運命に花束を

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世界一メンドくさい君を想う

世界一メンドくさい君を想う⑦

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 ルークに抱かれるようになって数ヶ月、彼に抱かれる事で俺の体調は安定した。
 あれほどきつかった村のフェロモンの匂いもそこまで気にならなくなり、俺はようやくまともで落ち着いた生活を取り戻しつつある。
 バース性の人間は番になる事でお互いのフェロモンの匂いにしか反応しなくなるというのは一般常識で、そう思うとやはり俺はΩだったのか? と思いはするのだが、そのΩのフェロモンを感じる人間はルーク以外に誰もいない。
 それは俺自身も含めてだ。
 何故かルーク1人だけが「サクヤからいい匂いがする」と俺に纏わり付いてくるのだが、それ以外の誰一人その匂いを感知できない。医者先生ですら「気のせいでは?」と首を傾げるほどで、俺は本当にΩだったのか、そうでないのか、俺はいまだに分からずにいる。
 Ωにとって一番の厄介事である『発情期』俺にはそれもやってこない、一般的にΩの発情期は3ヵ月に一度、体の出来上がる12・3歳くらいから始まると言われているが、俺の年齢はそんな歳を遥かに超えて既に20代も半ば過ぎ、Ωであるのならそれもあって当然なのだが、そんな物はやってこなかった。
 ただひとつ、ルークとやっていて下肢から分泌される体液、それは通常男性体からは発生しないものだと分かっているので、そこだけを鑑みるとやはりΩなのか……? と思いはするのだが、まるで自分の身体はやる事だけに特化しているようで、周囲にはとても言い辛い。
 なんというか中途半端としか言いようのない自身の身体の変化に俺は戸惑い続けている。


 響き続けるぐちゃぐちゃという水音と、お互いの荒い呼吸音、そして自分の口から時折漏れる甘い吐息に俺は羞恥を隠せない。

「もう……やめっ」
「んん? 止めてもいいの? ここ、こんなにヒクついてるのに……」

 濡れそぼったそこに指を突っ込まれて掻き回される、どれだけ乱暴に抜き差しされてもそこは微かな抵抗すらみせないほどに滑っているのは、もう既にそこに何度も彼のモノを出されているからだ。
 ルークは避妊を一切しない、それこそ「避妊? 何それ、美味しいの?」状態だ。
 俺には発情期がない、元々男性Ωは妊娠しにくいとも言われていて、その上発情期がない俺は恐らく妊娠の確立は限りなくゼロに近い。だから、避妊の必要はないと考えてもいいのかもしれないが、こうまでやりたい放題されると俄かに腹も立ってくる。

「俺は止めろと言ってるんだ!」

 にやにやとにやけた顔を鷲掴み、力任せに爪を立てれば「痛いっ!」と彼は慌てたように身を引いた。

「サクヤ、そういう実力行使止めてよ、ムードもへったくれも無くなるだろ」
「そんな事考えて可愛く抵抗してたら、お前いつまで経っても止まらないだろうが!」

 愛されてるのは分かってる、散々我慢をさせて箍が外れた事も分かってはいるが、ルークのHは粘着過ぎる。一度やり始めれば、身動き取れなくなるまでやり倒されて、何度も動けなくなる事を繰り返し、さすがの俺も学習した。
こいつの好き勝手にさせてたら俺の体がもたない。
 今日はもう終わりとばかりに、脱ぎ散らかした服を羽織ってベッドを抜け出した。身体中べたべたして気持ちが悪い。

「サクヤ、どこ行くの?」
「風呂、お前はついてくんな」
「えぇ、酷くない? 事後の余韻すら残してくれないの? せめて一緒に入ろうよ」
「お前と一緒に風呂なんか入ったら事後が事後になんねぇだろっ!」

 風呂場で第二ラウンド、第三ラウンドとか、本気で身体もたないから!
 不服そうな表情の彼を捨て置いて俺はさっさと風呂場へと向かう。
 あぁ、なんか零れてきてる……俺の太ももに幾筋もの白い白濁、これ全部あいつのかと思うと、少し勿体ないなとも思ってしまった。
 いやいや、待て待て、勿体ないってなんだよ……
 流れていく白い白濁、これは全て子を作るための子種、俺はそれを生かせない。
 子供が欲しい。
 今まで考えた事もなかった、元々俺はβでそんな事を考える資格すらなかった、けれど俺の身体は中途半端にΩ化して、欲が出たのだ、産めるのならばルークの子供を産んでやりたい。
 それを知ってか知らずか、ルークは俺に散々に種付けを施しているのに、俺に妊娠の兆候は一切見えない。
 俺はΩなのか? βなのか? もしΩに変わったのならせめて、Ωの責務くらい果たさせてもらいたい、いや違う、俺はそれを責務だなんて思っていない、ただ単に俺が産みたいのだ。俺はルークの子供を抱きたい。
 こんな想い、自分が抱く事になるなんて思ってなかった……



「サクヤぁ、前に話してた事なんだけどさぁ」

 風呂から上がり、髪をがしがし拭きながら寝室に戻ると、ルークはベッドの上に寝転がったままからこちらを見上げた。

「ん? 前に? なんの話だ?」
「オレ達の新婚旅行の話! 色々ありすぎて流れに流れてるだろ? だからそろそろ行ってみない?」

 あぁ、そういえばそうだった。ルークの母親に会いに行く。そんな話をしていたのはもうずいぶん前の話な気がする。そこからの俺達は急転直下の出来事ばかりに翻弄されて、そんな話すっかり忘れていた。

「サクヤはいつがいい?」
「別にいつでもいいぞ?」

 そもそも新婚旅行などと言ってはいても、俺達は仕事も同じで四六時中一緒にいるし、なんなら揃って大陸中渡り歩いているのだ、今更事前準備も何もない。

「だったら明日から行ってみる? 纏まった休みなんてそうそう無いし、今が一番チャンスな気はする」

 俺達の仕事はファルス王国の諜報活動だ。そして現在の俺達の仕事はルーンに派遣された第一騎士団長ナダール・デルクマンと国王陛下の連絡係だ。
 仕事の中でもかなり楽な仕事な上に、誰にでもできる仕事なので重要性も低い。休みを取って出掛けるなら、確かに今がチャンスであるのかもしれない。
 少し前までバタついていた国家間の問題も今は下火になって落ち着いているし、その後起こったナダール騎士団長の番相手グノーさんの不調ももうすっかりなりを潜めた。
 国に何か問題が起これば、俺達は否も応もなく駆り出されるのだから、行くなら何もない今がチャンスだ。

「場所はちゃんと分かってるんだっけ?」
「ばっちり、時間があったから、ちゃんと調べたよ」

 事こういう情報収集にかけて俺達はプロフェッショナルだ、ルークがばっちりと言うのなら、後はもう本当に行くだけなのだろう。
 俺は「じゃあ、行くか」と頷いた。新婚旅行という名目は置いておいて、ルークが母親に会うという目的を先延ばしにしていても仕方がない。
 今まで存在すら知らなかったルークの母親、生存していた上に居場所まではっきり分かっているとは思っていなかったのが、彼の父親の一言で発覚したのもまだ割と最近の話。
 会ってみたいと言っていたルークのこの申し出を先延ばしにしてしまったのは俺ばかりの事情で申し訳ない。

「オレの母親どんな人かなぁ? 貴族の娘って聞いてるけど、もう年齢的には娘じゃないよねぇ、貴族のご婦人? あんまり偉そうな感じじゃないといいなぁ」
「兄弟もいるんだっけ?」
「そう! 兄と弟と妹がいるらしいよ!」

 ルークの兄弟……想像もできないな。顔立ちは似ているのだろうか? 一体どんな人達なのだろう? けれど、よく考えてみたらルークはここに連れて来られなければランティスで貴族の子息として暮らしていたかもしれないという事か? それはそれで何か感慨深い。

「どうしたの?」
「貴族暮らしをしているお前が想像つかない……」
「なにソレ? 笑う、ありえない」
「でも全くない話じゃなかったんだろう?」
「あはは、ないよサクヤ。オレのこの黒髪じゃどのみち忌み子とか言われて生きてたとしても監禁生活だったんじゃない? 金持ちってそういう所、割とえげつないからね」

 あぁ、そういう事もあり得るのか……確かにランティスは容姿での差別の激しい国だというのを俺達はよく分かっている。

「きっとオレの母親もオレなんかに会いたいなんて思ってない、これはオレ自身のエゴだよ」
「でもおじさんは詳しい事情は直接本人に聞けって言ったんだろう? だったらそこまで拒絶はされないんじゃないのか?」
「どうなんだろうね? 何せ行ってみなけりゃ分からないよ」

 そう言ってルークは笑う。彼にとって楽しい事が起こるとは限らない旅行だ、それを新婚旅行にしてしまおうというルークの豪胆さは尊敬に値する。

「じゃあ明日、ふふ、楽しみ」

 やはりルークはそう言って布団に潜り込む。俺はその横に滑り込んで、こいつはやっぱり嘘吐きだなと思っていた。


  ※  ※  ※

 ランティス王国、メリア王国と仲が悪く排他的な民族性の国。だが、国の中は比較的穏やかで、基本的には争いは好まない大らかな気質でもある。
 ともかく人と違う事を嫌う傾向で、それに逆らいさえしなければ割と過しやすい国と言えなくもない。

「屋敷でっかっ!」
「この辺一体を治めているらしいし、まぁ妥当なサイズじゃない?」

 丘の上から見たその街は、比較的大きな街だった。その街中の中心辺りに見えるのがこの土地の領主でもある貴族のグライズ公爵の屋敷である。

「お前本当にいい所のボンボンだったんだな……」
「いやいや待って、オレあそことはほぼ無関係! 母親があそこに住んでるかもってだけで、あそこの家の人達完全に他人だからね!」
「まぁ、そうなんだけどさ」

 それにしても、少しばかり立派過ぎる屋敷に驚いたのだ、あそこでルークの母親が暮らしているのか……と、俺はもう一度屋敷を見やる。

「お前の母親、あの屋敷のどの辺にいると思う?」
「ん~? こっから見る感じだと、あの辺かな?」

 ルークが指差したのは屋敷の奥の方、確かに広い裏庭も広がっていて眺めも良さそうだし、主人夫妻が過す部屋といえばあの辺か。
 「とりあえず行ってみよう!」とルークが駆け出すので、俺は慌ててそれを追いかけた。



 屋敷は比較的忍び込みやすいそこまで厳重な警備もされていない屋敷だったので、俺達は堂々と? 裏口から忍び込む。使用人の多い屋敷はいい、忍び込んでもごまかすのは容易い。新しい使用人だとでも言って、人のいい笑みを浮かべておけばそこまで怪しまれる事もない。俺達の黒髪は目立つので、そこはそれなりに隠さなければならないが、奥様の部屋を特定するのにもそう時間はかからなかった。

「ふむ、どうやら奥方様は最近おかげんがあまり良くないようだな、あの辺か?」

 使用人達の話を聞いていると、どうやらルークの母親はここ最近臥せっている事が多いらしい。先ほどルークがあの辺と指差した、中庭に面した部屋の何処かに彼女の寝室はあるらしいのだが、ルークの物言いは母親に対する物というよりは諜報のターゲットへの物言いで、何だか変な感じだ。

「やっぱり外のΩは弱いんだな、お前を20で産んだとして、単純計算で40半ば、Ωとしては長生きな方かな?」
「あぁ、そうなのかな……」

 その体質故に遊郭などに堕ちるΩも多いなか、ルークの母親はそれでもここで平穏に暮らしていたのだろうから、やはりΩは元々あまり強い生き物ではないという事なのだろう。
 俺の母親は30そこそこで死んでいる、そう思えばルークの母親は長生きだと思ってもいいのかもしれない。
因みにΩは50を過ぎると発情期がなくなるので、そこまで生き永らえたΩは比較的強く長生きするとも言われている。そんな風に言われてしまう程度にΩは短命だと言う事なのだが、実際うちの村の人間がそうなのだから間違いないのだろう。
 50までは妊娠出産のリスクの観点からもΩが命を落とす事が多いのに対し、50過ぎになると病や老化で動けなくなるのはαの方が多く、むしろうちの村ではΩの方が長寿だったりするのだから、あながち間違っていない。

「お兄さん達、誰?」

 ふいに声をかけられ俺達は振り向いた。そこに居たのは5・6歳くらいの可愛らしいワンピースの女の子、俺達を見上げて小首を傾げた姿は本当に愛らしいのだが、その姿に違和感を覚える。

「君は?」
「ハルシオン」

 その姿はそのくらいの年齢の子供となんら変わらない愛らしさなのだが、肌が白い、髪も白い、そして瞳だけが赤かった。

「お兄さん達は?」
「おいらの名前はルーク、ハルちゃんはどこから来たの?」
「ハルじゃない、ハルシオン!」

 視線を合わせるようにして言ったルークに彼女はぷうっとむくれる。

「ごめんごめん、ハルシオンちゃん。君はこのおうちの子?」
「お兄さん達はうちのお手伝いの人じゃないの?」
「うん、そうなんだけど、まだ入ったばかりで色々よく分からなくてね」

 ルークは持ち前の人懐こさを発揮して少女に笑いかける、その笑顔に安心したように少女も笑みを見せた。
 もしかして、もしかするとこの娘はルークの妹なのか? それにしてもこの姿は何故……?

「もし良かったら奥方様にご挨拶がしたいんだけど、案内して貰ってもいいかな?」
「奥方様……? 母さまの事?」
「そう、きっと君のお母さん」
「いいよ、こっち」

 人懐こいその少女はルークの手を取り引っ張った。その姿はやはりその辺の年頃の子供と変わらない、けれどこの子たぶんΩだ。
 今までそんなフェロモンの薫りはさっぱり分からなかった俺だけど、この子の匂いが分かる、焼き立てのお菓子みたいな甘い匂い。ルークは無言で顎をしゃくる、俺はそれに従うしかない。
 意外とあっけなく奥方様との面会は叶いそうで、俺達は今彼女の部屋の前に来ている。早く早くとハルシオンはルークの手を引っ張っている。

「ハルシオンちゃん、そんなに引っ張らないで」
「だって、僕も母さまに会いたい」

 え? 僕……?
 『ハルシオン』その名は完全に女性名で見た目も可愛い女の子が何故『僕』なのか、俺達には分からない。
 ハルシオンは飛び込むように部屋の扉を開ける、その部屋の奥、ベッドの上から庭を見ていた女性は彼女の姿を見てふわりと笑みを零した。

「ハルシオン、今日も元気ね」
「はい、母さま。ハルシオンはとても元気なので、母さまも元気になってください」

 母親に飛び付くようにして彼女はそう言った。微笑ましい親子の会話、ルークはそれを黙って眺めている。

「あら、そちらはどなた?」
「母さまに会いたいと言うので連れて来ました。ルークさんと……誰でしたっけ?」

 ハルシオンの言葉に苦笑して、俺は「サクヤと申します」と頭を下げる。

「ルークさんにサクヤさん?」
「新しいお手伝いの人だって!」

 「あら? そうなの?」と彼女は首を傾げる。
 そんな彼女の様子を見て、ルークは微かに笑みを零し「はじめまして」とそう言った。

「この屋敷には使用人もたくさんいて、私、全員は把握しきれていないの、何の仕事の方かしら?」
「すみません、それは嘘です。貴女に会いたくて娘さんに連れて来てもらいました……」
「そう、そうよねぇ……αの方が使用人なんておかしいと思ったのよ」

 彼女はころころと笑う。
 俺達はあからさまな不審者だ、大騒ぎをされても不思議ではないのに、彼女は穏やかに笑っていた。

「私、使用人全員を把握はできていないのだけど、ルークという名前には覚えがあるの、貴方方のその黒髪にもね。いつかこんな日が来るかもしれないと、そう思っていたのよ……」

 そう言って彼女はルークを見やって「貴方はもしかして……?」と小首を傾げる。

「はい、オレは恐らく貴女の息子です」
「やっぱりそうなのね、大きくなって。もっと近くに来て顔を見せてちょうだい」

 彼女の言葉にルークは躊躇うように「その前に聞かせて欲しい事がある」とそう言った。

「何かしら?」
「貴女はそんな穏やかな笑みでオレを見ますけど、オレが怖くはないのですか? 産まれたオレを殺そうとしたんじゃないのですか? もしかしたら、オレがそんな母親を恨んで復讐に来たとは思わないのですか?」

 彼女は娘に「庭で遊んでいらっしゃい」と背中を押して、ベッドから起き出そうとするのだが、ルークは慌ててそれを止めた。

「うふふ、優しいのね。私を殺そうとしている息子がこんな風に私を気遣ってくれるだなんて私は思わないし、もし万が一そうだとしても、私は構わないわ、どの道そう長い命ではないのですもの」
「何かの病気、なんですか?」

 彼女は小さく首を振る。

「元々強い身体ではなかったのだけど、最後の子ハルシオンを産んでからはずっとこの調子よ、情けないったらないわ。流行り病には必ず罹るの、抵抗力がないのよ、だからハルシオンもあんな見た目で、本当に可哀想……」
「彼女は健康で元気な子供だ、見た目が多少人と違っていたって、なんの問題もない」
「そうね、そうかもしれないわね……だけどそれだけじゃないのよ」

 彼女は悲しげに瞳を伏せる。

「あの子、あんな格好をさせてはいるけど、実は男の子なのよ。Ωの男の子、見た目もあんなで、しかも男のΩだなんて、あの子の将来には受難しかない、男としても女としても生きられない可哀想な子」

 俺は驚いてハルシオンを見やる。まさかあの愛らしい子供が男の子だとは思わなかった、けれど言われてみれば確かに先ほどハルシオンは自分の事を『僕』と言った。

「ただでさえΩは生き辛いのに、こんな事ならあの子を産むんじゃなかった……」
「……貴女はオレの時もそう思ったんですか?」

 ルークが無表情に彼女に問う。

「いいえ、私は貴方を産んだ事を後悔した事は一度もないわ。さっき貴方は私が貴方を殺そうとしたと言ったけれど、それは誤解、殺そうとしたのは私の夫、グライズ候よ」
「……本当に?」
「信じてくれとは言えないけれど、私は貴方も手元で育てたかった、けれどそれはできなかった。産んで後悔したのはあの子だけ、私と同じΩだなんて本当に可哀想」
「その言葉は自分自身も哀れんでいるように聞こえますよ」
「うふふ、そうね、私はそれ程哀れなΩではなかったはずなのに、今になって思うのよ、あの時貴方の父親に付いて行けば良かった……ってね」

 彼女は末の息子を眩しそうに見やる。

「私の世界はとても狭いの。私が生まれた家も大きかったけれど、女は旦那様に尽くして一生を終えるのが幸せ、とそういう考え方で両親は私を育てたのよ。私はそれに疑問を持ちもしなかった。だから私は16で結婚して18の頃にはもう長男を抱いていたわ。乳母も使用人もいて、子育てにも生活にも何も困らなかったけれど、そんな時に貴方の父親に出会ったのよ。私の『運命』そんな物はただの夢物語だと思っていたの、何不自由ない生活、文句なんて何もなかった、なのに私はあの人に惹かれてしまったのよ」

 ルークの母親は淡々と語る。

「あの人は私に一緒に行こうと言ったわ。彼ならきっと私を連れ出す事も容易かったはずよ、だけど私はそれが怖かった。だって私の世界は私の元々住んでいた家と、この屋敷の中にしかなかったの。外の世界をまるで知らない私は外の世界が怖くて仕方がなかった。幼い頃に母に言われていたの、私達のようなΩは外の世界では酷い扱いを受ける、地位のあるαの殿方と番になって一生を暮らすのが一番の幸せよって。彼には地位がありそうにはとても見えなかった、けれど私の中には迷いもあったわ、だって旦那様はαではなかったのですもの」
「何故それでもこの家に嫁がれたのですか?」
「親の決めた事だからよ、母は結婚に反対していたけれど父はグライズ家と婚姻関係が欲しかったのよ。都合のいい事に旦那様は私を好いていてくれて、身内にバース性の人間が何人もいたから、バース性に偏見もなかった。だから私はこの家に嫁いできたの。旦那様は私を愛してくれた、私も旦那様を愛しているわ、だけど違うの、この人は違うとはっきり分かってしまったのは貴方の父親に巡り会ってしまった時だった」

 「巡り会わなければ良かったのかもしれない」と彼女は呟く。

「籠の鳥でいる事に気付かなければ、鳥は外を夢想する事もなかったもの」
「貴方は父を好いているのですか? それとも憎んでいる……?」
「どうなのかしら、でも死ぬ時にはあの人に看取って貰えたら幸せだと思っているわ」
「番相手が死ぬ事はΩだけじゃない、αの側にも相当な心理的な負担がかかる。それが『運命』ともなれば尚更」
「あの人はそこまで私を想ってくれているかしら……?」
「父はずっと家庭を持たない、番の解除もできるはずなのにしようともしない、それはそれでもずっと貴女を愛しているからだと、そう思う」

 彼女は綺麗に微笑んで「だったらとても嬉しいわ」とそう言った。

「不実な妻よね。旦那様に頼りきりで生活しているのに、誰より一番愛しているのは旦那様ではないのですもの。旦那様もたぶんそれを分かっていて、私の産んだ貴方を憎んだ。彼が貴方を連れて行くと行った時私はとても悲しかった、だけど安心もしていたのよ。あの人ならきっと貴方を立派に育ててくれると思ったもの。そしてやっぱり、立派になって私の前に来てくれた、ありがとうルーク、貴方に会えて嬉しいわ。私はもう思い残す事はほとんどないの、私は充分幸せに生きる事ができた。ただひとつだけ心配事はハルシオンの将来だけ」

 彼女はやはり瞳を伏せる。

「あの子はまだ幼いわ、あの子に発情期がくる年頃まで私は生きられるか分からない、何も教えてあげられないまま、あの子を置いて逝く事はとても心配なの」
「だったらもっと長生きしようって頑張ってくださいよ! ここまで生き永らえてきたんだ、あと10年20年くらい平気でしょう?!」
「あらあら、うふふ。そうね、そうできたら良いのだけど……そういえばそちらの彼は貴方のお友達? サクヤさんと言ったかしら?」

 突然話をふられて俺はなんと返したものかと逡巡していたら、ルークが「サクヤはオレの番相手ですよ」とそう言った。

「番? 貴方Ωなの?」
「え? いや……まぁ……」

 そうだとも言い切れないし、違うとも言い難い。実際俺はルークの番で間違いはないのだから、そうだと言ってしまってもいいものだろうか?
 そんな事を考えていたら、奥方様がふらりと俺の方へと寄ってきて、俺に縋りつく。

「お願い、あの子を、ハルシオンを連れて行って」
「え……? 何で……?」
「あの子はここでは生きられない、男のΩだなんて誰にもあの子を分かってもらえない。貴方も男性Ωなら分かるでしょう? Ωがどんなモノかも分かっている、だからお願い、ハルシオンを外の世界へ連れて行ってあげて」

 俺が戸惑っているとルークも困り顔で母親を見やる。

「あの子はここで、グライズ候の庇護下で暮らした方が安全な生活を送れると思いますけど、あの子はグライズ候の子供ですよね……?」

 瞬間彼女の顔が強張った。

「まさか、違うのですか……?」
「いいえ、間違いなくあの子はグライズ家の子供、それは間違いではないの、だけどあの子の父親は旦那様ではないのよ。旦那様は気付いていない、けれど、私はそれが怖いの」

 俺達はどういう事なのかと顔を見合わせる。

「こんな事を貴方達にお願いするのは間違っていると思うのよ、だけど、この家であの子を守れる人間は私しかいないの。私が死んだ後、誰もあの子を守れない」
「どんな事情があるのですか……?」

 彼女は涙目で首をふる。よほど言いたくない事なのか、言えない事情があるのか、それともその両方なのか……?
 お願いしますと彼女は俺達に頭を下げる。

「どうする、ルーク?」
「いや、どうするもこうするも、予想外の展開過ぎてオレもどうしていいのか分からないよ……」

 そんな所に件のハルシオンが戻って来て「母さま、花を摘んできました」とにこりと笑みを見せた。
 彼はやはり可愛い女の子にしか見えないのだが、確かにこの容姿、そしてΩという性はこの先バース性への理解の薄い世界では辛い事も多いと思う。

「なぁ、ルーク。この子、俺達の子供として育ててみないか……?」

 ぽろっと俺の口からそんな言葉が零れ落ちた。

「サクヤ、何言ってるの?」
「この子はお前の弟だ、お前と同じ血が流れてる、俺はこの子を愛せると思うよ」

 俺はもしかしたらルークの子供は産めないのかもしれない。俺はΩとは名ばかりの出来損ないのΩなのだ。彼もこんな世界では生き辛いのは確実だろう、だったら俺達の村でのびのびと育ててやればいいのではないかと、俺はそう思ったのだ。
 ハルシオンは母親の服にしがみついて、きょとんとこちらを見上げている。

「ねぇ、ハルシオン、もし、だよ、もし君にお兄ちゃん達の家族にならないかって言ったら君はどうする?」

 しゃがみ込んで目線を合わせるようにして言ったら、彼はきょとんと首を傾げ「なんで?」とそう言った。

「君が可愛いから、連れて行きたくなっちゃったんだよ。嫌ならいい、でももし来る気があるなら俺達と来る? 外の世界は広いよ?」
「お外? おうちの外に行くの?」
「うん、そう」
「母さまも一緒?」
「それは……」

 母さまが一緒ならいい、そうでないなら嫌だと、彼は首をふった。

「本人は嫌がっていますよ、やっぱり無理ですよ」

 ルークは困惑顔で母親を見やる。

「ハルシオン、よく聞いて。母さまは後から必ず参ります、だから今はお兄さん達と行くのです」
「何故ですか、母さま? ハルシオンは母さまと一緒がいい」
「どうしても。母さまはお前が大事なの、だからお願い聞き分けて」

 母親の言葉に不満顔のハルシオンだったが、最後には不承不承頷いた。母親があとから来るなんていうのは完全に嘘なのに、そんな調子で連れて行ってしまっていいものか迷いはする。けれど不承不承ではあっても頷いたハルシオンに奥方様は心底安堵しきったような笑みを見せたので、この家には余程の事があるのだろうと俺は思う。

「ハルシオン、いい子で、お兄さん達の言う事をよく聞くのですよ」
「はい、母さま。ハルシオンはいい子で待っているので、母さまも早く来てくださいね」

 俺の腕の中に収まった、小さな子供。ルークは未だ困惑顔だ。

「ねぇ、サクヤ、本当にいいの?」
「奥方様にも事情があるようだし、この子もきっとうちの村で育った方が自分らしく生きられる」

 そう言い切ってはみたものの、不安がない訳ではない、あまり考える事もせずに連れて来てしまった。それは俺の心の何処かにあったルークの子供が欲しいという願望が先走った結果でもある。この子には半分ルークと同じ血が流れている、俺にはそれだけで充分だったんだ。

「お兄さんからは母さまと同じような匂いがします」

 俺に抱きつく小さな子供は言った。誰にも分からない、ルークにしか分からない俺の匂いがこの子には分かるのだろうか?

「お前からもいい匂いがするよ、ハルシオン」

 俺のその言葉に彼は笑った。


  ※  ※  ※



 村には黒髪の人間ばかりがひしめいている、怖がるかと思ったのだがハルシオンは最初戸惑いはしていたものの、順応力が高いのかそんな環境にもすぐに慣れた。それよりも何よりも屋敷の外という場所に彼は興味津々な様子だった。
 どこまで歩いて行っても壁にぶち当たらないというのはハルシオンにとっては衝撃的だったらしい。
 俺達の村はそこまで広くはない、けれど渓谷下の村の外はどこまで歩いても森林だ。彼は無邪気にその世界を楽しんでいる。

「ハ~ル、それ以上は危ないから、戻っておいで」

 時折彼はその森をどこまで行けるのか試したくなるようで、1人でずんずん歩いて行ってしまう事がある、彼の白色は雪以外の自然の世界に溶け込まない、俺達はそんな彼を探し出すのに大した時間はかからなかったが、彼の迷子癖にはとても困った。
 ハルシオンはルークよりも俺に懐いた。どうやら母親に似ているらしい俺の匂いに安堵するようなのだ。その匂いが俺にはよく分からないんだけどな。

「サクヤしゃん、母さまはいつここへ来ますか?」

 彼は時折俺に尋ねる。ルークは度々母親の元を訪ねるようになっていた、彼女はルークの事やハルシオンの事、そんな心配事がなくなったせいか、また急激に体調を崩したらしい。
 ルークは幾つかの話を母親から聞いたようなのだが、彼もまた母親同様、俺にその話をしようとはしなかった。

「きっと、そのうち」

 俺は嘘を重ねる。彼女の命は恐らく長くない、彼が母親に会える事はもう二度とないだろう。俺はそう思っていた。
 その予想が覆されたのは数週間後の事、ある人物が息も絶え絶えの彼女をムソンへと連れ帰ってきたのだ。その人物、それはルークの父親リンだった。

「ハルシオン、遅くなって、ごめんなさいね」

 彼女は息子の頬を撫でて涙を零した。

「母さま、ハルはちゃんといい子で待ってたよ」
「そうね、貴方は本当にいい子、ハルシオン、母は間もなくいなくなります、強く生きていくのですよ」

 リンが何故彼女をここへ連れてきたのか分からない、こうやって連れて来る事ができるのならば、もっと早くに連れてきてあげられたら良かったのに、と俺は思わずにはいられない。
 間もなく彼女は息を引き取り、リンさんは声もなく、ただ静かに泣いていた。
 彼女は生前言っていた、最後は番相手である彼に看取られて逝きたいと。彼女は最後にその願いを叶えて、幸せな一生だったと死ぬ事ができたのだろうか?
 残された者には残していった者の考えなど分からないし、この先答えが出る事もない、けれど彼女の死に顔はとてもとても穏やかだった。
 彼女の遺体はムソンの丘へと埋葬された、消えてしまった奥方様と子供の事をグライズ候はどう思うのだろうか? もはや俺達には関係のない事だが、俺は考えずにはいられない。

「ハルはこれからも、ここで暮らす事になるけれど、寂しくはない? 帰りたい?」
「母さまがいないのなら、あそこには誰もいないのです」
「ハルには父さまも兄弟もいただろう?」
「父さまはハルが好きではないから、ハルがこんな色をしているから、抱っこしてくれた事も一度もないよ。兄さま達も同じ、ハルは母さまだけのハルだったんだ」

 ハルシオンは母親の墓標を見詰めてそう言った。繋いだ手がきゅっと握られる。

「サクヤしゃんは、ハルのこの色は嫌いですか?」
「なんでそんな事を思うんだろうね? ハルはこんなに綺麗なのに。俺はハルを嫌ったりしない、ハルは大事な俺達の子供だから」
「ハルはサクヤしゃん達の子供になるですか?」
「元々そのつもりだったんだけどね、そういえばハルの許可は貰ってなかった。ハルは俺達の家族になるのは嫌かな?」

 一度は「母さまがいなければ嫌だ」と断られている、ハルは俺の顔を見上げた。

「ここでもハルの色は誰とも同じではないですよ?」
「別に色なんて関係ないだろう? それで言ったら村の外に出たら俺達のこの黒色も珍しがられて、あまりいい思いはしない」

「そうなのですか?」とハルシオンは大きな瞳を更に大きくさせて驚いた。

「そしたらどこかに、ハルと同じような色ばかりの人達が暮らすような村もありますか?」
「どうだろうな? いつかそんな村を探しに行くのもいいかもな」
「ハルにもできますか?」
「お前は自由だ、何でもできるさ」

 ハルシオンはにっこり笑って「ハルはサクヤしゃんの子供になります」とそう言った。
 傍らに佇むルークは相変わらず少し困ったような顔をしている、ハルシオンを連れ帰ってきてからルークはいつでもこんな表情だ。

「どうした、ルーク?」
「その中にオレも入れて」
「ん?」
「サクヤとハルばっかり仲良くなって、オレの居場所がない、オレも中に入れて!」

 子供のようにそう言ったルークに俺は思わず吹き出した。

「最近神妙な顔してると思ったら、お前そんな事考えてたのか?」
「だって、サクヤとハルはどんどん仲良くなるのに、ハルはあんまりオレに懐いてくれない……」

 ん? そうだっけ? 確かにハルはルークより俺に懐いている気はしていたが、そんなに疎外感を感じる程だっただろうか? ルークはハルシオンに視線を合わせるようにしゃがみ込むと、何故かハルシオンは俺の後ろに逃げ込んだ。
 最初は確かルークの方が上手に彼を扱っていたと思うのに、これはどういう事だ?

「ハルはオレが嫌い?」
「ハルは気付いてしまったです、ルークしゃんは兄さまに似てるですよ。ハルは兄さまが嫌いです、怖いです」

 確かにハルシオンとルークは血を分けた兄弟なのだ、そしてハルシオンの兄達もルークの兄弟で間違いないのだから、そこは似ていても仕方がない。

「何が怖い? どこが嫌い? 直せる所は直すから、教えてくれよ」
「ルークしゃんは兄さまと同じような匂いがするです、だから怖いです」
「待って、それオレにはどうする事もできない事だよ!?」
「サクヤしゃんの匂いは好きです」
「知ってる! オレもサクヤの匂いは好きだよ!」
「ルークしゃんは兄さまが母さまにしたみたいな酷い事はしないですか……?」

 瞬間ルークの表情が強張って「する訳ないじゃん」と真剣な表情でハルシオンに告げる。

「信じてもいいですか?」
「信じていいよ、それにオレはサクヤを愛してる、サクヤを傷付けるような事は決してしない」

 ハルシオンは俺の背後から顔を覗かせ、ずいっと小さな手を差し出す。

「指きりできますか?」
「そんなんでいいのか?」
「これは大変な契約なのですよ、嘘を吐いたら針を千本丸呑みにしなければならないのです」
「え……あぁ、まぁそうだな……」

 あまりの真剣なハルシオンの声音に俺は笑いを堪えるのが大変だ。

「それでも、指きりできますか?」
「いいよ、できるよ。それでハルの信頼を得られるなら御安い御用だ」

 ルークはハルシオンの小さく白い手を取って、自身の指に指を絡めた。
 小さくて大きな約束、ルークはハルに誓って俺を大事にしてくれるらしい。なんだかこれ結婚の宣誓みたいだな、立会人はハルシオン、俺達の大事な子供。
 こうして俺達には子供ができた、黒い夫婦の間に白い子供、それは一種異様にも映ったが、俺達は何も気にしなかった。
 結局俺には子供ができなかったし、ハルシオンは俺達の唯一の子供になったのだ。
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