46話
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チハルの部屋は思っていたよりシンプルで落ち着きがある。それなのに心が落ち着かないのは、目の前で仲良さげに会話をしている2人がいるからだ。
おかしい
チハルは貴志先輩にあんな事をされたのに怒ってもいないし、むしろ懐いているように見える。
「健太にね。言わなくちゃいけないことがあるんだ!僕ね!優人と付き合うことになったの!」
チハルの口から耳を疑う言葉が聞こえ思考がフリーズする。
え、付き合う?誰と誰が?
「えへへ」
顔を赤らめ恥ずかしそうに笑うチハル、冗談で言っている様子は無い。
「え、どういうこと?」
訳がわからなく尋ねると、チハルは貴志先輩の方を伺うように見る。貴志先輩はそんなチハルに優し気に微笑むと軽く頷いて見せる。この前まで犬猿の仲だったとは思えないやり取りだ。
「では少しの間、小尻君は稲垣君にお任せしますね。変なことは考えないで下さいね?」
丁寧な物言いだが釘を刺すように言うと、貴志先輩は部屋を出て行った。
「健太ごめんね!優人が失礼な言い方して。」
「あ、いや、別に。けど、何がどうなっているのか全然わかんなくて。」
「えっとね、話すと長いんだけどーーー」
チハルがこれまでの経緯を話しだす。
まずは健太が桜都に負けた罰として、チハルが貴志先輩に襲われたところから。
その日は先輩に強姦されるも、確かに無理矢理だったけれど、痛みとかは無く、むしろ快感の方が強かったとか。
行為中は良すぎて泣いても辞めてくれず、容赦無かったけれど、それもまたチハルの好みのど真ん中であり、終わった後のアフターケアは最高で、お互いの相性は抜群だったと。「あとはー」と生々しい発言が続くのに耐えれなくなった健太は慌ててチハルの口に手をやりストップをかける。
その後はチハルが風邪を引き、こじらせてしまい動けなくなると貴志先輩が至れり尽くせりでお世話をしてくれたと。気がついたらこの特別寮に移されており転寮手続きもされていた。費用云々は貴志先輩持ちで、身体を繋げてからの口説きとアピールが凄くて絆されてしまったと。行為中以外はかなり優しくてチハルの我儘も受け止めてくれる寛容さもお気に入りだとか。
最後まで聞いた健太は、先程までの貴志先輩に対する怒りがすんっと無くなっていくのを感じた。
結果的に両者が思い合っているなら、健太がどうこう言う権利は無い。それに、チハルの嬉しそうな顔を見ると何も言えない。
貴志先輩がした事はチハルの友人としては許せないけれど、チハルが笑顔でいてくれるのが一番だとも思う。ここは応援するべきなのかも知れない。
「けど、健太の方は大丈夫なの?」
まだ自分の心配までしてくれるチハルの事を嬉しく思う反面、これ以上は巻き込みたく無いとも思う。
「俺は大丈夫!今は自分の意思で親衛隊隊長してるし、強くなるために訓練もしてるんだ!」
心配はかけたくない。気づかれないようになるべく気丈に振る舞う。
「そっか。健太がそう言うなら、けど、何かあったら言ってね!!」
チハルとの話も終え部屋を後にする。
今から向かう場所は悪魔の本拠地。乗り気では無いし出来れば逃げたい。でもそうすると後から何をされるかわからない。健太は重い足取りでエレベーターへと向かった。
おかしい
チハルは貴志先輩にあんな事をされたのに怒ってもいないし、むしろ懐いているように見える。
「健太にね。言わなくちゃいけないことがあるんだ!僕ね!優人と付き合うことになったの!」
チハルの口から耳を疑う言葉が聞こえ思考がフリーズする。
え、付き合う?誰と誰が?
「えへへ」
顔を赤らめ恥ずかしそうに笑うチハル、冗談で言っている様子は無い。
「え、どういうこと?」
訳がわからなく尋ねると、チハルは貴志先輩の方を伺うように見る。貴志先輩はそんなチハルに優し気に微笑むと軽く頷いて見せる。この前まで犬猿の仲だったとは思えないやり取りだ。
「では少しの間、小尻君は稲垣君にお任せしますね。変なことは考えないで下さいね?」
丁寧な物言いだが釘を刺すように言うと、貴志先輩は部屋を出て行った。
「健太ごめんね!優人が失礼な言い方して。」
「あ、いや、別に。けど、何がどうなっているのか全然わかんなくて。」
「えっとね、話すと長いんだけどーーー」
チハルがこれまでの経緯を話しだす。
まずは健太が桜都に負けた罰として、チハルが貴志先輩に襲われたところから。
その日は先輩に強姦されるも、確かに無理矢理だったけれど、痛みとかは無く、むしろ快感の方が強かったとか。
行為中は良すぎて泣いても辞めてくれず、容赦無かったけれど、それもまたチハルの好みのど真ん中であり、終わった後のアフターケアは最高で、お互いの相性は抜群だったと。「あとはー」と生々しい発言が続くのに耐えれなくなった健太は慌ててチハルの口に手をやりストップをかける。
その後はチハルが風邪を引き、こじらせてしまい動けなくなると貴志先輩が至れり尽くせりでお世話をしてくれたと。気がついたらこの特別寮に移されており転寮手続きもされていた。費用云々は貴志先輩持ちで、身体を繋げてからの口説きとアピールが凄くて絆されてしまったと。行為中以外はかなり優しくてチハルの我儘も受け止めてくれる寛容さもお気に入りだとか。
最後まで聞いた健太は、先程までの貴志先輩に対する怒りがすんっと無くなっていくのを感じた。
結果的に両者が思い合っているなら、健太がどうこう言う権利は無い。それに、チハルの嬉しそうな顔を見ると何も言えない。
貴志先輩がした事はチハルの友人としては許せないけれど、チハルが笑顔でいてくれるのが一番だとも思う。ここは応援するべきなのかも知れない。
「けど、健太の方は大丈夫なの?」
まだ自分の心配までしてくれるチハルの事を嬉しく思う反面、これ以上は巻き込みたく無いとも思う。
「俺は大丈夫!今は自分の意思で親衛隊隊長してるし、強くなるために訓練もしてるんだ!」
心配はかけたくない。気づかれないようになるべく気丈に振る舞う。
「そっか。健太がそう言うなら、けど、何かあったら言ってね!!」
チハルとの話も終え部屋を後にする。
今から向かう場所は悪魔の本拠地。乗り気では無いし出来れば逃げたい。でもそうすると後から何をされるかわからない。健太は重い足取りでエレベーターへと向かった。
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