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第三章
ドラゴン素材ってお高いんですね
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「その鍵は貴方専用の鍵になります、この鍵単体では扉は開きません、貴方を認証する事で鍵は初めて鍵の役割を果たします。貴方はこれで自由にあちらへと行き来する事ができるようになりましたのでドラゴンに限らず希少な魔物を見付けたら向こう側に保護をお願いします。扉自体に生体認証確認の魔術がかかっておりますので、この扉を通して魔物を保護していただければ魔物のランクに応じて活動費が振り込まれる仕組みになっております。活動費のお引き出しは各地の従魔師ギルドでそのカードを提示していただければどこででも払い戻し可能です」
「は、はぁ……」
何というハイテク! こんな便利な鍵とカード、僕が貰っちゃって良いのだろうか? これ絶対かなり高価な魔道具だろ? しかもこの扉の向こう側には冒険者たちがこぞって手に入れたいと思うような特殊な個体もいそうなのに。
『主よ、便利な物を貰ったな』
不意にかかったそんな声に振り返るとまだ眠そうなオロチが寝そべったまま、僕を見ている。
『それさえあれば今後俺の寝床には困るまい。俺もずっとこの姿でいるのは骨が折れるしな』
確かに! 今は亜人の姿なのでこの家に収まっていられるオロチだが、本来の姿は巨体のドラゴン、亜人の姿は仮の姿な訳だし肩身の狭い思いをさせてしまう事もあるだろう、そう思えば向こうに自由に行き来できるのはとても助かる。
『さっそくだが、ここはうるさくて叶わない、俺は帰って自分の寝床で寝るとしよう』
「え、ちょっと! 帰っちゃうの!?」
『こんな便利な道具を手に入れたのだ、必要な時だけ呼べばいいだろう? 主にはこれを預けておく』
オロチに手渡されたのは不思議な形をした骨のようなもので、所々に穴が開いている。
「これは?」
『俺を呼ぶ龍笛だ』
「龍笛、って事は笛?」
『ああ、それを吹いて呼べば来てやる』
そう言って彼はのそのそと扉の中へと足を向けたのだが、何かを思い出したようにふと立ち止まった。
『そういえば、先程そこの奴等が俺の鱗が欲しいなどと言っていたな、剥いでくれてやるのはごめんこうむるが、勝手に剥がれたものに関してはくれてやらん事もない』
「え、いいの?」
『その代わりと言っては何だが、見返りに酒を所望すると伝えておけ』
そう言ってオロチは大きなあくびをすると扉の向こうへ言ってしまい、扉の向こうで変化を解くと、大きな翼を広げて何処かへ行ってしまった。何と言うか自由気ままだな。
それにしても見返りに酒って、どれだけ酒にハマってるんだかと僕は呆れてしまう。
「あのドラゴンは何処へ?」
「寝床で寝るって帰ってしまいました、僕が呼べば来てくれるみたいで、笛を置いて行きました」
そう言って僕がその骨のようにしか見えない真っ白な笛を見せると、職員さん達はまたしても観察するようにその笛を上から下から眺め回す。やっぱりこれも珍しい物なのだろうな。
「あと、さっき言ってた鱗の件なんですけど、勝手に剝がれたものなら譲ってもいいって言ってましたよ、ただその代わりにお酒が欲しいとも言ってましたけど」
「お酒! それはどのくらいの量をご所望ですか!? 樽ですか!? 樽ですよね! 早急に手配を、100樽もあれば足りますか!?」
ええ……めっちゃ食いついてきた~しかも100樽とか桁がおかしくないか?
「いえ、さすがにそんなにたくさんは、置き場所もないですし……」
「何を仰いますか! ドラゴンの鱗なんて白金貨を積まれてもなかなか手に入れる事のできない超希少品ですよ! 酒100樽でそれが手に入るのなら安いものです!」
「そ、そんなものなんですか?」
「ドラゴンの鱗は加工すれば強力な武器や防具にもなりますし、その加工の過程で出た削りカスですら薬になる万能素材なんですよ、酒100樽程度では割に合わない」
戸惑う僕にこそっと耳打ちをしてくるルーファウス、でもさ、無理やり剥がした鱗じゃなくて自然に剥がれた鱗だよ? 言ってしまえばただの廃棄物だよ? それなのにそんな扱いでいいの??
「えっと、詳しい取引内容はまた本人がいる時にしましょう、僕も色々勉強不足みたいなので」
何となく言葉を濁した僕だけど、職員さんのテンションは爆上がりで「さっそく酒の調達を!」と指示をする職員さんに駆けて行く職員さん。ドラゴン素材ってそんなに希少品なんだね……まぁ、数自体が少ないのだから当然と言えば当然か。
「いやあ、これは従魔師ギルド創立以来初めての快挙ですよ、ドラゴンとこのような友好が結べるようになるなんて、こんな有能な人材がこの街に暮らしていたとは本当に灯台下暗しです。これからは従魔師ギルドをホームだと思っていつでも遊びに来てくださいね!」
「え、あ、はい、分かりました。……あ、そういえば職員さんのお名前聞いてませんでしたね」
昨日から散々お世話になっておきながら今更感が半端ないのだが、何となく聞きそびれていたのだから仕方がない。
「あ、私、従魔師ギルド、メイズ支部長のルマンドと申します!」
ルマンド……なんという美味しそうな名前。思い出したら食べたくなるじゃないか。
「そしてこちらが私の部下達です。君のドラゴンの話をしたら支部長ばかりズルい、自分達もドラゴンが見たいとついて来てしまいまして、はは」
なるほど、それで早朝からこの人数なのか、納得。
「従魔師ギルドでは支部長自ら受付に立っていらっしゃるのですね」
「言っては何ですが従魔師ギルドはギルドの中でも弱小の部類に入るギルドなので致し方ありません。冒険者ギルドや商人ギルドのように人材豊富でもありませんし、人を雇おうにも魔物を扱う仕事で危険も伴う、保護している魔物の餌代だって馬鹿にはならないので給金もあまり高くはありませんし……ですが、もしこれで定期的にドラゴンの鱗が手に入るとなればギルドとしてもかなりの収入増を期待できます!」
あ、ここでもやっぱりお金かぁ、誰だって生きてくためにはお金が必要だからな、こればかりは仕方がない。冒険者ギルドのギルドマスターみたいに魔物の直接取引を持ち掛けられないだけ良心的だと思いたい。
「あ、でも言っておきますけど、今のところ僕とオロチの従魔契約は一年だけですからね」
「それは承知しております。ですが君はドラゴンと普通に会話ができるのですから、これからも何かしらの機会はあると期待しております!」
うわぁ、期待が重い……でもまぁ、僕はこれからも僕ができる事を頑張るしかないな、うん。
「は、はぁ……」
何というハイテク! こんな便利な鍵とカード、僕が貰っちゃって良いのだろうか? これ絶対かなり高価な魔道具だろ? しかもこの扉の向こう側には冒険者たちがこぞって手に入れたいと思うような特殊な個体もいそうなのに。
『主よ、便利な物を貰ったな』
不意にかかったそんな声に振り返るとまだ眠そうなオロチが寝そべったまま、僕を見ている。
『それさえあれば今後俺の寝床には困るまい。俺もずっとこの姿でいるのは骨が折れるしな』
確かに! 今は亜人の姿なのでこの家に収まっていられるオロチだが、本来の姿は巨体のドラゴン、亜人の姿は仮の姿な訳だし肩身の狭い思いをさせてしまう事もあるだろう、そう思えば向こうに自由に行き来できるのはとても助かる。
『さっそくだが、ここはうるさくて叶わない、俺は帰って自分の寝床で寝るとしよう』
「え、ちょっと! 帰っちゃうの!?」
『こんな便利な道具を手に入れたのだ、必要な時だけ呼べばいいだろう? 主にはこれを預けておく』
オロチに手渡されたのは不思議な形をした骨のようなもので、所々に穴が開いている。
「これは?」
『俺を呼ぶ龍笛だ』
「龍笛、って事は笛?」
『ああ、それを吹いて呼べば来てやる』
そう言って彼はのそのそと扉の中へと足を向けたのだが、何かを思い出したようにふと立ち止まった。
『そういえば、先程そこの奴等が俺の鱗が欲しいなどと言っていたな、剥いでくれてやるのはごめんこうむるが、勝手に剥がれたものに関してはくれてやらん事もない』
「え、いいの?」
『その代わりと言っては何だが、見返りに酒を所望すると伝えておけ』
そう言ってオロチは大きなあくびをすると扉の向こうへ言ってしまい、扉の向こうで変化を解くと、大きな翼を広げて何処かへ行ってしまった。何と言うか自由気ままだな。
それにしても見返りに酒って、どれだけ酒にハマってるんだかと僕は呆れてしまう。
「あのドラゴンは何処へ?」
「寝床で寝るって帰ってしまいました、僕が呼べば来てくれるみたいで、笛を置いて行きました」
そう言って僕がその骨のようにしか見えない真っ白な笛を見せると、職員さん達はまたしても観察するようにその笛を上から下から眺め回す。やっぱりこれも珍しい物なのだろうな。
「あと、さっき言ってた鱗の件なんですけど、勝手に剝がれたものなら譲ってもいいって言ってましたよ、ただその代わりにお酒が欲しいとも言ってましたけど」
「お酒! それはどのくらいの量をご所望ですか!? 樽ですか!? 樽ですよね! 早急に手配を、100樽もあれば足りますか!?」
ええ……めっちゃ食いついてきた~しかも100樽とか桁がおかしくないか?
「いえ、さすがにそんなにたくさんは、置き場所もないですし……」
「何を仰いますか! ドラゴンの鱗なんて白金貨を積まれてもなかなか手に入れる事のできない超希少品ですよ! 酒100樽でそれが手に入るのなら安いものです!」
「そ、そんなものなんですか?」
「ドラゴンの鱗は加工すれば強力な武器や防具にもなりますし、その加工の過程で出た削りカスですら薬になる万能素材なんですよ、酒100樽程度では割に合わない」
戸惑う僕にこそっと耳打ちをしてくるルーファウス、でもさ、無理やり剥がした鱗じゃなくて自然に剥がれた鱗だよ? 言ってしまえばただの廃棄物だよ? それなのにそんな扱いでいいの??
「えっと、詳しい取引内容はまた本人がいる時にしましょう、僕も色々勉強不足みたいなので」
何となく言葉を濁した僕だけど、職員さんのテンションは爆上がりで「さっそく酒の調達を!」と指示をする職員さんに駆けて行く職員さん。ドラゴン素材ってそんなに希少品なんだね……まぁ、数自体が少ないのだから当然と言えば当然か。
「いやあ、これは従魔師ギルド創立以来初めての快挙ですよ、ドラゴンとこのような友好が結べるようになるなんて、こんな有能な人材がこの街に暮らしていたとは本当に灯台下暗しです。これからは従魔師ギルドをホームだと思っていつでも遊びに来てくださいね!」
「え、あ、はい、分かりました。……あ、そういえば職員さんのお名前聞いてませんでしたね」
昨日から散々お世話になっておきながら今更感が半端ないのだが、何となく聞きそびれていたのだから仕方がない。
「あ、私、従魔師ギルド、メイズ支部長のルマンドと申します!」
ルマンド……なんという美味しそうな名前。思い出したら食べたくなるじゃないか。
「そしてこちらが私の部下達です。君のドラゴンの話をしたら支部長ばかりズルい、自分達もドラゴンが見たいとついて来てしまいまして、はは」
なるほど、それで早朝からこの人数なのか、納得。
「従魔師ギルドでは支部長自ら受付に立っていらっしゃるのですね」
「言っては何ですが従魔師ギルドはギルドの中でも弱小の部類に入るギルドなので致し方ありません。冒険者ギルドや商人ギルドのように人材豊富でもありませんし、人を雇おうにも魔物を扱う仕事で危険も伴う、保護している魔物の餌代だって馬鹿にはならないので給金もあまり高くはありませんし……ですが、もしこれで定期的にドラゴンの鱗が手に入るとなればギルドとしてもかなりの収入増を期待できます!」
あ、ここでもやっぱりお金かぁ、誰だって生きてくためにはお金が必要だからな、こればかりは仕方がない。冒険者ギルドのギルドマスターみたいに魔物の直接取引を持ち掛けられないだけ良心的だと思いたい。
「あ、でも言っておきますけど、今のところ僕とオロチの従魔契約は一年だけですからね」
「それは承知しております。ですが君はドラゴンと普通に会話ができるのですから、これからも何かしらの機会はあると期待しております!」
うわぁ、期待が重い……でもまぁ、僕はこれからも僕ができる事を頑張るしかないな、うん。
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