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運命に祝福を
謁見 ①
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どうにも意識がふわふわして、自分が起きているのか寝ているのか判然としない。時々覚醒するように意識がはっきりする瞬間もあるのだが、それは本当に一瞬で、またすぐに意識はどこかへ浮遊する。
まるで長い夢を見ているようだ。いや、これは夢なのか? 現実なのか? どこからが夢でどこまでが現実なのか分からなくて頭を振った。
瞳を開けばそこは闇。一条の光も差さぬその部屋に閉じ込められて一体どれほどの時間が経ったのだろうか? 大した時間は経っていない気もするし、もうずいぶん長い時間閉じ込められている気もする。自分の存在自体も曖昧で、暗闇の中、瞳を凝らすと、光の全く差さないはずの部屋にぼんやりと何者かの気配を感じる。
『ほんに人の業というのは救いようのないものよ……』
「私は一体……」
『巫女だけでは飽き足らず、救いの主まで貶めるか』
「私はそんな大それた者ではない」
『そうか……そうであるの。そして我もまた神などではありはせん』
気配がふわりと私の身体を包み込む。
『今は眠れ、人の子よ。人の運命はままならぬ、ほんに不思議なモノよの……』
言葉と同時に意識が沈む、この闇は一体どこまで続いているのか。それは母の胎内のまどろみ、私はただその闇に身を預ける事しかできずに意識を手離した。
※ ※ ※
僕、カイト・リングスは今、何故かランティスの王宮で訳も分からず着飾らされて、城の一室で待機を命じられている。
ツキノが誘拐され、ユリウス兄さんが失踪し、トーマスさんが刺されて既に一週間程が経過している。僕の父親と現騎士団長リクさん、あと彼の元上司で先代の騎士団長であるケインさん、そんな彼等を相手取り啖呵を切ってどうにかしろと詰め寄った結果が今のこの現状だ。この3人をどうにか結びつけた僕の功績はそこそこ大きくて、ばらばらだったランティス王家は少しだけ同じ方向をむけるようになった。
けれど、それは同時に僕自身が完全に王家に認知されるという形で進行していて、なんと今日、僕は祖父母との初顔合わせだ。
祖父母……即ち、ランティス王家の現国王様と王妃様なのだけど、これまで僕は王家を意識した事もないし血縁だと言われても僕には全くその認識はなく、今はもうただひたすらに窮屈でしかない。
そして、僕の傍らには僕と同じように着飾らされた男がもう一人、こちらも落ち着かない様子でそわそわと宙を仰いでいる。
よく考えたらこの人も僕と立場は同じだったんだな、ランティス王家の隠された王子、そしてその息子であるロディは、これまた祖父母とは初対面なのだそうで動揺を隠せない様子だ。
ものすごく今更だけど、この人僕の従弟なんだよね。同じ金髪で、少しだけ後ろ姿が似ているとツキノが言っていた事がある。言われてみれば背格好が似ていて、並ぶと兄弟のようにも見えてしまうのだ。彼は本当に少しだけ僕より身長が高いのだけど、僕の方が生まれ月早いから僕の方が兄さんだよ!
しばらくすると、僕達は呼び出され部屋を移動する。父親に会った時は、その小さな部屋に父が出向いてきたのだが、さすがに王様に謁見となるとそういう訳にはいかないらしい。
「緊張するな……」
ロディはやはり僕の傍らでそわそわと小さな声でそんな事を言うので「そう?」と僕は首を傾げた。
「君は緊張しないのか?」
「? 別に、しない……かな?」
そもそも現実感が薄すぎてそんな気持ちにもなれやしない。連れて行かれたのは、大層豪勢な扉の前で、その扉の向こう側が謁見室らしい。
使用人が恭しく扉を開けると、その向こう側には僕の父親、そして部屋の奥に鎮座しているのが、僕達の祖父母だ。僕達2人は部屋の奥へと進んで行く。
「ロディ、カイト、よく来たね」
穏やかな笑顔の王様は僕の父親には似ていない、どちらかと言えばその笑顔はアジェ叔父さんに似て、まるで包み込まれるような安心感がある。
その隣でやはり穏やかに微笑んでいる王妃様は何故だかどこかで見た事があるような気がして、それがどこでだったか? と、僕は首を傾げる。
確かに誰かに似ているのだ、やはり高貴な女性だったと思う、その佇まいがよく似ていて思い出せそうで思い出せない。
「そんなに私の顔を見て、どうかしましたか?」
僕の不躾な視線に王妃様は、やはり穏やかな笑みを崩さない。
「誰かに似ている気がするんだけど、誰だか分からない、です」
「うふふ、そう。もしかしたらそれは私の妹かもしれませんね。私の妹はファルス王国に嫁いだのですよ、今はイリヤに暮らしているわ。きっとどこかで会う機会があったのでしょうね」
「え……そうなんだ?」
やはり僕にはそれが誰だか分からないのだが、王妃様は穏やかに頷いた。
「ロディの話しはアジェからたびたび便りを貰って聞いているが、ふむ、申し訳ないがどちらがロディでどちらがカイトだろうか? エリオットとアジェもそっくりな双子だが、やはり子も似るものなのだな」
「あ……ご挨拶遅れました。私、ロディ・R・カルネと申します。お初にお目にかかります、おじい様、おばあ様」
慌てたように、ロディは陛下の前に傅き頭を下げたのだが、その姿は貴公子然とした堂々とした動作で、先程まで「緊張する」と呟いていた男とは思えないその動きに僕はちょっと驚いた。
というか、よく考えたらこの人血統書付きの貴族だよ、庶民育ちの僕とは育てられ方から違っていて、そんな彼の横でどんな態度でいたらいいのか分からない僕は「カイトです」と、ぺこりと頭を下げた。
「2人とも歳も同じと聞きましたよ、本当にまるで双子の兄弟みたい」
王妃様が僕達二人を見てころころと笑う。そこまで僕達似てるかな? 傍目にはやっぱり似てるのか? ツキノですらそう言ってたくらいだもんね。
「それにしても、カイト……」
「え? はい?」
「君に関しては今まで本当に何も知らなかった、私達は何もしてあげられず申し訳なかったね。苦労はしていないかい? ここまで辛い事はなかったかい? これからはいつでも私達を頼ってくれていいのだよ」
突然話をふられた上にそんな事を言われても、どう返していいか分からない。目の前の2人が祖父母だというのを理解はしても納得できていないのに、そんな事を言われても困ってしまう。
「僕は別に……」
ここまでの人生すごく幸せだったか? と聞かれたら、少しだけ首を傾げてしまうけれど、不幸のどん底と言うほど悪い人生だったとも思っていない。親にはあまり恵まれなかったが、周りの環境には恵まれて、ここまで平凡に生きてこられたのだから、そこまで苦労の多い人生ではなかったと思うのだ。
「何か生活に困るような事はないかい?」
「生活に困ってはいないけど……今僕が困っている事って言うなら、この国とメリアの関係かな?」
僕の言葉に今度は祖父母が「え?」と首を傾げる。
「こら、カイト! それは今話す事じゃない!」
僕の父親エリオットが慌てたように割って入ってきた。
なんで? 駄目? 困っている事を聞かれたから素直に答えようとしただけなのに……
「それはどういう事?」
王妃様が首を傾げて僕に問う。
「僕の番相手はメリア人なんだけど、ランティスとメリアがこんな関係で、事件に巻き込まれて誘拐されちゃった……早く助けに行きたいのに、色々な事が拗れていて助けに行けないのが今の僕の一番の困り事なんですよ」
王様は僕の言葉を聞き、父親を見て困惑の表情だ。そして父は頭を抱えて大きな溜息を吐く。
「その件は、ちゃんと事件解決に向けて調査を続けている」
「でも、僕には何も教えてくれない」
「子供が首を突っ込む事ではないからな」
僕は父のその言葉にかちんと来る。
「僕の大事なツキノが誘拐されているんだよ!? 僕には知る権利がある!」
「あぁ、もう、うるさい! 俺はあいつとの関係は認めていないと言っている!」
「僕も何度も言ったはずだけど、貴方の許可なんて求めてない!」
僕と父親の応酬に祖父母は目をぱちくりさせているのだけど、僕とこの人、ホント相性悪いみたいでさ、寄ると触るとこんな感じで、僕もうんざりしてるんだよね。
「ふむ、ツキノという名前にはどうやら聞き覚えがあるのだけれど、その子はもしかして……?」
「ツキノはメリア王国の国王陛下の子供です!」
僕の言葉に父エリオットはまた苦虫を噛み潰したような表情で頭を抱え、祖父は「ほう」と言ったきり、何も言わない。そして、祖母だけが「あら、素敵」と微笑んだ。
「父上、これには色々と事情が……」
「そのようだな」
祖父であるランティス国王は「ふむ」と頷き、何事か考え込んでしまった様子だ。
だけど別に良くない? 僕は王家に入りたい訳じゃない、僕の事なんて放っておいてくれればいいんだ、今までだってそうだった、これからだってそれでいい。僕は彼等と血は繋がっているみたいだけど、王家の人間なわけじゃない、僕が誰と番って結婚したってとやかく言われる筋合いないよ。
「お前は怖い物知らずだな……」
傍らのロディがぼそりと呟く。
怖い物知らずって何さ? 僕は僕らしく生きてるだけだよ!
「カイトとそのツキノという子はもう既に番なのかい?」
「そうですよ、一年前に番契約を結んで、僕はツキノのお嫁さんになったんだ」
「嫁……」
なんだか皆揃って怪訝そうな顔するのなんでなのかな? 傍らのロディまで困惑したような表情なの本当に解せないんだけど。
僕、言ったよね? ツキノは僕の旦那さんだって言ったよね?
「君、それは本気で言っていたの? 俺はてっきりあの場のノリに合わせただけだと思っていたんだけど、君にとっては、ツキノは嫁じゃなく旦那さんなんだ?」
「ノリって何? 僕の夢は小さい頃からツキノのお嫁さんだよ。こんなに育った僕なのに、それでもツキノは僕をお嫁さんにしてくれるって言うんだもん、僕は喜んでツキノのお嫁さんになるに決まってるだろう?」
「そこまで育つ過程で、ツキノを嫁にしたいとは思わなかったのか……?」
「別にそれでもいいけど、ツキノは嫌がるだろうし、だったらお互い納得して結婚した方が良くない?」
ロディは「なるほど……」と、複雑な表情で頷いた。っていうか、何で僕達の関係をそんな変な風に曲解するのかが分からない。僕とツキノは今までずっとこうだったし、これからだってずっとこうだよ。
はっ! もしかして、みんな僕の事、オメガの癖に可愛げのない男だって思ってる? 思ってるんだ!? だって仕方ないだろ、育っちゃったんだから! これ、多分遺伝だから僕にはどうしようもならないよ!
「メリアとランティスの結婚か……」
王様がぽつりと呟く。
「エリオットはどうやら嫁を貰う気もないようだし、それならそれでない話ではないな」
「ちょ……父上!?」
「私としてもメリアとの関係改善は望む所でな、本人達が納得づくで結婚を望むのであれば、これは国をあげて祝うべき事かもしれんな」
「いや、国とか大袈裟な……別に王家とか関係なく僕達幸せなんで、そっとしておいてください」
王様が何か言い出したよ。僕、悪い予感しかしないんだけど……って言うか、リク騎士団長も似たような事言ってたよな。僕達の結婚が二国の和睦に繋がるかもって? そんな事で和睦ができるなら、もうとっくに和睦してるだろ? って話じゃない?
「王家の人間が結ばれるから意味がある。いくら民間規模で交流を重ねても、国同士が仲違いを続けていたら、いつまで経っても関係は改善しない。今は昔ほど諍いが多い訳ではない、今だったらこの結婚も国民に受け入れられるやもしれん」
だから僕達の事はそっとしといてって言ってるのに……
「本当はメリアとの間には何度かそんな話が持ち上がった事もあったのだよ、けれど、先代のメリア王の時代、王には子が一人しかおらず、姫を嫁に貰い受ける事は叶わなかった。現国王のご子息とは歳も離れているし、今回もまた叶わずか、と思っていたが、まさか既に結ばれていたというのは、願ったり叶ったりな話ではないか」
「僕、そういう政治の話に僕達が利用されるの、物凄く嫌なんですけど……そもそもメリアはもうじき王政を廃止するし、ツキノはメリアの王子ではなくなる。僕達は王家とは関係のない所で幸せに暮らすので、放っておいてください」
「ふむ」とまた王様はひとつ頷く。
「駄目かの?」
「そもそも僕は隠し子でしょう? 僕の母は正式に王家に迎えられた妃でもない、そんな僕が王家を背負うとか、どう考えても可笑しな話じゃないですか?」
「カイルか……」
「母は僕に王家には関わらなくていいと言いました。僕はカイル・リングスと、そこのエリオット王子との間に生まれた子供らしいですけど、ランティス王家の人間じゃない。僕はカイト・リングス、ただの薬剤師の息子です」
「こちらとしてもカイルが頷きさえすれば、妃に迎える準備は整えていたのだがな……」
え……そうなんだ? 身分差が大きすぎてそんな話にもならなかったのかと思っていたのに、そこまで話しは進んでいたんだ?
「息子の甲斐性がないばかりに逃げられて、しかも息子は意固地にカイル一人を想い続ける、こちらとしても困っていた所だ」
「父上!?」
「王家の人間は血を繋げるのも責務のひとつなのだぞ、エリオット」
「自分の運命の番を放り出して、血を繋ぐ為だけに結婚するなんて、俺は真っ平ごめんです」
「そんな話はしていない、運命の番であったのなら、そんな彼を繋ぎとめておけなかったお前にも問題があると言っているのだ。アジェの所を見てみろ、何の波風も立たぬ穏やかな夫婦生活ではないか、のう、ロディ?」
突然話をふられたロディは慌てたように「えっと、まぁ……そうですね」と、頷いた。
「あそこは番相手がアジェを溺愛しているし……」
「お前だってそうであろう?」
「何不自由のない生活を……」
「お前にもできたはずの事だな?」
「カイルは一筋縄ではいかない男だった」
「まぁ、それはそうであるのう」
「あいつが逃げ出すから……!」
「それが何故なのか思い至れないのが、お前の悪い所だのう」
「俺はあいつをちゃんと愛していたし、何も悪いようにはしなかった!」
父が喧しく吠える。そういうのが母さんは煩わしかったんだと思うけど? たぶん母さんは基本的には放っておいて欲しい人なんだ。自分のやりたい事を阻害されるのが何よりも嫌いで、この人の愛情は母さんには重すぎたんだろうな。
王家に引き上げられるのもきっと嫌で、この人が王子なんて立場じゃなかったらまた違っていたのかもしれないけど、もうそこはどうしようもない。
「まぁ、その話しは置いておこう。それにしても、カイトの話を纏めていくと、もしかしてメリアの王子は何者かに誘拐された、とそういう事かな?」
「そうです、でも、その犯人が誰かはもう分かってる」
「ほう、そうなのかい?」
「グライズ領のグライズ公爵、王様も報告を受けているはずですよね?」
国王陛下はまたしても「ふむ」と頷く。
「確かにグライズ公爵が奴隷売買に関わっているらしいという報告は受けているが……」
「カイト、まだ調査中の話をぺらぺら喋るな、父上はお忙しい、確証のない話まで報告する必要はない」
「確証って……だってケインさんがそう言ってた!」
「まだ定期報告が上がってこないんだ、ケインも首を傾げていたが、確かな情報になるまでは父上の耳に入れる話ではない」
僕は不貞腐れ、黙り込む。
「ツキノ王子は奴隷商に攫われた?」
王様の問いに、僕の父親は「まぁ、恐らくは……」と、言葉を濁す。
「それは難儀な事だな。助けはまだ出せないのか?」
「ケインの送り出した密偵からの報告が上がり次第、手を打つ予定になっているのですが、その肝心の定期報告が上がってこないのですよ」
「何かあったか?」
「それが分かれば苦労はしません」
「まぁ、確かにその通りだな」
王様はまた「ふむふむ」と、頷いて「あい、分かった」と、笑みを見せた。
「ランティス王国としてはそんな奴隷商を国でのさばらせておく事も由々しき事態、そしてメリア王国との関係改善も急務であると考える。そしてこれは可愛い孫の願いでもあるとなると、これは国を上げて取り組むべき課題であると私は考える、エリオット」
「え? はい?」
王様が何か言い出した……と皆の視線が国王陛下へと集まる。
「ケインからの報告は届いておる、今回のこの事件、見事解決してみせろ、それがこの国の王子としての試練であり、お前の父親としての課題でもある。子の幸せを願うのであれば、できぬ事はなかろうの?」
「え……や……えぇ……」
「お前は昔から頑固な子で、こうとなったら意思を曲げない。そんなお前を時期国王に据えていいものか私にも迷いがあった。お前は融通もきかないし、カイルの為なら国をも捨てる覚悟があったからのう。ちょうどいい、今回のこの事件、見事解決の暁にはお前に全てを与えよう、これは国王就任の為の試練だと思え」
「父上、お待ちください! そんな勝手な……!」
「勝手な話ではありはせん、お前は我がランティス王国第一王子にして第一後継者であるのだから、当然の話であろう?」
エリオット王子が呆然としててウケル。そうだよね、この人、いずれは国を捨てて母さん迎えに行こうとしていた訳で、国王になっちゃったらそんな事もできなくなるもんね。
あはは、でもここまでが自由にさせて貰いすぎだっただけじゃない?
なんか父親には口答えできない王子の姿とかめっちゃウケル。
「我が国には跡継ぎもなく未来が不安でもあったのだが、こうして無事後継も育ち、私も安心して隠居ができると言うものだ、のう、カイト、ロディ」
ん?
「これで我が国も安泰であるのう」
呑気に笑う国王陛下。ちょっと待って! 今、さりげなく僕も後継の数の中に入れられた!? 困る! 嫌だって言ってるじゃん! 放っておいてって言ってるのにぃ!!
「俺、一人っ子だし、カルネ領継がないとだし、ランティスの面倒まではちょっと……」
聞こえるか聞こえないかの小声でロディがぼそりと呟く。ロディ! お前、裏切り者!!
お前一人だけ逃げるとか許さないから、巻き込まれる時には一蓮托生だからな!!
「はぁ……まぁ、何はともあれまずはグライズ公爵との面談からだな」
いち早く気を取り直した父は、そう言って溜息を零す。
そうだよ! グライズ公爵! そいつが全ての元凶だ、さっさと捕まえて牢にぶち込んでやってくれよ!
まるで長い夢を見ているようだ。いや、これは夢なのか? 現実なのか? どこからが夢でどこまでが現実なのか分からなくて頭を振った。
瞳を開けばそこは闇。一条の光も差さぬその部屋に閉じ込められて一体どれほどの時間が経ったのだろうか? 大した時間は経っていない気もするし、もうずいぶん長い時間閉じ込められている気もする。自分の存在自体も曖昧で、暗闇の中、瞳を凝らすと、光の全く差さないはずの部屋にぼんやりと何者かの気配を感じる。
『ほんに人の業というのは救いようのないものよ……』
「私は一体……」
『巫女だけでは飽き足らず、救いの主まで貶めるか』
「私はそんな大それた者ではない」
『そうか……そうであるの。そして我もまた神などではありはせん』
気配がふわりと私の身体を包み込む。
『今は眠れ、人の子よ。人の運命はままならぬ、ほんに不思議なモノよの……』
言葉と同時に意識が沈む、この闇は一体どこまで続いているのか。それは母の胎内のまどろみ、私はただその闇に身を預ける事しかできずに意識を手離した。
※ ※ ※
僕、カイト・リングスは今、何故かランティスの王宮で訳も分からず着飾らされて、城の一室で待機を命じられている。
ツキノが誘拐され、ユリウス兄さんが失踪し、トーマスさんが刺されて既に一週間程が経過している。僕の父親と現騎士団長リクさん、あと彼の元上司で先代の騎士団長であるケインさん、そんな彼等を相手取り啖呵を切ってどうにかしろと詰め寄った結果が今のこの現状だ。この3人をどうにか結びつけた僕の功績はそこそこ大きくて、ばらばらだったランティス王家は少しだけ同じ方向をむけるようになった。
けれど、それは同時に僕自身が完全に王家に認知されるという形で進行していて、なんと今日、僕は祖父母との初顔合わせだ。
祖父母……即ち、ランティス王家の現国王様と王妃様なのだけど、これまで僕は王家を意識した事もないし血縁だと言われても僕には全くその認識はなく、今はもうただひたすらに窮屈でしかない。
そして、僕の傍らには僕と同じように着飾らされた男がもう一人、こちらも落ち着かない様子でそわそわと宙を仰いでいる。
よく考えたらこの人も僕と立場は同じだったんだな、ランティス王家の隠された王子、そしてその息子であるロディは、これまた祖父母とは初対面なのだそうで動揺を隠せない様子だ。
ものすごく今更だけど、この人僕の従弟なんだよね。同じ金髪で、少しだけ後ろ姿が似ているとツキノが言っていた事がある。言われてみれば背格好が似ていて、並ぶと兄弟のようにも見えてしまうのだ。彼は本当に少しだけ僕より身長が高いのだけど、僕の方が生まれ月早いから僕の方が兄さんだよ!
しばらくすると、僕達は呼び出され部屋を移動する。父親に会った時は、その小さな部屋に父が出向いてきたのだが、さすがに王様に謁見となるとそういう訳にはいかないらしい。
「緊張するな……」
ロディはやはり僕の傍らでそわそわと小さな声でそんな事を言うので「そう?」と僕は首を傾げた。
「君は緊張しないのか?」
「? 別に、しない……かな?」
そもそも現実感が薄すぎてそんな気持ちにもなれやしない。連れて行かれたのは、大層豪勢な扉の前で、その扉の向こう側が謁見室らしい。
使用人が恭しく扉を開けると、その向こう側には僕の父親、そして部屋の奥に鎮座しているのが、僕達の祖父母だ。僕達2人は部屋の奥へと進んで行く。
「ロディ、カイト、よく来たね」
穏やかな笑顔の王様は僕の父親には似ていない、どちらかと言えばその笑顔はアジェ叔父さんに似て、まるで包み込まれるような安心感がある。
その隣でやはり穏やかに微笑んでいる王妃様は何故だかどこかで見た事があるような気がして、それがどこでだったか? と、僕は首を傾げる。
確かに誰かに似ているのだ、やはり高貴な女性だったと思う、その佇まいがよく似ていて思い出せそうで思い出せない。
「そんなに私の顔を見て、どうかしましたか?」
僕の不躾な視線に王妃様は、やはり穏やかな笑みを崩さない。
「誰かに似ている気がするんだけど、誰だか分からない、です」
「うふふ、そう。もしかしたらそれは私の妹かもしれませんね。私の妹はファルス王国に嫁いだのですよ、今はイリヤに暮らしているわ。きっとどこかで会う機会があったのでしょうね」
「え……そうなんだ?」
やはり僕にはそれが誰だか分からないのだが、王妃様は穏やかに頷いた。
「ロディの話しはアジェからたびたび便りを貰って聞いているが、ふむ、申し訳ないがどちらがロディでどちらがカイトだろうか? エリオットとアジェもそっくりな双子だが、やはり子も似るものなのだな」
「あ……ご挨拶遅れました。私、ロディ・R・カルネと申します。お初にお目にかかります、おじい様、おばあ様」
慌てたように、ロディは陛下の前に傅き頭を下げたのだが、その姿は貴公子然とした堂々とした動作で、先程まで「緊張する」と呟いていた男とは思えないその動きに僕はちょっと驚いた。
というか、よく考えたらこの人血統書付きの貴族だよ、庶民育ちの僕とは育てられ方から違っていて、そんな彼の横でどんな態度でいたらいいのか分からない僕は「カイトです」と、ぺこりと頭を下げた。
「2人とも歳も同じと聞きましたよ、本当にまるで双子の兄弟みたい」
王妃様が僕達二人を見てころころと笑う。そこまで僕達似てるかな? 傍目にはやっぱり似てるのか? ツキノですらそう言ってたくらいだもんね。
「それにしても、カイト……」
「え? はい?」
「君に関しては今まで本当に何も知らなかった、私達は何もしてあげられず申し訳なかったね。苦労はしていないかい? ここまで辛い事はなかったかい? これからはいつでも私達を頼ってくれていいのだよ」
突然話をふられた上にそんな事を言われても、どう返していいか分からない。目の前の2人が祖父母だというのを理解はしても納得できていないのに、そんな事を言われても困ってしまう。
「僕は別に……」
ここまでの人生すごく幸せだったか? と聞かれたら、少しだけ首を傾げてしまうけれど、不幸のどん底と言うほど悪い人生だったとも思っていない。親にはあまり恵まれなかったが、周りの環境には恵まれて、ここまで平凡に生きてこられたのだから、そこまで苦労の多い人生ではなかったと思うのだ。
「何か生活に困るような事はないかい?」
「生活に困ってはいないけど……今僕が困っている事って言うなら、この国とメリアの関係かな?」
僕の言葉に今度は祖父母が「え?」と首を傾げる。
「こら、カイト! それは今話す事じゃない!」
僕の父親エリオットが慌てたように割って入ってきた。
なんで? 駄目? 困っている事を聞かれたから素直に答えようとしただけなのに……
「それはどういう事?」
王妃様が首を傾げて僕に問う。
「僕の番相手はメリア人なんだけど、ランティスとメリアがこんな関係で、事件に巻き込まれて誘拐されちゃった……早く助けに行きたいのに、色々な事が拗れていて助けに行けないのが今の僕の一番の困り事なんですよ」
王様は僕の言葉を聞き、父親を見て困惑の表情だ。そして父は頭を抱えて大きな溜息を吐く。
「その件は、ちゃんと事件解決に向けて調査を続けている」
「でも、僕には何も教えてくれない」
「子供が首を突っ込む事ではないからな」
僕は父のその言葉にかちんと来る。
「僕の大事なツキノが誘拐されているんだよ!? 僕には知る権利がある!」
「あぁ、もう、うるさい! 俺はあいつとの関係は認めていないと言っている!」
「僕も何度も言ったはずだけど、貴方の許可なんて求めてない!」
僕と父親の応酬に祖父母は目をぱちくりさせているのだけど、僕とこの人、ホント相性悪いみたいでさ、寄ると触るとこんな感じで、僕もうんざりしてるんだよね。
「ふむ、ツキノという名前にはどうやら聞き覚えがあるのだけれど、その子はもしかして……?」
「ツキノはメリア王国の国王陛下の子供です!」
僕の言葉に父エリオットはまた苦虫を噛み潰したような表情で頭を抱え、祖父は「ほう」と言ったきり、何も言わない。そして、祖母だけが「あら、素敵」と微笑んだ。
「父上、これには色々と事情が……」
「そのようだな」
祖父であるランティス国王は「ふむ」と頷き、何事か考え込んでしまった様子だ。
だけど別に良くない? 僕は王家に入りたい訳じゃない、僕の事なんて放っておいてくれればいいんだ、今までだってそうだった、これからだってそれでいい。僕は彼等と血は繋がっているみたいだけど、王家の人間なわけじゃない、僕が誰と番って結婚したってとやかく言われる筋合いないよ。
「お前は怖い物知らずだな……」
傍らのロディがぼそりと呟く。
怖い物知らずって何さ? 僕は僕らしく生きてるだけだよ!
「カイトとそのツキノという子はもう既に番なのかい?」
「そうですよ、一年前に番契約を結んで、僕はツキノのお嫁さんになったんだ」
「嫁……」
なんだか皆揃って怪訝そうな顔するのなんでなのかな? 傍らのロディまで困惑したような表情なの本当に解せないんだけど。
僕、言ったよね? ツキノは僕の旦那さんだって言ったよね?
「君、それは本気で言っていたの? 俺はてっきりあの場のノリに合わせただけだと思っていたんだけど、君にとっては、ツキノは嫁じゃなく旦那さんなんだ?」
「ノリって何? 僕の夢は小さい頃からツキノのお嫁さんだよ。こんなに育った僕なのに、それでもツキノは僕をお嫁さんにしてくれるって言うんだもん、僕は喜んでツキノのお嫁さんになるに決まってるだろう?」
「そこまで育つ過程で、ツキノを嫁にしたいとは思わなかったのか……?」
「別にそれでもいいけど、ツキノは嫌がるだろうし、だったらお互い納得して結婚した方が良くない?」
ロディは「なるほど……」と、複雑な表情で頷いた。っていうか、何で僕達の関係をそんな変な風に曲解するのかが分からない。僕とツキノは今までずっとこうだったし、これからだってずっとこうだよ。
はっ! もしかして、みんな僕の事、オメガの癖に可愛げのない男だって思ってる? 思ってるんだ!? だって仕方ないだろ、育っちゃったんだから! これ、多分遺伝だから僕にはどうしようもならないよ!
「メリアとランティスの結婚か……」
王様がぽつりと呟く。
「エリオットはどうやら嫁を貰う気もないようだし、それならそれでない話ではないな」
「ちょ……父上!?」
「私としてもメリアとの関係改善は望む所でな、本人達が納得づくで結婚を望むのであれば、これは国をあげて祝うべき事かもしれんな」
「いや、国とか大袈裟な……別に王家とか関係なく僕達幸せなんで、そっとしておいてください」
王様が何か言い出したよ。僕、悪い予感しかしないんだけど……って言うか、リク騎士団長も似たような事言ってたよな。僕達の結婚が二国の和睦に繋がるかもって? そんな事で和睦ができるなら、もうとっくに和睦してるだろ? って話じゃない?
「王家の人間が結ばれるから意味がある。いくら民間規模で交流を重ねても、国同士が仲違いを続けていたら、いつまで経っても関係は改善しない。今は昔ほど諍いが多い訳ではない、今だったらこの結婚も国民に受け入れられるやもしれん」
だから僕達の事はそっとしといてって言ってるのに……
「本当はメリアとの間には何度かそんな話が持ち上がった事もあったのだよ、けれど、先代のメリア王の時代、王には子が一人しかおらず、姫を嫁に貰い受ける事は叶わなかった。現国王のご子息とは歳も離れているし、今回もまた叶わずか、と思っていたが、まさか既に結ばれていたというのは、願ったり叶ったりな話ではないか」
「僕、そういう政治の話に僕達が利用されるの、物凄く嫌なんですけど……そもそもメリアはもうじき王政を廃止するし、ツキノはメリアの王子ではなくなる。僕達は王家とは関係のない所で幸せに暮らすので、放っておいてください」
「ふむ」とまた王様はひとつ頷く。
「駄目かの?」
「そもそも僕は隠し子でしょう? 僕の母は正式に王家に迎えられた妃でもない、そんな僕が王家を背負うとか、どう考えても可笑しな話じゃないですか?」
「カイルか……」
「母は僕に王家には関わらなくていいと言いました。僕はカイル・リングスと、そこのエリオット王子との間に生まれた子供らしいですけど、ランティス王家の人間じゃない。僕はカイト・リングス、ただの薬剤師の息子です」
「こちらとしてもカイルが頷きさえすれば、妃に迎える準備は整えていたのだがな……」
え……そうなんだ? 身分差が大きすぎてそんな話にもならなかったのかと思っていたのに、そこまで話しは進んでいたんだ?
「息子の甲斐性がないばかりに逃げられて、しかも息子は意固地にカイル一人を想い続ける、こちらとしても困っていた所だ」
「父上!?」
「王家の人間は血を繋げるのも責務のひとつなのだぞ、エリオット」
「自分の運命の番を放り出して、血を繋ぐ為だけに結婚するなんて、俺は真っ平ごめんです」
「そんな話はしていない、運命の番であったのなら、そんな彼を繋ぎとめておけなかったお前にも問題があると言っているのだ。アジェの所を見てみろ、何の波風も立たぬ穏やかな夫婦生活ではないか、のう、ロディ?」
突然話をふられたロディは慌てたように「えっと、まぁ……そうですね」と、頷いた。
「あそこは番相手がアジェを溺愛しているし……」
「お前だってそうであろう?」
「何不自由のない生活を……」
「お前にもできたはずの事だな?」
「カイルは一筋縄ではいかない男だった」
「まぁ、それはそうであるのう」
「あいつが逃げ出すから……!」
「それが何故なのか思い至れないのが、お前の悪い所だのう」
「俺はあいつをちゃんと愛していたし、何も悪いようにはしなかった!」
父が喧しく吠える。そういうのが母さんは煩わしかったんだと思うけど? たぶん母さんは基本的には放っておいて欲しい人なんだ。自分のやりたい事を阻害されるのが何よりも嫌いで、この人の愛情は母さんには重すぎたんだろうな。
王家に引き上げられるのもきっと嫌で、この人が王子なんて立場じゃなかったらまた違っていたのかもしれないけど、もうそこはどうしようもない。
「まぁ、その話しは置いておこう。それにしても、カイトの話を纏めていくと、もしかしてメリアの王子は何者かに誘拐された、とそういう事かな?」
「そうです、でも、その犯人が誰かはもう分かってる」
「ほう、そうなのかい?」
「グライズ領のグライズ公爵、王様も報告を受けているはずですよね?」
国王陛下はまたしても「ふむ」と頷く。
「確かにグライズ公爵が奴隷売買に関わっているらしいという報告は受けているが……」
「カイト、まだ調査中の話をぺらぺら喋るな、父上はお忙しい、確証のない話まで報告する必要はない」
「確証って……だってケインさんがそう言ってた!」
「まだ定期報告が上がってこないんだ、ケインも首を傾げていたが、確かな情報になるまでは父上の耳に入れる話ではない」
僕は不貞腐れ、黙り込む。
「ツキノ王子は奴隷商に攫われた?」
王様の問いに、僕の父親は「まぁ、恐らくは……」と、言葉を濁す。
「それは難儀な事だな。助けはまだ出せないのか?」
「ケインの送り出した密偵からの報告が上がり次第、手を打つ予定になっているのですが、その肝心の定期報告が上がってこないのですよ」
「何かあったか?」
「それが分かれば苦労はしません」
「まぁ、確かにその通りだな」
王様はまた「ふむふむ」と、頷いて「あい、分かった」と、笑みを見せた。
「ランティス王国としてはそんな奴隷商を国でのさばらせておく事も由々しき事態、そしてメリア王国との関係改善も急務であると考える。そしてこれは可愛い孫の願いでもあるとなると、これは国を上げて取り組むべき課題であると私は考える、エリオット」
「え? はい?」
王様が何か言い出した……と皆の視線が国王陛下へと集まる。
「ケインからの報告は届いておる、今回のこの事件、見事解決してみせろ、それがこの国の王子としての試練であり、お前の父親としての課題でもある。子の幸せを願うのであれば、できぬ事はなかろうの?」
「え……や……えぇ……」
「お前は昔から頑固な子で、こうとなったら意思を曲げない。そんなお前を時期国王に据えていいものか私にも迷いがあった。お前は融通もきかないし、カイルの為なら国をも捨てる覚悟があったからのう。ちょうどいい、今回のこの事件、見事解決の暁にはお前に全てを与えよう、これは国王就任の為の試練だと思え」
「父上、お待ちください! そんな勝手な……!」
「勝手な話ではありはせん、お前は我がランティス王国第一王子にして第一後継者であるのだから、当然の話であろう?」
エリオット王子が呆然としててウケル。そうだよね、この人、いずれは国を捨てて母さん迎えに行こうとしていた訳で、国王になっちゃったらそんな事もできなくなるもんね。
あはは、でもここまでが自由にさせて貰いすぎだっただけじゃない?
なんか父親には口答えできない王子の姿とかめっちゃウケル。
「我が国には跡継ぎもなく未来が不安でもあったのだが、こうして無事後継も育ち、私も安心して隠居ができると言うものだ、のう、カイト、ロディ」
ん?
「これで我が国も安泰であるのう」
呑気に笑う国王陛下。ちょっと待って! 今、さりげなく僕も後継の数の中に入れられた!? 困る! 嫌だって言ってるじゃん! 放っておいてって言ってるのにぃ!!
「俺、一人っ子だし、カルネ領継がないとだし、ランティスの面倒まではちょっと……」
聞こえるか聞こえないかの小声でロディがぼそりと呟く。ロディ! お前、裏切り者!!
お前一人だけ逃げるとか許さないから、巻き込まれる時には一蓮托生だからな!!
「はぁ……まぁ、何はともあれまずはグライズ公爵との面談からだな」
いち早く気を取り直した父は、そう言って溜息を零す。
そうだよ! グライズ公爵! そいつが全ての元凶だ、さっさと捕まえて牢にぶち込んでやってくれよ!
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