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番外編:お嫁においでよ
ひまわり
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「ユリ君、おでかけしよ」
「おでかけ?」
小さな弟がきょとんとこちらを見上げた。
「ママも?」
「ママにはナイショ」
「ナイショ? ユリ、ママも一緒がいい」
いやいやと首を振る弟にルイはぷぅとむくれる。
「ママにはナイショなの。ママにプレゼントなの。ユリも行こ」
「ママ、プレゼント?」
「そう、ナイショナイショで、プレゼント」
「ママ、よろこぶ?」
「うん、ぜったい」
「ユリ、いくぅ」
小さな弟はようやく頷きルイの手を取った。
つい先日自分の誕生日があって、ルイは誕生日プレゼントをもらい、パパとママと弟のユリウスにたくさんたくさん「おめでとう」を言ってもらったのだ。
ルイはそれが嬉しくて仕方がなかったのだが、ママのお誕生日を今まで祝った事がないという事にその時ふと気が付いたのだ。
『ねぇ、ママのお誕生日はいつなの?』
『んん? ママの誕生日はいつなのかよく分からないんだよ』
ママは少し困ったようにそう言った。だけど誕生日が分からないなんてちょっと変。お祝いしないのはもっと変! だからルイはママのお祝いをする事に決めた。その為にまず必要なのはプレゼント!
ルイは意気揚々と外に出ようとして、まずその扉を開ける所で躓いた。
「手……届かない」
「あかない?」
パパは大きい。見上げるほどに大きい。
そんなパパのサイズに合わせたような我が家の作りはどこもかしこも大きくて、小さなルイの家の中での行動範囲なんて限られていた。
実は子供だけで家の外に出ようなんて思ったのはこれが初めてで、まさか玄関のドアに手が届かないとは思わなかった。
「部屋の扉は届くのに……」
でもこんな事でへこたれている場合ではない。
ルイは小さな弟ユリウスをその場に置いて、一度部屋に戻ると自分用の小さな椅子をよいしょ、よいしょと運んで来て、その上に乗って見事扉を開けることに成功する。
「あいた。ねぇね、すごい」
ユリウスはぴょんぴょんと飛び跳ねて喜び、ルイは少し誇らしげに胸を張った。
扉を開けて外を見やれば、天気もいいし、いいお出かけ日和。
ママは家の奥で部屋の片付けをしていて、まだ気付いていない。今のうちだ。
「ねぇね、ママにプレゼント、どこにあるの?」
「プレゼントはお花。あの丘の上に大きな黄色いのあったよね」
「あったぁ、パパみたいに大きいタンポポ」
「ユリ、あれはタンポポじゃないよ、ヒマワリっていうんだって」
「ヒワマリ?」
「ヒ・マ・ワ・リ! いつもお日様の方を向いてるからそう言うんだってママ言ってた」
「それをママにプレゼント?」
「そう!」
ルイはひとつ頷いて意気揚々と歩き出した。後ろからユリもちょこちょこと駆けて来る。
丘はそんなに遠くない、時々ママとお出かけもするから道も分かる。
まずは小さな川を越えて……
「ねぇね、お魚さんいるよ」
小さな弟はしゃがみ込んで、水面を見詰める。
「ユリ、お魚さんはまた後で、行こう」
「えぇ……お魚さん、バイバイ」
名残惜しそうにユリウスが魚に手を振るのを見やってルイはまた歩き出した。
次はしばらく一本道。
「ルイちゃん、ユリ君、どこ行くの?」
「ママにプレゼント取りに行くの」
道すがら声をかけられそう応えたら「気をつけてね」と応援された。
「ねぇね、ユリ、疲れちゃった」
急に弟がしゃがみ込む。抱っこ、とねだる弟を持ち上げたのはいいけれど、存外重たい弟を抱っこしていては、歩みは遅々として進まない。
「ユリ重たい、これじゃあいつまで経ってもママのプレゼント取りに行けない」
ぷぅとむくれるルイに、ユリウスは「僕、もうママのとこ帰りたい」と、泣き出した。泣き出した弟はもう手が付けられなくて、ルイもつられて泣きべそになりかけた所で「こんな所で何をしているのですか?」と、声をかけられた。
「パパ!」
「2人だけですか? ママは?」
「ママにはナイショなの。ママにプレゼントなの!」
「ママにプレゼント?」
パパは首を傾げて「なんのプレゼントですか?」と、ルイに聞いた。
「ママのお誕生日分からないから、今日がママの誕生日なの」
「誕生日……」
パパがひとつ頷いて弟のユリウスを抱き上げた。
「プレゼントは何ですか?」
「あっちの丘の大きなヒマワリ!」
「そうでしたか、では一緒に行きましょうね」
パパがルイの手を取った。ユリばっかり抱っこずるい。だけど、ルイはお姉ちゃんだから我慢。
パパと歩いて行くと、丘にはすぐに着いた。丘いっぱいに広がるヒマワリはルイやユリより大きくて、どうやって摘んでいいか分からない。
「どうしました?」
「ヒマワリの花束、難しい?」
「花束……それはまた、難題ですね。ヒマワリは大きいですから、一本ずつで充分ですよ」
そう言って、パパは私とユリに一本ずつヒマワリを根から引っこ抜いてくれた。自分の身長より大きなヒマワリ、ユリがそれを抱えて駆け出した。ルイより先にママに渡していっぱい褒めてもらおうと思ってるんでしょ! ユリはずるい! 私も早く行かなけりゃ!
「ちょ……ユリウス! ルイ!!」
パパの戸惑った声が追いかけて来る。でも、早く、早くヒマワリを届けないと。
丘を一気に駆け下りて、家までの道をひた走る。ルイはお姉ちゃんだから、すぐにユリにも追いついた。
家の前にはママが何かを探すように辺りを見回していた。
「ママ!!」
ルイの声に顔を上げるママ、何だか泣きそうだし、怒っているようにも見える。
「馬鹿! お前達、どこ行ってたんだ!! 勝手に家の外に出たら危ないだろう!!」
頭ごなしに怒られた。私とユリはママの手前で立ち竦む。だって、ママ本気で怒ってる。
「……あのね、でもね、ママ」
「あのも、でももない! 2人だけで外に出たら何があるか分からないんだからな!! お前達なんか可愛いから人攫いに攫われるかもしれないんだからな!」
ユリが私の傍らでふえぇぇ、と泣き出した。
「ママが怒ったぁぁ、おねぇちゃんのウソツキぃぃぃ」
だって、喜んでくれると思ったんだもん、だってママに喜んで欲しかったんだもん。ルイの瞳にも涙が溜まる、だけど泣いちゃ駄目、ルイはお姉ちゃんだから。
「グノー、そんなに頭ごなしに子供達を怒らないでください。これはこの子達が、あなたの為にしてくれた事なのですよ」
追いついてきた、パパが慌てたように私達の間に割って入る。
「お前、いたのかよ。いたなら一言くらい……」
「私もこの子達に会ったのは川の方だったので、連絡できませんでしたよ」
「川って……お前達! あそこはまだ危ないからお前達だけで行ったら駄目だって、あれほど言っておいたのに!!」
「だって……だって……」
ついに我慢していた涙が零れた。だって、ママにお花をプレゼントしたかったんだもん、丘に行くにはあの道しかなかったんだもん。
「グノー、ルイとユリウスはあなたに誕生日プレゼントを贈りたかったのですよ」
「誕生日? 誰の?」
「だから、あなたのですよ。あなたの誕生日、いつなのかよく分からないままじゃないですか、だからルイとユリウスは今日をママの誕生日にするつもりで、プレゼントを取りに行ったのですよ」
「俺の……?」
ママが驚いたような顔で私達を見やる。
「ママ、ごめんなさい~」
「ごめんしゃいぃぃ」
「いや、待って! ごめん!! 俺の方こそごめん! そんなの全然、思ってもなくて。突然いなくなって心配で、顔見たらつい怒っちまった! 理由も聞かなくて、ホントごめん」
しゃがみ込んだママがルイとユリを纏めて抱き寄せた。
「泣かせてごめん。ありがとう、そのヒマワリ、俺にくれるのか?」
「おっきなの、ひっく……ママに、あげたくて……うぇぇ」
「泣くな~マジごめんって、あぁ、やばい、俺も泣けてきた……」
「それでも、やっぱりママに黙って家を出て来たのはルイとユリが悪いので、ママにごめんなさいしましょうかね」
ルイとユリ、2人でママに謝ると、瞳を真っ赤にしたママは私達にもう一度「こっちこそごめんな」と、謝ってくれた。
「双方謝罪もできましたし、今日はママの誕生日と決めたからにはお祝いしないといけませんね」
パパの提案で、その日はママはママをお休みしてパパと一緒にユリとルイでご飯を作った。ママはとっても喜んで、なんだかまた泣いていた。
ルイやユリより大きなヒマワリは飾る花瓶もなくて、これもやっぱりパパと一緒に庭に穴を掘って埋め直した。ママはそんな私達とヒマワリを眺めてにこにこと笑っていた。
ママ、プレゼント喜んでくれたよね?
「いつまでも赤ん坊だと思っていたのに、子供はどんどん成長するな」
グノーが寝入ってしまった子供たちの髪を優しく撫でた。
「本当に。自分で考え行動して、時には私達が思いつきもしないような事をやってのけてしまう。こっちははらはらしますが、それも経験のひとつだと思えば見守るしかないですからね」
「こいつ等の成長速度が早すぎて、俺なんかあっという間に置いていかれそうだよ」
「ふふふ、それを見守るのも子育ての楽しみだと思いますよ」
ナダールがそう言って、やはり愛しげに子供たちの頬を撫でる。ナダールに出会えなければ、今の自分はいなかった。彼に出会えていなければこんな愛しい我が子を授かる事もなかった。グノーは心底、この男に出会えた奇跡に感謝する。
「改めまして、お誕生日おめでとうございます」
「んふふ、変な感じだな。生まれた事を祝われるなんて、でも、俺はきっと一生この日の事を忘れないよ」
「おでかけ?」
小さな弟がきょとんとこちらを見上げた。
「ママも?」
「ママにはナイショ」
「ナイショ? ユリ、ママも一緒がいい」
いやいやと首を振る弟にルイはぷぅとむくれる。
「ママにはナイショなの。ママにプレゼントなの。ユリも行こ」
「ママ、プレゼント?」
「そう、ナイショナイショで、プレゼント」
「ママ、よろこぶ?」
「うん、ぜったい」
「ユリ、いくぅ」
小さな弟はようやく頷きルイの手を取った。
つい先日自分の誕生日があって、ルイは誕生日プレゼントをもらい、パパとママと弟のユリウスにたくさんたくさん「おめでとう」を言ってもらったのだ。
ルイはそれが嬉しくて仕方がなかったのだが、ママのお誕生日を今まで祝った事がないという事にその時ふと気が付いたのだ。
『ねぇ、ママのお誕生日はいつなの?』
『んん? ママの誕生日はいつなのかよく分からないんだよ』
ママは少し困ったようにそう言った。だけど誕生日が分からないなんてちょっと変。お祝いしないのはもっと変! だからルイはママのお祝いをする事に決めた。その為にまず必要なのはプレゼント!
ルイは意気揚々と外に出ようとして、まずその扉を開ける所で躓いた。
「手……届かない」
「あかない?」
パパは大きい。見上げるほどに大きい。
そんなパパのサイズに合わせたような我が家の作りはどこもかしこも大きくて、小さなルイの家の中での行動範囲なんて限られていた。
実は子供だけで家の外に出ようなんて思ったのはこれが初めてで、まさか玄関のドアに手が届かないとは思わなかった。
「部屋の扉は届くのに……」
でもこんな事でへこたれている場合ではない。
ルイは小さな弟ユリウスをその場に置いて、一度部屋に戻ると自分用の小さな椅子をよいしょ、よいしょと運んで来て、その上に乗って見事扉を開けることに成功する。
「あいた。ねぇね、すごい」
ユリウスはぴょんぴょんと飛び跳ねて喜び、ルイは少し誇らしげに胸を張った。
扉を開けて外を見やれば、天気もいいし、いいお出かけ日和。
ママは家の奥で部屋の片付けをしていて、まだ気付いていない。今のうちだ。
「ねぇね、ママにプレゼント、どこにあるの?」
「プレゼントはお花。あの丘の上に大きな黄色いのあったよね」
「あったぁ、パパみたいに大きいタンポポ」
「ユリ、あれはタンポポじゃないよ、ヒマワリっていうんだって」
「ヒワマリ?」
「ヒ・マ・ワ・リ! いつもお日様の方を向いてるからそう言うんだってママ言ってた」
「それをママにプレゼント?」
「そう!」
ルイはひとつ頷いて意気揚々と歩き出した。後ろからユリもちょこちょこと駆けて来る。
丘はそんなに遠くない、時々ママとお出かけもするから道も分かる。
まずは小さな川を越えて……
「ねぇね、お魚さんいるよ」
小さな弟はしゃがみ込んで、水面を見詰める。
「ユリ、お魚さんはまた後で、行こう」
「えぇ……お魚さん、バイバイ」
名残惜しそうにユリウスが魚に手を振るのを見やってルイはまた歩き出した。
次はしばらく一本道。
「ルイちゃん、ユリ君、どこ行くの?」
「ママにプレゼント取りに行くの」
道すがら声をかけられそう応えたら「気をつけてね」と応援された。
「ねぇね、ユリ、疲れちゃった」
急に弟がしゃがみ込む。抱っこ、とねだる弟を持ち上げたのはいいけれど、存外重たい弟を抱っこしていては、歩みは遅々として進まない。
「ユリ重たい、これじゃあいつまで経ってもママのプレゼント取りに行けない」
ぷぅとむくれるルイに、ユリウスは「僕、もうママのとこ帰りたい」と、泣き出した。泣き出した弟はもう手が付けられなくて、ルイもつられて泣きべそになりかけた所で「こんな所で何をしているのですか?」と、声をかけられた。
「パパ!」
「2人だけですか? ママは?」
「ママにはナイショなの。ママにプレゼントなの!」
「ママにプレゼント?」
パパは首を傾げて「なんのプレゼントですか?」と、ルイに聞いた。
「ママのお誕生日分からないから、今日がママの誕生日なの」
「誕生日……」
パパがひとつ頷いて弟のユリウスを抱き上げた。
「プレゼントは何ですか?」
「あっちの丘の大きなヒマワリ!」
「そうでしたか、では一緒に行きましょうね」
パパがルイの手を取った。ユリばっかり抱っこずるい。だけど、ルイはお姉ちゃんだから我慢。
パパと歩いて行くと、丘にはすぐに着いた。丘いっぱいに広がるヒマワリはルイやユリより大きくて、どうやって摘んでいいか分からない。
「どうしました?」
「ヒマワリの花束、難しい?」
「花束……それはまた、難題ですね。ヒマワリは大きいですから、一本ずつで充分ですよ」
そう言って、パパは私とユリに一本ずつヒマワリを根から引っこ抜いてくれた。自分の身長より大きなヒマワリ、ユリがそれを抱えて駆け出した。ルイより先にママに渡していっぱい褒めてもらおうと思ってるんでしょ! ユリはずるい! 私も早く行かなけりゃ!
「ちょ……ユリウス! ルイ!!」
パパの戸惑った声が追いかけて来る。でも、早く、早くヒマワリを届けないと。
丘を一気に駆け下りて、家までの道をひた走る。ルイはお姉ちゃんだから、すぐにユリにも追いついた。
家の前にはママが何かを探すように辺りを見回していた。
「ママ!!」
ルイの声に顔を上げるママ、何だか泣きそうだし、怒っているようにも見える。
「馬鹿! お前達、どこ行ってたんだ!! 勝手に家の外に出たら危ないだろう!!」
頭ごなしに怒られた。私とユリはママの手前で立ち竦む。だって、ママ本気で怒ってる。
「……あのね、でもね、ママ」
「あのも、でももない! 2人だけで外に出たら何があるか分からないんだからな!! お前達なんか可愛いから人攫いに攫われるかもしれないんだからな!」
ユリが私の傍らでふえぇぇ、と泣き出した。
「ママが怒ったぁぁ、おねぇちゃんのウソツキぃぃぃ」
だって、喜んでくれると思ったんだもん、だってママに喜んで欲しかったんだもん。ルイの瞳にも涙が溜まる、だけど泣いちゃ駄目、ルイはお姉ちゃんだから。
「グノー、そんなに頭ごなしに子供達を怒らないでください。これはこの子達が、あなたの為にしてくれた事なのですよ」
追いついてきた、パパが慌てたように私達の間に割って入る。
「お前、いたのかよ。いたなら一言くらい……」
「私もこの子達に会ったのは川の方だったので、連絡できませんでしたよ」
「川って……お前達! あそこはまだ危ないからお前達だけで行ったら駄目だって、あれほど言っておいたのに!!」
「だって……だって……」
ついに我慢していた涙が零れた。だって、ママにお花をプレゼントしたかったんだもん、丘に行くにはあの道しかなかったんだもん。
「グノー、ルイとユリウスはあなたに誕生日プレゼントを贈りたかったのですよ」
「誕生日? 誰の?」
「だから、あなたのですよ。あなたの誕生日、いつなのかよく分からないままじゃないですか、だからルイとユリウスは今日をママの誕生日にするつもりで、プレゼントを取りに行ったのですよ」
「俺の……?」
ママが驚いたような顔で私達を見やる。
「ママ、ごめんなさい~」
「ごめんしゃいぃぃ」
「いや、待って! ごめん!! 俺の方こそごめん! そんなの全然、思ってもなくて。突然いなくなって心配で、顔見たらつい怒っちまった! 理由も聞かなくて、ホントごめん」
しゃがみ込んだママがルイとユリを纏めて抱き寄せた。
「泣かせてごめん。ありがとう、そのヒマワリ、俺にくれるのか?」
「おっきなの、ひっく……ママに、あげたくて……うぇぇ」
「泣くな~マジごめんって、あぁ、やばい、俺も泣けてきた……」
「それでも、やっぱりママに黙って家を出て来たのはルイとユリが悪いので、ママにごめんなさいしましょうかね」
ルイとユリ、2人でママに謝ると、瞳を真っ赤にしたママは私達にもう一度「こっちこそごめんな」と、謝ってくれた。
「双方謝罪もできましたし、今日はママの誕生日と決めたからにはお祝いしないといけませんね」
パパの提案で、その日はママはママをお休みしてパパと一緒にユリとルイでご飯を作った。ママはとっても喜んで、なんだかまた泣いていた。
ルイやユリより大きなヒマワリは飾る花瓶もなくて、これもやっぱりパパと一緒に庭に穴を掘って埋め直した。ママはそんな私達とヒマワリを眺めてにこにこと笑っていた。
ママ、プレゼント喜んでくれたよね?
「いつまでも赤ん坊だと思っていたのに、子供はどんどん成長するな」
グノーが寝入ってしまった子供たちの髪を優しく撫でた。
「本当に。自分で考え行動して、時には私達が思いつきもしないような事をやってのけてしまう。こっちははらはらしますが、それも経験のひとつだと思えば見守るしかないですからね」
「こいつ等の成長速度が早すぎて、俺なんかあっという間に置いていかれそうだよ」
「ふふふ、それを見守るのも子育ての楽しみだと思いますよ」
ナダールがそう言って、やはり愛しげに子供たちの頬を撫でる。ナダールに出会えなければ、今の自分はいなかった。彼に出会えていなければこんな愛しい我が子を授かる事もなかった。グノーは心底、この男に出会えた奇跡に感謝する。
「改めまして、お誕生日おめでとうございます」
「んふふ、変な感じだな。生まれた事を祝われるなんて、でも、俺はきっと一生この日の事を忘れないよ」
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