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第二章

ロイドの試験

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「うわぁ、天井高~い」

 僕が闘技場の上を見上げてそう言うと「これもダンジョンの特徴なのですが、ダンジョンの中は特別な異空間と繋がっていて、見た目以上に広いのです」とルーファウスが教えてくれた。
 確かにこの部屋の天井は見上げる程に高いのだが、全ての階層がこの高さだとしたら現在地中何千メートル潜っているかも分からない、それが50階層ともなれば大変な事になってしまうけれど、それぞれの階層が異空間と繋がっていると考えれば、この広さにも階層ごとに環境が変わるという話にも納得がいく。
 魔法がまかり通るこの世界では、やはり僕の常識では考えつかない現象だって常識としてまかり通るのだ。
 闘技場の中にはご丁寧に観覧席まで用意されていて、僕達はロイドをその場に残して観覧席の方へと移動する。観覧席の前面には透明な魔法防御壁が張られていて、安全対策もばっちりだ。
 しばらくすると僕達の入ってきた扉が大きな音を立てて閉まる。それが合図だったのかのように闘技場の真ん中の空間がぐにゃりと歪んで、そこから屍人グール5体と骸骨騎士スケルトンナイトが現れた。
 屍人は言ってしまえばゾンビのような感じで、腐った身体から毒をまき散らし攻撃を仕掛けてくる。一方で骸骨騎士は相手の出方を観察しているのかまだ動かない。
 屍人と対峙したロイドが剣を横に振ると剣先から僅かに炎が上がった。

「あれ……」
「ああ、魔法剣ってやつだ。剣士とアンデッドは実は相性があまりよくない、なにせアンデッドってのは斬っても斬っても復活しやがるからな。まぁ、それでも燃やしちまえばこっちのもので、覚えておいて良かったなって感じだ。あいつは魔力量は俺とどっこいだが、タケルを見ているせいか魔力の扱い方は悪くない」
「そうですかねぇ、あんな無駄の多い魔力の使い方をしていたらそのうち魔力切れでぶっ倒れますよ」

 アランがロイドを褒める傍ら、相変らずルーファウスはロイドに辛辣だ。

「そう思うならお前があいつに魔力の扱いを教えてやれよ、得意分野だろうが」
「敵に塩はおくりません」
「あ?」
「他人から技術を盗むのも学びのひとつですし、魔力の扱いは教えてできる事でもありません。そこは身体に叩き込むしかないので、私が口出しするような事ではありません」
「ホント、お前はタケル以外には冷たいよな」

 アランが大きく溜息を吐いたところで、ロイドは屍人の最後の一体を斬りふせる。ずいぶん息が上がっているように見えるし、剣が纏う炎も大きくなったり小さくなったりと安定していない。
 恐らく魔法剣というのは剣に魔力を通して術を発動させる攻撃なのだろう。物理ダメージと魔法ダメージを両方同時に敵に与えられるが、使い手の消耗も激しそうだ。

「あと一体だよ、ロイド君、がんばれー!!」

 思わず僕が声を上げると「おう!」と返事が返ってきて、ロイドはそのまま骸骨騎士へと突っ込んでいく。骸骨騎士の体格はアランと同程度で僅かに浮遊しているせいか屍人に比べて動きが素早い。
 騎士と名がつくだけあって骸骨騎士の持っている武器は剣で、しばらくは二人の鍔迫り合いが続く。体格で劣るロイドがじりっと押し負けそうになったところで、剣の纏う炎が大きく膨らんだ。鍔迫り合いから一歩下がって、骸骨騎士が怯んだ刹那踏み込んだロイド。

「こんなとこで、負けてられっかぁぁ! 炎斬撃フレイムスラッシュ!!」

 大きな叫びと共に大きく膨らんだ炎の刃が骸骨騎士を縦に切り裂く、辺りに響く断末魔。それとと共に骸骨騎士は塵となって消えていった。

「やったぁ! ロイド君!!」
「はは、疲れたぁぁ」

 気が抜けたのかロイドがその場にしゃがみ込むと、大きな音を立てて最初に僕達が入ってきた入り口とは反対側にあった扉が開く。戦闘が終わると開く仕組みなんだな。僕たちと共に戦闘を観戦していたスラッパーが「お見事です」と拍手をしながらロイドへと歩み寄る。

「大変優秀なお子さんで今後の活躍が楽しみですね。こちら討伐証明書です」

 スラッパーがロイドに手渡したのは賞状のようなもので、そこにはダンジョン城で屍人と骸骨騎士を倒した事を証明する旨が記載され、スラッパーの署名捺印が押されていた。
 おおお、これでロイドはEランク昇格だ。僕も頑張らなきゃだな。


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