童貞のまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話

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閑話:少年ロイドの青い春

お前の為なんかじゃないんだからな!

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 試験を終えて家に帰ると母親に「試験はどうだった?」と聞かれたのだが、あんなちびっ子に評価で負けた悔しさで俺はすぐに部屋へと籠った。
 俺は別段特別優秀な訳ではない、けれどそれでも同世代の中ではそこそこできる自信があった。なのに、なんだよ、あいつマジムカつく!
 俺は悔しさに居ても立ってもいられず自室を飛び出して両親に宣言する。

「父さん、母さん、俺、明日から依頼受けてどんどんランクあげるつもりだから!」
「え、お前試験落ちたんじゃ……」
「そんな事一言も言ってねぇ!」

 こんな一方的に負けっぱなしでいられるかってんだ。冒険者ってのは子供の遊びとは違うんだ。これは仕事、どんどん依頼を受けて絶対あいつを見返してやるんだからな!
 翌日から俺は冒険者ギルドに通い続けた、母は喜んだが、父は少し渋い顔、だけどそんな事は知った事じゃない! 何故なら俺のライバルであるタケルも早々から依頼を受けていたからだ。
 冒険者の資格を得るだけで依頼をろくろく受けずにその資格だけを見せびらかせる輩がいる中で、タケルは翌日から直ぐに依頼を受けにきていた。
 負けていられるかとばかりに俺も勿論依頼を受ける。初めての依頼はスライム討伐、こんなの楽勝だからな!
 一方でタケルは同じ場所でせっせと草を摘んでいる。採取の仕事は討伐依頼のついでにやるもんじゃねぇのかよ? まぁ、冒険者と言っても所詮ちびっ子の小遣い稼ぎ程度の気持ちなんだろうな。しかも毎日保護者付き。
 ってか、なんで毎日白銀の魔術師ルーファウスと疾風のアランを連れ歩いてんだ? あの人達Aランク冒険者とBランク冒険者だろう? 護衛か? 護衛なのか? あいつはどこぞの金持ちのボンボンか? Aランク冒険者を雇えるなんて余程実家が裕福なんだろうな。ムカつく。
 暇を見付けては喧嘩を売りに行ってみても全然のってきやがらないし、軽く受け流されて更にムカつく。高ランク冒険者の二人は俺に何も言ってこないけど、俺が何かを言った後は呆れたようにこちらを見ている。ホント腹立つ!
 俺だって本当は二人と喋りたい、なのにあいつがいっつも傍にいるせいで声をかける事も出来やしない。
 毎日フラストレーションをためる日々、あいつは毎日草を摘むばかりでこちらを気にかける様子もない、こちらからちょっかいをかけようにも護衛の二人が離れない。というかあいつの方が二人に引っ付いているんだ、きっとそうに違いない。
 そんな日々を過ごしてしばらくした頃、何故だかタケルが一人で草原にいた。護衛がいない、何故だ?
 草原に一人座り込み、何やら手元を眺め固まっている。何だ? 何をしている? 不思議に思ってしばらく眺めていたら、そのうち普通に草を摘み始めたので、俺は何故だかホッとした。
 いや、ホッとしたってなんだよ! 俺はあいつの事なんて何とも思ってやしないんだからな!
 だけど、それにしても今日はなんで護衛がいないんだ? あいつ、金持ちの家の子なんじゃなかったのか? こんなとこで一人で居て誘拐とかされないのか? 大丈夫なのか?
 本人は至って平和そうにスライムと戯れながら草を摘んでいるけれど、俺は何故だか気が気じゃない。
 ま、まぁ、もしここに変な奴が現れたら俺が追っ払えばいいだけの話だし、別にいいんだけどな!
 それにしても、あいつは毎日毎日薬草採取ばかりで飽きないのか? 俺はもうスライム討伐にも飽きてきたってのに……ってか、ここスライム多すぎんだよ! 退治してもしても減りゃしねぇ。あいつもスライム退治手伝ってくれたらいいのに――って俺は一体何を考えてんだ! あいつはライバル! 俺の敵!
 そんな事を考えていたら「今日もスライム討伐お疲れ様」なんてにっこり微笑まれた。くっそ、可愛い、なんて、断じて、思わないんだからなっ!
 声をかけられ、いつもの護衛二人もいないので何となく会話が続く。話していたらタケルは別に金持ちの子供ではなかった。どころか、装備もろくに揃えられない超貧乏人だった。
 だったら何故高ランク冒険者の二人と共に居るのかと思ったら、どうやらタケルは白銀の魔術師の弟子になったらしい。白銀の魔術師が弟子をとってるなんて聞いてない! 俺には魔術師の才能はないからルーファウスさんの弟子は無理だけど、だったら疾風の弟子になりたい! と言ってみたら、あっさり紹介すると言われてしまった。
 そんな簡単に紹介って……
 話せば話す程、タケルは驕る事も偉ぶる事もなくニコニコしていて拍子抜けだ、何だよこいつ訳分らん。ってか、なんで俺こいつに怒ってたんだっけ?
 若干グルグルしていたら、何故かタケルと仲良くなってた。装備が買えないからスライム討伐依頼を受けられないとか抜かすので、俺の小さくなって着られなくなった皮の胴着をやると言ったら、素直に喜んで満面の笑みだ。
 べ、別に捨てるのが面倒だっただけだからな! お前の為なんかじゃないんだからなっ!!


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