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運命に祝福を
闇 ①
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「その話、本当に本当の話?」
僕は思わずその黒髪のおじさん、名前は確かルークさんに突っかかってしまう。だって、おじさんの言う事が僕には俄かに信じられなかったんだ。
僕が会ったリク騎士団長は苦悶の表情でランティスとメリアの関係を憂いていたのに、そんな彼がメリア人奴隷を売買している? そんな話、僕は信じられない。
ユリウス兄さんも僕と同じように思っているのだろう、いつものにこやかな表情とは違った険しい表情を見せている。
「だから、言ったろ。現場を直接見ていた仲間がいるんだよ、そのリク騎士団長が奴隷を買っているのは間違いない」
「きっと何か事情があるんだよ! だってそんなの信じられない!」
「もし事情があったとしても、その事実は消せない。本来なら奴隷の売買なんて取り締まらなければいけない立場で、その奴隷を買っているんだから、もう言い訳のしようがないだろう?」
「でも……だったら、その奴隷の人、どこに行ったの!? 僕達、リク騎士団長の家を訪ねたんだよ! それってナダールおじさんの実家だよ! そこにそんな奴隷の人なんていなかった!」
ルークさんはやれやれという顔で首を振る。
「奴隷を買って、そんな分かりやすく家に連れ帰る馬鹿がどこにいるよ? お前達は知らないだろうけど、あの人には別宅があるんだよ。まだはっきりした情報じゃないけど、その別宅のどこかに奴隷は隠されているはずだよ」
「一体叔父はなんの為に奴隷を買っているというのです?」
「いやぁ、そんなの聞かれてもオレには分からないよ。オレが聞いてるのだって限られた情報だけだからね。でも奴隷って言ったら強制労働か、もしくは性奴隷とか……」
「あの人そんな事する人じゃ……!!」
声を上げかけて僕はふと口を噤んだ。だって僕は一体彼の何を知っているというのだろう? たかだか一度会っただけの大人の男に、子供な自分達は簡単に騙されたとそういう事かもしれないのか、と僕は俯き拳を握った。
「叔父のその別宅というのはどこにあるのですか?」
「んん? オレはずっとここだからな、詳しい事は知らんよ。聞きたかったらセイ達に聞きな」
ルークさんのその言葉にユリウス兄さんは「分かりました」と頷いて、あとはもう無言で部屋を出て行った。たぶんきっとショックだったんだろう。僕だってまだ信じられない。
「なぁ、カイト、そのなんとかさんって誰?」
「リク騎士団長の事? リク・デルクマン、ナダールおじさんの弟だよ」
「そいつメリア人奴隷の売り買いをしているのか?」
「それは、僕には分からないよ……」
僕が瞳を伏せてそう言うとツキノはそっと僕の手を握ってきた。
「父さんの弟がそんな事をするとは思えない……」
「僕もそう思う。実際僕はその人に会ったんだ、僕は凄くいい人だと思ったんだよ」
ツキノは「ふん」とひとつ頷き「じゃあ行くか」と僕の手を引いた。
「え? 行くってどこへ?」
「その男の所に決まってるだろ。分からない事を分からないままにしておくのは気持ちが悪い。どうせ、あんた達は俺達に付いているんだろ? 俺達が行けば、どうしたってあんた達は付いて来ざるを得ないんだ」
「え……王子、本気ですか?!」
「身を隠す為にルーンに来たけど、結局この有様だったら、俺なんかどこにいても同じだろう。だったら俺はカイトといる」
ツキノの言葉に僕は感動を覚える。なんかツキノがめっちゃ格好いい。でも……
「ランティスは本当に人種差別が激しいよ? きっとツキノなんかどこに行ってもブチ切れちゃうよ?」
「俺のこの黒髪じゃあ、どこに行っても似たり寄ったりだ。喧嘩を売られたらちゃんと売り返すから安心しておけ」
「それ、僕、全然安心できないんだけど……」
そんな僕達の会話を聞いていた領主様が何か考え込むように唸っている。
「ううむ、この場合行ってこいとも、行くなとも言いづらい所だな。まずはひとまず情報収集からだ。黒の騎士団が役に立たないのなら、まずはアジェに聞いてみるか」
「ちょ……大将! オレ達を役立たず呼ばわりは心外ですよっ!」
「現実問題、今お前達は役立たずだろうが」
「それでも奥方様よりは情報持ってます!」
「ふん、アジェの情報収集能力舐めんなよ。あいつは何も喋りはしないが、俺よりよほど情報を持っている。それこそお前達が知らない情報だって持っている可能性は高い」
なんだか少し子供の喧嘩っぽくなってきてるの、僕の気のせいかな?
「カイト、俺達もユリのあとを追うぞ」
「ちょ……オレも行きますよ!」
「まだ、町は出るなよ! 行くならちゃんと報告に来い!」
領主様の声を背中に僕はツキノに手を引かれる。ツキノは後ろを振り返らない。
「ツキノ、ねぇ、本気なの?」
「イリヤも駄目、ルーンも駄目、駄目駄目ばかりでどこに逃げても同じなら、俺はもう好きに生きる! それに気に入らないんだよ俺は、俺や俺の仲間達を馬鹿にする奴等が大手を振ってでかい顔してんのがホント気に食わないんだ! ランティスの商人? メリアの豪族? どいつが敵だか知らねぇけど、隠れてこそこそするくらいなら、俺は迎え討つ方を選びたい」
「ツキノ……」
「それに、俺は得体の知れない奴等よりお前の事を信じてる、お前がその騎士団長をいい人間だと思ったのなら、俺はそっちの情報を信じるよ」
僕はツキノの言葉に少し戸惑う。だって僕にはまだ分からないのだ、確かに会って話した時にはとてもいい人だと思った。だけど、それもたかだか一回の面会で、彼の全てを理解できている訳ではない。
それに、ルークさんの言葉で合点がいくのが、僕の父親の彼に対する対応だ。父はその奴隷売買の話をファルス国王から聞いているのだろう、だとしたら彼に対してそういう対応をするのにも頷けてしまう。
「ツキノ、僕にはまだリク騎士団長が良い人なのか悪い人なのかよく分からない。だけど、ツキノの言う通りだ、分からないからって分からないままにしてたら気持ち悪いよね」
「君達、本気?」
ふいに背後からルークさんに声をかけられた。
そういえば居たんだった、気配がしないから忘れてたよ。そうだよね、この人僕達の監視役だっけ。
「何でわざわざ危険に首を突っ込もうとするかな? 君達が動き回るとこっちも巻き込まれて大変なんだよ?」
「別に頼んでないし、危ないと思うなら付いてくんな」
「仕方ないだろう、これは仕事だ」
「仕事だったら命まで投げ出すのか? そんな馬鹿な話ないだろう? 俺は別に付いて来いとは言ってない」
「じゃあ、これは仕事抜きで言うけど、生まれたばかりの赤ん坊の頃から見守ってきた子供達を、わざわざ危険に送り出そうとする大人がいると思うのか?」
「そういうの大きなお世話って言うんだよ」
「うっわ、可愛い気ない!」
ルークさんは少しばかり呆れ顔だ。ツキノもツキノで少し意固地になってない?
「ツキノ、何か怒ってる? 何かあった?」
「別に何もない」
その割にはすごく機嫌が悪そう。ツキノの機嫌が悪いのなんていつもの事だけど、それにしてもここまで他人に当り散らすのも珍しい。ツキノは基本だんまりで、機嫌が悪かったら無視を決め込むことの方が多いのに。
「それ絶対嘘だよね?」
「嘘じゃない」
ツキノの眉間の皺は一層顕著で、これ以上突っ込むと更に怒りを加速させる、と僕はあえてだんまりを決め込んだ。ツキノが何に怒ってるのか、それは分からないけど、きっとツキノはそれを僕には言いたくないんだ。
だって、いつだって機嫌の悪い時のツキノの怒りの矛先は僕に向く事がほとんどなのに、今日のツキノはそうじゃない。僕の手を握って離そうとしない。
「ツキノ……」
「なんだ!」
「はい、一度止まって、大きく息吸って、吐いて、深呼吸」
「あぁ!?」
今度は僕がツキノの手を引いて、ツキノの歩みを止めさせ言うと、ツキノが更に眉間に皺を刻んだ。
「その眉間の皺、可愛くないから駄目だよ、ツキノ」
「俺が可愛い必要がどこにある!」
「僕は嬉しいけど?」
ツキノが言葉に窮したように僕を見上げる。その表情がくしゃりと歪んだ。
「お前まで……」
「ん?」
「お前まで、俺を女扱いするのか!」
ツキノが僕の胸を叩く。
「お前だけは、ずっと変わらずにいてくれるって信じてたのに、お前まで……!」
「ツキノ、ストップ! それ誤解!」
「どこがだよ! 馬鹿みたいにお前の隣で笑ってたら満足かよ! 何もしないで守られていれば満足か! 俺はそんなの絶対に嫌だ!!」
意地っ張りのツキノ、そんな事考えてたの?
「ツキノ、あのね、違うから。僕はツキノに笑っていて欲しいけど、それ女扱いしてる訳じゃないからね、これは大事な人扱いしてるの。好きな人だから笑っていて欲しいだけ。僕はツキノは『ツキノ』って生き物だと思ってる、そこには男女の性差やバース性なんて関係ないから」
「本当に……?」
「ツキノだって今まで僕をか弱いオメガ扱いなんてしてこなかっただろ、僕はそれが本当に嬉しかった。だから僕は絶対にツキノを女扱いなんかしない」
僕が言い切ると、ツキノはようやく大きく息を吐いた。誤解はどうにか解けたかな? でもこれだけは言っておかなきゃ。
「ただ、その胸はやっぱりちょっと本能的にそそられるんだけどね」
ツキノは瞬間驚いたような表情を見せると、片眉を上げて呆れたように「お前、台無しだな……」と苦笑した。
僕は思わずその黒髪のおじさん、名前は確かルークさんに突っかかってしまう。だって、おじさんの言う事が僕には俄かに信じられなかったんだ。
僕が会ったリク騎士団長は苦悶の表情でランティスとメリアの関係を憂いていたのに、そんな彼がメリア人奴隷を売買している? そんな話、僕は信じられない。
ユリウス兄さんも僕と同じように思っているのだろう、いつものにこやかな表情とは違った険しい表情を見せている。
「だから、言ったろ。現場を直接見ていた仲間がいるんだよ、そのリク騎士団長が奴隷を買っているのは間違いない」
「きっと何か事情があるんだよ! だってそんなの信じられない!」
「もし事情があったとしても、その事実は消せない。本来なら奴隷の売買なんて取り締まらなければいけない立場で、その奴隷を買っているんだから、もう言い訳のしようがないだろう?」
「でも……だったら、その奴隷の人、どこに行ったの!? 僕達、リク騎士団長の家を訪ねたんだよ! それってナダールおじさんの実家だよ! そこにそんな奴隷の人なんていなかった!」
ルークさんはやれやれという顔で首を振る。
「奴隷を買って、そんな分かりやすく家に連れ帰る馬鹿がどこにいるよ? お前達は知らないだろうけど、あの人には別宅があるんだよ。まだはっきりした情報じゃないけど、その別宅のどこかに奴隷は隠されているはずだよ」
「一体叔父はなんの為に奴隷を買っているというのです?」
「いやぁ、そんなの聞かれてもオレには分からないよ。オレが聞いてるのだって限られた情報だけだからね。でも奴隷って言ったら強制労働か、もしくは性奴隷とか……」
「あの人そんな事する人じゃ……!!」
声を上げかけて僕はふと口を噤んだ。だって僕は一体彼の何を知っているというのだろう? たかだか一度会っただけの大人の男に、子供な自分達は簡単に騙されたとそういう事かもしれないのか、と僕は俯き拳を握った。
「叔父のその別宅というのはどこにあるのですか?」
「んん? オレはずっとここだからな、詳しい事は知らんよ。聞きたかったらセイ達に聞きな」
ルークさんのその言葉にユリウス兄さんは「分かりました」と頷いて、あとはもう無言で部屋を出て行った。たぶんきっとショックだったんだろう。僕だってまだ信じられない。
「なぁ、カイト、そのなんとかさんって誰?」
「リク騎士団長の事? リク・デルクマン、ナダールおじさんの弟だよ」
「そいつメリア人奴隷の売り買いをしているのか?」
「それは、僕には分からないよ……」
僕が瞳を伏せてそう言うとツキノはそっと僕の手を握ってきた。
「父さんの弟がそんな事をするとは思えない……」
「僕もそう思う。実際僕はその人に会ったんだ、僕は凄くいい人だと思ったんだよ」
ツキノは「ふん」とひとつ頷き「じゃあ行くか」と僕の手を引いた。
「え? 行くってどこへ?」
「その男の所に決まってるだろ。分からない事を分からないままにしておくのは気持ちが悪い。どうせ、あんた達は俺達に付いているんだろ? 俺達が行けば、どうしたってあんた達は付いて来ざるを得ないんだ」
「え……王子、本気ですか?!」
「身を隠す為にルーンに来たけど、結局この有様だったら、俺なんかどこにいても同じだろう。だったら俺はカイトといる」
ツキノの言葉に僕は感動を覚える。なんかツキノがめっちゃ格好いい。でも……
「ランティスは本当に人種差別が激しいよ? きっとツキノなんかどこに行ってもブチ切れちゃうよ?」
「俺のこの黒髪じゃあ、どこに行っても似たり寄ったりだ。喧嘩を売られたらちゃんと売り返すから安心しておけ」
「それ、僕、全然安心できないんだけど……」
そんな僕達の会話を聞いていた領主様が何か考え込むように唸っている。
「ううむ、この場合行ってこいとも、行くなとも言いづらい所だな。まずはひとまず情報収集からだ。黒の騎士団が役に立たないのなら、まずはアジェに聞いてみるか」
「ちょ……大将! オレ達を役立たず呼ばわりは心外ですよっ!」
「現実問題、今お前達は役立たずだろうが」
「それでも奥方様よりは情報持ってます!」
「ふん、アジェの情報収集能力舐めんなよ。あいつは何も喋りはしないが、俺よりよほど情報を持っている。それこそお前達が知らない情報だって持っている可能性は高い」
なんだか少し子供の喧嘩っぽくなってきてるの、僕の気のせいかな?
「カイト、俺達もユリのあとを追うぞ」
「ちょ……オレも行きますよ!」
「まだ、町は出るなよ! 行くならちゃんと報告に来い!」
領主様の声を背中に僕はツキノに手を引かれる。ツキノは後ろを振り返らない。
「ツキノ、ねぇ、本気なの?」
「イリヤも駄目、ルーンも駄目、駄目駄目ばかりでどこに逃げても同じなら、俺はもう好きに生きる! それに気に入らないんだよ俺は、俺や俺の仲間達を馬鹿にする奴等が大手を振ってでかい顔してんのがホント気に食わないんだ! ランティスの商人? メリアの豪族? どいつが敵だか知らねぇけど、隠れてこそこそするくらいなら、俺は迎え討つ方を選びたい」
「ツキノ……」
「それに、俺は得体の知れない奴等よりお前の事を信じてる、お前がその騎士団長をいい人間だと思ったのなら、俺はそっちの情報を信じるよ」
僕はツキノの言葉に少し戸惑う。だって僕にはまだ分からないのだ、確かに会って話した時にはとてもいい人だと思った。だけど、それもたかだか一回の面会で、彼の全てを理解できている訳ではない。
それに、ルークさんの言葉で合点がいくのが、僕の父親の彼に対する対応だ。父はその奴隷売買の話をファルス国王から聞いているのだろう、だとしたら彼に対してそういう対応をするのにも頷けてしまう。
「ツキノ、僕にはまだリク騎士団長が良い人なのか悪い人なのかよく分からない。だけど、ツキノの言う通りだ、分からないからって分からないままにしてたら気持ち悪いよね」
「君達、本気?」
ふいに背後からルークさんに声をかけられた。
そういえば居たんだった、気配がしないから忘れてたよ。そうだよね、この人僕達の監視役だっけ。
「何でわざわざ危険に首を突っ込もうとするかな? 君達が動き回るとこっちも巻き込まれて大変なんだよ?」
「別に頼んでないし、危ないと思うなら付いてくんな」
「仕方ないだろう、これは仕事だ」
「仕事だったら命まで投げ出すのか? そんな馬鹿な話ないだろう? 俺は別に付いて来いとは言ってない」
「じゃあ、これは仕事抜きで言うけど、生まれたばかりの赤ん坊の頃から見守ってきた子供達を、わざわざ危険に送り出そうとする大人がいると思うのか?」
「そういうの大きなお世話って言うんだよ」
「うっわ、可愛い気ない!」
ルークさんは少しばかり呆れ顔だ。ツキノもツキノで少し意固地になってない?
「ツキノ、何か怒ってる? 何かあった?」
「別に何もない」
その割にはすごく機嫌が悪そう。ツキノの機嫌が悪いのなんていつもの事だけど、それにしてもここまで他人に当り散らすのも珍しい。ツキノは基本だんまりで、機嫌が悪かったら無視を決め込むことの方が多いのに。
「それ絶対嘘だよね?」
「嘘じゃない」
ツキノの眉間の皺は一層顕著で、これ以上突っ込むと更に怒りを加速させる、と僕はあえてだんまりを決め込んだ。ツキノが何に怒ってるのか、それは分からないけど、きっとツキノはそれを僕には言いたくないんだ。
だって、いつだって機嫌の悪い時のツキノの怒りの矛先は僕に向く事がほとんどなのに、今日のツキノはそうじゃない。僕の手を握って離そうとしない。
「ツキノ……」
「なんだ!」
「はい、一度止まって、大きく息吸って、吐いて、深呼吸」
「あぁ!?」
今度は僕がツキノの手を引いて、ツキノの歩みを止めさせ言うと、ツキノが更に眉間に皺を刻んだ。
「その眉間の皺、可愛くないから駄目だよ、ツキノ」
「俺が可愛い必要がどこにある!」
「僕は嬉しいけど?」
ツキノが言葉に窮したように僕を見上げる。その表情がくしゃりと歪んだ。
「お前まで……」
「ん?」
「お前まで、俺を女扱いするのか!」
ツキノが僕の胸を叩く。
「お前だけは、ずっと変わらずにいてくれるって信じてたのに、お前まで……!」
「ツキノ、ストップ! それ誤解!」
「どこがだよ! 馬鹿みたいにお前の隣で笑ってたら満足かよ! 何もしないで守られていれば満足か! 俺はそんなの絶対に嫌だ!!」
意地っ張りのツキノ、そんな事考えてたの?
「ツキノ、あのね、違うから。僕はツキノに笑っていて欲しいけど、それ女扱いしてる訳じゃないからね、これは大事な人扱いしてるの。好きな人だから笑っていて欲しいだけ。僕はツキノは『ツキノ』って生き物だと思ってる、そこには男女の性差やバース性なんて関係ないから」
「本当に……?」
「ツキノだって今まで僕をか弱いオメガ扱いなんてしてこなかっただろ、僕はそれが本当に嬉しかった。だから僕は絶対にツキノを女扱いなんかしない」
僕が言い切ると、ツキノはようやく大きく息を吐いた。誤解はどうにか解けたかな? でもこれだけは言っておかなきゃ。
「ただ、その胸はやっぱりちょっと本能的にそそられるんだけどね」
ツキノは瞬間驚いたような表情を見せると、片眉を上げて呆れたように「お前、台無しだな……」と苦笑した。
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