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閑話:熊さんの昔話
転機①
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ライオネスに頭ごなしに怒られて反省した俺だったのだが、それまで奔放にやってきた俺は精力の向けどころが分からなくて、それから苛々と日々を過ごすようになった。
「バートラム、うざい」
「ぐっ……ライオネス、お前は本当に俺に容赦がないな」
何をやっていても落ち着かない俺が椅子に腰かけ忙しなく貧乏ゆすりをしていると、向かい側で何やら書き物をしていたライオネスが一刀両断で俺を切り捨てる。
「お前に媚びた所で俺には何の得もない、親父さんに頭を下げられ仕方なくお目付け役を引き受けたが、こんな馬鹿息子を相手にするのは俺も疲れる」
ライオネスはいつもこんな感じで今まで俺の周りにいた獣人達のように俺を甘やかしはしなかった。だが、そんなライオネスは存外優秀で、俺の超低空飛行の成績はライオネスのお陰で飛躍的に伸びた。
「そういえばライオネス、お前この間の模試、また二番だったな」
俺の言葉にライオネスの眉がぴくりと上がる。俺は二番なんて凄いじゃないかというつもりで言った言葉だったのだが、一気にライオネスの機嫌が傾くのが分かり、失言だったかと苦笑する。
ちなみに俺の成績は現在中の上、せいぜい二桁前半が良い所だったので全体の二番ならそれだけで凄いと思うのだが、どうやらライオネスはそうではないらしい。
「どうせ俺は万年二位の雑魚なんだ、だがそれ以下の雑魚に馬鹿にされるいわれはない」
「俺は別に馬鹿になんてしていない、卑屈になるなよ」
「そもそもお前は万年一位に君臨するミレニアの婚約者として恥ずかしくはないのか!?」
ライオネスの言葉に俺は苦笑する。そう、実は学力において常にトップを取っているのは他でもない俺の婚約者であるミレニアなのだ。半獣人としてここ獣人国では馬鹿にされがちのミレニアだったが、誰にも引けを取らないその成績を維持している事で周りから一目置かれている。
だが婚約者とは言っても別に俺はミレニアと仲が良い訳でもないからなぁ。
「ついでに言うならその有り余る精力、婚約者殿に発散させてもらったらいいんじゃないのか? 親父殿も相手が婚約者ならば何も言うまいよ」
「はは、ミレニアにか? 無理無理、ミレニアがさせてくれる訳ないだろう? そもそも俺はミレニアが苦手なんだ」
「いずれは結婚するんだろう?」
「まぁ、将来的にそうなるのかもしれないが、ミレニアとは恋愛関係にはなれない気がする。そもそもあっちだってその気はないだろう? 今まで俺がとっかえひっかえしていても何も言ってこなかったんだぞ?」
「確かにそれはそうなのだろうが、何も言わないからと言って何も言いたい事がないとは限らないだろう?」
そう言ってライオネスが顎をしゃくった先にいたのはミレニアで、俺が視線を向けると驚いたのかすぐにふいと視線を逸らして行ってしまった。
「なんだあれ。まぁミレニアはいつもあんな感じだけど」
「お前の事が気になってんじゃないのか?」
「ああ? なんでだよ?」
「それはまぁ、婚約者だし?」
「俺が気になるならあっちから来ればいい」
「それが出来ないから見てるんだろ?」
ライオネスが何を言ってるのかよく分からない俺は首を傾げる。出来ないってなんでだ? 別に気になるなら普通に話しかけてくればいいだろう? 俺は別に拒んじゃいない。
「お前はそういう所ホント大雑把だよな」
「あん?」
俺がやぶ睨みでライオネスを見やると「そんなに精力が余って不機嫌になるくらいなら合法的に発散させればいいだろう?」と苦笑し、一枚の名刺サイズの紙を俺に手渡した。
「何だこれは?」
「行けば分かる」
それはある店の店名と地図が絵が描かれたものだったのだが、どうにも気持ちのやり場に困っていた俺は胡散臭いと思いつつも「分かった」と頷き席を立った。
「バートラム、うざい」
「ぐっ……ライオネス、お前は本当に俺に容赦がないな」
何をやっていても落ち着かない俺が椅子に腰かけ忙しなく貧乏ゆすりをしていると、向かい側で何やら書き物をしていたライオネスが一刀両断で俺を切り捨てる。
「お前に媚びた所で俺には何の得もない、親父さんに頭を下げられ仕方なくお目付け役を引き受けたが、こんな馬鹿息子を相手にするのは俺も疲れる」
ライオネスはいつもこんな感じで今まで俺の周りにいた獣人達のように俺を甘やかしはしなかった。だが、そんなライオネスは存外優秀で、俺の超低空飛行の成績はライオネスのお陰で飛躍的に伸びた。
「そういえばライオネス、お前この間の模試、また二番だったな」
俺の言葉にライオネスの眉がぴくりと上がる。俺は二番なんて凄いじゃないかというつもりで言った言葉だったのだが、一気にライオネスの機嫌が傾くのが分かり、失言だったかと苦笑する。
ちなみに俺の成績は現在中の上、せいぜい二桁前半が良い所だったので全体の二番ならそれだけで凄いと思うのだが、どうやらライオネスはそうではないらしい。
「どうせ俺は万年二位の雑魚なんだ、だがそれ以下の雑魚に馬鹿にされるいわれはない」
「俺は別に馬鹿になんてしていない、卑屈になるなよ」
「そもそもお前は万年一位に君臨するミレニアの婚約者として恥ずかしくはないのか!?」
ライオネスの言葉に俺は苦笑する。そう、実は学力において常にトップを取っているのは他でもない俺の婚約者であるミレニアなのだ。半獣人としてここ獣人国では馬鹿にされがちのミレニアだったが、誰にも引けを取らないその成績を維持している事で周りから一目置かれている。
だが婚約者とは言っても別に俺はミレニアと仲が良い訳でもないからなぁ。
「ついでに言うならその有り余る精力、婚約者殿に発散させてもらったらいいんじゃないのか? 親父殿も相手が婚約者ならば何も言うまいよ」
「はは、ミレニアにか? 無理無理、ミレニアがさせてくれる訳ないだろう? そもそも俺はミレニアが苦手なんだ」
「いずれは結婚するんだろう?」
「まぁ、将来的にそうなるのかもしれないが、ミレニアとは恋愛関係にはなれない気がする。そもそもあっちだってその気はないだろう? 今まで俺がとっかえひっかえしていても何も言ってこなかったんだぞ?」
「確かにそれはそうなのだろうが、何も言わないからと言って何も言いたい事がないとは限らないだろう?」
そう言ってライオネスが顎をしゃくった先にいたのはミレニアで、俺が視線を向けると驚いたのかすぐにふいと視線を逸らして行ってしまった。
「なんだあれ。まぁミレニアはいつもあんな感じだけど」
「お前の事が気になってんじゃないのか?」
「ああ? なんでだよ?」
「それはまぁ、婚約者だし?」
「俺が気になるならあっちから来ればいい」
「それが出来ないから見てるんだろ?」
ライオネスが何を言ってるのかよく分からない俺は首を傾げる。出来ないってなんでだ? 別に気になるなら普通に話しかけてくればいいだろう? 俺は別に拒んじゃいない。
「お前はそういう所ホント大雑把だよな」
「あん?」
俺がやぶ睨みでライオネスを見やると「そんなに精力が余って不機嫌になるくらいなら合法的に発散させればいいだろう?」と苦笑し、一枚の名刺サイズの紙を俺に手渡した。
「何だこれは?」
「行けば分かる」
それはある店の店名と地図が絵が描かれたものだったのだが、どうにも気持ちのやり場に困っていた俺は胡散臭いと思いつつも「分かった」と頷き席を立った。
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