この度、不良のボスの親衛隊隊長に任命されました。

むつみ

文字の大きさ
上 下
26 / 49

26話 親衛隊隊長の仕事⑥

しおりを挟む
 本来なら、まだ今は授業中のため生徒が廊下を彷徨くはずは無く、俺と遊佐の2人分の足音だけが静かな廊下に響く。

 コイツ、、見かけによらず歩くの速いな、、

 早足の遊佐になんとか追いつく。

「なあ、どこ行くの」

「昼食の護衛」

そう端的に言われてもあんまりピンとこない。

あ、でも確かチハルと購買に行った際に大雅達を取り囲んで食堂に向かう集団を見かけた気がする

俺もそれに加われと?

「お前が親衛隊隊長なんてまだ全く認めてないけど、鷹虎様直々の指名らしいから仕事はしてもらわなきゃね。・・跡まで付けてもらって本当憎らしいね。」

俺に対しての嫌悪感を隠すことなく言葉と表情全てで語ってくる。

その冷たい視線が俺の首元をなぞる

俺だって別に好き好んでこの立場にいるわけじゃないんだけど

「こっちは認めてもらわなくても良いから。寧ろその方がありがたいし。」

周りに誰もいないからか少し強気に出る俺

チキンだけど言われっぱなしは腹が立つ


「は!少し気に入られてるからって良い気になんないでくれる?なんの努力もせずにその位置にいられることに感謝もしないなんて。身の程知らずもいいところだよ。」

こっちは良い気になんて全くなってないし

感謝なんてするわけないだろ

良い迷惑してんだから

お互い睨みながらも速度だけは落とさずに足を進める

階段を登り切ったところで遊佐が止まった。

睨みつけるのに必死でどこに向かうのかちゃんと見ていなかった俺が悪いけど、、

嫌な所に来てしまった・・

奴等のプライベートルーム

扉の前で2回ほどノックをした遊佐がガチャリと扉を開けて中に入る

仕方なく俺も後に続く

部屋の中には3人が揃っていた。

生徒会長は携帯を見ながら何か操作してて、副会長はパソコンを弄っており、大雅は足を机の上に投げ出して偉そうに踏ん反り返って寝ている。

俺たちに気づいた副会長がパソコンを閉じ、やあ、と言って俺に優しげに微笑む。

「来てくれてありがとう。君を待っていました。」

うん、無理やりね。

「やっほ。健太君、遅かったんじゃない?もうお腹すいちゃった。」

生徒会長が俺を見て軽く手を振る

「すみません。稲垣隊長を迎えに行ったんですけど、なかなか素直に来てくれなくて、手間取りました。」

遊佐が申し訳なさげに頭を下げる。俺が悪いみたいに言うなよ。

てか、何その身の代わりよう。

高飛車さが消えて、しおらしくなってるんですけど。詐欺だろ、これ。

遊佐を睨みつけようと顔を上げると前に大きな影が現れた。

「遅え。」

いつの間にか起きて移動したらしい大雅が俺の前に立っている

思わず肩がビクッとする

「昼は走ってこい。じゃねえと今度はこっちを頂こうか?」

そう言って、俺の右手を持ち上げ小指を掴み上げる

そのまま奴の口元にもっていき

少し開いた口の隙間から精鋭な犬歯が見えた

ゾクっと身体が震えた。

今度は自身の小指が食いちぎられ血塗れになる想像をしてヒュっと喉の奥で悲鳴があがる

「ひっ、、や、やめてくれ!!」

腕を思いっきし振り回したら、思いの外すぐに小指は解放された。

けど、頸のこともあるし何処までが本気だったのか、、

本当に俺の小指まで噛むつもりだったのか・・

嗜虐的に俺を甚振る大雅はどこまで俺を苦しめたいのか、、。まだ残っている反抗心が、恐怖心が強くなると共に徐々に削り取られて行くーーー



プライベートルームを出た俺たちは、大雅を筆頭に食堂まで向かう。

その途中で大雅を囲うように不良たちがぞろぞろ集まって来て、いつか見た集団が出来上がっていた。

俺はそんな集団の中心にいて、周りはガチの不良ばかりだし怖くて萎縮する。

「すみませんっス。授業最後まで聞いてたら遅れましたっス。」

聞き慣れた声がしたと思ったら赤星が小走りで駆けてくるのが見えた。

集団に到着した赤星は貴志先輩に頭を下げ、他の不良先輩に軽く頭をコツかれていた。

「間に合わないと制裁対象になるから気をつけてねー。あ、君の場合はボス直々にお仕置きされちゃうかもよ?今朝みたいにさ。」

何が楽しいのか、ニヤリと怪しく笑いながら俺に注告する生徒会長。

その手は俺の頸をサラリと撫であげた。

「あーあ。綺麗な肌に所有印付けられちゃったねえ。可哀想に。」

「これ以上傷モノにされたくなけりゃ、ボスには逆らないことだね。甘ーく懐いてりゃ可愛がってくれるよ下僕ちゃん。」

猫撫で声で囁やかれゾクっとした

誰が懐くかこのヤロウ

人を見下す奴らに折れてたまるか

唇を噛み締めグッと睨みつける

「うんうん、その強気なところもいいよねえ。ボスが気にいる筈だよ。まあ、頑張って。」

ククっと笑い、手をひらひらさせて大雅の横に並んだ生徒会長

俺は両手を握りしめる

贖ってみせるさ

俺はこの高校で青春すると決めたんだ

こんな不良共に生活を侵されてたまるか

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!? ※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。 いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。 しかしまだ問題が残っていた。 その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。 果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか? また、恋の行方は如何に。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

年下くんに堕とされて。

bara
BL
イケメン後輩に堕とされるお話。 3話で本編完結です

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

処理中です...