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第四章:夫婦の絆編
現在の俺達の生活
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何故か異世界に飛ばされて子供を授かってしまった俺、渋谷和寿がこの世界にやって来てそろそろ一年が経とうとしている、こちらに来たばかりの頃は衝撃的な出来事ばかりが続きあたふたした生活を送っていたのだが、子供が生まれて落ち着いて、今は何だかんだで平和に生きている。
一風変わった体質で生まれてしまった我が子シズクを育てるのは大変なのだけど、そこはそれ柔軟性と適応力に定評がある俺はそんな奇妙な体質も受け入れて今は平穏そのものだ。
「カズ、少しばかり言い辛いのだが、シズクはそれで大丈夫なのか……?」
「へ? あぁ、うんまぁ大丈夫なんじゃないかな?」
現在シズクは俺の肩の上、触手を器用に使って登って来るのでやるがままに任せている、シズクは本来ならばまだ抱っこでしか移動できないはずの月齢なのだが、好奇心旺盛な我が子はその触手を使って何処へでも行くし何でもやろうとする。子育ての中でそこだけは本当に厄介で困っているのだが、シズクはそれ以外は比較的に大人しい手のかからない子供だった。
普通の子供だったら怪我の心配のひとつもする所なんだろうが、シズクの身体は半分触手で出来ている、怪我をしたり例えば触手がちぎれても、ものの数分で治ってしまうのだ、最初は冷や冷やしていた俺だけど今となっては手がかからなくていいなとしか思わなくなってしまった。
むやみに触手を出すようだと困るなとも思っていたのだが、基本的にシズクは触手を出すのは俺達の前でだけだった。興奮したりすると出てしまう事もあるのだが、それは触手自体の本能なのか周りに知らない人間がいるとちゃんと人に擬態するのだ。
まだお喋りもできない赤ん坊なので、それがどういう状態なのかよく分からないのだが、見た目的には普通の人の子として育っているので、まずは良しとする。
知能的に不安な部分もなくはないのだが、シズクは俺達の会話にもよく耳を傾けている、時には意味が分かっているのか? というような行動を取る事もあって、そちらの方面もあまり心配はなさそうだ。むしろ、その辺の子よりうちの子賢いんじゃね? とか思ってしまうのは親バカが過ぎるだろうか?
俺は不安な事がある時はあの触手持ちの占い師I・Bの館へと赴いて相談を持ち掛ける、彼お得意の未来予知の占いじゃなくて、普通に子育て相談してる客なんて俺だけだと思うけど、まぁ、彼とも仲良くやっている。
だけど元々占い師の事を盲目的に信奉していたハインツは少し驚いていたな。なにせ俺は彼の占いには懐疑的だったのに、最近では優待券を発行される程度には常連客になっているからだ。実は金も払ってないなんて言ったら怒られそうだ。
I・Bにとってシズクはこの世界に存在する唯一の自分の同胞だ、それ故にシズクの事は目に入れても痛くない程の可愛がりようで、こちらとしても有難い。
最初は産むなと言ったくせにこの変わりよう「あの時は君の不安と未来の感情に引きずられたんだ」と存外子供っぽい拗ね方をした彼は「今はもうこの子の未来に影はないよ」と、シズクに頬ずりをしているので俺はほっと胸を撫でおろしている。
ライザックの母親、ハロルド様には出産の報告をしたけれど別段なんの返信もない。完全に黙殺されているのだろうけど、変に手を出されないならそれでいいかって思ってる。
花婿争奪戦で仲良くなったロゼッタさんにも報告したけど、こっちからはお祝いの手紙と手作りと思われる豪華な産着が届いた。家が遠いからなかなか会う事はできないけれど、手紙のやり取りはなんとなく続いていて、落ち着いた頃にシズクの顔を見に行くからと言われている。
ロゼッタさんってホント良い人、早く素敵な旦那さんが見付かると良いなと俺は思う。
「そういえば今度ベアード様もお祝いをと言っていたのだが……」
「そうなんだ、バートラム様、今もミレニアさんのとこに通ってるの?」
「そのようだな、ミレニアは相変わらず迷惑そうな顔をしていた。だが正直ミレニアもそろそろ身の振り方は考えるべき頃合いだとは思うのだけどな。あの家にいつまでも囚われているのも可哀想だ」
ミレニアさんは相変わらずオーランドルフ家の執事を務めている。ライザックが家を出てしまった今、オーランドルフ家の家計はかなり厳しいはずで、ライザックの母親であるハロルド様がそれを理解していればいいのだが、きっとそれは難しいと思うのだ。
「いざとなったらハロルド様、こっちに呼ぶ? 問答無用の貧乏暮らしだけど」
「母上がそれを受け入れるかだな。そうなったらこちらに来るより叔父上の所に身を寄せるんじゃないだろうか」
ライザックが叔父上と呼ぶのはロゼッタさんの父親だ、オーランドルフの本家なだけあって、かなり羽振りは良さそうだしハロルド様一人くらいなんとかなりそうだけど、プライドの高いハロルド様がどう行動するかは未知数だ。
俺達はとても平穏に暮らしているけど、問題はまだまだたくさんあるんだよなぁ……
一風変わった体質で生まれてしまった我が子シズクを育てるのは大変なのだけど、そこはそれ柔軟性と適応力に定評がある俺はそんな奇妙な体質も受け入れて今は平穏そのものだ。
「カズ、少しばかり言い辛いのだが、シズクはそれで大丈夫なのか……?」
「へ? あぁ、うんまぁ大丈夫なんじゃないかな?」
現在シズクは俺の肩の上、触手を器用に使って登って来るのでやるがままに任せている、シズクは本来ならばまだ抱っこでしか移動できないはずの月齢なのだが、好奇心旺盛な我が子はその触手を使って何処へでも行くし何でもやろうとする。子育ての中でそこだけは本当に厄介で困っているのだが、シズクはそれ以外は比較的に大人しい手のかからない子供だった。
普通の子供だったら怪我の心配のひとつもする所なんだろうが、シズクの身体は半分触手で出来ている、怪我をしたり例えば触手がちぎれても、ものの数分で治ってしまうのだ、最初は冷や冷やしていた俺だけど今となっては手がかからなくていいなとしか思わなくなってしまった。
むやみに触手を出すようだと困るなとも思っていたのだが、基本的にシズクは触手を出すのは俺達の前でだけだった。興奮したりすると出てしまう事もあるのだが、それは触手自体の本能なのか周りに知らない人間がいるとちゃんと人に擬態するのだ。
まだお喋りもできない赤ん坊なので、それがどういう状態なのかよく分からないのだが、見た目的には普通の人の子として育っているので、まずは良しとする。
知能的に不安な部分もなくはないのだが、シズクは俺達の会話にもよく耳を傾けている、時には意味が分かっているのか? というような行動を取る事もあって、そちらの方面もあまり心配はなさそうだ。むしろ、その辺の子よりうちの子賢いんじゃね? とか思ってしまうのは親バカが過ぎるだろうか?
俺は不安な事がある時はあの触手持ちの占い師I・Bの館へと赴いて相談を持ち掛ける、彼お得意の未来予知の占いじゃなくて、普通に子育て相談してる客なんて俺だけだと思うけど、まぁ、彼とも仲良くやっている。
だけど元々占い師の事を盲目的に信奉していたハインツは少し驚いていたな。なにせ俺は彼の占いには懐疑的だったのに、最近では優待券を発行される程度には常連客になっているからだ。実は金も払ってないなんて言ったら怒られそうだ。
I・Bにとってシズクはこの世界に存在する唯一の自分の同胞だ、それ故にシズクの事は目に入れても痛くない程の可愛がりようで、こちらとしても有難い。
最初は産むなと言ったくせにこの変わりよう「あの時は君の不安と未来の感情に引きずられたんだ」と存外子供っぽい拗ね方をした彼は「今はもうこの子の未来に影はないよ」と、シズクに頬ずりをしているので俺はほっと胸を撫でおろしている。
ライザックの母親、ハロルド様には出産の報告をしたけれど別段なんの返信もない。完全に黙殺されているのだろうけど、変に手を出されないならそれでいいかって思ってる。
花婿争奪戦で仲良くなったロゼッタさんにも報告したけど、こっちからはお祝いの手紙と手作りと思われる豪華な産着が届いた。家が遠いからなかなか会う事はできないけれど、手紙のやり取りはなんとなく続いていて、落ち着いた頃にシズクの顔を見に行くからと言われている。
ロゼッタさんってホント良い人、早く素敵な旦那さんが見付かると良いなと俺は思う。
「そういえば今度ベアード様もお祝いをと言っていたのだが……」
「そうなんだ、バートラム様、今もミレニアさんのとこに通ってるの?」
「そのようだな、ミレニアは相変わらず迷惑そうな顔をしていた。だが正直ミレニアもそろそろ身の振り方は考えるべき頃合いだとは思うのだけどな。あの家にいつまでも囚われているのも可哀想だ」
ミレニアさんは相変わらずオーランドルフ家の執事を務めている。ライザックが家を出てしまった今、オーランドルフ家の家計はかなり厳しいはずで、ライザックの母親であるハロルド様がそれを理解していればいいのだが、きっとそれは難しいと思うのだ。
「いざとなったらハロルド様、こっちに呼ぶ? 問答無用の貧乏暮らしだけど」
「母上がそれを受け入れるかだな。そうなったらこちらに来るより叔父上の所に身を寄せるんじゃないだろうか」
ライザックが叔父上と呼ぶのはロゼッタさんの父親だ、オーランドルフの本家なだけあって、かなり羽振りは良さそうだしハロルド様一人くらいなんとかなりそうだけど、プライドの高いハロルド様がどう行動するかは未知数だ。
俺達はとても平穏に暮らしているけど、問題はまだまだたくさんあるんだよなぁ……
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