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番外編:その後のある幸せな家庭
話の齟齬
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俺の腕の中で周りを見渡しキョロキョロしている我が子シズクを見やると、瞳が合ったシズクは満面の笑みだ。
シズクには少しだけ不思議な力がある。触手持ちだというのもそうなのだが、俺に何か不快な事がありそうな時は全力でぐずるし、泣く。
けれど今日のシズクはいつも以上に大人しく、そしてご機嫌さんだ。これも未来予知の占い師と同じような能力なのだろうか? だとしたらこの先悪い事にはならなさそうだけど、俺を放置して事態が進んでいくのはどうかと思う。
玄関先でどうしようかと途方に暮れているとお義父さんに色々と荷物を手渡された。俺、シズクも連れてるから持ち切れません、お義父さん!
「それにしても、やっぱりハロルドはミレニアが可愛くて仕方がないんだね」
「え?」
「ハロルドがあんな風に血相変えるの初めて見たよ」
荷物の準備をしながらお義父さんが微かに笑う。あ、あの顔、お義父さんでもレアだったんだ。それに、お義母さんとミレニアさん、そんなに仲良かったんだ?
まぁ、確かに長年同じ屋敷に暮らしていて、お義母さんは常にミレニアさんを傍に置いてたけどさ。でもそれって、主人と使用人の関係で、ミレニアさんがハロルド様に対して従順だったからじゃないのか?
「不思議そうな顔。ハロルドはね、ミレニアの事を自分の子供みたいに思っていたみたいだよ。ここだけの話、ライザックがロゼッタを選ばなかった場合、ミレニアだったらライザックの嫁にしてもいいと思ってたみたい」
え~、それ、現ライザックの嫁である俺に言う?
「ただそれに関しては、ミレニアが断っていたみたいだけどね。自分には婚約者がいるから裏切れないって、健気な子だよね」
ん? んん~??? ちょっとその話はめちゃくちゃ腑に落ちないんですけど!
だってミレニアさん、バートラム様のことずっと拒否ってたじゃないか、どういう事だよ!? あ、それって嘘も方便的なやつ?
そういえば過去、バートラム様からの求婚を拒むために俺を生贄に差し出した事もあったもんな。
「僕には全然お声がかからなかったんだけど、ロゼッタの婿選びの時にロゼッタとミレニアの婚約者が仲良くなっちゃったんだって? 話聞く限りだとすごく面白い催しだったみたいだよね、だけどハロルドはそれに関してはすごく反省しててミレニアには悪い事をしたってずっと言ってたんだよ」
マジか!
「だけど、オーランドルフの屋敷を売る時、その婚約者と一緒に暮らすために屋敷に残るって話だったからほっとしたって、そんな風に僕は聞いてる。その割にはいつまで経っても結婚式の案内がこないって心配もしてたけど」
それはまぁ、ミレニアさんが結婚は頑なに拒否してたし当たり前だろうけど、俺の知ってるミレニアさんとお義母さんの語る話の齟齬がひどすぎるよ!
「? カズ君、なんか腑に落ちないって顔してるの気のせい?」
「だって変ですよ、ミレニアさんはバートラム様と一緒に暮らすのがストレスでぶっ倒れたんですよ、それってちょっとおかしくないです?」
「え? あれ? どういう事?」
「それを聞きたいのは俺の方です」
本当は俺だって最初はミレニアさんがライザックの事好きなんだって思ってた。だけど、本家でのあのロゼッタさんとの戦いの時は親身になって俺の心配してくれて、俺の手助けをしてくれたりしたから、ライザックの事はそこまで好きなんじゃないのかと、何処かで思ってたんだ。
ついでに言うならミレニアさんは隠してるけどバートラム様の事が好きなんだとも思っていた、だけどストレスでぶっ倒れるほど嫌っている風でもあるし、彼の真意は全く分からない。
結局ミレニアさんは誰とも結婚する気なんてなくて、バートラム様を瞳で追ってたのも俺の気のせいなのか? 俺からライザックを横取りしてやるみたいな事言っても結局それは口だけで、ミレニアさんの行動はちぐはぐすぎて本当によく分からない。
そもそも俺はミレニアさんの事なんてこれっぽっちも知らないんだって、改めて考えさせられる。
「色々よく分からないけど、いつまでも病人を一人にはしておけないし、カズ君は先に帰ってて。僕はハロルドとシノックさんを一緒に連れてくから」
お義父さんに促されるようにして俺は自宅に足を向けたけれど、やはり考えれば考えるほどミレニアさんの事がよく分からなくて、ミレニアさんの熱が下がったらもっと色々と話を聞かないとだなとそう思った。
シズクには少しだけ不思議な力がある。触手持ちだというのもそうなのだが、俺に何か不快な事がありそうな時は全力でぐずるし、泣く。
けれど今日のシズクはいつも以上に大人しく、そしてご機嫌さんだ。これも未来予知の占い師と同じような能力なのだろうか? だとしたらこの先悪い事にはならなさそうだけど、俺を放置して事態が進んでいくのはどうかと思う。
玄関先でどうしようかと途方に暮れているとお義父さんに色々と荷物を手渡された。俺、シズクも連れてるから持ち切れません、お義父さん!
「それにしても、やっぱりハロルドはミレニアが可愛くて仕方がないんだね」
「え?」
「ハロルドがあんな風に血相変えるの初めて見たよ」
荷物の準備をしながらお義父さんが微かに笑う。あ、あの顔、お義父さんでもレアだったんだ。それに、お義母さんとミレニアさん、そんなに仲良かったんだ?
まぁ、確かに長年同じ屋敷に暮らしていて、お義母さんは常にミレニアさんを傍に置いてたけどさ。でもそれって、主人と使用人の関係で、ミレニアさんがハロルド様に対して従順だったからじゃないのか?
「不思議そうな顔。ハロルドはね、ミレニアの事を自分の子供みたいに思っていたみたいだよ。ここだけの話、ライザックがロゼッタを選ばなかった場合、ミレニアだったらライザックの嫁にしてもいいと思ってたみたい」
え~、それ、現ライザックの嫁である俺に言う?
「ただそれに関しては、ミレニアが断っていたみたいだけどね。自分には婚約者がいるから裏切れないって、健気な子だよね」
ん? んん~??? ちょっとその話はめちゃくちゃ腑に落ちないんですけど!
だってミレニアさん、バートラム様のことずっと拒否ってたじゃないか、どういう事だよ!? あ、それって嘘も方便的なやつ?
そういえば過去、バートラム様からの求婚を拒むために俺を生贄に差し出した事もあったもんな。
「僕には全然お声がかからなかったんだけど、ロゼッタの婿選びの時にロゼッタとミレニアの婚約者が仲良くなっちゃったんだって? 話聞く限りだとすごく面白い催しだったみたいだよね、だけどハロルドはそれに関してはすごく反省しててミレニアには悪い事をしたってずっと言ってたんだよ」
マジか!
「だけど、オーランドルフの屋敷を売る時、その婚約者と一緒に暮らすために屋敷に残るって話だったからほっとしたって、そんな風に僕は聞いてる。その割にはいつまで経っても結婚式の案内がこないって心配もしてたけど」
それはまぁ、ミレニアさんが結婚は頑なに拒否してたし当たり前だろうけど、俺の知ってるミレニアさんとお義母さんの語る話の齟齬がひどすぎるよ!
「? カズ君、なんか腑に落ちないって顔してるの気のせい?」
「だって変ですよ、ミレニアさんはバートラム様と一緒に暮らすのがストレスでぶっ倒れたんですよ、それってちょっとおかしくないです?」
「え? あれ? どういう事?」
「それを聞きたいのは俺の方です」
本当は俺だって最初はミレニアさんがライザックの事好きなんだって思ってた。だけど、本家でのあのロゼッタさんとの戦いの時は親身になって俺の心配してくれて、俺の手助けをしてくれたりしたから、ライザックの事はそこまで好きなんじゃないのかと、何処かで思ってたんだ。
ついでに言うならミレニアさんは隠してるけどバートラム様の事が好きなんだとも思っていた、だけどストレスでぶっ倒れるほど嫌っている風でもあるし、彼の真意は全く分からない。
結局ミレニアさんは誰とも結婚する気なんてなくて、バートラム様を瞳で追ってたのも俺の気のせいなのか? 俺からライザックを横取りしてやるみたいな事言っても結局それは口だけで、ミレニアさんの行動はちぐはぐすぎて本当によく分からない。
そもそも俺はミレニアさんの事なんてこれっぽっちも知らないんだって、改めて考えさせられる。
「色々よく分からないけど、いつまでも病人を一人にはしておけないし、カズ君は先に帰ってて。僕はハロルドとシノックさんを一緒に連れてくから」
お義父さんに促されるようにして俺は自宅に足を向けたけれど、やはり考えれば考えるほどミレニアさんの事がよく分からなくて、ミレニアさんの熱が下がったらもっと色々と話を聞かないとだなとそう思った。
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