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二人の王子
招かれざる客 ①
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ふと目を覚ますと、部屋にはいい匂いが漂っていて、俺は腹が減っている事に気が付いた。
そういえば、今日は朝から何も食べていない。今は一体何時なんだろう?窓の外は既に夕方辺りの空模様で、俺はむくりと起き出した。
下肢からはまたどろりとした物が流れ出す感覚に俺は眉を顰めるのだが、原因が分かってしまえば腹痛にもなんとか耐えられた。
そんな事よりも腹が減って仕方がない。
部屋を出て、途中トイレに寄り、やはり眉を顰めながら生理の処理をして溜息を吐き、俺はリビングへと向かう。
まだ誰かいるのだろうか? 料理の匂いはするのだから、きっとカイトはいるのだろう。
ふらふらとリビングへと続く扉を開けると、そこには予想通りのカイトと、彼の母親のカイルが何やら楽しげに話していた。
この2人がこんな風に過しているのは珍しく、俺はぼんやりその光景を眺めてしまった。
「あれ? ツキノ、目が覚めた?」
「腹減った……」
俺がそう言ってふらふらと歩いて行くと、慌てたようにカイトは俺の元へと寄って来る。
「体調は? お腹空いたんなら、ご飯食べられるかな? 軽い物の方がいい?」
「なんでもいい……」
俺が言うとカイトは俺をソファーに座らせて「すぐに準備するから待ってて」と台所へと戻って行った。
そこには所在なさげにカイトの母親カイルもいたのだけど、この家は彼の家なのだからそんなに居心地悪そうにしていなくてもいいのに、と思ってしまう。
「あの、伯父さん達は……?」
「あぁ、一度出掛けてくると出て行ったよ。また戻ってくるとは言っていたけど、どうかな?」
俺が寝かされた後も何か話し合いはされていたのだろうか? そういえばアジェさんにルーンに来ないかと誘われたんだった……まだ決めた訳ではないけれど、どうしよう……
そんな事をぼんやり考えていると、料理はすぐに運ばれてきて、俺はそれに箸をつける。
今日は野菜いっぱいの煮込み料理だ。なんだかよく分からないが、カイトとカイルさんが揃ってこちらをじっと見ていて、食べにくい。
「何? 何かあるの?」
「ううん、とりあえず食べてみて」
俺がその料理を口に運ぶと、やはり2人はそれをじっと見ている。カイトの料理はいつも食べているのだが、それはいつもとは少し違い不思議な味がして、俺は首を傾げた。体調を崩していて変に味覚が変わっているのだろうか?
「不味い? 大丈夫?」
「別に不味くはない、けど、何?」
「それ、父さんが作ったんだよ。味付け変だったから直したんだけど、どうも上手くいかなくて……」
言い難そうにカイトは言う。カイル先生って料理できたんだ、意外。この家に転がり込んでからのこの半年で、彼が料理をしている姿というのは一度も見た事はなかったので、少し驚く。
「不味くはないんだよ、だけどいつもとちょっと違うんだ。センス……料理のセンスって何なんだろうね……」
カイトが腕を組んで考え込んでいるのだけど、一体何があったのか俺には分からない。
けれど、朝から何も食べていなかった俺にはそれは別段不味くも感じられず、俺はそれをきちんと完食した。
食事をして体が温まり、ぼんやりしていた俺の頭もだんだんとはっきりしてきた頃、家に再び伯父さん達が戻ってきた。
「ただいま~買い物してたら遅くなっちゃった」
そう言って戻ってきたアジェさんとエドワード伯父さんは両手いっぱいに袋を抱えていて、俺達は揃って首を傾げた。
「これ、何ですか?」
また大量に惣菜でも買ってきたのかと袋の中を覗き込むと、その中に入っていたのは惣菜ではなく色とりどりの布で、その中のひとつを袋から取り出したアジェさんはそれを俺の前に広げて見せ「ツキノ君、お着替えしてみようか?」とにっこり微笑んだ。
彼の持っていた綺麗な色をしたその服はシャツにしては少し丈が長く、いわゆる女物のチュニックというやつだ。俺は言葉を失う。
「……え? これ? 俺が着るの……?」
元々服など動きやすさが一番だと思っている俺にとって、そんな丈が無駄に長い服なんて最初から着る気にもならない代物だったのだが、アジェさんはいつもの笑顔でにっこり微笑み頷いた。
「僕、思ったんだよねぇ。ツキノ君のイメージチェンジ、男の子だと思ったら変えるにしてもバリエーションは少ないけど、こういう路線もいけるんじゃないかな?ってね」
そう言って、彼はまた別の袋を漁り何かを取り出す。それは長い毛の束だ、俺はもう悪い予感しかしないのだが、いつの間にか俺の背後にはエドワード伯父さんが立っていて、完全に退路が塞がれている。
「ちょっと、待って、それって……」
「ふふ、黒いの探すの手間取っちゃったけど、ふふ、いけるんじゃない?」
アジェさんは楽しそうに俺の頭にそれを被せて、にっこり笑ってそう言った。
それは背中の中ほどまである黒い長髪のカツラだった。
俺の背後で袋の中身を取り出していたカイトの広げた服が目に飛び込んでくる、それはもう先程のチュニックでは誤魔化されない程に完全なワンピースで、俺は目眩を覚える。
「ねぇ、ツキノこれ、凄く似合いそう!」
カイトはそのワンピースを抱えてそう言うのだが、待て! それ完全に女物だろう!
「……俺は着ないぞっ!」
そう俺は叫んだのだが、カイトは目をキラキラさせて服を物色しているし、アジェおじさんは楽しそうにこちらににじり寄ってくる。そしてエドワード伯父さんは『何も言うまい』という無表情で俺の退路を塞いでいた。
あと残るはカイトの母、カイルなのだが、彼は困惑したような表情で「ツキノって、やっぱりグノーに似てるよね」と助けてくれる気配はない。
養母は男性Ωだが、ぱっと見には女と見紛う容姿をしていて、女性に間違われている事も多かったのだが、それに似ていると言われても俺は全く嬉しくない。
「俺は! 絶対着ないからっ!!」
その叫びを聞いてくれる者はこの場にはいないようで、俺はその後、強制着せ替え人形にされたのだが、この件に関してはあまり多くを語りたくはない。
※ ※ ※
「こんなの絶対着ないからっ!」と先程まで叫び声を上げていたツキノが、ソファーの上でぐったりしている。
「とりあえずサイズ見るだけだから」とアジェ叔父さんがツキノに着せた洋服の数々はとてもツキノに似合っていて勿体ないと思うのだが、ツキノはその洋服たちを恨めしげな瞳で眺めている。
「カイトまで一緒になって着せようとしてくんだもん、ホント最悪……」
「え~だって本当に似合ってるんだからいいだろ? 僕にはもう似合わない服ばっかりだけど、僕この服好きだよ」
一見女物にも見える洋服だったが、別に全部が女物ではない。(さりげなく女物も混じってたけど)どちらかといえばゆったりしたその服は男女兼用のユニセックスな洋服で、よく見ればアジェ叔父さんが着ている物にもよく似ていた。
『僕、きっちり男物!って服、あんまり似合わないんだよね……かっちりしたスーツみたいなの、笑っちゃうくらい似合わない』
そう言って叔父は苦笑していたので、彼自身も苦慮した結果の服の選択だったのだと思われる。
僕は叔父が置いていった服を皺にならないように衣装棚に収めていく。叔父が持ち帰った服はサイズが合わなかったりした物なので、もしかしたらサイズ交換されて戻ってくる可能性もある。もう着られないような服は少し間引かないとな……と僕はその衣装棚を見やった。
僕はこの数ヶ月ですくすく身長が伸びてしまったので、着られる服もだいぶ減っている。
普段の仕事は制服なので基本的にはあまり服は必要ない、僕は思い切って自分の小さくなって着られなくなった服を処分する事にした。
どのみちランティスに行くのなら、片付けはしないとならないのだから、問題ない。
「何? 服捨てるの?」
「もう、小さいからね」
「まだ、その辺の服の方がマシだから捨てんな」
「えぇ……でももうだいぶ痛んでるよ?」
それでも捨てるなとツキノは膨れる。叔父の用意してくれた服がツキノは本気でお気に召さないのだろう。
「この辺の服だって、ツキノ今まで絶対着なかっただろ?」
「まだマシ」
僕のお古は色はカラフルでも装飾はシンプルだ。叔父の選んだ服は華美ではないが、到底ツキノが選びそうもないフリルや刺繍の入った物も多かったので、ツキノはそれも気に入らないのだろう。
「せっかく叔父さんが買ってくれたんだから、新しいの着なよ」
「人事だと思って……」
ツキノはやはり膨れている。
「僕だって着られるなら着たいくらいなのに、ツキノは贅沢。叔父さんの選んでくれた服、悪い服じゃないよ? ツキノは派手だと思うかもしれないけど、こんなの組み合わせ次第だからね?例えばこっちのチュニックとこっちのパンツ、合わせたら割と普通だろ?」
僕が手に取ったその上下は白いチュニックに細かい刺繍が入っているのだが、その刺繍糸は生成りの目立たない色なのでそこまで派手ではない。そして合わせた裾広がりのパンツは今までツキノは絶対に履くことがないタイプのズボンだとは思うけれどウエストは紐で縛るタイプでリラックス着としてはとても楽だと思う。勿論、そのまま外にだって出て行けると思うのだ。
「寝巻きじゃん……」
「身も蓋も無い……でも、そう思うなら寝巻きに着たら?楽だと思うよ?」
膨れたまま、ツキノはその上下の服を受け取って、溜息を零した。
「本当に似合うと思うのか?」
「思わなかったら薦めないよ、叔父さんの選んでくれた服、凄くツキノに似合ってる」
ツキノはまたしても複雑な表情を見せた。
「俺、男なのに……」
「だけど、半分女の子だ」
僕の言葉にツキノがきっとこちらを睨んだ。
「お前までそんな事、言うのか!」
「だって、事実は事実だよ」
「性別は自分で選べばいいっておじさん達言ってただろ! 俺は男だ! そこは譲れない!」
「うん、ツキノはそれでいいと思う。僕もツキノはちゃんと男だと思ってるよ。だけどね、体の半分が女なのはそれも間違いじゃないんだよ」
ツキノが険しい顔で唇を噛んだ。あぁ、そんなにしたら唇切れちゃうよ。
「僕はね、ツキノが男でも女でも構わないって思ってる。僕はずっとツキノのお嫁さんになるって思って育ってきたし、それは変わってないよ。だけど、もしツキノがこのまま女の子になるんならツキノを僕のお嫁さんにするのもアリなのかな? って、そういう選択肢が増えただけ」
「なっ……!」
「そう思ったら俄然保護欲が湧いたんだけど、それは止めろって父さん達に散々言われて、少し距離感を見計らってる所でもあるんだけど、ツキノはどう思う?」
「保護欲……? 距離感……?」
何を言われているのか分からないという顔で、ツキノは険しい顔を更に険しくさせた。
そんな顔させたい訳じゃないんだけどなぁ。僕達の関係の基本的な所は何も変わらない。僕の隣にはツキノ、ツキノの隣には僕がいる。それだけの話だ。ただ、そこにツキノ「の」お嫁さんとしてという選択にプラスして、ツキノ「を」お嫁さんにしてという選択肢が増えただけ。
「お前は俺を嫁にする気なのか……?」
「え? 駄目? もし今のままのビジュアルならその方が自然じゃない? 僕はツキノが良ければどっちでもいいけど、今ならツキノの方がウェディングドレス似合いそうだし」
僕の言葉に言葉を失った様子のツキノは何かを言おうとして、言葉にならないという感じで逡巡し、また黙り込んだ。
「ツキノ……?」
「……寝る」
「え? ツキノ?」
「今日はもう寝る。考えるのは明日!」
ぷいっと膨れっ面でツキノはベッドに潜り込む。そういえば今日はツキノ体調悪いんだった。
「お腹痛くない? だるかったり辛かったりしたらすぐに言ってよ」
ツキノは黙ったまま背を向けて、うんともすんとも言わない。もしかして機嫌を損ねただろうか? こういう時は黙って時間を置くのが一番だと長年の経験で分かっている僕は、ツキノの後ろ頭を撫でて、部屋を出た。
ツキノが今経験している事柄は僕には分からない事ばかりで、無駄に言葉を重ねてもツキノは頑なになるばかりだと分かっている。
それでもツキノの傍にいる事だけが僕にできる事で、僕は黙ってそれを見守るしかできない。
「あ、そういえばランティス行きの話、しそびれちゃった……」
まぁ、いいか。そんなに大急ぎの話しではない。明日起きたら話そうと、僕はふっと窓の外の月を見上げた。
※ ※ ※
パタンと部屋の扉が閉まる音がして、カイトが部屋を後にした事が分かる。
今日は一日で次から次に理解できないことが起こっていて、俺は何から考えていいのか分からない。
自分が半分女だったこと? メリアの王子としては何の役にも立たなかったこと? それともカイトとの関係か? 簡単に答えが出るような疑問がひとつもなくて、俺は腹を抱えて丸くなった。腹の内のぐるぐるは今朝の事を思えばだいぶ緩和されているが、それでもやはりそのもやもやは消えない。
俺の体は普通じゃない、ここまで普通に育ってきて、まさかこんな事が起こるだなんて想像もしていなかった。
『α』は人類の頂点に立っている。なのに選ばれた人間であるはずの自分がどんどん道から外れていっている気がしてならない。
αは選ばれた人間、それは間違いない。αには必ずと言っていいほど何かしらの才がある、αというのはそういう人間なのだ。
王子であった自分、誰にも負けない剣の腕を持ち、αとして見劣りする所は何も無い、選ばれた存在だと自分でも思っていた、なのに今の俺のこの有様はどうだろう?
赤子のように保護されて、守るべきΩに守られ、Ωの嫁になるのが俺の未来か?
別にΩを卑下する訳じゃない、カイトを下に見ている訳でもない、養母であるグノーは誰よりも強いΩだった。それこそ養父であるナダールが彼に頭が上がらない事だって知っている。けれど養父はちゃんときちんと養母を守っていた。
なのに俺は一体どうだろう? 何もできずに引き籠もり、優しくされるがままにカイトに養われて、挙句の果てに俺を「お嫁さんに……」などと言われてしまった。
俺はこれでいいのか? このまま、流されるようにして保護されて何も成さずに生きていていいのか?
そんな事、答えは決まっている。今のままでいい訳がない!
こんな所で蹲っていては駄目だ、立ち止まってカイトに縋って生きていていい訳がない。
でもだからと言って俺に何ができる? メリアには行くなと言われた、狐や狸に化かされたくなかったら大人しくしていろと釘をさされた。
「くそっ……俺はどうすればいいんだよ……」
未来が見えない、自分がこれからどうすればいいのか全く分からない。
腹がきりりと痛む。義理の姉ルイは、これから問題がなければこの女の証明は月に一度はやってくると言っていた。問題など大有りだが、俺の体は問題なく女性機能を備えて育まれてしまったのだからこれはもう逃れようのない現実だ。
腹が痛い……
俺は瞳を閉じる。
今日は1日のほとんどを寝て過しているというのに、それにも関わらず眠くて眠くて仕方がない。これはこの生理と何か関係があるのだろうか?
何も考えたくない。寝て目を覚まし『凄く嫌な悪夢を見た』と笑ってカイトに報告できたらいいのに……と、俺は意識を手離した。
翌朝目覚めて目の前に見えたのは、相変わらずの金色の髪だった。
俺が寝た後にまたベッドに潜り込んできたのであろうカイトは俺の腰に腕を回してまだすやすやと眠っている。
一度はその腕から抜け出ようともがいてみたのだが、カイトがあんまりにも平和な寝顔で寝ているので、まぁ、いいか……とされるがままにカイトの腕の中に収まった。
俺の腰に腕を回したまま寝ているカイトの頭は俺の胸元にあって、俺はその頭を撫でる。俺より大きくなってしまったカイトの頭をこんな風に上から見下げるなんて、ここしばらくしていなかったように思う。
昇り始めたばかりの朝日に煌くその金色が眩しくて、やっぱり羨ましいとそう思った。
事件のあと、しばらく染められた俺の髪はカイトと同じ金色だったが、それでもやはり違うのだ。元々黒い髪色には、どう頑張ってもこんな透明感は出やしない。髪は痛むばかりで同じにはなれなかった。
カイトが寝惚けて俺の腹にぐりぐりと頭を押し付けてくる。なんの夢を見ているのか分からないが、その幸せそうな顔に少し腹が立つ。
『ツキノを僕のお嫁さんにするのもアリかなって思って……』
カイトの言葉は衝撃的だった、まさかカイトの口からそんな言葉を聞くだなんて今まで考えた事もなかったから。
カイトに抱かれる、それは全くありえない話なのに昨日一緒に入った風呂でカイトの欲望を目にしてしまった。カイトは俺を抱きたいのか? αである俺を? αとΩという関係ならば、それは無いと断言できるのに、男と女の関係ならばそこに可能性も出てきてしまう。
Ωのカイトを愛している、だけど初めてカイトを怖いと思った。どんどん大人の男に育っていくカイトが俺は怖いんだ。
どんぐりの背比べでここまで一緒に育ってきた、なのにカイトはどんどん俺を置いていく……
「置いてくなって、言ってるのに……」
カイトはまだまだ夢の中、幸せそうに微笑んだ。やっぱりそれが少し憎らしい俺は、カイトの顔をぐいっと押しやったのだが、やはりカイトの腕は離れない。
だったらいっそ、ずっと抱きあったままいられたらいいのに……2人だけのこの閉じた世界で暮らせたらいいのに。
カイトのこの手を離したい、けれどその手を離す事に躊躇いのある俺はそれを無理矢理に引き剥がす事もできずにいる。
「カイトのばか……」
俺はまた瞳を閉じてその頭を撫でた。
そういえば、今日は朝から何も食べていない。今は一体何時なんだろう?窓の外は既に夕方辺りの空模様で、俺はむくりと起き出した。
下肢からはまたどろりとした物が流れ出す感覚に俺は眉を顰めるのだが、原因が分かってしまえば腹痛にもなんとか耐えられた。
そんな事よりも腹が減って仕方がない。
部屋を出て、途中トイレに寄り、やはり眉を顰めながら生理の処理をして溜息を吐き、俺はリビングへと向かう。
まだ誰かいるのだろうか? 料理の匂いはするのだから、きっとカイトはいるのだろう。
ふらふらとリビングへと続く扉を開けると、そこには予想通りのカイトと、彼の母親のカイルが何やら楽しげに話していた。
この2人がこんな風に過しているのは珍しく、俺はぼんやりその光景を眺めてしまった。
「あれ? ツキノ、目が覚めた?」
「腹減った……」
俺がそう言ってふらふらと歩いて行くと、慌てたようにカイトは俺の元へと寄って来る。
「体調は? お腹空いたんなら、ご飯食べられるかな? 軽い物の方がいい?」
「なんでもいい……」
俺が言うとカイトは俺をソファーに座らせて「すぐに準備するから待ってて」と台所へと戻って行った。
そこには所在なさげにカイトの母親カイルもいたのだけど、この家は彼の家なのだからそんなに居心地悪そうにしていなくてもいいのに、と思ってしまう。
「あの、伯父さん達は……?」
「あぁ、一度出掛けてくると出て行ったよ。また戻ってくるとは言っていたけど、どうかな?」
俺が寝かされた後も何か話し合いはされていたのだろうか? そういえばアジェさんにルーンに来ないかと誘われたんだった……まだ決めた訳ではないけれど、どうしよう……
そんな事をぼんやり考えていると、料理はすぐに運ばれてきて、俺はそれに箸をつける。
今日は野菜いっぱいの煮込み料理だ。なんだかよく分からないが、カイトとカイルさんが揃ってこちらをじっと見ていて、食べにくい。
「何? 何かあるの?」
「ううん、とりあえず食べてみて」
俺がその料理を口に運ぶと、やはり2人はそれをじっと見ている。カイトの料理はいつも食べているのだが、それはいつもとは少し違い不思議な味がして、俺は首を傾げた。体調を崩していて変に味覚が変わっているのだろうか?
「不味い? 大丈夫?」
「別に不味くはない、けど、何?」
「それ、父さんが作ったんだよ。味付け変だったから直したんだけど、どうも上手くいかなくて……」
言い難そうにカイトは言う。カイル先生って料理できたんだ、意外。この家に転がり込んでからのこの半年で、彼が料理をしている姿というのは一度も見た事はなかったので、少し驚く。
「不味くはないんだよ、だけどいつもとちょっと違うんだ。センス……料理のセンスって何なんだろうね……」
カイトが腕を組んで考え込んでいるのだけど、一体何があったのか俺には分からない。
けれど、朝から何も食べていなかった俺にはそれは別段不味くも感じられず、俺はそれをきちんと完食した。
食事をして体が温まり、ぼんやりしていた俺の頭もだんだんとはっきりしてきた頃、家に再び伯父さん達が戻ってきた。
「ただいま~買い物してたら遅くなっちゃった」
そう言って戻ってきたアジェさんとエドワード伯父さんは両手いっぱいに袋を抱えていて、俺達は揃って首を傾げた。
「これ、何ですか?」
また大量に惣菜でも買ってきたのかと袋の中を覗き込むと、その中に入っていたのは惣菜ではなく色とりどりの布で、その中のひとつを袋から取り出したアジェさんはそれを俺の前に広げて見せ「ツキノ君、お着替えしてみようか?」とにっこり微笑んだ。
彼の持っていた綺麗な色をしたその服はシャツにしては少し丈が長く、いわゆる女物のチュニックというやつだ。俺は言葉を失う。
「……え? これ? 俺が着るの……?」
元々服など動きやすさが一番だと思っている俺にとって、そんな丈が無駄に長い服なんて最初から着る気にもならない代物だったのだが、アジェさんはいつもの笑顔でにっこり微笑み頷いた。
「僕、思ったんだよねぇ。ツキノ君のイメージチェンジ、男の子だと思ったら変えるにしてもバリエーションは少ないけど、こういう路線もいけるんじゃないかな?ってね」
そう言って、彼はまた別の袋を漁り何かを取り出す。それは長い毛の束だ、俺はもう悪い予感しかしないのだが、いつの間にか俺の背後にはエドワード伯父さんが立っていて、完全に退路が塞がれている。
「ちょっと、待って、それって……」
「ふふ、黒いの探すの手間取っちゃったけど、ふふ、いけるんじゃない?」
アジェさんは楽しそうに俺の頭にそれを被せて、にっこり笑ってそう言った。
それは背中の中ほどまである黒い長髪のカツラだった。
俺の背後で袋の中身を取り出していたカイトの広げた服が目に飛び込んでくる、それはもう先程のチュニックでは誤魔化されない程に完全なワンピースで、俺は目眩を覚える。
「ねぇ、ツキノこれ、凄く似合いそう!」
カイトはそのワンピースを抱えてそう言うのだが、待て! それ完全に女物だろう!
「……俺は着ないぞっ!」
そう俺は叫んだのだが、カイトは目をキラキラさせて服を物色しているし、アジェおじさんは楽しそうにこちらににじり寄ってくる。そしてエドワード伯父さんは『何も言うまい』という無表情で俺の退路を塞いでいた。
あと残るはカイトの母、カイルなのだが、彼は困惑したような表情で「ツキノって、やっぱりグノーに似てるよね」と助けてくれる気配はない。
養母は男性Ωだが、ぱっと見には女と見紛う容姿をしていて、女性に間違われている事も多かったのだが、それに似ていると言われても俺は全く嬉しくない。
「俺は! 絶対着ないからっ!!」
その叫びを聞いてくれる者はこの場にはいないようで、俺はその後、強制着せ替え人形にされたのだが、この件に関してはあまり多くを語りたくはない。
※ ※ ※
「こんなの絶対着ないからっ!」と先程まで叫び声を上げていたツキノが、ソファーの上でぐったりしている。
「とりあえずサイズ見るだけだから」とアジェ叔父さんがツキノに着せた洋服の数々はとてもツキノに似合っていて勿体ないと思うのだが、ツキノはその洋服たちを恨めしげな瞳で眺めている。
「カイトまで一緒になって着せようとしてくんだもん、ホント最悪……」
「え~だって本当に似合ってるんだからいいだろ? 僕にはもう似合わない服ばっかりだけど、僕この服好きだよ」
一見女物にも見える洋服だったが、別に全部が女物ではない。(さりげなく女物も混じってたけど)どちらかといえばゆったりしたその服は男女兼用のユニセックスな洋服で、よく見ればアジェ叔父さんが着ている物にもよく似ていた。
『僕、きっちり男物!って服、あんまり似合わないんだよね……かっちりしたスーツみたいなの、笑っちゃうくらい似合わない』
そう言って叔父は苦笑していたので、彼自身も苦慮した結果の服の選択だったのだと思われる。
僕は叔父が置いていった服を皺にならないように衣装棚に収めていく。叔父が持ち帰った服はサイズが合わなかったりした物なので、もしかしたらサイズ交換されて戻ってくる可能性もある。もう着られないような服は少し間引かないとな……と僕はその衣装棚を見やった。
僕はこの数ヶ月ですくすく身長が伸びてしまったので、着られる服もだいぶ減っている。
普段の仕事は制服なので基本的にはあまり服は必要ない、僕は思い切って自分の小さくなって着られなくなった服を処分する事にした。
どのみちランティスに行くのなら、片付けはしないとならないのだから、問題ない。
「何? 服捨てるの?」
「もう、小さいからね」
「まだ、その辺の服の方がマシだから捨てんな」
「えぇ……でももうだいぶ痛んでるよ?」
それでも捨てるなとツキノは膨れる。叔父の用意してくれた服がツキノは本気でお気に召さないのだろう。
「この辺の服だって、ツキノ今まで絶対着なかっただろ?」
「まだマシ」
僕のお古は色はカラフルでも装飾はシンプルだ。叔父の選んだ服は華美ではないが、到底ツキノが選びそうもないフリルや刺繍の入った物も多かったので、ツキノはそれも気に入らないのだろう。
「せっかく叔父さんが買ってくれたんだから、新しいの着なよ」
「人事だと思って……」
ツキノはやはり膨れている。
「僕だって着られるなら着たいくらいなのに、ツキノは贅沢。叔父さんの選んでくれた服、悪い服じゃないよ? ツキノは派手だと思うかもしれないけど、こんなの組み合わせ次第だからね?例えばこっちのチュニックとこっちのパンツ、合わせたら割と普通だろ?」
僕が手に取ったその上下は白いチュニックに細かい刺繍が入っているのだが、その刺繍糸は生成りの目立たない色なのでそこまで派手ではない。そして合わせた裾広がりのパンツは今までツキノは絶対に履くことがないタイプのズボンだとは思うけれどウエストは紐で縛るタイプでリラックス着としてはとても楽だと思う。勿論、そのまま外にだって出て行けると思うのだ。
「寝巻きじゃん……」
「身も蓋も無い……でも、そう思うなら寝巻きに着たら?楽だと思うよ?」
膨れたまま、ツキノはその上下の服を受け取って、溜息を零した。
「本当に似合うと思うのか?」
「思わなかったら薦めないよ、叔父さんの選んでくれた服、凄くツキノに似合ってる」
ツキノはまたしても複雑な表情を見せた。
「俺、男なのに……」
「だけど、半分女の子だ」
僕の言葉にツキノがきっとこちらを睨んだ。
「お前までそんな事、言うのか!」
「だって、事実は事実だよ」
「性別は自分で選べばいいっておじさん達言ってただろ! 俺は男だ! そこは譲れない!」
「うん、ツキノはそれでいいと思う。僕もツキノはちゃんと男だと思ってるよ。だけどね、体の半分が女なのはそれも間違いじゃないんだよ」
ツキノが険しい顔で唇を噛んだ。あぁ、そんなにしたら唇切れちゃうよ。
「僕はね、ツキノが男でも女でも構わないって思ってる。僕はずっとツキノのお嫁さんになるって思って育ってきたし、それは変わってないよ。だけど、もしツキノがこのまま女の子になるんならツキノを僕のお嫁さんにするのもアリなのかな? って、そういう選択肢が増えただけ」
「なっ……!」
「そう思ったら俄然保護欲が湧いたんだけど、それは止めろって父さん達に散々言われて、少し距離感を見計らってる所でもあるんだけど、ツキノはどう思う?」
「保護欲……? 距離感……?」
何を言われているのか分からないという顔で、ツキノは険しい顔を更に険しくさせた。
そんな顔させたい訳じゃないんだけどなぁ。僕達の関係の基本的な所は何も変わらない。僕の隣にはツキノ、ツキノの隣には僕がいる。それだけの話だ。ただ、そこにツキノ「の」お嫁さんとしてという選択にプラスして、ツキノ「を」お嫁さんにしてという選択肢が増えただけ。
「お前は俺を嫁にする気なのか……?」
「え? 駄目? もし今のままのビジュアルならその方が自然じゃない? 僕はツキノが良ければどっちでもいいけど、今ならツキノの方がウェディングドレス似合いそうだし」
僕の言葉に言葉を失った様子のツキノは何かを言おうとして、言葉にならないという感じで逡巡し、また黙り込んだ。
「ツキノ……?」
「……寝る」
「え? ツキノ?」
「今日はもう寝る。考えるのは明日!」
ぷいっと膨れっ面でツキノはベッドに潜り込む。そういえば今日はツキノ体調悪いんだった。
「お腹痛くない? だるかったり辛かったりしたらすぐに言ってよ」
ツキノは黙ったまま背を向けて、うんともすんとも言わない。もしかして機嫌を損ねただろうか? こういう時は黙って時間を置くのが一番だと長年の経験で分かっている僕は、ツキノの後ろ頭を撫でて、部屋を出た。
ツキノが今経験している事柄は僕には分からない事ばかりで、無駄に言葉を重ねてもツキノは頑なになるばかりだと分かっている。
それでもツキノの傍にいる事だけが僕にできる事で、僕は黙ってそれを見守るしかできない。
「あ、そういえばランティス行きの話、しそびれちゃった……」
まぁ、いいか。そんなに大急ぎの話しではない。明日起きたら話そうと、僕はふっと窓の外の月を見上げた。
※ ※ ※
パタンと部屋の扉が閉まる音がして、カイトが部屋を後にした事が分かる。
今日は一日で次から次に理解できないことが起こっていて、俺は何から考えていいのか分からない。
自分が半分女だったこと? メリアの王子としては何の役にも立たなかったこと? それともカイトとの関係か? 簡単に答えが出るような疑問がひとつもなくて、俺は腹を抱えて丸くなった。腹の内のぐるぐるは今朝の事を思えばだいぶ緩和されているが、それでもやはりそのもやもやは消えない。
俺の体は普通じゃない、ここまで普通に育ってきて、まさかこんな事が起こるだなんて想像もしていなかった。
『α』は人類の頂点に立っている。なのに選ばれた人間であるはずの自分がどんどん道から外れていっている気がしてならない。
αは選ばれた人間、それは間違いない。αには必ずと言っていいほど何かしらの才がある、αというのはそういう人間なのだ。
王子であった自分、誰にも負けない剣の腕を持ち、αとして見劣りする所は何も無い、選ばれた存在だと自分でも思っていた、なのに今の俺のこの有様はどうだろう?
赤子のように保護されて、守るべきΩに守られ、Ωの嫁になるのが俺の未来か?
別にΩを卑下する訳じゃない、カイトを下に見ている訳でもない、養母であるグノーは誰よりも強いΩだった。それこそ養父であるナダールが彼に頭が上がらない事だって知っている。けれど養父はちゃんときちんと養母を守っていた。
なのに俺は一体どうだろう? 何もできずに引き籠もり、優しくされるがままにカイトに養われて、挙句の果てに俺を「お嫁さんに……」などと言われてしまった。
俺はこれでいいのか? このまま、流されるようにして保護されて何も成さずに生きていていいのか?
そんな事、答えは決まっている。今のままでいい訳がない!
こんな所で蹲っていては駄目だ、立ち止まってカイトに縋って生きていていい訳がない。
でもだからと言って俺に何ができる? メリアには行くなと言われた、狐や狸に化かされたくなかったら大人しくしていろと釘をさされた。
「くそっ……俺はどうすればいいんだよ……」
未来が見えない、自分がこれからどうすればいいのか全く分からない。
腹がきりりと痛む。義理の姉ルイは、これから問題がなければこの女の証明は月に一度はやってくると言っていた。問題など大有りだが、俺の体は問題なく女性機能を備えて育まれてしまったのだからこれはもう逃れようのない現実だ。
腹が痛い……
俺は瞳を閉じる。
今日は1日のほとんどを寝て過しているというのに、それにも関わらず眠くて眠くて仕方がない。これはこの生理と何か関係があるのだろうか?
何も考えたくない。寝て目を覚まし『凄く嫌な悪夢を見た』と笑ってカイトに報告できたらいいのに……と、俺は意識を手離した。
翌朝目覚めて目の前に見えたのは、相変わらずの金色の髪だった。
俺が寝た後にまたベッドに潜り込んできたのであろうカイトは俺の腰に腕を回してまだすやすやと眠っている。
一度はその腕から抜け出ようともがいてみたのだが、カイトがあんまりにも平和な寝顔で寝ているので、まぁ、いいか……とされるがままにカイトの腕の中に収まった。
俺の腰に腕を回したまま寝ているカイトの頭は俺の胸元にあって、俺はその頭を撫でる。俺より大きくなってしまったカイトの頭をこんな風に上から見下げるなんて、ここしばらくしていなかったように思う。
昇り始めたばかりの朝日に煌くその金色が眩しくて、やっぱり羨ましいとそう思った。
事件のあと、しばらく染められた俺の髪はカイトと同じ金色だったが、それでもやはり違うのだ。元々黒い髪色には、どう頑張ってもこんな透明感は出やしない。髪は痛むばかりで同じにはなれなかった。
カイトが寝惚けて俺の腹にぐりぐりと頭を押し付けてくる。なんの夢を見ているのか分からないが、その幸せそうな顔に少し腹が立つ。
『ツキノを僕のお嫁さんにするのもアリかなって思って……』
カイトの言葉は衝撃的だった、まさかカイトの口からそんな言葉を聞くだなんて今まで考えた事もなかったから。
カイトに抱かれる、それは全くありえない話なのに昨日一緒に入った風呂でカイトの欲望を目にしてしまった。カイトは俺を抱きたいのか? αである俺を? αとΩという関係ならば、それは無いと断言できるのに、男と女の関係ならばそこに可能性も出てきてしまう。
Ωのカイトを愛している、だけど初めてカイトを怖いと思った。どんどん大人の男に育っていくカイトが俺は怖いんだ。
どんぐりの背比べでここまで一緒に育ってきた、なのにカイトはどんどん俺を置いていく……
「置いてくなって、言ってるのに……」
カイトはまだまだ夢の中、幸せそうに微笑んだ。やっぱりそれが少し憎らしい俺は、カイトの顔をぐいっと押しやったのだが、やはりカイトの腕は離れない。
だったらいっそ、ずっと抱きあったままいられたらいいのに……2人だけのこの閉じた世界で暮らせたらいいのに。
カイトのこの手を離したい、けれどその手を離す事に躊躇いのある俺はそれを無理矢理に引き剥がす事もできずにいる。
「カイトのばか……」
俺はまた瞳を閉じてその頭を撫でた。
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