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第二章:妊娠編
夕餉の集い②
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華やかなパーティ、人々は綺麗に着飾り場内には音楽が鳴り響いている。BGM専用の楽団までいるんだな、さすが金持ちはやる事が違う。
腹が減っては戦も出来ないとライザックにエスコートされてやって来たものの、人の多さに酔いそうだ。とはいえ、客達は俺とライザックの姿を見付けると皆一様に声を潜め遠巻きにするばかりで近寄って来ないから楽なものだけど。
まぁ、これがあまり良い状況じゃない事くらい俺にだって分かっているけれど……
そんな居心地の悪い会場で、それでも腹に収める物は収めないとと俺が料理を物色していると「よう、大変な事になっているなライザック殿」と呑気な声がかけられて、振り向けばそこには周りより一回り大きな熊が立っていた。
「バートラム殿、何故ここに?」
バートラム・ベアード様は熊の獣人でミレニアさんの自称婚約者、ミレニアさんは否定しまくっているけれどバートラム様は未だ懲りずにミレニアさんに付き纏っている。
獣人国ズーランドに帰らなくてもいいのかな? と思っていたら、どうやらこちらには普通に仕事で派遣されて来ているそうで、ついでにミレニアさんを連れ帰れればめっけものくらいな感じでいたらしい。
「ん? 俺は招待されたからここにいる」
そう言ってバートラム様はにかっと笑った。
「招待?」
「今日は本来ならばオーランドルフ家の嫡子のお見合いパーティであったのだろう? まぁ、俺も賑わせの数に入れられていた感じだな。俺には婚約者が居るからと何度も断ったのだが、親父がこれも大事な国家交流だからと押し切られた」
バートラム様はズーランド国の大臣の息子だと聞いている、こんな事でも国際交流の一環になるのか、お偉いさんの息子は大変だな。
「だが到着してみたらどうも様子がおかしい、詳しく聞けば催しの趣旨が嫡子の婿選びではなく、嫡子が嫁になる為の試練に内容が変わったらしいと聞いて、それなら俺は用無しだろうし帰ろうかと思っていたのだが、そこにミレニアが参戦すると聞いたらそういう訳にもいかなくなってな……」
「……え?」
「ん? 聞いてないのか?」
「これって俺とロゼッタさんの一騎打ちじゃないんですか?」
「趣旨が変わって名乗りを上げた者が何人もいたと俺は聞いたぞ? その中にミレニアもいたと聞いた時は耳を疑ったがな。あんなに頑なに嫁になるのを拒んでいるミレニアが嫁側に回るというのは考え難い……が、もしか万が一、密かにライザック殿を好いていたという可能性が無きにしもあらずで、黙ってはいられなかったから俺も名乗りを上げてみた」
「!?」
「という訳で、明日は俺も参戦するから宜しくな坊主」
そう言ってまたしてもバートラム様はにかっと笑うのだけど、笑い事じゃない。なんか大変な事になってる……敵はロゼッタさん一人かと思ってたのにどういう事!?
だけど実は俺、ちょっとだけ引っかかってた事があるんだよ、ハロルド様と話している時にハロルド様は言ったんだ『本来ならばロゼッタの花婿を決める為のお見合いパーティ、それがお前の嫁の座を競って身分のある者達が争うなんて、こんな愉快な事はない』ってさ。分かる? ハロルド様は最初から『身分のある者達』って複数形で言ってるの。
相手はロゼッタさんだけのはずなのに変だなとは思いはしたんだよ、だけどただの言い間違いかと聞き流していたのに、これってもしかして最初から仕組まれてたのかな? だとしたらハロルド様めっちゃ怖い。
一体何処までが仕組まれた企てなの? そしてミレニアさんはやっぱりライザックの事好きだったんだ……これもこれでちょっとショック。
ライザックはミレニアさんの事を戦友みたいなものだと言っていたし、よくよく観察してみればミレニアさんもライザックに対してわりとビジネスライクな対応で、2人の間に恋愛感情は一切ないと思っていただけに俺はショックを隠しきれないよ!
腹が減っては戦も出来ないとライザックにエスコートされてやって来たものの、人の多さに酔いそうだ。とはいえ、客達は俺とライザックの姿を見付けると皆一様に声を潜め遠巻きにするばかりで近寄って来ないから楽なものだけど。
まぁ、これがあまり良い状況じゃない事くらい俺にだって分かっているけれど……
そんな居心地の悪い会場で、それでも腹に収める物は収めないとと俺が料理を物色していると「よう、大変な事になっているなライザック殿」と呑気な声がかけられて、振り向けばそこには周りより一回り大きな熊が立っていた。
「バートラム殿、何故ここに?」
バートラム・ベアード様は熊の獣人でミレニアさんの自称婚約者、ミレニアさんは否定しまくっているけれどバートラム様は未だ懲りずにミレニアさんに付き纏っている。
獣人国ズーランドに帰らなくてもいいのかな? と思っていたら、どうやらこちらには普通に仕事で派遣されて来ているそうで、ついでにミレニアさんを連れ帰れればめっけものくらいな感じでいたらしい。
「ん? 俺は招待されたからここにいる」
そう言ってバートラム様はにかっと笑った。
「招待?」
「今日は本来ならばオーランドルフ家の嫡子のお見合いパーティであったのだろう? まぁ、俺も賑わせの数に入れられていた感じだな。俺には婚約者が居るからと何度も断ったのだが、親父がこれも大事な国家交流だからと押し切られた」
バートラム様はズーランド国の大臣の息子だと聞いている、こんな事でも国際交流の一環になるのか、お偉いさんの息子は大変だな。
「だが到着してみたらどうも様子がおかしい、詳しく聞けば催しの趣旨が嫡子の婿選びではなく、嫡子が嫁になる為の試練に内容が変わったらしいと聞いて、それなら俺は用無しだろうし帰ろうかと思っていたのだが、そこにミレニアが参戦すると聞いたらそういう訳にもいかなくなってな……」
「……え?」
「ん? 聞いてないのか?」
「これって俺とロゼッタさんの一騎打ちじゃないんですか?」
「趣旨が変わって名乗りを上げた者が何人もいたと俺は聞いたぞ? その中にミレニアもいたと聞いた時は耳を疑ったがな。あんなに頑なに嫁になるのを拒んでいるミレニアが嫁側に回るというのは考え難い……が、もしか万が一、密かにライザック殿を好いていたという可能性が無きにしもあらずで、黙ってはいられなかったから俺も名乗りを上げてみた」
「!?」
「という訳で、明日は俺も参戦するから宜しくな坊主」
そう言ってまたしてもバートラム様はにかっと笑うのだけど、笑い事じゃない。なんか大変な事になってる……敵はロゼッタさん一人かと思ってたのにどういう事!?
だけど実は俺、ちょっとだけ引っかかってた事があるんだよ、ハロルド様と話している時にハロルド様は言ったんだ『本来ならばロゼッタの花婿を決める為のお見合いパーティ、それがお前の嫁の座を競って身分のある者達が争うなんて、こんな愉快な事はない』ってさ。分かる? ハロルド様は最初から『身分のある者達』って複数形で言ってるの。
相手はロゼッタさんだけのはずなのに変だなとは思いはしたんだよ、だけどただの言い間違いかと聞き流していたのに、これってもしかして最初から仕組まれてたのかな? だとしたらハロルド様めっちゃ怖い。
一体何処までが仕組まれた企てなの? そしてミレニアさんはやっぱりライザックの事好きだったんだ……これもこれでちょっとショック。
ライザックはミレニアさんの事を戦友みたいなものだと言っていたし、よくよく観察してみればミレニアさんもライザックに対してわりとビジネスライクな対応で、2人の間に恋愛感情は一切ないと思っていただけに俺はショックを隠しきれないよ!
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