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18week

2人目のガチダチに頼み込む!!

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『アボガトとオクトパスのガリシア風冷製パスタと、枝豆のビシソワーズランチBOX』なる。

 オシャンなランチを持ってきてくれたコンシェルジュに、充ー分に礼を伝えた僕は、そいつをかっ込んで、

「あ!タモツ?悪りー、今日はどこん店おる?いや、ちゃう。今日は接待と、ちがうくて、ちょっと『リリーメイプル』に顔連れてもらえん?ん、話早いわ!そ、探し人でさ。」

 かつてのホスト仲間タモツんとこに電話を入れて、すぐに車を走らせた。

「しっかし、あんなランチ!どこで頼むんだ?ヤバ、ランチBOXのネーム見ときゃ 良かったなーとか?」

 しかも急ぎすぎて、タモツに賄賂の手土産を調達するの忘れてた!!

 いかんせん、車をはしらせりゃ、この時間はすぐに着いちまう。

「!どーせ、こっちだろ。」

 僕は、まだ開店するには早いだろう店が入るビルの
 非常階段を上がる。

 タモツは、僕やキヨヒコと同僚というか同い年組。
 でも僕達みたいにヘルプで入るバイトじゃなく、ホストガチ勢の1人で、すぐにテッペンに登って店を任された男だ。

 自分の店持つことも出来るのに、あえての、 系列店任されオーナーをしてる。

「うし!タモツ!待たせた。」

 非常階段で、電子タバコを吸ってる長身に、どっか韓流貴公子っぽいイケ面。高っかそーなスーツのジャケットを手摺に掛けて、優雅に構えるタモツが僕の上から、

「2週間ぶりだな、アマネ。」

 お色気モノトーンボイスで片手を振る。

「悪り、悪り!ついでに、今週も店に顔だせそーにないわ。」

 僕も片手で謝りポーズをした。

 ここなら、やたら人が多いビル内でも内緒の話が出来る。なんせ、店ん中は防犯カメラもあるし、人の耳もある。

 こっちの階段は『タモツ専用』だから、反対側の階段と違って好都合に人がいない。

「で?もう行くか?『リリーメイプル』今なら同伴前  だうろし 客も空いてるだろ?」

 タモツは 早々タバコを消して、ジャケットを羽織ると、非常階段をリズムよく降りてくれっから、フットワーク軽ー。

「本っ当、たすかる!」

 当たり前だが、非常階段はビルの全てを裏で繋げるルートで、客から見えないスタッフの道だ。

 タモツはビル全体を持つオーナーから、入店テナント全てを任されていて、同じようなビルをあと2つ請け負っている。

「アマネワイフ、家出とは 思い切ったな。アマネのやり方は、結婚前から知っているんだろう?今更な気もするけどな。」

 僕とタモツ2人で、まだ明るい午後の人通りまばらな夜の街を歩く。

 お目当ての店は  この路面にアーケードを出しているショップだ。

「タイミングが悪りくった。家に帰れ寝かったり、写真、流れたりで。完全浮気男ぞ!」
     
 僕は、電話に残した例のヤシロ女史との画像をタモツに見せる。

「これ、やられたな。他に誰かいるショットだろ。この程度の写真ですんで、良かったな。」

 タモツは顎に親指をあてて、思案顔しつつ僕に忠告だ。

 そう、それこそ盛られてベッドじゃないだけ不幸中の幸い。でも、今はそれどこじゃない。

 女子受けするアーケードドアを潜って『リリーメイプル』へ。

 奥に長い店内をシャンデリア照明が可愛く、サロン風の店内には様々なヒラヒラドレスやらセクシードレスが並んでいる。

「リリーさん!ちょっとすんません。アマネっす!」

 僕が勢いよく奥に声を掛けると、すぐに背の低い、金髪の男が出てきた。

「あは、アマネ久しぶり~。今日はタモツとツルンデんの?まるで昔みたいね。キヨは?」

 ちょっとオネエしゃべりの男が、今代リリーメイプルの店長リリーさんだ。
 ちなみにスタッフは先代ご主人のワイフ=リリーさんのママだけ。

 女子スタッフは置かない主義の家族経営。

「ちょっと人を探しててさ、悪りいんだけど、この人、ここでドレス買ってんだけど、どこん店の子か、ちょーっと教えてくんないかなーって。」

 取り繕いとか無し!!
 単刀直入に聞くために、タモツを連れんだからな。

 ただ、タモツも僕の言葉にギョッとしてる。そりゃそーだ、僕の妻の画像をリリーさんに見せての、今のセリフなんだから。

 きっとタモツは、妻の彼氏を探してここに来たと思ってたんだよな?

「アマネ、、マジか。リリー、悪いな客のネタになるが。」

 タモツが察して口添えてくれる。

 夜の人脈網を使うには、タモツぐらいのヤツを出さないと、どこも無駄足になる。

「キツそうだけど凄い美人だから忘れてないよん。来たのは、1回だけだったけどぉ。『Q』の御姉様に連れられ。アマネも『Q』良く使うんじゃないの?」

 僕は顔を引きつらせて

「マジ?全然見たことない。」

 答えたけど、思いもしない場所だ。だって、僕が接待にマストな店!もし見つけてたら、こんな事になってないし!!

「『Q』?わざわざ、こっちまで服を調達にくるのか?こう言ってリリーさんに悪いが、向こうの島の方が合うだろ?」

 あわてふためく僕を他所に、タモツが気が付いた事をリリーさんに聞く。

 そう言われたらそうだ!

「レディは割りと臨機応変に服を選ぶからねぇ。まぁ、それだけじゃないのかなん?だってぇ、うち、通販もしてるけど、わざわざ、こっちに連れ回して服を宛がうなんてさぁ。ね?」

 リリーさんも含みのある言い回しでくるわけで。

「でもね、凄く品のあるつり目美人だから、あっちでも充分な服を紹介したよん。あの赤を着こなせる美人はそうそういないハズ~。」

 リリーさんが満足気に笑う。

「そうゆうことか。でも、かえってラッキーだったな
   アマネ。向こうじゃ、顔が効かない。探りは無理だった。」

 タモツもリリーさんに相づちを打つ。

 その通りだ。

 僕が慌てたのは、てっきり妻が居てたのは、町店だと思ったから。
 リリーメイプルのドレスでまさか座店とは思わない。

「アマネ、『Q』に行くぞ。こっちも気になってきたよ。まさか、『Q』で働いてたとか、ありえないだろ。」
       
 リリーさんに、今度埋め合わせるとタモツも僕も頭を下げて、その足で『Q』に向かう。

「タモツ、いいのか?店。まさかあっち行くとか想定外だった。」

 勿論、タモツが車で移動する間に、『Q』にナシをつけてくれている。アポ無しはありえんしね。

 昼過ぎとわいえ、タモツも店がある。

「気にするな、雇われでもグループ店主だ。問題ない。しかし、あっちも元黒服オーナーで良かった。ママオーナーは、ややこしいからな。」

 タモツは少し安堵の息をつく。そりゃそうだ。

 男性客を相手するクラブ店の経営は、殆どママが多い。
 ママ至上主義の園で、島違いのタモツや、客とは言え僕なんかではホステスの身バレネタなんて門前払い案件だ。

「『Q』んとこのママも確か、雇われママだよな。」

 ストリートのシンボル。時計のあるビルが見えてきた頃、僕はタモツに質問する。

「そうだ。もとNO1ホステス。その分、キャストにも自分の好みが出る。可愛がられればいいが。じゃなければな。」

 タモツが言い澱む。

 要するに僕の妻は、座店で服を調達させてない程度には、冷遇されていた可能性がある。

「本っ当、一体どーなってんだ。」
  
 思わず口に出た苛立ちが何かは解らず、僕は車を『Q』に近い馴染みのパーキングに入れて、手土産にミニカットした玉子サンドと、ヒレカツサンドを多めに買い込む。

 オーナーの元カリスマ黒服は島が違うとは言え、タモツもよく知る相手だ。

「陣中見舞いのサンドも持ったし!いざ!参りますかっ!!」
    
 なんつったって!
 僕の箱入り悪役お嬢様は、冷遇されるホステスとして働いていたらしいのは、決定したんだからな!!


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