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運命に花束を②
運命の一回戦①
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その日は朝から晴天で絶好のお祭り日和に街は大いに賑わっていた。
一週間という長い開催期間の祭りの初日という事もあり、メインである最終日よりは観光客も少ないと聞いていたのだが、そんな事を感じさせないほどの観客の数にナダールは驚きを隠せない。
試合の会場は街の郊外、城壁の外になるのだが、家族が参加している者達も多いのだろう、観客達は場所取りに余念がなく、一番最初の試合にも関わらずその時間にはもうずいぶん人が集まっていた。
「これは本当に凄いですねぇ」
どこからこれ程の人数の人達が湧いてきたのかと驚きを隠せないナダールは顔を上げて周りを見回す。
「ナダールさ~ん! 応援に来ましたよっ」
「あぁ、ありがとうキース君」
大きく手を振ってナダールは駆け寄って来たキースに笑みを見せる。自分は試合会場の草地に座り込んで作業をしていたのだが、なにせ体躯が大きいのでキースにも自分がどこにいるのかすぐに分かったのだろう。
「ナダールさん、そんな所に座り込んで何してるんですか?」
「ちょっとした悪戯です、ナイショですよ」
そう言ってナダールは口の前に人差し指を立てた。
その草地はまるで手入れもされていない荒れ放題の土地で、草は伸び放題、その丈はナダールの膝ほどまで伸びている。
「え? ちょっとコレいいんですか? 反則とかになりません?」
「確認はとりましたよ。次の試合までに現状復帰させる事が条件ですが、OK貰っています」
ナダールがやっていたのは伸び放題の草を結んだ罠作りだった。
「私一番最初でラッキーだったかもしれませんね、まだ何も踏み荒らされたりもしていないので、とても作りやすかったです」
「え~そんなの有りなんて聞いてないよ」
「しーっ、駄目ですよ、他の人に気付かれてしまう。それにこれはちゃんとルールブックにも書いてありましたよ『そこにあるものは使用可』ってね。私はここに在る物しか使ってないですから反則ではありません」
そう言って笑うとキースは「そんなぁ……」と頭を抱えた。
「オレの試合3日目ですよ、3日目なんてどんな風に変わってるか分からないじゃないですか!」
「そこは臨機応変に考えるしかないんじゃないですか? 荒らされた土地は、それはそれで別の使い方もあるかもしれません」
「これってそういう試合なんだ……甘かった、オレ絶対3日目の方が有利だと思ってたのに……」
キースはそう言って自身の髪をくしゃくしゃと掻き回した。
「3日目が有利って、何故そう思ったんですか?」
「だって二回戦は団体戦だから! 負けた人達は勝った人の中から自分のボスを選んで一緒に戦うんですよ、3日目ならほとんどの人が自分の勝敗分かってるし、負けた人達は誰に付くか考えながら試合見てるんで人集めが楽なんです。そこで目立てば人は勝手に集まってくるから」
「……なんて事、私二回戦目の事なんて何も考えていませんでしたよ……」
確かにルールブックには二回戦目の概要も記載されており、そんな事が書いてあったと思い出す。
キースの言う通り、こんな一試合目からそういう目で試合を見ている人間は多くはないだろう……そもそもここに越してきたばかりで知人がほとんどいない自分にとってはかなり不利な話だ。
とは言ってもこの一回戦目に勝たなければ全く意味のない話でもあるのだが、どのタイミングで試合をしたとしても一長一短という事だ。
「う~ん、でもどのみち一回戦勝たなきゃ二回戦なんてない訳だし、まずは勝つ事だけを考えるべきかもですね。こんな作戦思い付くナダールさんならきっと勝てますよ、頑張ってください!」
笑みを見せ、励ましの言葉をくれるキースにナダールは頷いた。
これもキースの言う通りだ、まずは勝たなければ意味がない。試合開始はもう間もなくだ、集合の合図がかかり、ナダールはそちらを見やる。
そこには50人ほどの騎士が皆各々準備を始めていた。
「あいつ、ちゃんと気付いたな」
ブラックはそう言って笑った。
この一回戦目はサバイバル戦だ、何もない場所でそこに在る物をいかに利用し勝ち残るか、それに気付くか気付かないかで戦い方が大きく変わる。
早々にルールを公表しているのもその為で、気付いている者はナダール同様何かしらの下準備をしているはずだ。
「まぁ、そのくらい機転が利かないと人の上には立てませんからね」
「お前はそういうの苦手だろ?」
「でも、ちゃんと勝ち残りました」
お前のは半分反則みたいなもんじゃないかとブラックは苦笑う。
彼の勝ち方はある意味とても特殊だった。本人は酷く真面目にやっているのだが、彼に甘い回りの人間がお膳立てをするように彼に勝利を与えたのだ。
それを一概に反則とは言えず、そのまま勝利として勝ち上がったが、ああいう試合結果は後にも先にも彼にしか許されないものだっただろう。
人目を避けるように立ち、2人は試合を覗き見る。
ブラックの姿は完全に庶民に同化していて顔を隠しもしていないが、もう一人の男は顔を隠すようにフードを深く被り、周りを警戒するように気を張り巡らせていた。
「それで陛下……」
「ブラック!」
「失礼しました、ブラック様。私を呼び出したのは一体どのようなご用件で?」
「本当はお前だって参加しないといけないんだからな」
「いえ、私はもうこの地に戻るつもりはありませんので……」
「言われんでも分かってる、それでも最後にちゃんと幕くらい引いていっても罰は当たらんだろう、なぁ……クロード」
フードを目深に被った男、それはこの国ファルスの第一騎士団長クロード・マイラーその人だった。
ここイリヤを飛び出してから行方知れずと巷では騒がれているが、ブラックはちゃんとその所在を把握しており、今回この武闘会に彼を呼び付けたのだ。
「私に何をしろと?」
「あの男、勝たせてこい」
「ナダールさんですか? エディがいい顔しないでしょうね」
「知った事か、そもそもお前を連れてっちまったあいつのせいでもあるんだから、文句は聞かん」
言ってブラックは腕を組み、動き出した試合を見やった。
「この試合、彼に勝算は?」
「8割方勝つだろう。負けたらそれまでの男だという事だ、それならそれで仕方がないが、どのみち二回戦勝ち上がるだろうから、お前はその手伝いだ」
「私が手出しをするのは反則になりませんか?」
「負けた騎士団員が自分の意思でボスを見付けるんだ、別に問題ないだろう? お前はもう敗者扱いだ」
「敗者……それは少しばかり嫌な響きですね」
「お前は意外と負けず嫌いだもんな、はは。嫌なら断ってくれても構わんが、その際にはお前の三回戦からの試合参加は決定事項だ、好きな方を選べ」
クロードはやれやれといった風に首をふった。
「私に選択肢はないという事ですね」
「立つ鳥跡を濁さずってな、後釜くらい自分で据えていけ」
「承知致しました。やるからには全力でやらせていただきます」
「そうしてくれ」とブラックは試合の様子を見やった、そこには男達があちらこちらで小競り合いを始めており、ブラックは目を細める。
目当ての人物はそんな中、ひょいひょいと人波を掻き分けて逃げ回っていた。
『明日は河原のこの辺で見ていて貰っていいですか?』
昨夜のうちにナダールにそう言われていた俺は、子供達を連れて言われた場所で試合を観戦していた。
「ねぇ、パパどこぉ?」
「ん~よく見えねぇな。あぁ、アレだ」
その時ナダールは自分達のいる場所とは対角線上の端にある草原を一人逃げ回っていた。
試合会場は一キロ四方ほどの広さで、さすがに遠すぎてあまりよく見えない。
「なんか、すごく追いかけられてるね。鬼ごっこ?」
「う~ん、あいつ目立つからなぁ……」
首を傾げる娘に俺は苦笑しながらそう応えた。
一回戦目は乱闘戦だ、自分以外は全員敵という状態で最後に立っていた者が勝者となる。
武器の使用は不可、相手を転がすか負けを認めさせれば勝ちとなる。多少の怪我はこんな試合なので当然あるだろうが、相手に大怪我を負わせた場合も失格となるので意外と加減が難しい。
そんな中で人一倍体格のいいナダールは良くも悪くも目立っていて、こいつを倒すのは厄介だと判断されれば、まずは先に何人かでかかって倒してしまおうという心理が働くのも致し方ないことだ。
恐らくそんな心理が働いたのであろう複数の男達にナダールは執拗に追い掛け回されており、それを承知しているのであろうナダールは、その男達をひょいひょいと避けて駆けていた。
「あいつ、戦う気ねぇな」
「あ……後ろの人転んだよ」
見ると、ナダールを追い掛け回していた男達が、何かに蹴躓くようにして一人、また一人と面白いように転がっていく。
さてはナダールの奴何かしたな……とグノーは瞳を細めた。
体格のわりにナダールのフットワークは軽い、気が付くといつの間にかナダールを追い回していた敵の数はずいぶん減っていた。
「2の4の6……まだ半分くらい残っていますね」
草原に作った罠はずいぶん敵の数を減らしてくれたが、それでもすべての敵をそんな子供騙しな罠で倒せるなどとははなから思っていない。
自分以外の所でももちろん戦闘は続いていたが、まだまだ敵の数は半分ほどまでしか減っていなかった
「ここはこの辺までですかね」
言ってナダールは手近にあったまだ細い若木の枝をへし折った。
「武器の装備は禁止のはずだぞ!」
「厳密には『その場にある物は使用可』なのでルール違反にはならないはずですよ」
息を切らして叫んだ相手にナダールはにっこり笑ってそう返し、その若木をぶんと振り回した。驚いた拍子に倒れこんだ男達にも笑みを見せてナダールはまた駆け出す。
それがOKならばとまだ残った男達も手頃な枝を探すが、その辺りにはもうそんな物は残っていない。
「敵に塩は送りませんよ」
前もってその辺りの若木はすでにこれ一本を残して撤去済みだ。今の所流れは自分の描いたシナリオ通り、すべて上手くいくとは限らないが、手応えは悪くない。
「さて……と」
ナダールは若木を引き摺るようにして砂地へと駆けて行く。
「いい風だ、私は本当に運がいい」
頬を撫でる少し強めの風にナダールは瞳を細めて、そのまま砂地を駆け回り辺り一面に砂埃を撒き散らしていく。
たちまち会場には埃が舞い上がり、男達どころか観客の視界までも奪っていく。
「くそっ、何も見えない!」
苛立つような声と、それと同時に上がるくぐもった呻き声。中には驚いたような叫び声も聞こえる。
「皆さん、怪我はしないでくださいねっ!」
ナダールは足払いをかけるように若木をぐるりと振り回す。
幾人かはそれで倒し、更に舞い上がる砂埃に戸惑っている人間に背後から忍び寄ると、ナダールは次々と男達に手刀を落としていった。
「ママ、なんにも見えなくなっちゃったよ」
「そうだなぁ、見えないなぁ」
その時砂埃の中から2つの人影が躍り出てきた。
「あ、パパだ」
それはナダールともう一人、大柄な男がナダールと共に砂埃の中から飛び出してきたのだ。
2人は砂地から離れるように川辺に向けて走ってきた。
「パパ、来たよ!」
「きたぁ~」
喜ぶ子供達だったが、こちら目がけて勢いよく駆けて来る2人に俺は子供2人を抱え上げた。自分達が観戦していたその場所は確かに試合会場の外なのだが、そこには柵がある訳でもない、あまりの勢いに場外乱闘という事もありえるからだ。
「グノー!」
ナダールが叫ぶ。
「なんだよ、まだ試合中だろ! そっちに集中しとけよ、危ないだろうが!」
「動かないで! そこにいてくださいっ」
2人を抱いてもう少し下がろうとしていた俺はその言葉に立ち止まる。
戦う男2人はもう目と鼻の先まで迫っていた。
なんで? と思いはするのだが、ナダールが自分にそう言うのなら、彼には何か理由があるのかもしれない。
「ちょこまかと逃げやがって! 待てこら!!」
ナダールを追いかけて来た男がナダールに腕を伸ばす。
男はナダールに負けず劣らず大きくて体格もいい屈強な男だった。
「そこの一般人! 危ないから下がっていろ!」
男は俺を見やってそう叫んだ。ちゃんと周りの見えている、気遣いもできる男なのだろう。だが、俺は子供を抱えたまま首をふった。ナダールがここを動くなとそう言ったのだ、だったら俺は彼に従う。
「この先は、行かせないので大丈夫です!」
俺達と彼等の距離は10m程まで近付いていた。
ナダールはくるりと彼に向き直り、男は勢い余ったのだろうそのままナダールに激突するように突っ込んでくる。その勢いをそのまま利用して押し返すようにナダールは男の腰に組み付いた。
「くっ!」
それでも倒れる事のなかった男はさすがとしか言いようがない。踏ん張るように踏みとどまった男はまたこちらを見た。
「そこ、下がれと言っているだろう!!」
苛立ったように怒鳴る男にグノーはまた首をふった。
「ママ……こわい」
「大丈夫、パパがいるだろう?」
自分にしがみついてくる子供達に笑みを見せると、子供達はまた2人を見やる。
それでもいつでも逃げられる体勢はとっている、恐らくナダールにとってこの試合の流れはすべて想定済みだったのだろう。
そして、それでなおここにいろと言うのだから、それは彼にとって意味がある。
「背水の陣……だな」
おあつらえ向きに背後に川も流れている、俺はおかしくて笑ってしまった。
戦う事が好きではないナダールにとって、どんな戦いにしても『戦う理由』という物が必要なのだろう。
家族を守って戦う、彼にとってはたぶんそれが一番自分の力が発揮できる場だとナダールは分かっているのだ。
その時どこからか小石がひとつ飛んで来てナダールの肩に当たった。
石つぶては一つ二つと増えていき、ナダールと男は胡乱な表情でその石の飛来先を見やると、そこにはまだ入隊したて思われる少年がびくっと身を震わせこちらを見ていた。
「石は……使ってもいいはずですよね!」
精一杯虚勢を張っているのだろう少年の声は震えていて、幾つも小石を抱えているがその体も震えているのが分かる。
「まだ、残っていましたか」
「ちっ、こざかしい」
思わず対戦相手と息が合ってしまった。
少年はその辺の小石を掻き集めてめくらめっぽうに小石を投げ始めるが、それは闇雲な投石で、半分も2人に当たらない。
しかし、その投石の一つが2人を飛び越え、グノーと子供達の方へ飛んでいき、ナダールは思わずその石を掴み取った。
「確かに石は違反ではありませんが……」
その小石を掌で転がし少年を見据える。
「当たったら痛いじゃないですかっ!」
そしてその石を、勢いを付けて投げ返すと、それは少年の頬を掠めて後方へと飛んでいった。それと同時に自分と相対していた男も小石を拾い上げ少年へ向かって石を投げ返す。
「投石ってのはな、こうやるんだよっ!」
男の攻撃は容赦がない。その石は少年の肩に当たり、彼は怯えたように逃げ出した。
「こら、待て!!」
言って男はもう一つ石を摘み上げ、今度は足に向かってその石を投げる。
石は見事に少年の足元を狂わせて、少年は転がり負けが確定した。
「だから石は痛いって言ったのに……」
「戦闘に痛いもくそもあるかっ!」
改めて男はナダールに向き直り、こちらを睨みつける。
「お前はやる気があるのかっ!」
「やる気はもちろんありますよ」
にっこり笑ってそう言うと、男は険しい顔でちっと舌打ちをした。
「俺はこんな所で負ける気はないんだよっ! 遊び半分なら帰んなっ!!」
「こちらも生活がかかっているので、負ける気も遊びのつもりもありませんよ」
「だったらその顔やめろ! 腹が立つ!!」
言って体当たりで突進してきた男をがっしりと受け止める、どちらも同じような体格でその勢いでは揺るがない2人のそれは完全に力比べの様相だ。
腹が立つと言われても、これは地顔でどうする事もできないナダールはまた笑みを零す。
「子供を怖がらせたら、父親失格でしょう?」
ふっとナダールは体の力を抜く。勢いが余っている男はその瞬間体のバランスを崩しかけ一瞬の隙が生まれた、その隙を見逃さずナダールは男の腕を取り、そのまま静かに投げ飛ばした。
一瞬の静寂、投げ飛ばされた男も何が起こったのか分からないという顔で、地面に転がされたまま空を仰いでいる。
「パパ、勝った!」
「かった! かった!」
子供達はグノーの腕から解放されると満面の笑顔でこちらへと駆けて来た。
そのうち周りからもぱちぱちと拍手が聞こえてきて、とりあえず一回戦目は無事に終えることができたのだと安堵した。
2人の子供の頭を撫でて、いまだ座り込んだままの男のもとへ歩み寄る。
「大丈夫ですか?」
にっこり笑って男に手を差し出すと、男は心底嫌そうな顔でその手を払いのけ、一人で立ち上がると体に付いた砂埃を払った。
「お前所属は何処だ? お前みたいな奴、今まで見た事ないと思うんだが?」
「まだ新入りなので所属はありません。ナダール・デルクマンと申します、あなたは?」
「俺は第3騎士団分団長、スタール・ダントンだ」
「えっ、分団長……ですか?」
「お前のせいで、また今日から下っ端兵卒に逆戻りだ」
「まぁ、うちの騎士団はそんな奴ばかりだから慣れっこだけどな」と、それでも苦虫を噛み潰したような顔でスタールは言った。
「それは大変申し訳ないことを……」
「俺を負かしたからには、次も負けはないからな、絶対勝てよ!」
「はい、頑張ります」
パパ、抱っこ抱っこと纏わり付いてくる子供達を抱き上げてその頬にキスを落とす。
「それはお前の子供達か?」
「はい、子供と向こうが私の最愛の人です」
満面の笑顔でそう言うと、スタールは子供を見やり、グノーをちらりと見やってまたこちらを向いて「やっぱりお前なんか負けちまえ」とそう呟いた。
一週間という長い開催期間の祭りの初日という事もあり、メインである最終日よりは観光客も少ないと聞いていたのだが、そんな事を感じさせないほどの観客の数にナダールは驚きを隠せない。
試合の会場は街の郊外、城壁の外になるのだが、家族が参加している者達も多いのだろう、観客達は場所取りに余念がなく、一番最初の試合にも関わらずその時間にはもうずいぶん人が集まっていた。
「これは本当に凄いですねぇ」
どこからこれ程の人数の人達が湧いてきたのかと驚きを隠せないナダールは顔を上げて周りを見回す。
「ナダールさ~ん! 応援に来ましたよっ」
「あぁ、ありがとうキース君」
大きく手を振ってナダールは駆け寄って来たキースに笑みを見せる。自分は試合会場の草地に座り込んで作業をしていたのだが、なにせ体躯が大きいのでキースにも自分がどこにいるのかすぐに分かったのだろう。
「ナダールさん、そんな所に座り込んで何してるんですか?」
「ちょっとした悪戯です、ナイショですよ」
そう言ってナダールは口の前に人差し指を立てた。
その草地はまるで手入れもされていない荒れ放題の土地で、草は伸び放題、その丈はナダールの膝ほどまで伸びている。
「え? ちょっとコレいいんですか? 反則とかになりません?」
「確認はとりましたよ。次の試合までに現状復帰させる事が条件ですが、OK貰っています」
ナダールがやっていたのは伸び放題の草を結んだ罠作りだった。
「私一番最初でラッキーだったかもしれませんね、まだ何も踏み荒らされたりもしていないので、とても作りやすかったです」
「え~そんなの有りなんて聞いてないよ」
「しーっ、駄目ですよ、他の人に気付かれてしまう。それにこれはちゃんとルールブックにも書いてありましたよ『そこにあるものは使用可』ってね。私はここに在る物しか使ってないですから反則ではありません」
そう言って笑うとキースは「そんなぁ……」と頭を抱えた。
「オレの試合3日目ですよ、3日目なんてどんな風に変わってるか分からないじゃないですか!」
「そこは臨機応変に考えるしかないんじゃないですか? 荒らされた土地は、それはそれで別の使い方もあるかもしれません」
「これってそういう試合なんだ……甘かった、オレ絶対3日目の方が有利だと思ってたのに……」
キースはそう言って自身の髪をくしゃくしゃと掻き回した。
「3日目が有利って、何故そう思ったんですか?」
「だって二回戦は団体戦だから! 負けた人達は勝った人の中から自分のボスを選んで一緒に戦うんですよ、3日目ならほとんどの人が自分の勝敗分かってるし、負けた人達は誰に付くか考えながら試合見てるんで人集めが楽なんです。そこで目立てば人は勝手に集まってくるから」
「……なんて事、私二回戦目の事なんて何も考えていませんでしたよ……」
確かにルールブックには二回戦目の概要も記載されており、そんな事が書いてあったと思い出す。
キースの言う通り、こんな一試合目からそういう目で試合を見ている人間は多くはないだろう……そもそもここに越してきたばかりで知人がほとんどいない自分にとってはかなり不利な話だ。
とは言ってもこの一回戦目に勝たなければ全く意味のない話でもあるのだが、どのタイミングで試合をしたとしても一長一短という事だ。
「う~ん、でもどのみち一回戦勝たなきゃ二回戦なんてない訳だし、まずは勝つ事だけを考えるべきかもですね。こんな作戦思い付くナダールさんならきっと勝てますよ、頑張ってください!」
笑みを見せ、励ましの言葉をくれるキースにナダールは頷いた。
これもキースの言う通りだ、まずは勝たなければ意味がない。試合開始はもう間もなくだ、集合の合図がかかり、ナダールはそちらを見やる。
そこには50人ほどの騎士が皆各々準備を始めていた。
「あいつ、ちゃんと気付いたな」
ブラックはそう言って笑った。
この一回戦目はサバイバル戦だ、何もない場所でそこに在る物をいかに利用し勝ち残るか、それに気付くか気付かないかで戦い方が大きく変わる。
早々にルールを公表しているのもその為で、気付いている者はナダール同様何かしらの下準備をしているはずだ。
「まぁ、そのくらい機転が利かないと人の上には立てませんからね」
「お前はそういうの苦手だろ?」
「でも、ちゃんと勝ち残りました」
お前のは半分反則みたいなもんじゃないかとブラックは苦笑う。
彼の勝ち方はある意味とても特殊だった。本人は酷く真面目にやっているのだが、彼に甘い回りの人間がお膳立てをするように彼に勝利を与えたのだ。
それを一概に反則とは言えず、そのまま勝利として勝ち上がったが、ああいう試合結果は後にも先にも彼にしか許されないものだっただろう。
人目を避けるように立ち、2人は試合を覗き見る。
ブラックの姿は完全に庶民に同化していて顔を隠しもしていないが、もう一人の男は顔を隠すようにフードを深く被り、周りを警戒するように気を張り巡らせていた。
「それで陛下……」
「ブラック!」
「失礼しました、ブラック様。私を呼び出したのは一体どのようなご用件で?」
「本当はお前だって参加しないといけないんだからな」
「いえ、私はもうこの地に戻るつもりはありませんので……」
「言われんでも分かってる、それでも最後にちゃんと幕くらい引いていっても罰は当たらんだろう、なぁ……クロード」
フードを目深に被った男、それはこの国ファルスの第一騎士団長クロード・マイラーその人だった。
ここイリヤを飛び出してから行方知れずと巷では騒がれているが、ブラックはちゃんとその所在を把握しており、今回この武闘会に彼を呼び付けたのだ。
「私に何をしろと?」
「あの男、勝たせてこい」
「ナダールさんですか? エディがいい顔しないでしょうね」
「知った事か、そもそもお前を連れてっちまったあいつのせいでもあるんだから、文句は聞かん」
言ってブラックは腕を組み、動き出した試合を見やった。
「この試合、彼に勝算は?」
「8割方勝つだろう。負けたらそれまでの男だという事だ、それならそれで仕方がないが、どのみち二回戦勝ち上がるだろうから、お前はその手伝いだ」
「私が手出しをするのは反則になりませんか?」
「負けた騎士団員が自分の意思でボスを見付けるんだ、別に問題ないだろう? お前はもう敗者扱いだ」
「敗者……それは少しばかり嫌な響きですね」
「お前は意外と負けず嫌いだもんな、はは。嫌なら断ってくれても構わんが、その際にはお前の三回戦からの試合参加は決定事項だ、好きな方を選べ」
クロードはやれやれといった風に首をふった。
「私に選択肢はないという事ですね」
「立つ鳥跡を濁さずってな、後釜くらい自分で据えていけ」
「承知致しました。やるからには全力でやらせていただきます」
「そうしてくれ」とブラックは試合の様子を見やった、そこには男達があちらこちらで小競り合いを始めており、ブラックは目を細める。
目当ての人物はそんな中、ひょいひょいと人波を掻き分けて逃げ回っていた。
『明日は河原のこの辺で見ていて貰っていいですか?』
昨夜のうちにナダールにそう言われていた俺は、子供達を連れて言われた場所で試合を観戦していた。
「ねぇ、パパどこぉ?」
「ん~よく見えねぇな。あぁ、アレだ」
その時ナダールは自分達のいる場所とは対角線上の端にある草原を一人逃げ回っていた。
試合会場は一キロ四方ほどの広さで、さすがに遠すぎてあまりよく見えない。
「なんか、すごく追いかけられてるね。鬼ごっこ?」
「う~ん、あいつ目立つからなぁ……」
首を傾げる娘に俺は苦笑しながらそう応えた。
一回戦目は乱闘戦だ、自分以外は全員敵という状態で最後に立っていた者が勝者となる。
武器の使用は不可、相手を転がすか負けを認めさせれば勝ちとなる。多少の怪我はこんな試合なので当然あるだろうが、相手に大怪我を負わせた場合も失格となるので意外と加減が難しい。
そんな中で人一倍体格のいいナダールは良くも悪くも目立っていて、こいつを倒すのは厄介だと判断されれば、まずは先に何人かでかかって倒してしまおうという心理が働くのも致し方ないことだ。
恐らくそんな心理が働いたのであろう複数の男達にナダールは執拗に追い掛け回されており、それを承知しているのであろうナダールは、その男達をひょいひょいと避けて駆けていた。
「あいつ、戦う気ねぇな」
「あ……後ろの人転んだよ」
見ると、ナダールを追い掛け回していた男達が、何かに蹴躓くようにして一人、また一人と面白いように転がっていく。
さてはナダールの奴何かしたな……とグノーは瞳を細めた。
体格のわりにナダールのフットワークは軽い、気が付くといつの間にかナダールを追い回していた敵の数はずいぶん減っていた。
「2の4の6……まだ半分くらい残っていますね」
草原に作った罠はずいぶん敵の数を減らしてくれたが、それでもすべての敵をそんな子供騙しな罠で倒せるなどとははなから思っていない。
自分以外の所でももちろん戦闘は続いていたが、まだまだ敵の数は半分ほどまでしか減っていなかった
「ここはこの辺までですかね」
言ってナダールは手近にあったまだ細い若木の枝をへし折った。
「武器の装備は禁止のはずだぞ!」
「厳密には『その場にある物は使用可』なのでルール違反にはならないはずですよ」
息を切らして叫んだ相手にナダールはにっこり笑ってそう返し、その若木をぶんと振り回した。驚いた拍子に倒れこんだ男達にも笑みを見せてナダールはまた駆け出す。
それがOKならばとまだ残った男達も手頃な枝を探すが、その辺りにはもうそんな物は残っていない。
「敵に塩は送りませんよ」
前もってその辺りの若木はすでにこれ一本を残して撤去済みだ。今の所流れは自分の描いたシナリオ通り、すべて上手くいくとは限らないが、手応えは悪くない。
「さて……と」
ナダールは若木を引き摺るようにして砂地へと駆けて行く。
「いい風だ、私は本当に運がいい」
頬を撫でる少し強めの風にナダールは瞳を細めて、そのまま砂地を駆け回り辺り一面に砂埃を撒き散らしていく。
たちまち会場には埃が舞い上がり、男達どころか観客の視界までも奪っていく。
「くそっ、何も見えない!」
苛立つような声と、それと同時に上がるくぐもった呻き声。中には驚いたような叫び声も聞こえる。
「皆さん、怪我はしないでくださいねっ!」
ナダールは足払いをかけるように若木をぐるりと振り回す。
幾人かはそれで倒し、更に舞い上がる砂埃に戸惑っている人間に背後から忍び寄ると、ナダールは次々と男達に手刀を落としていった。
「ママ、なんにも見えなくなっちゃったよ」
「そうだなぁ、見えないなぁ」
その時砂埃の中から2つの人影が躍り出てきた。
「あ、パパだ」
それはナダールともう一人、大柄な男がナダールと共に砂埃の中から飛び出してきたのだ。
2人は砂地から離れるように川辺に向けて走ってきた。
「パパ、来たよ!」
「きたぁ~」
喜ぶ子供達だったが、こちら目がけて勢いよく駆けて来る2人に俺は子供2人を抱え上げた。自分達が観戦していたその場所は確かに試合会場の外なのだが、そこには柵がある訳でもない、あまりの勢いに場外乱闘という事もありえるからだ。
「グノー!」
ナダールが叫ぶ。
「なんだよ、まだ試合中だろ! そっちに集中しとけよ、危ないだろうが!」
「動かないで! そこにいてくださいっ」
2人を抱いてもう少し下がろうとしていた俺はその言葉に立ち止まる。
戦う男2人はもう目と鼻の先まで迫っていた。
なんで? と思いはするのだが、ナダールが自分にそう言うのなら、彼には何か理由があるのかもしれない。
「ちょこまかと逃げやがって! 待てこら!!」
ナダールを追いかけて来た男がナダールに腕を伸ばす。
男はナダールに負けず劣らず大きくて体格もいい屈強な男だった。
「そこの一般人! 危ないから下がっていろ!」
男は俺を見やってそう叫んだ。ちゃんと周りの見えている、気遣いもできる男なのだろう。だが、俺は子供を抱えたまま首をふった。ナダールがここを動くなとそう言ったのだ、だったら俺は彼に従う。
「この先は、行かせないので大丈夫です!」
俺達と彼等の距離は10m程まで近付いていた。
ナダールはくるりと彼に向き直り、男は勢い余ったのだろうそのままナダールに激突するように突っ込んでくる。その勢いをそのまま利用して押し返すようにナダールは男の腰に組み付いた。
「くっ!」
それでも倒れる事のなかった男はさすがとしか言いようがない。踏ん張るように踏みとどまった男はまたこちらを見た。
「そこ、下がれと言っているだろう!!」
苛立ったように怒鳴る男にグノーはまた首をふった。
「ママ……こわい」
「大丈夫、パパがいるだろう?」
自分にしがみついてくる子供達に笑みを見せると、子供達はまた2人を見やる。
それでもいつでも逃げられる体勢はとっている、恐らくナダールにとってこの試合の流れはすべて想定済みだったのだろう。
そして、それでなおここにいろと言うのだから、それは彼にとって意味がある。
「背水の陣……だな」
おあつらえ向きに背後に川も流れている、俺はおかしくて笑ってしまった。
戦う事が好きではないナダールにとって、どんな戦いにしても『戦う理由』という物が必要なのだろう。
家族を守って戦う、彼にとってはたぶんそれが一番自分の力が発揮できる場だとナダールは分かっているのだ。
その時どこからか小石がひとつ飛んで来てナダールの肩に当たった。
石つぶては一つ二つと増えていき、ナダールと男は胡乱な表情でその石の飛来先を見やると、そこにはまだ入隊したて思われる少年がびくっと身を震わせこちらを見ていた。
「石は……使ってもいいはずですよね!」
精一杯虚勢を張っているのだろう少年の声は震えていて、幾つも小石を抱えているがその体も震えているのが分かる。
「まだ、残っていましたか」
「ちっ、こざかしい」
思わず対戦相手と息が合ってしまった。
少年はその辺の小石を掻き集めてめくらめっぽうに小石を投げ始めるが、それは闇雲な投石で、半分も2人に当たらない。
しかし、その投石の一つが2人を飛び越え、グノーと子供達の方へ飛んでいき、ナダールは思わずその石を掴み取った。
「確かに石は違反ではありませんが……」
その小石を掌で転がし少年を見据える。
「当たったら痛いじゃないですかっ!」
そしてその石を、勢いを付けて投げ返すと、それは少年の頬を掠めて後方へと飛んでいった。それと同時に自分と相対していた男も小石を拾い上げ少年へ向かって石を投げ返す。
「投石ってのはな、こうやるんだよっ!」
男の攻撃は容赦がない。その石は少年の肩に当たり、彼は怯えたように逃げ出した。
「こら、待て!!」
言って男はもう一つ石を摘み上げ、今度は足に向かってその石を投げる。
石は見事に少年の足元を狂わせて、少年は転がり負けが確定した。
「だから石は痛いって言ったのに……」
「戦闘に痛いもくそもあるかっ!」
改めて男はナダールに向き直り、こちらを睨みつける。
「お前はやる気があるのかっ!」
「やる気はもちろんありますよ」
にっこり笑ってそう言うと、男は険しい顔でちっと舌打ちをした。
「俺はこんな所で負ける気はないんだよっ! 遊び半分なら帰んなっ!!」
「こちらも生活がかかっているので、負ける気も遊びのつもりもありませんよ」
「だったらその顔やめろ! 腹が立つ!!」
言って体当たりで突進してきた男をがっしりと受け止める、どちらも同じような体格でその勢いでは揺るがない2人のそれは完全に力比べの様相だ。
腹が立つと言われても、これは地顔でどうする事もできないナダールはまた笑みを零す。
「子供を怖がらせたら、父親失格でしょう?」
ふっとナダールは体の力を抜く。勢いが余っている男はその瞬間体のバランスを崩しかけ一瞬の隙が生まれた、その隙を見逃さずナダールは男の腕を取り、そのまま静かに投げ飛ばした。
一瞬の静寂、投げ飛ばされた男も何が起こったのか分からないという顔で、地面に転がされたまま空を仰いでいる。
「パパ、勝った!」
「かった! かった!」
子供達はグノーの腕から解放されると満面の笑顔でこちらへと駆けて来た。
そのうち周りからもぱちぱちと拍手が聞こえてきて、とりあえず一回戦目は無事に終えることができたのだと安堵した。
2人の子供の頭を撫でて、いまだ座り込んだままの男のもとへ歩み寄る。
「大丈夫ですか?」
にっこり笑って男に手を差し出すと、男は心底嫌そうな顔でその手を払いのけ、一人で立ち上がると体に付いた砂埃を払った。
「お前所属は何処だ? お前みたいな奴、今まで見た事ないと思うんだが?」
「まだ新入りなので所属はありません。ナダール・デルクマンと申します、あなたは?」
「俺は第3騎士団分団長、スタール・ダントンだ」
「えっ、分団長……ですか?」
「お前のせいで、また今日から下っ端兵卒に逆戻りだ」
「まぁ、うちの騎士団はそんな奴ばかりだから慣れっこだけどな」と、それでも苦虫を噛み潰したような顔でスタールは言った。
「それは大変申し訳ないことを……」
「俺を負かしたからには、次も負けはないからな、絶対勝てよ!」
「はい、頑張ります」
パパ、抱っこ抱っこと纏わり付いてくる子供達を抱き上げてその頬にキスを落とす。
「それはお前の子供達か?」
「はい、子供と向こうが私の最愛の人です」
満面の笑顔でそう言うと、スタールは子供を見やり、グノーをちらりと見やってまたこちらを向いて「やっぱりお前なんか負けちまえ」とそう呟いた。
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