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第四章:夫婦の絆編
これからの事
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帰宅をしたライザックは俺の顔を見るなり表情を曇らせ、俺の肩を掴む。
「カズどうした!? まさか父上がなにか……」
「お義父さんは関係ないよ、色々溜まってたみたいで……はは、恥ずかし」
俺のその言葉にライザックはほっとしたような表情で、それでも心配そうに「無理はしていないか?」と俺の瞳を覗き込む。ライザックのこのどこまでも澄んだ空の色の瞳、好きだなって俺は改めて思う。
「大丈夫、無理してない。今日お義父さんにシズクの触手の事伝えたんだ、アレってちゃんと病名付いてんだな、驚いた。でも、お義父さん気持ち悪がりもしないで受け入れてくれた」
「父上が……?」
「うん、怖かったねって、大変だったねって抱きしめてくれて、なんかほっとしちゃってさ」
少しだけライザックが複雑そうな表情を見せる。
「あ、もしかしてライザックがいる時に言った方が良かった?」
「いや、それは構わないのだが、私の父とはいえむやみにカズに触れられるのは複雑というか、なんというか……」
もごもごと言いずらそうに告げたライザックの言葉に俺は吹きだす。どうやらその表情はライザックの嫉妬の表情であったようで、愛されているなと頬が緩んだ。
「でもそうか、父上は受け入れてくれたのだな。あと問題は……」
「ハロルド様にも言わないとだよなぁ。あ、そういえば、お義父さん、近いうちにオーランドルフの籍から抜けようと思うって言ってた」
「え?」
「そろそろケリをつけなけりゃって、お前にばっかり背負わせて申し訳なかったって言ってたよ」
驚いたような表情のライザック、俺はお義父さんの言った事をそのまま伝えただけなのに、そんなに驚かれても困る。
「父上も考えている事は同じ……か」
「え?」
ライザックが静かに微笑んだ。
「私もね、オーランドルフからの除籍は常々考えていたのだよ、それはカズと出会ってからは尚更に、ただその為にはどうしても母上の了承が必要でね、私がそれを言い出す事で母上からカズとシズクに対して何かしらのアクションがあった場合、父上に頼るつもりでいたんだ。でも父上もそれを考えているとなったら話は早い」
次の休日にシズクを連れてハロルド様に会いに行こうと言われ、俺は少しだけ戸惑った。
「なぁ、それってお前達はハロルド様と縁を切るってそういう話……?」
「それは母上次第だな。気付いているか? いつの間にかカズは父上の事を『お義父さん』と呼んでいるのに、母上の事は『ハロルド様』のままだ、そのくらい母上との間には家族としての溝がある。私にとってカズはもう家族だが、母上がそれを認めないのであれば、私はそれも辞さない覚悟をしている」
俺は思わず自分の口を押えた。そういえば俺自身ハロルド様を義母だと思った事が一度もないのだ。ライザックを生んだ人だという事は頭で理解はしているが、彼にとって俺はあくまで使用人の一人で、家族として扱われた事は一度もない。だから俺はハロルド様を『お義母さん』などと気軽に呼ぶ事ができなかったのだ。
「呼び方が問題なら、俺、普通にお義母さんって呼ぶけど……」
「そういう問題ではない事はカズも分かっているだろう?」
まぁ、そうだよなぁ……でも、俺のせいで親子の縁が断絶にでもなったら、それはそれでちょっともやる。そんな複雑な気持ちが表情に出たのか「カズは何も心配しなくてもいい」とやんわり抱きしめられたけど、心配なんかするに決まってる、だって俺達はもう家族なんだから!
ハロルド様は果たして俺やシズクを受け入れてくれるのだろうか? そして、オーランドルフという家名を捨て去ることができるのだろうか……ライザックやアルフレッドさんはもう、未来を見据えてる、でもハロルド様は……
心中複雑な俺はライザックの胸に頭を預けて、自分にも何かできないものかとそんな事を考えていた。
「カズどうした!? まさか父上がなにか……」
「お義父さんは関係ないよ、色々溜まってたみたいで……はは、恥ずかし」
俺のその言葉にライザックはほっとしたような表情で、それでも心配そうに「無理はしていないか?」と俺の瞳を覗き込む。ライザックのこのどこまでも澄んだ空の色の瞳、好きだなって俺は改めて思う。
「大丈夫、無理してない。今日お義父さんにシズクの触手の事伝えたんだ、アレってちゃんと病名付いてんだな、驚いた。でも、お義父さん気持ち悪がりもしないで受け入れてくれた」
「父上が……?」
「うん、怖かったねって、大変だったねって抱きしめてくれて、なんかほっとしちゃってさ」
少しだけライザックが複雑そうな表情を見せる。
「あ、もしかしてライザックがいる時に言った方が良かった?」
「いや、それは構わないのだが、私の父とはいえむやみにカズに触れられるのは複雑というか、なんというか……」
もごもごと言いずらそうに告げたライザックの言葉に俺は吹きだす。どうやらその表情はライザックの嫉妬の表情であったようで、愛されているなと頬が緩んだ。
「でもそうか、父上は受け入れてくれたのだな。あと問題は……」
「ハロルド様にも言わないとだよなぁ。あ、そういえば、お義父さん、近いうちにオーランドルフの籍から抜けようと思うって言ってた」
「え?」
「そろそろケリをつけなけりゃって、お前にばっかり背負わせて申し訳なかったって言ってたよ」
驚いたような表情のライザック、俺はお義父さんの言った事をそのまま伝えただけなのに、そんなに驚かれても困る。
「父上も考えている事は同じ……か」
「え?」
ライザックが静かに微笑んだ。
「私もね、オーランドルフからの除籍は常々考えていたのだよ、それはカズと出会ってからは尚更に、ただその為にはどうしても母上の了承が必要でね、私がそれを言い出す事で母上からカズとシズクに対して何かしらのアクションがあった場合、父上に頼るつもりでいたんだ。でも父上もそれを考えているとなったら話は早い」
次の休日にシズクを連れてハロルド様に会いに行こうと言われ、俺は少しだけ戸惑った。
「なぁ、それってお前達はハロルド様と縁を切るってそういう話……?」
「それは母上次第だな。気付いているか? いつの間にかカズは父上の事を『お義父さん』と呼んでいるのに、母上の事は『ハロルド様』のままだ、そのくらい母上との間には家族としての溝がある。私にとってカズはもう家族だが、母上がそれを認めないのであれば、私はそれも辞さない覚悟をしている」
俺は思わず自分の口を押えた。そういえば俺自身ハロルド様を義母だと思った事が一度もないのだ。ライザックを生んだ人だという事は頭で理解はしているが、彼にとって俺はあくまで使用人の一人で、家族として扱われた事は一度もない。だから俺はハロルド様を『お義母さん』などと気軽に呼ぶ事ができなかったのだ。
「呼び方が問題なら、俺、普通にお義母さんって呼ぶけど……」
「そういう問題ではない事はカズも分かっているだろう?」
まぁ、そうだよなぁ……でも、俺のせいで親子の縁が断絶にでもなったら、それはそれでちょっともやる。そんな複雑な気持ちが表情に出たのか「カズは何も心配しなくてもいい」とやんわり抱きしめられたけど、心配なんかするに決まってる、だって俺達はもう家族なんだから!
ハロルド様は果たして俺やシズクを受け入れてくれるのだろうか? そして、オーランドルフという家名を捨て去ることができるのだろうか……ライザックやアルフレッドさんはもう、未来を見据えてる、でもハロルド様は……
心中複雑な俺はライザックの胸に頭を預けて、自分にも何かできないものかとそんな事を考えていた。
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