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第三章

改めましての自己紹介

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「という訳で、改めまして僕の新しい従魔のオロチ君です!」

 家に戻った僕達は晩御飯を食べながら親睦を深めつつ改めて自己紹介のやり直しだ。

「それでこっちが僕の魔術のお師匠のルーファウス、向こうが格闘家のアラン、それでこっちが剣士のロイド君、あとは僕の従魔でスライムのライム」

 僕がオロチと皆の間に立って一通りの紹介を済ませると、アランはにっと笑みを見せて「よろしくな、オロチ」と片手を差し出した。
 けれどオロチはその手を一瞥するだけで無言でふいっとそっぽを向いた。

「オロチ、そういう態度は相手に対して失礼だよ」
『俺はお前の従魔にはなったがお前等と馴れ合うつもりはない』

 えええ……

『俺の力が必要だというから俺はお前に着いてきた、だったらお前は俺に仕事をさせればいい。俺に乗ってどこか遠くへ行きたかったのだろう? だったらすぐに案内しろ、何処へなりと連れて行ってやる』
「そんな今日こっちにきたばっかりでそんなすぐに働こうとしなくても……」
『俺達の契約はそういう契約だろう? 俺との契約には一年という縛りもある、時間を無駄にして後悔するのはお前の方だぞ』

 困惑顔の僕にオロチの言葉を理解できないアランが「なんて言ってるんだ?」と小首を傾げる。

「自分を働かせる気ならさっさと働かせろ何処へでも連れて行ってやる、だそうです」
「なんだそりゃあ、とんだワーカホリックだな。飼い主にそっくりだ」

 え……

「タケルも少し働きすぎなきらいがあるが、やっぱり気の合う従魔は飼い主に似るもんなのか?」
『お前は一体何を言っている? 俺は別にこいつと気が合って従魔になった訳じゃない、じじいに言われたから仕方なく……』
「なぁ、タケル、こいつ酒は飲めるのか?」

 オロチの言葉はどうやってもアランには届かないのでオロチの言葉は完全無視で楽し気な様子のアランは僕に問う。

「えっと、オロチはお酒が飲めるの?」
『じじいは旨いって言っていたのを聞いた事はあるが飲んだ事はないな、果物なんかが自然発酵してできた物をひと舐めした事はあるが量が少なくてまったく腹の足しにならなかった』

 ああ、そういえば彼はあの魔物の楽園で生まれ育っているはずだから人工物であるお酒は口にした事がないのか。確かに自然界で偶然できるお酒なんて彼の体格から考えれば微々たるものだ、ひと舐めではさほど美味さを感じる事もなかったのかもな。

「彼、お酒は飲んだ事ないみたいです」
「そうか、飲ませても大丈夫そうか? やっぱり魔物に酒はまずいか?」
「彼のおじいさんは飲んでたみたいなんで、飲めない事はないかと」

 僕の返答にアランは瞳を輝かせて、オロチの肩に腕を回して即座にオロチにグラスを渡すとそのグラスの中に酒を満たす。

「仲良くなるにはまず酒だ、ここは思い切ってぐっといけ」
「ちょ……アラン!?」

 オロチはグラスに注がれた薄い琥珀色の酒を警戒するようにして鼻を寄せる。けれど不快な臭いではなかったようで、ちらりとこちらを見やって『これは毒ではないんだな?』と念押しするように僕に問う。

「毒ではないけど、大丈夫? それお酒だよ?」
『じじいが酒は万病に効く薬だと言っていた事がある、問題はないだろう』

 そう言ってオロチはぐっと一気にグラスの中身を煽る。ってか一気飲み!? アルコール初心者がその飲み方はさすがにマズいと僕が青褪めると、酒を一気に飲み干したオロチがぱあぁと表情を輝かせた。

『なんだこれ、美味いな! まだあるのか?』

 そんなオロチの様子に気付いたアランはにっと笑みを零して、間髪入れずに空になったグラスにお代わりを注ぎ入れる。

「お前、実は結構いける口だろ、ほれほれ遠慮せずに飲め飲め」
「ちょっと、アラン! オロチは今日初めて飲むんだから飲ませ過ぎたらダメだよ! 倒れたりしたらどうするんですか!」
『俺は全く平気だぞ』

 そう言ってオロチはけろりとした表情で二杯目もいともたやすく飲み干してしまう。

「え、本当に大丈夫? 気持ち悪くなったりしてない? お水いる?」
『こんなに美味い飲み物があるのに何故水を飲む必要がある? それよりもせっかくだからこれに合う飯が食いたいところだな』

 オロチは完全な蟒蛇うわばみか!? ってかそう言えばヤマタノオロチって元々大酒飲みだったはず。名は体を表すなんて、まさかそんな事あったりしないよね?

「いやぁ、うちのパーティーメンバーはほとんど酒を飲まないから、あんたが俺と飲んでくれるなら俺はとても嬉しいぜ。これから仲よくしような、兄弟」

 そう言ってアランはなおもオロチのグラスに酒を注ぐ。確かにルーファウスはお酒を控えているし、僕とロイドはまだ飲酒可能年齢に達していないのでアランは最近一人酒のことが多かったんだよな。
 この世界の飲酒可能年齢は18歳、シュルクの街のシェアハウスでは皆普通に飲んでいたので、もしかしたらそういう規制はないのかも? なんて思っていたのだけどそんな事はなかった。
 晩酌くらいは付き合ってもいいのだけど、アランは一緒に飲める仲間が欲しかったのかもしれないな。

「おっと、酒ばかりってのも失礼だったな。酒と一緒に食うならこいつを食え! タケルの作る料理はどれも絶品だぞ!」

 そう言ってアランは僕が酒のつまみにと作った甘辛く煮たコカトリスの手羽先を差し出す。

『お、これは美味いな! あるじがこれを作るのか?』
「え、うん。料理は僕の担当だから」
「美味い飯と美味い酒、そして新しい仲間だなんて最高だな!」
『仲間云々は抜きにして美味い酒と美味い飯は同意だな』

 会話ができないはずの二人が成立しているのかいないのか分からない会話で酒と料理を減らしていく。ってかオロチの方はアランの言葉を理解しているから意外と意思の疎通ははかりやすいのかも?
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