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37話 寮をご案内

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 学園が運営する寮とは思えないくらいに、リゾートホテル並みの豪華さと異国感を兼ね揃えたエントランスの中に足を踏み入れる。正面から出迎えたのはホール中央に造られた石造りの大きな噴水、一際目立つのは、暴れる獅子の様な石像で、威嚇するように開いた口元からは水が勢いよく噴き出ている。

 まじか、学生の寮にめっちゃ金かけてるよ。

 驚いて口を開けたままの状態になっているとは知らず、健太は獅子の口から流れる水の様子を茫然と眺める。

 「どうしたの、そんなアホみたいな顔して。同じ親衛隊として恥ずかしいからやめてよ。」

 声が聞こえた方に顔を向けると、奥にあるエレベーターから降りて来た桜都がこっちを見て嫌そうな顔をしながら近づいて来きた。

 そう、昨日桜都から連絡が来て、今日の放課後からすぐに訓練を始める為、授業が終わり次第寮に来るようにと言われていたのだ。

 「いや、だってさ。寮までこんな金かけた内装とは思わなくって!すごいびっくりしたわ!」

 「ああ、まあ、一般人からしたらそう思うんだね。僕としては普通だけど。寮だからこそ、内装に力を入れてるんだと思うよ。寮生の実家ってほとんどが社会的地位の高い富裕層が多いから。寄付金考えても、どこにお金を使った方がいいかは誰でもわかる。ご機嫌取りは大事だよ。」

 そっか、桜都も実家が会社経営しているからお坊ちゃんだったな。羨ましいなあ。

 「でも、なんで寮生は富裕層ばかり集まるんだ?」

 「まず一般人だと月々の支払いが高すぎて無理なんだよ。あと、富裕層は両親が忙しくて子供の世話なんて出来ないからだね。ここだったら、食事から掃除、何から何まですべて寮のスタッフに言えば済むことだからね。僕の実家でも家政婦くらいは付けてもらえても、ここみたいに至れり尽くせりって訳にはいかないから。」
 
 へえ~、そっか、俺の母さんはいつも家にいてくれて温かいご飯も用意してくれているけれど、金持ちは金持ちなりに大変なんだな。

 「勿論、家庭じゃ対応出来ない問題児とかもね。」

 問題児・・ね。アイツらとかそうなんじゃないか?

 「さ、時間が惜しいし早く行こう。ジムがあるスタジオは最上階の一つ下だから、簡単に寮の案内をしてあげる。」



 一通り案内はしてもらい、14階までやって来た。全部で15階まであるらしい。11階から14階までは寮生の為の遊戯施設となっていて、室内プールにサウナ、ビリヤード、個室のPCルーム、ジムと盛りだくさん。寮生が度々集まる談話室には町で人気の洋菓子から有名な老舗の和菓子等、数多くの菓子類が取り寄せられている。ボトルに入った飲み物も高級そうで、英語のラベルが貼ってあった赤色の飲み物は特に美味しそうだった。そして、1階から10階までは寮生の自室となっており、指紋認証で扉は開くらしい。セキュリティーも完璧だ。因みに食事は一階のレストランか自室でのルームサービスかの2択らしい。流石に自炊はしないんだな。

 「ここには全国から集められた一流シェフ達が在籍しているから料理も凄く美味しいんだよ。」

 「へえ、それは凄いね。」

 一流シェフの料理なんて食べた事ないや。うちは外食はファミレスばっかだからな。うーん、そんなにお勧めされると気にはなるじゃん。つい、ジド目で桜都を見てしまう。

 「え?もしかしていじけてる?」
 
 「べ、別にいじけてないし、羨ましくもない。」

 「羨ましいんだ、クスッ」

 笑ってる?俺が羨ましそうにしてるからって、偉そうだな。嫌な奴だ。けど笑った顔はけっこう可愛い。

 「いじけない、いじけない。何のために案内してると思ってるの。後で期待しといてね。あ!これだけは言っておかなくちゃね。最上階はボス達学園上位者達の部屋があるから呼び出しがない限りは近づかない方が身の為だよ。今までに、注意事項をちゃんと聞いていなかった奴らが最上階にいってしまって、血祭りに挙げられてた事があったから。まあ、おまえの場合は違う意味で血を見るね。」

 血祭りって・・怖っ!絶対近づかない様にしよう!
 
 まあ、俺はジムの利用で来るだけだし、14階だけちゃんと覚えていれば良いよな?

 「さて。案内はこれで終わり!さっそくトレーニングを始めよう!」
 
 14階にある桜都の実家が経営しているジムはなかなか凄かった。モノトーンの内装には少し緊張感を覚えるけど、色んな種類のトレーニングマシンが綺麗に並んでおり、好奇心からキョロキョロと部屋全体を見渡す。

 「ふふっ、けっこう豊富でしょ。だけど、いくら最新式のモデルを使ってもトレーナーがダメだと効果は期待できないんだよ。」

 桜都が得意げにフンっと鼻を鳴らす。きっと、実家が経営している場所だから、自慢してるんだな。ツンツンしてるばかりだと思ったけど、可愛い所もあるんだなあ。
 
 「そうなんだ。適当に筋トレすれば良いんじゃないんだな。んー、だけど、トーレーナさんは何処にも居ないみたいだけど。」

 あれ?奥のマットレスに誰か寝ている。トレーナーさんかなあ。

 「トレーナーは僕だよ。って、何処に行くの?最後までちゃんと話を聞いてよ!」
 
 

 
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