運命に花束を

矢の字

文字の大きさ
上 下
138 / 455
君と僕の物語

一方その頃

しおりを挟む
 俺、エドワード・ラングはファルスで第3騎士団に入れられここ最近騎士団員の真似事をさせられている。
 第3騎士団の騎士団長はイリヤを訪れた当初道に迷った俺をクロードの家まで送り届けてくれたあの大男、アイン・シグだった。
 アイン騎士団長は俺の顔を見ると「騎士団に入ってくれる気になったのか!」と喜色満面喜んでくれたが、それには曖昧な返答を返して現在俺は下っ端兵卒の手伝いをしている。
 騎士団の入隊は15歳からという事で自分と同じ下っ端仕事をしているのは軒並み同世代……と思いきやそんな事もなく、年齢層は幅広くて首を傾げる。
 どう考えてもこんな仕事してるのはおかしいだろ? という年齢の中年の男性が少年達に混じって雑務をこなしていたり、なんでその歳でその立場に立ってるんだ? という歳若い上司が指示を飛ばしたりしていて、ファルスの騎士団の勤務体系は全くもってよく分からない。ただ、そんな感じの騎士団でも皆比較的仲は良く、下っ端仕事をしている中年男性を年下が馬鹿にしたり、かといって歳若い上司を年長の下っ端が扱き下ろす事もない。
 不思議な組織だと思わざるをえないのだが、今の俺にはそんな事はどうでも良かった。

「次は何をすればいい?」

 騎士団の仕事は多岐にわたる、平和なこの国では争い事はとても少なく、本来の主な仕事である国防の仕事などあってないような物だった。
 今日は何故かドブ攫いをさせられた俺は、比較的歳の近そうな少年に声をかけたのだが、その少年は「ひっ」と悲鳴を上げて、おどおどと上司に聞いてくれとその場の指揮官に指示を丸投げした。
 その時その場にいた指揮官はやはり歳若い少年で俺がそちらに目を向けると、やはり怯えたように目を逸らした。
 解せない……
 俺は何もやっていないのに、この扱い。
 それは騎士団に入れられた当初から続く彼等の反応で、それがどうしてなのか聞こうにも誰も自分と口をきいてくれようとしないのだ。
 全くもって解せない。
 一体俺が何をした?

「あの……」
「君はいいから、そっちで剣の稽古でもしていてくれ!」

 逃げるように指揮官はそう言うのだが、一応これは職業訓練と銘打たれた仕事の一環、そういう訳にもいかないのだがと眉間に皺を寄せてしまう。
 下っ端仕事をしている年長の男達にも聞こうとするのだが、彼等は苦笑するばかりで何も教えてはくれなかった。

「もう、なんなんだ!!」

 憤懣やる方ないとはこの事だ。

「よう、エドワード少年やってるか?」

 気さくに声をかけてくれたのは第3騎士団長のアインだった。

「あ、団長お疲れ様です」

 ぺこりと頭を下げるとアインはやはり陽気な笑みを見せた。
 体の大きな騎士団長は歳は若いが人気者だ。
 老いも若いも皆こぞってアインに頭を下げるその中で常に堂々と振舞っているアインは王者の風格を持っている。
 クロードには弱そうなアインだったが、さすがに騎士団長を務めているだけのことは有る。

「ん? どうした? 不満そうな顔だな。こんな仕事は退屈か?」
「いえ、別に仕事に不満はないですけど、どうにも居心地が悪くて。どうも私はここでは嫌われているようで、誰も私と口を利いてくれません。理由も分からないのでどうしていいのかも分からない」

 あぁ……とアインは少し困ったような表情を見せて周りの部下達を見回すのだが、彼等もやはり困ったような表情でアインを見ていて俺1人が蚊帳の外なのだなと理解する。
 アインは苦笑いを浮かべて後ろ頭を掻いた。

「彼等も別に君を苛めようとかそういう意図ではないんだよ、ただ少しだけ扱いが難しいというだけでね」
「扱い?」
「うむ……そうだな、エドワード少年、少しこちらで話をしよう」

 アインがそう言ってその場の指揮官を見やると、彼はあからさまにほっとした表情で頷いた。
 促されるまま俺とアイン団長は歩き出す。
 しばらく歩き、人気のない道へと差し掛かるとアインはひとつ息を吐いた。

「エドワード君、君はクロード・マイラー様とは一体どういう関係なんだい?」

 開口一番聞かれたのがそんな言葉で俺は首を傾げた。

「は? え……関係? 関係……一応友人、ですかね? 上司という感じでもありますし、お目付け役でもあるかもしれませんが、それがどうかしましたか?」
「うむ、そうか。どういう経緯で友人に? あぁ……なに、変に思わないでくれ、今まで君のような人間はこの街にはいなかったし、突然現れてマイラー様の横に当たり前のように立っている事が不思議でならない人間がたくさんいるんだよ」
「別に友人になるのに特別な理由がいりますか?」
「まぁ、そうなのだがな」

 アインは歯切れ悪くやはり苦笑した。

「私の今のこの待遇とクロードとは何か関係があるんですか?」
「クロード!? 君はマイラー様の事はファースト・ネームで呼び捨てなのか?」
「え? あぁ、そうですね。クロードがそう呼べというので……」

 もはやアインが何に驚いているのかもよく分からず俺は首を傾げる。
 アインは挙動不審に辺りを見回し、そうかそうかと頷きながら困ったように腕を組んだ。

「さっきから一体何なんですか? その辺に誰かいるんですか?」
「まぁ、恐らく……」

 否定されると思いきや肯定されて俺は眉間に皺を寄せてしまう。

「誰かが話を盗み聞きしてる? 何の為に?」
「うむ……君には誰も何も言わなかったのか?」
「何をですか?」
「クロード・マイラー親衛隊」
「……何ですかソレ?」

 そうか、知らないのか……とアインは頭を抱えた。

「マイラー様には過激な信奉者が多くて、幼い頃には誘拐されかけたり襲われたりという事がたびたびあってな、そこで出来たのがクロード・マイラー親衛隊だ。彼等はマイラー様を影から守り守護している、彼に近付こうとする不埒者には制裁が課せられる」

 何を言われてるのかよく分からない。
 理解するのに数秒を要し、出てきた言葉が「……何なんですか、ソレ」といういたってシンプルな言葉だった。

「ようはマイラー様のファンクラブなのだが、これがまたこの親衛隊自体も過激でなぁ、マイラー様に近付こうとする輩を片端から排除していく、君は今まで何もなかったのかい?」
「別に、これといっては……」
「まぁ、あれだけマイラー様にべったり付いていたら、親衛隊も手は出せなかったという事か……」
「私がクロードに付いてるんじゃなくて、あっちが勝手に付いて来るんですよ……」

 まるで俺がクロードの金魚の糞のように言われるのは全くもって心外だ。
 付いて来なくていいと言うのに、外出の折々には付いて回ってくるのはクロードの方だ。
 現在住んでいるのもクロードの邸宅で、嫌でも四六時中顔を合わせているというのに迷惑極まりない。
 ここ第3騎士団で働き出してからはさすがに時々しか付いては来ないが、周りの反応はこんな感じだし、それがクロードのせいなのだとしたら、本当に言いがかりもいい所だ。

「そんな事はこちらとしては分からないからな……皆が君を避けるのは、自分達も巻き込まれない為の防衛反応だよ。親衛隊はどこに潜んでいるか分からないからな」
「すごく迷惑なんですけど……」
「まぁ、君にとってはそうだろうな。だが親衛隊はひどく真面目にこの活動を行っている、気をつけるに越した事はない」
「気を付けろと言われましても……それは俺にもクロードを無視してあの人から離れろと言っているのですか?」
「いや……そういう訳では……」
「言っているのはそういう事ですよ、何なんですか? 子供のイジメですか? そんな集団でクロードを無視するような事をして、親衛隊? 馬鹿馬鹿しい、クロードを守ってるつもりか知りませんけど、そんなの皆でクロードを苛めてるのと変わらないじゃないか!!」

 なんだか理不尽さに腹が立つ、これをいい大人がやってるのかと思うと本当に情けない。

「いや、でもな……本当に親衛隊は怖いんだ。睨まれたら何をされるか分からない」
「それ、苦情はどこで受け付けて貰えますか?」
「ううむ、何処という事もないのだが……」
「そう言えば、その辺に潜んでいるんでしたっけ?」
「あぁ、多分恐らく……」

 俺は人の潜んでいそうな建物の影に向かって叫んでやった。

「親衛隊がなんぼの物ですか! 俺はクロードと友達を辞めるつもりはない! 悔しかったらあんた達もクロードの隣に立ってみやがれ!!」
「な! ちょ……そんな喧嘩売るような事したら!」
「喧嘩上等、俺は弱い者虐めは好きません、やるなら正々堂々やろうじゃないですか。アインさんも、あんたこの国の騎士団長だろう? 何をそんなに弱気になってるんですか? 親衛隊ってのはそんなに偉いのか?」
「いや……それはそうなんだが、親衛隊は得体が知れない。迂闊に触れれば何が起こるか分からない」
「それはいい、何が起こるか高見の見物といかせていただきますよ」

 挑むようにそう言うと、アインは困惑した表情で額に手を当てた。

「何が起こっても俺は知らんぞ」
「どうでもいいですよ。というか、この国は平和過ぎて逆に頭が痛いです」

 ランティスでは王子暗殺事件に巻き込まれ生きるの死ぬのとやっていた傍らで、ファルスの騎士団長は親衛隊に守られて、お花畑に暮らしているというギャップに思考回路がついていかない。
 平和過ぎるだろファルス王国……そういえば王様がうちの親父だもんな……と俄かに遠い目をしてしまう。

「とりあえず、このままじゃ仕事にならない事はよく分かりました。まずはその親衛隊ぶっ潰しますので、しばらく仕事休みます」
「本気か?」
「姿も見せないような卑怯者の集団に負ける気がしないので」
「あはは、マジか……そうか、そうだな……もうそろそろ潮時かもしれんな」
「アイン団長は一体何を怖がってるんですか? 怖い物なんて無さそうな人相してるくせに」
「人相は関係ないだろう……」

 アインは人のいい笑みで苦笑する。

「正直おかしいとはずっと思っていたさ、でもな、俺がこの組織に気が付いたのは10年も前になるが、マイラー様に少しでも近付こうとしただけで何処からともなく水は降ってくるわ、物は無くなるわ、上司には理不尽に怒られるわで大変だったんだよ。当時は俺もまだペーペーの兵卒だったし、そんな得体の知れない物には近寄らないが吉と思っちまったんだよな」
「それでクロードを無視してたんですか?」
「む、そんな事はしていない! 親衛隊には掟があるんだ、こちらから故意に係わり合いになるのは駄目だが、マイラー様から声をかけられるのはOKなんだよ。だから皆声をかけて貰おうと必死でアピールをするのだが、如何せんマイラー様はあまり他人に関心がなくてな、視界の隅にも入れてもらえないのさ。ついでに言えばアピールが過ぎると親衛隊に目を付けられるから、あくまで自然の範疇でな。これが意外と難易度が高い」
「難易度……」

 本当にこの国の人達は何をやっているのだろうかと溜息しか出てこない。

「分かりました、クロードからの声掛けはOKなんですね。とすると、クロードの方から動けば何も問題はない訳だ」
「何をする気だ?」
「別に……とりあえずアインさんはクロードに声をかけられたらちゃんと返事をしてやってください。あいつは自分を嫌われ者だと思ってる、そんなの可哀相だと思いませんか?」
「何!?」

 むむむ、と考え込んでしまったアインを尻目に物陰をちらりと見やる。
 人影が動いた気がするのは気のせいか?
 まぁ、なんにせよ行動あるのみ。

「アイン団長約束です、絶対クロードを無視しないでくださいね」

 アインは少し困惑顔だったが「あぁ分かった」と頷いてくれた。
 俺はクロードの屋敷へと足を向けた、クロードは家にいるだろうか? いや、その前に話を聞きたい人がいる。

「ただいま戻りました」

 屋敷の扉を開けると、クロード邸の執事ハウスワードが「御早いお戻りですね」と小首を傾げた。

「ハウスワードさん、ちょうど良かった。聞きたい事があったんです。ハウスワードさんはクロードの親衛隊の事知ってます?」
「それは勿論、存じ上げていますよ」

 ハウスワードは主人に似たあまり動かない表情でそう言った。

「クロードもそれは知ってるんですか?」
「いえ、恐らく旦那様はご存じないかと思います」
「なんで言わないんですか?」
「特に必要性を感じませんでしたので」
「ねぇ、もしかしてハウスワードさんも親衛隊の一員なんですか?」

 アインに親衛隊の話を聞いて一番に思ったのはその事だった。
 アインは親衛隊はどこにいるかも分からないと言っていたのだが、クロードの一番身近にいる人間と言ったら誰より俺よりこの執事だと思ったからだ。
 身近にいる人間が排除傾向にあるのに、ハウスワードは長年ここに勤めているという、だったら親衛隊を知っていて当然だとも思うし、関係があったとしても不思議ではない。

「親衛隊ですか……そうでも有り、そうでも無しと言った所ですかね」
「ずいぶん中途半端な答えですね」
「私個人としては親衛隊に入ったという記憶はございません、ですが、入っているのではないかと言われたら否定は出来ないのです」
「どういう事ですか?」

 訝しげにハウスワードを見上げると、ハウスワードは立ち話もなんですのでと、俺を室内へと誘い、お茶を用意してくれた。

「親衛隊が発足した正しい時期というのは今ひとつ分からないのですが、私が親衛隊を最初に確認したのは旦那様が10歳になるかならないかと言った頃です、その当時私はもうこのマイラー家に仕えて10年以上経過していたので、旦那様の事は我が子のように大事に思っておりました、ですが旦那様はとても可愛らしいお子様で、その当時は旦那様に迷われる方が続出していたのですよ」

 アインは10年前に親衛隊を確認したと言っていたが、その歴史は更にもう少し古そうだと俺はハウスワードの話しに耳を傾けた。

「旦那様はこの国一番の大貴族マイラー家の次男、そして優秀で秀でていると言われるαです、それに加えてあの美貌、マイラー家の嫡男である現当主様は既にその頃には今の奥方様とご婚約をされていて、マイラー家へ取り入ろうとする輩は旦那様に焦点を合わせて狙っていたのでしょうね、当時10歳とはいえ既成事実を作ろうと思えば作れない年齢ではない、なのであの頃は旦那様を狙った誘拐など日常茶飯事で起こっていたのです」
「それ、クロード知ってるんですか?」

 危機感の薄いクロードがそんな目に合っていたというのが俄かに信じられず、そう聞くと……

「旦那様はのんびりした方なので……それでも本当に危ない目に合われた事も何度かあるのでちゃんと理解はしていると思いますよ」

 ハウスワードの答えは物騒極まりない。

「そんな時です、旦那様の周りでそういった事件が全部では無くとも、ある時を境にぴたりと無くなったのです。それが恐らく親衛隊の初期活動だったのではないかと推測されます。それからは旦那様に無闇に近寄ってくる人間も減り、家人の者としても安心していたのですが、ある時ふと思ったのです、旦那様の周りのご学友がなにやら少し疎遠になったな……と。元々旦那様はそれほど他人を気にするような性格でもなく、こちらもあまり気にしてはいなかったのですが、思春期を迎えられて、一番そういう性的な事にも目覚められる時分を過ぎても旦那様には浮いた話のひとつも出てこず、不思議には思っていました」
「もう、その時にはクロード1人ぼっちだったんじゃないですか?」
「まぁ、言ってしまえばその通りです。私どもは、それは旦那様がご自分の意思でそうされているのかと思っていたのです、元々自己主張もそうされる方ではありませんでしたからね……ですがそれは私どもの大きな間違いだったのです」

 ハウスワードは少し瞳を伏せてそう溜息を零した。

「気が付いたのはつい最近です、気付かせてくれたのはあなたでした、エドワード・ラング様」
「? どういう事ですか?」
「あなたと出会って旦那様はずいぶん変わられた、いつも穏やかに心静かに過されるのがお好きなのだとばかり思っていたのに、あなと一緒に過されている旦那様はそれはとても楽しそうなのです。長年ここマイラー家に、特に私は旦那様付きとして旦那様の成長を見守って参りましたが、これほどまでに楽しそうな旦那様を見た事がありません。旦那様は今まで私どもに何も言いはしませんでしたが、きっとお寂しかったのでしょうね」
「それはそうでしょう、誰も彼もが自分を空気のように扱う事が嬉しい人間がいる訳ない」

 「そうですよね」とハウスワードは自嘲するような笑みを見せた。

「私は親衛隊の一員ではありません、ですが恐らく親衛隊には信頼を置かれている人間であるのだと思います。私があなたの事を容認しているので、親衛隊も無闇にあなたに制裁を加えようとはしないはずです」
「それで今まで何もなかったんですか……」
「ただ、それでもやはり何か違和感を覚えられたから、あなたは私にその話を持ってきたのですよね? 何かございましたか?」
「別になんという事はないのですけど、遠巻きにはされています」
「親衛隊の中には一部過激な方もいらっしゃるそうですからね。ですがほとんどはただ見守るだけの善良な方々だと思いますよ」
「見守るだけって……見守られてる側がそれに気づいてなかったら、ただの集団無視ですよね」
「それは否定できませんね。ただこの仕組みができて旦那様の危険は格段に減りました、一概に親衛隊を悪だと私は言いたくないのですよ」

 確かにそんな危険と隣り合わせの生活を余儀なくされていたのなら、そう考えてしまうハウスワードの言葉を否定するのも何か違う気がする。

「ハウスワードさんは、この親衛隊の首謀者と言うか、ボス? って分かります?」
「親衛隊のボスですか……確かな事ではありませんが、それでもいいですか?」
「糸口さえ見付かるならなんでも!」

 俺の言葉にハウスワードは1人の人物の名を上げた。

「誰ですか?」
「旦那様の幼馴染です。とは言っても年齢は離れていて、どちらかと言えば旦那様の兄である現マイラー家当主様の友人という方が正しいかもしれません。現在は我が国ファルス王国の第2騎士団長様ですよ」

 第2騎士団長、確かにこの国には騎士団長が5人いると聞いた気がする。
 クロードより下でアイン団長より上という事だ。

「その人にはどうやったら会えますか?」
「それは旦那様にお聞きした方が早いかと思います」

 ハウスワードの言葉に頷いて、礼を述べて立ち上がるとハウスワードはにっこり笑みを見せた。

「あなたが何をなさろうとしているのか分かりませんが、私はここ最近の旦那様の変化はとても喜ばしい事だと思っております、私はあなたを歓迎いたしております」
「ありがとうございます。でもだったら、ハウスワードさんもクロードを甘やかすばかりじゃなく、少しは一般常識と危機感を教えてあげてください。襲われかけても気付かないなんて成人した人間にはあるまじき事ですよ」
「それはそうなのですが、私は個人的に警戒心でぴりぴりしている旦那様より、呑気にほやんとしている旦那様の方が好ましいと思っておりますので」

 あ、この人駄目だ、絶対クロードをまともに育てる気ないわ。
 ひどく真面目な顔でそう言うハウスワードを見やって、クロードの今の人格成形がいかにして成ったかを垣間見た気がした俺は苦笑した。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

処理中です...