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30話 小さき者の反乱③

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 部屋の中は重苦しい雰囲気が漂っていた。

 壁際には口を噤んだ幹部達が無表情で立ち並んでおり、明らかに異様な光景だった。しかし、僅かだがその表情には緊張と強ばりが隠されている。

 彼等が見守る先にいるのは、彼らのボスである悪魔のような狂人ーー鷹虎大雅

 ひとりソファーに腰掛けている大雅はタバコを吹かしながら、目を閉じていた。

 誰も何も喋らない。

 その異様な静粛さ故に緊張感が増す。

 まだ、何も話しかけられたわけでもないのに、まるで身体に重りでもつけられたかの様に身動きが取れない。

 すぐにでも逃げ帰りたいと思った。

 でも、後ろには厄介な二人組も控えているだろう。俺たちに退路はない。

 前も後ろも、、、クソっ、、袋のネズミじゃないか!

 無情にも時は待ってくれない。

 沈黙が解かれる瞬間がやってきた。

 「欲しいのは忠実な下僕で、誰にでも尻尾を振る駄犬じゃあねえんだがなぁ。テメェはどう思う、なあ健太?」

 ぐしゃりとタバコを握り潰した男は、その低く冷徹な声で俺を見据えた。その瞳に底冷えする様な怒気が込められているのがわかる。

 静かな空間で、その相手が自分だと言うことが物凄く恐ろしい。

 身体が動かない  

 声が出ない

 大雅の眼光に睨まれると、身体が竦んでしまうのは昔から、

 それでも、、

 このまま何も言えないのは嫌だ

 お前は、もう、俺の友達じゃないんだから、

 昔のように一緒になんていたくない!、
 
 俺には、もうお前以外にも友達がいる。チハルがいるんだ!赤星だって!

 自分を奮い立たせる。出ろ、、でろよ、、俺の声!!


 「・・れよ」

 「あ?聞こえねえなぁ」

 「っ・・何でも言うこと聞く奴が欲しいなら他を当たれよ。俺じゃなくてもいい筈だ。俺が何をしたって言うんだよっ!何もしていない、最近はお前にいつも従っているだろう!!?」

 「へえ、何もしてないねえ。」

 揶揄う様に、ニヒルな笑みを浮かべて俺見た後、その視線は俺の横にいるチハルを見据えた。

 その瞳には残虐さが滲み出ていた。悪魔は思案する様に顎に手を沿わせ、ふと良い事でも思い付いたかの様に口角が上がった。

 最近知ったこと

 この悪魔が愉しげに嗤う時は、相手をどう甚振るか、虐げるか思案するとき。

 やばい

 コイツ・・扉の前でのチハルとのやり取りを聞いていたんだ!

 嫌だ

 チハルにだけは手を出されたくない、、

 「威勢よく吼えるようになったな?まあ、少しくらい強情な方が躾がいもあるってもんだ。俺は寛容だからな、今回口答えした事は特別に許してやろう。だが、時間に遅れた物覚えの悪い下僕には罰が必要だろう、え?」

 ゾクっとするような低い声だった、、大雅を睨み返していた俺の目に数人の影が揺れ動いた。一瞬だった。「え、なに!?やめてよ!」チハルの叫ぶ声が聞こえた時にはもう遅かった。

 振り返って目に入ってきたのは、チハルが幹部らに捕らえられて両膝をつかされている姿だった。
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