ある幸せな家庭ができるまで

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番外編:その後のある幸せな家庭

病院嫌い

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 翌日からミレニアさんは高熱を出して寝込んでしまった。疲れとストレスが相当溜まっていたのだろう。ただ医者を呼ぶか病院に行くかと問いかければ、それは頑なに拒否するので、彼はよほどの医者嫌いなのかと呆れてしまう。
 恐らくストレスと過労ではあるのだろうけど、きっちり何処が悪いか分かった方が安心できると思うのに、ミレニアさんは高熱でうなされながらもそれだけは嫌だと言い張って譲らない。

「薬を貰えばもっと楽になるかもしれないですよ」

 ミレニアさんの額の上に乗った濡れタオルを交換しながらそう言うと「それでも嫌です」と彼はふいっとそっぽを向く。

「苦しいのは自分なのに、何なんですか? 病院に何かトラウマでもあるんですか?」
「あなたに分かる話ではないです。どこまでも普通なあなたには絶対に分からない」

 キングオブ平凡である事をさらりとディスられた。どうせ俺はどこまでいっても普通だよっ! 悪かったなっ!

「どうせ俺はミレニアさんみたいな美形じゃないですからっ」

 そう憎まれ口を叩いて、ふと小首を傾げる。だけど美形と病院嫌いって何か関係あるか? あ! もしかして病気の診察とか言って医者に弱ってる身体を撫で回され弄ばれたりとか!? だとしたらトラウマになる可能性も否定できない。
 けれどミレニアさんは「君は何を訳の分からないことを言っているんだ、どんな想像したのか知らないが、そんな話じゃない」と苦しそうに息を吐いた。

「あなた、忘れてるみたいですけど私は半獣人なんですよ」
「? そうだね?」

 いや、それを忘れるとかなくない? だってミレニアさんのモフモフ尻尾は相変らずモフモフだよ。今は見た目に少し毛艶が悪くなってるからめっちゃ手入れしたいけど、無断で触るとセクハラになると学んだから、俺は触ってないぞ。ああ、そういうの無断で触られるから病院が嫌いなのか?

「この国にはよそよりも半獣人が多いですけど、半獣人を診てくれる医者は少ない。何故なら私達の生態は人とも獣人とも違うのです、どちらでもあり、どちらでもない私達は何処の医者にもかかれない」

 え、マジか!?

「行くだけ無駄なんですよ、人の医者には分からない、獣人の医者はそもそも半獣人を蔑んでますので診ようともしない。分かったら放っておいてください」

 そんな泣きそうな顔で放っておけと言われても放っておける訳ないだろう? そういえば獣人国では獣人と人との結婚を容認してないって何処かで誰かに聞いた気がするけど、そういう理由もあったんだな……

「それに、私のこれは理由も分かっている。大人しくしていればいずれ治る」

 まぁ、確実にストレスと過労だもんな。だけどそう思ってて大きな病気だったら目も当てられないだろ。ただ、そこまで言われてしまったら病気の知識皆無な自分にはもう出来る事が何もない。

「分かった、もう静かにしとくから、何が食べたいかだけ教えて」

 せめて胃に優しい食事くらいは出せるだろうと思って問うた言葉に「ハクア草とギルライの鍋」と返されて、何それ? と俺は首を傾げる。
 こっちに来て食材の名前を一から覚えたものの、それ、名前聞いた事すらないんだけど! けれど、それを聞いたら「そんな事も知らないんですか?」とまた馬鹿にされる気がして俺は黙って「分かった」と頷いた。
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