ある幸せな家庭ができるまで

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番外編:ある幸せな家庭の幸せな日常生活

数年後

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「カズ、いつも思うのだが、その……シズクの抱き方は本当にそれで大丈夫なのか?」
「ん? なんか問題ある?」

 俺の方を少し不安気に見やる男、彼の名前はライザック。元は王家に連なる貴族の出身の彼がその出自を捨てて数年が経過した。
 そこそこ身長があるはずの俺から見ても見上げてしまう大男が、おろおろと腕を伸ばすのは俺の肩の上に俺達の愛息子が乗っかっているからだ。
 まるで米俵でも抱えているような担ぎ方だが、当のシズクは非常に楽しそうにきゃっきゃと笑っているので問題ないと思っていたのだが、駄目だっただろうか?

「私はカズの育った世界を知らない、そういうものなのだと言うのなら、問題ないと思うのだが、落ちてしまわないか心配で……」
「あぁ……まぁ、大丈夫じゃね? なぁ、シズク?」

 肩の上の息子はやはりにこにこと笑って、俺の首に抱きついた。落ちそうになったらシズクなら自分でなんとかするだろう。何せ俺達の息子だし? そこ等の子供とは訳が違う。親馬鹿上等、うちの子は世界で一番可愛くて優秀ですよ。
 でも、俺達の息子ってホント変な響きだよな、まさか俺がこんな風に子供を抱いているなんて、数年前まで想像もしていなかった、しかもこの子は俺が産んだ正真正銘俺の子供だ。
 まさか自分が子供を産む日がこようとは、この世界にやって来たあの日あの時までは考えてもいなかったのに、世の中には不思議な事もあるものだ。
 俺がこの世界へやって来て、なんだかんだと彼と結ばれ子供を授かり数年が経過し、俺達は今も平凡に穏やかに暮らしている。
 ライザックはどちらかといえば西洋系の顔立ちで、いわゆるハーフで生まれた愛息子シズクの容姿はマジで天使。はっきり言って目の中に入れても痛くない。俺ってば子供好きだったんだな……って、自分で自分に驚いている。

「今日もカズは美しいな」

 毎日続くライザックからの愛の囁き、正直それがむず痒くて仕方がない俺は「は? 何言ってるの?」とぶっきら棒に返してしまう。
 そういう事は口に出さない文化の典型的な日本人な俺は、未だにそれに慣れることができずにそう返してしまうのだが、ライザックは懲りることなく毎日愛を囁く。


「本当の事を言っているだけなのに……」
「だから、それの意味が分からないって言うんだよ。俺の一体何処に美しい要素があるって言うんだ? お前の美的感覚は狂ってる」

 そんな言葉を返してもライザックはただにこにこと笑っていて呑気なものだ。

「ママはかぁいいよ。僕、ママだいしゅき」

 しかも愛息子のシズクまで、最近では父親であるライザックを真似て俺を褒め殺しにくるので俺はどうにもむず痒くて仕方がない。しかもライザックとシズク共に本気で整った容姿をしているので、平凡を絵に描いたような俺はどうにも戸惑いを隠せないのだ。

「あぁ……まぁ、ありがとな」

 夫であるライザックには憎まれ口も叩けるが、息子相手にはそれも出来ない俺は言葉を濁して逃げ出した。まぁ、俺達家族はこんな感じで平和に穏やかに暮らしている。
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