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第三章
謎めいたダンジョン核
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無事に鍵を手に入れた僕達は祠に鎮座する石碑の鍵穴へと鍵をさす。とは言え鍵をさしたのは扉ではなく石碑である、鍵をさした事で石碑が動くのか? それとも何処かに扉が開くのか? と、ソワソワと見守っていたらブォンと何かが起動するような音と共に魔力の波のようなものが足元を流れていって、僕は思わず飛び退る。
「なに……」
「タケル、どうした?」
「足元から変な魔力の波動を感じます」
その魔力の波動は祠を中心にして円周に外側へと流れていく。それと共に石碑が発光し光の文字が石碑に刻まれていき、その文字は石碑をから地面へと広がっていく。
「おいおい、何だこれ?」
「恐らく石碑に鍵をさした事で仕掛けられていた魔法陣が起動しましたね、でも何故……」
「何故ってなんだよ! ってか、これ逃げなくていいのか!?」
「もう逃げられませんよ」
ルーファウスのそんな言葉と共に視界が一転真っ暗になった。衝撃はなかった、ただ先程まで見えていた景色が何も見えない、どこまでも続く闇が眼前に広がっている。
「ちょ……誰か!」
「お、その声はタケルか?」
程近い場所でアランの声がする。
「どうやら何処かへ飛ばされましたね、灯火」
ルーファウスが簡単な魔術を発動する時にやるパチンという指の音と共に、少し離れた場所にいたルーファウスの姿が浮かび上がる。
僕もルーファウスに倣うように指を鳴らすと指先には光が灯り辺りを照らす。光に浮かび上がるルーファウス、傍近くにアランが居たのでその姿は確認できたのだが、ロイドとオロチの姿が見えない。ちなみにライムはいつもの定位置に収まっている。
「ロイド君! オロチ!」
「タケル」
「わ!」
唐突に背後から声をかけられ僕は飛び上がった。
「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだ」
「うんん、こっちこそごめん、気付かなかった」
どうやらロイドは最初から僕の背後に立っていたようで、前ばかりを照らしていた僕はそれに気付かずにいただけだったようだ。
『おおい、主よ、こっちに何か扉があるぞ』
そんな時、何処か遠くからオロチの声が聞こえた。灯火はあまり広範囲を照らしてくれる照明ではないのでオロチの姿は全く見えないのだが、彼はこの暗闇でも周りが支障なく見えているのか扉があると僕に言う。
「ごめん、オロチ、何処? 扉って……」
僕がそこまで言いかけた時、視線の先に一筋の光が差した。皆の視線がそちらに向いて光の光源を探す。それは細く開いた扉の隙間、その扉の前にオロチは立って、どうやら扉を開けようとしているみたいだ。
「オロチ! そんなむやみに開けたら危ないよ! 何か罠があるかもしれない」
『あん? 別に罠などないだろう、ここが終着点だ』
そう言ってオロチが一気に扉を押し開く。途端に辺り一面光が広がり眩しさのあまり目が眩んで前が見えない。
「オロチ、終着点ってどういう事!?」
『どうもこうもない、ダンジョン核だ』
僕は眩しさを堪えて薄目で辺りを見回す。でも何で? もし僕達が48階層を攻略したというのなら、次は49階層のはずで、このダンジョン城の階層は50階層以上あるのではないかと言われていたのだから、最下層にあると言われるダンジョン核がここにあるのはどうにも計算が合わない。
けれどそこに僕が見たのは確かに大きな核だった。巨大な宝石のような石が発光しながら部屋の中央に浮かび上がりくるくると回っている。
「これが、ダンジョン核……?」
ダンジョン核の鎮座していた部屋は僕達が飛ばされた部屋とは真逆で真っ白な空間だった。ダンジョン核の発する光が強いのも勿論なのだが、壁も白いせいで余計に眩しく見える。
オロチはそんな真っ白な部屋へずんずんと入っていってしまい、姿が見えなくなった。
「ちょっと、オロチ! 勝手に行っちゃ駄目だってば!」
僕はオロチを追いかけるようにして、その部屋の扉の前に立つ。けれど、少し入るのには躊躇があって立ち止まったら「へぇ、これがダンジョン核か、本物は初めて見たな」とアランが僕の肩を抱くようにして部屋の中を覗き込んだ。
「タケルは下がってな、俺が先に行く」
「え、でも……」
「こういうのは一番頑丈な奴が先にいくもんだ」
確かに現在このメンバーの中ではアランが一番身体が頑丈なのは間違いない。けれど身体が頑丈だからと言って、攻撃を受けて傷付かない訳じゃない。そもそも魔法攻撃だった場合身体の頑丈さなんて意味がない場合だってあるのに。
「格好つける必要はありませんよ、アラン」
いつの間にかアランとは反対側に立っていたルーファウスがしゃがみ込んで床を撫でた。その床は壁と同じく真っ白なのだが、床全体に魔法陣が描かれ光を放っている。
「入った所で別段何も起きません」
「何でそんな事が言い切れる?」
「封じられてますからね、このダンジョン核」
ルーファウスはすっと立ち上がり無表情に部屋へと一歩踏み込む。瞬間、何かが起きるのではと、ドキッとしてしまった僕だけど、ルーファウスが足を踏み入れても、彼の言う通り特別部屋には何も起きなかった。
それにしてもダンジョン核が封じられているとはどういう事だ? このダンジョン城の核は破壊も封印もされておらず、ダンジョンがずっと成長を続けていて困っているという話だったのに、これでは話が違うではないか。
「そもそも最初から話がおかしいとは思っていたのです、ダンジョン核を封じる事の出来るかつての仲間が、何故かこのダンジョンには手出しをしていない。それどころか法外な値段を吹っかけて依頼を断っているだなんて、どう考えてもおかしい。確かにそんな事を言い出しそうな仲間も居ましたけれど、少なくとも数人は是が非でも各地のダンジョン核を拝みたいという研究者肌の方もおりましたし、そんな方々までこぞって依頼を蹴るだなんて正直腑に落ちないとは思っていたのです」
「ルーファウス、それはどういう意味だ?」
「そのままですよ、彼等は既にこのダンジョンの核が封じられている事を知っていた、もしくはこのダンジョンに手出しはするなと誰かに言われていた、か……」
「誰かにって誰に? それに冒険者ギルドのギルマスはそんな事全く知らなさそうだっただろう?」
ルーファウスは瞳を閉じ、腕を組んで考え込む。
「ギルドマスターはかつてこのダンジョンに挑んだことがあるのだそうですよ、その時に挑んだパーティで辿り着けたのが45階層まで、それ以降そこより下に潜った冒険者は居なかったそうなので、彼がダンジョンは成長を続けていると考えるのは当然でしょうね。そのダンジョン攻略から数十年、順当にダンジョンが育っていれば50階層以上あったとしても不思議ではありませんし、危機感を覚えるのも間違いではない」
「つまり?」
「ダンジョン核は人知れず何者かによって封じられていた、が、封じた人物はそれを誰にも告げず、あまつさえ仲間には口止めをしていた、か、何らかの圧力があった……? これはあくまで私の憶測ですけれど。ただ、何故そんな事をしなければならなかったのかまではさっぱりです」
「意味が分かりません」とルーファウスは肩をすくめる。
「それに気にはなっていたのですよ、48階層にあったあの島、やけに人工的な気配がしていましたよね。ダンジョン核の作り出すダンジョンというのはあくまで自然の中に出来るダンジョンで、そんなに複雑なものにはならない。それにも関わらず島の仕掛けには明らかに人の気配を感じましたのでね」
確かに洞窟内に誰かが描いた壁画や僕が導かれた部屋、祠の仕掛けにしてもそれは自然に生み出されたものではなく、誰かが意図的に残したとしか思えない。
僕はくるくると輝きながら回り続けるダンジョン核を見上げた。
「まぁ、でも、これで私はお役御免ですね。私への依頼はダンジョン核の封印でしたが、既にダンジョン核は封じられているのですから思いがけず楽な依頼になりました。あとはそちらの部屋に転移魔法陣を設置さえすれば、このダンジョン核も観光資源として利用されるようになるでしょう」
「ダンジョン核を観光資源って……」
「あのギルドマスターならするでしょう? なにせこの階層には魔物が出なさそうですし、商魂逞しい方ですから」
ああ、確かに、あの人ならやりそうだなと僕も思う。
「じゃあ、これでこのダンジョンは攻略したって事でいいのか?」
「まぁ、そうなりますね」
「あ~……少しばかり拍子抜けだな。てっきりもっと手強いダンジョンボスが現れるかもなんて思っていたのに」
「命のやり取りにロマンを求めるのは余所でやってください、私はごめんこうむります」
アランとルーファウスの淡々としたやり取り、命のやり取りなんて僕もごめんこうむりたいけど、僕個人の感想としてはやはりアランの気持ちに近いのだ。僕はそれでももう少し、このダンジョンには何かがあると思っていた。
『主よ、このダンジョン核は破壊しないのか?』
「うん、もう封印されてるみたいだからね」
『そうか、残念だな』
そう言ってオロチがダンジョン核を見上げた。
「オロチ、残念ってどういう意味?」
『ん? 破壊するのなら分け前を貰えるかと思っただけだ。ダンジョン核の魔力は上質だからな、取り込めば俺様の格も上がるかと思ったのだが』
「格が上がる……」
『人の言葉で言うならばレベルアップか? 我々魔物は魔力を取り込めば取り込むほど強くなるからな。主も見ただろう、リヴァイアサンを貪り食っていたスライムがスライムにあるまじき攻撃力をその身に備えているのもそういう事だ』
えっと、それはライムがリヴァイアサンを食べたから、いつも以上に強くなっているって事か? あの火力は杖のせいもあるかもしれないけど、それ以前にライムの攻撃力増幅スキルも上がってた?
でも待って、さっき、ライムは丸っと一匹分リヴァイアサン食べたよね……僕は慌ててローブの内ポケットからライムを取り出す。
『タケル、どうしたの?』
無邪気に伸び縮みを繰り返すライムを僕は鑑定してみる。するとそこには『ライム タケルの従魔で最古のスライムの一片、キングスライム』の文字が浮かび上がる。
「ライムちゃん、君はいつの間にキングスライムになってたの!?」
僕の掌の上のライムは少し考えるような素振りを見せて『ん~、分かんない!』と元気に答えてくれた。
「なに……」
「タケル、どうした?」
「足元から変な魔力の波動を感じます」
その魔力の波動は祠を中心にして円周に外側へと流れていく。それと共に石碑が発光し光の文字が石碑に刻まれていき、その文字は石碑をから地面へと広がっていく。
「おいおい、何だこれ?」
「恐らく石碑に鍵をさした事で仕掛けられていた魔法陣が起動しましたね、でも何故……」
「何故ってなんだよ! ってか、これ逃げなくていいのか!?」
「もう逃げられませんよ」
ルーファウスのそんな言葉と共に視界が一転真っ暗になった。衝撃はなかった、ただ先程まで見えていた景色が何も見えない、どこまでも続く闇が眼前に広がっている。
「ちょ……誰か!」
「お、その声はタケルか?」
程近い場所でアランの声がする。
「どうやら何処かへ飛ばされましたね、灯火」
ルーファウスが簡単な魔術を発動する時にやるパチンという指の音と共に、少し離れた場所にいたルーファウスの姿が浮かび上がる。
僕もルーファウスに倣うように指を鳴らすと指先には光が灯り辺りを照らす。光に浮かび上がるルーファウス、傍近くにアランが居たのでその姿は確認できたのだが、ロイドとオロチの姿が見えない。ちなみにライムはいつもの定位置に収まっている。
「ロイド君! オロチ!」
「タケル」
「わ!」
唐突に背後から声をかけられ僕は飛び上がった。
「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだ」
「うんん、こっちこそごめん、気付かなかった」
どうやらロイドは最初から僕の背後に立っていたようで、前ばかりを照らしていた僕はそれに気付かずにいただけだったようだ。
『おおい、主よ、こっちに何か扉があるぞ』
そんな時、何処か遠くからオロチの声が聞こえた。灯火はあまり広範囲を照らしてくれる照明ではないのでオロチの姿は全く見えないのだが、彼はこの暗闇でも周りが支障なく見えているのか扉があると僕に言う。
「ごめん、オロチ、何処? 扉って……」
僕がそこまで言いかけた時、視線の先に一筋の光が差した。皆の視線がそちらに向いて光の光源を探す。それは細く開いた扉の隙間、その扉の前にオロチは立って、どうやら扉を開けようとしているみたいだ。
「オロチ! そんなむやみに開けたら危ないよ! 何か罠があるかもしれない」
『あん? 別に罠などないだろう、ここが終着点だ』
そう言ってオロチが一気に扉を押し開く。途端に辺り一面光が広がり眩しさのあまり目が眩んで前が見えない。
「オロチ、終着点ってどういう事!?」
『どうもこうもない、ダンジョン核だ』
僕は眩しさを堪えて薄目で辺りを見回す。でも何で? もし僕達が48階層を攻略したというのなら、次は49階層のはずで、このダンジョン城の階層は50階層以上あるのではないかと言われていたのだから、最下層にあると言われるダンジョン核がここにあるのはどうにも計算が合わない。
けれどそこに僕が見たのは確かに大きな核だった。巨大な宝石のような石が発光しながら部屋の中央に浮かび上がりくるくると回っている。
「これが、ダンジョン核……?」
ダンジョン核の鎮座していた部屋は僕達が飛ばされた部屋とは真逆で真っ白な空間だった。ダンジョン核の発する光が強いのも勿論なのだが、壁も白いせいで余計に眩しく見える。
オロチはそんな真っ白な部屋へずんずんと入っていってしまい、姿が見えなくなった。
「ちょっと、オロチ! 勝手に行っちゃ駄目だってば!」
僕はオロチを追いかけるようにして、その部屋の扉の前に立つ。けれど、少し入るのには躊躇があって立ち止まったら「へぇ、これがダンジョン核か、本物は初めて見たな」とアランが僕の肩を抱くようにして部屋の中を覗き込んだ。
「タケルは下がってな、俺が先に行く」
「え、でも……」
「こういうのは一番頑丈な奴が先にいくもんだ」
確かに現在このメンバーの中ではアランが一番身体が頑丈なのは間違いない。けれど身体が頑丈だからと言って、攻撃を受けて傷付かない訳じゃない。そもそも魔法攻撃だった場合身体の頑丈さなんて意味がない場合だってあるのに。
「格好つける必要はありませんよ、アラン」
いつの間にかアランとは反対側に立っていたルーファウスがしゃがみ込んで床を撫でた。その床は壁と同じく真っ白なのだが、床全体に魔法陣が描かれ光を放っている。
「入った所で別段何も起きません」
「何でそんな事が言い切れる?」
「封じられてますからね、このダンジョン核」
ルーファウスはすっと立ち上がり無表情に部屋へと一歩踏み込む。瞬間、何かが起きるのではと、ドキッとしてしまった僕だけど、ルーファウスが足を踏み入れても、彼の言う通り特別部屋には何も起きなかった。
それにしてもダンジョン核が封じられているとはどういう事だ? このダンジョン城の核は破壊も封印もされておらず、ダンジョンがずっと成長を続けていて困っているという話だったのに、これでは話が違うではないか。
「そもそも最初から話がおかしいとは思っていたのです、ダンジョン核を封じる事の出来るかつての仲間が、何故かこのダンジョンには手出しをしていない。それどころか法外な値段を吹っかけて依頼を断っているだなんて、どう考えてもおかしい。確かにそんな事を言い出しそうな仲間も居ましたけれど、少なくとも数人は是が非でも各地のダンジョン核を拝みたいという研究者肌の方もおりましたし、そんな方々までこぞって依頼を蹴るだなんて正直腑に落ちないとは思っていたのです」
「ルーファウス、それはどういう意味だ?」
「そのままですよ、彼等は既にこのダンジョンの核が封じられている事を知っていた、もしくはこのダンジョンに手出しはするなと誰かに言われていた、か……」
「誰かにって誰に? それに冒険者ギルドのギルマスはそんな事全く知らなさそうだっただろう?」
ルーファウスは瞳を閉じ、腕を組んで考え込む。
「ギルドマスターはかつてこのダンジョンに挑んだことがあるのだそうですよ、その時に挑んだパーティで辿り着けたのが45階層まで、それ以降そこより下に潜った冒険者は居なかったそうなので、彼がダンジョンは成長を続けていると考えるのは当然でしょうね。そのダンジョン攻略から数十年、順当にダンジョンが育っていれば50階層以上あったとしても不思議ではありませんし、危機感を覚えるのも間違いではない」
「つまり?」
「ダンジョン核は人知れず何者かによって封じられていた、が、封じた人物はそれを誰にも告げず、あまつさえ仲間には口止めをしていた、か、何らかの圧力があった……? これはあくまで私の憶測ですけれど。ただ、何故そんな事をしなければならなかったのかまではさっぱりです」
「意味が分かりません」とルーファウスは肩をすくめる。
「それに気にはなっていたのですよ、48階層にあったあの島、やけに人工的な気配がしていましたよね。ダンジョン核の作り出すダンジョンというのはあくまで自然の中に出来るダンジョンで、そんなに複雑なものにはならない。それにも関わらず島の仕掛けには明らかに人の気配を感じましたのでね」
確かに洞窟内に誰かが描いた壁画や僕が導かれた部屋、祠の仕掛けにしてもそれは自然に生み出されたものではなく、誰かが意図的に残したとしか思えない。
僕はくるくると輝きながら回り続けるダンジョン核を見上げた。
「まぁ、でも、これで私はお役御免ですね。私への依頼はダンジョン核の封印でしたが、既にダンジョン核は封じられているのですから思いがけず楽な依頼になりました。あとはそちらの部屋に転移魔法陣を設置さえすれば、このダンジョン核も観光資源として利用されるようになるでしょう」
「ダンジョン核を観光資源って……」
「あのギルドマスターならするでしょう? なにせこの階層には魔物が出なさそうですし、商魂逞しい方ですから」
ああ、確かに、あの人ならやりそうだなと僕も思う。
「じゃあ、これでこのダンジョンは攻略したって事でいいのか?」
「まぁ、そうなりますね」
「あ~……少しばかり拍子抜けだな。てっきりもっと手強いダンジョンボスが現れるかもなんて思っていたのに」
「命のやり取りにロマンを求めるのは余所でやってください、私はごめんこうむります」
アランとルーファウスの淡々としたやり取り、命のやり取りなんて僕もごめんこうむりたいけど、僕個人の感想としてはやはりアランの気持ちに近いのだ。僕はそれでももう少し、このダンジョンには何かがあると思っていた。
『主よ、このダンジョン核は破壊しないのか?』
「うん、もう封印されてるみたいだからね」
『そうか、残念だな』
そう言ってオロチがダンジョン核を見上げた。
「オロチ、残念ってどういう意味?」
『ん? 破壊するのなら分け前を貰えるかと思っただけだ。ダンジョン核の魔力は上質だからな、取り込めば俺様の格も上がるかと思ったのだが』
「格が上がる……」
『人の言葉で言うならばレベルアップか? 我々魔物は魔力を取り込めば取り込むほど強くなるからな。主も見ただろう、リヴァイアサンを貪り食っていたスライムがスライムにあるまじき攻撃力をその身に備えているのもそういう事だ』
えっと、それはライムがリヴァイアサンを食べたから、いつも以上に強くなっているって事か? あの火力は杖のせいもあるかもしれないけど、それ以前にライムの攻撃力増幅スキルも上がってた?
でも待って、さっき、ライムは丸っと一匹分リヴァイアサン食べたよね……僕は慌ててローブの内ポケットからライムを取り出す。
『タケル、どうしたの?』
無邪気に伸び縮みを繰り返すライムを僕は鑑定してみる。するとそこには『ライム タケルの従魔で最古のスライムの一片、キングスライム』の文字が浮かび上がる。
「ライムちゃん、君はいつの間にキングスライムになってたの!?」
僕の掌の上のライムは少し考えるような素振りを見せて『ん~、分かんない!』と元気に答えてくれた。
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