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第二章:妊娠編
戦いの火蓋
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「兄さん! これは一体どういう事ですか!」
オーランドルフの本家の長、ライザックの叔父さんが声を上げて向いた先に佇んでいたのはライザックの母親であるハロルド様。扇を片手に口元を隠し、冷めた瞳で何処を見ているのかも分からない彼の瞳がゆっくりと細められ、俺の背筋にはぞくっと怖気が走った。
「どういうもこういうもこれはお見合いパーティなのでしょう? だったらいいじゃないですか。自分の意中のお相手は自分で射止める、これはそういう催しなのでしょう?」
ハロルド様はゆっくりとヒールの音を響かせてこちらへと歩いて来る。そして呆然と立ち竦んでいるロゼッタの前で「ロゼッタ、私はあなたの味方」と綺麗に微笑み、彼の手を取った。
「ライザックの横にいるのは我が家の使用人、ライザックが拾ってきた何処の馬の骨とも知れぬ者。何をとち狂ったのか息子はそんな輩に唆されて妻にするなどと言い出したのです……」
ちょ……なに突然!? あんた、俺達が結婚するって挨拶に行った時うんともすんとも言わなかったじゃないか! 反対するならするで何故その時に言わなかった!? しかも嘘まで吐いて俺達を本家にまで呼び出して、この人一体何がしたいの!?
「息子は私の言う事になど耳を貸さない。けれどロゼッタ、私はライザックの妻にはあなたの方が相応しいと思っているのです。そもそも格が違うのですよ、そう思わないかい? ねぇ、ロゼッタ?」
なんか滅茶苦茶感じ悪い! しかもライザックが耳を貸さないって、そんな訳あるか! いつだってライザックは母親であるハロルド様を立てて生活をしている、そんなの一緒に暮らしていれば一目瞭然だ! なのにあんた何なんだよ!
けれど、そんな我が家の内情を知る由もないロゼッタさんはハロルド様の言葉にきっ! とこちらを睨み付けた。
「お話分かりました、伯父様。これは私に対する挑戦なのですね、その勝負受けて立ちます!」
ちょ……えぇぇぇぇぇええぇ!!?
ロゼッタさんがびしり! とこちらを指差して「あなた、ライザックを賭けて私と勝負なさい! もし私が負けたら私は潔く身を引きましょう! けれどあなたが負けたその時にはあなたの方が潔く身を引くのです!」って、勝負ってなんの勝負だよ! 聞いてない! そんな話聞いてないぞ!!
「母上! ロゼッタまで! 私はあなたとのお付き合いは何度もお断りしているはずですよ!」
「けれど約束したではありませんか、幼い頃、大人になったら私と結婚してくれるとあなたは私と約束してくれた!」
「それはそうなのだが……」
元来お人好しなライザック、たぶん強く出られると断れない質なのは俺ももう分かっている。心底困った表情のライザックを横目に『もっとはっきり断れよ、俺しか嫁にする気はないって言え!』と思わなくもないのだけど、俺ってばそういうちょっと弱気な所のあるこいつも心底好きなんだよなぁ……
思わず零れた大きな溜息、隣のライザックがびくりと震えた。
「しょうがない……俺の方こそ、その勝負受けて立つ!」
「な……カズ!?」
「やるからには負ける気ないから!」
「そういう問題ではないだろう!?」
俺達を取り囲む観衆がざわざと騒ぎ始める。やはり何事もなく済むなんてのは甘い幻想だったな。でもまぁ仕方がない、腹の子の為にも父親は必要だろうし、俺も少しは頑張らないと。
俺の視界の端、ハロルド様の口元がにぃと弧を描くのが見て取れる。本当に何なんだろうなこの人。勝負を仕掛けてきたのはロゼッタさんだけど、焚きつけてきたのはハロルド様だ、どんな思惑があるのか知らないけれど、この人は怖い人だなと俺は思う。
嫁と姑は仲が悪いもんだとうちの親父が昔ぼやいていた事があるけど、もしかして既に俺達の嫁姑戦争って始まってんの? 不意打ちじゃなく、せめて開始のゴングはもっと分かりやすくして欲しかったよ……
オーランドルフの本家の長、ライザックの叔父さんが声を上げて向いた先に佇んでいたのはライザックの母親であるハロルド様。扇を片手に口元を隠し、冷めた瞳で何処を見ているのかも分からない彼の瞳がゆっくりと細められ、俺の背筋にはぞくっと怖気が走った。
「どういうもこういうもこれはお見合いパーティなのでしょう? だったらいいじゃないですか。自分の意中のお相手は自分で射止める、これはそういう催しなのでしょう?」
ハロルド様はゆっくりとヒールの音を響かせてこちらへと歩いて来る。そして呆然と立ち竦んでいるロゼッタの前で「ロゼッタ、私はあなたの味方」と綺麗に微笑み、彼の手を取った。
「ライザックの横にいるのは我が家の使用人、ライザックが拾ってきた何処の馬の骨とも知れぬ者。何をとち狂ったのか息子はそんな輩に唆されて妻にするなどと言い出したのです……」
ちょ……なに突然!? あんた、俺達が結婚するって挨拶に行った時うんともすんとも言わなかったじゃないか! 反対するならするで何故その時に言わなかった!? しかも嘘まで吐いて俺達を本家にまで呼び出して、この人一体何がしたいの!?
「息子は私の言う事になど耳を貸さない。けれどロゼッタ、私はライザックの妻にはあなたの方が相応しいと思っているのです。そもそも格が違うのですよ、そう思わないかい? ねぇ、ロゼッタ?」
なんか滅茶苦茶感じ悪い! しかもライザックが耳を貸さないって、そんな訳あるか! いつだってライザックは母親であるハロルド様を立てて生活をしている、そんなの一緒に暮らしていれば一目瞭然だ! なのにあんた何なんだよ!
けれど、そんな我が家の内情を知る由もないロゼッタさんはハロルド様の言葉にきっ! とこちらを睨み付けた。
「お話分かりました、伯父様。これは私に対する挑戦なのですね、その勝負受けて立ちます!」
ちょ……えぇぇぇぇぇええぇ!!?
ロゼッタさんがびしり! とこちらを指差して「あなた、ライザックを賭けて私と勝負なさい! もし私が負けたら私は潔く身を引きましょう! けれどあなたが負けたその時にはあなたの方が潔く身を引くのです!」って、勝負ってなんの勝負だよ! 聞いてない! そんな話聞いてないぞ!!
「母上! ロゼッタまで! 私はあなたとのお付き合いは何度もお断りしているはずですよ!」
「けれど約束したではありませんか、幼い頃、大人になったら私と結婚してくれるとあなたは私と約束してくれた!」
「それはそうなのだが……」
元来お人好しなライザック、たぶん強く出られると断れない質なのは俺ももう分かっている。心底困った表情のライザックを横目に『もっとはっきり断れよ、俺しか嫁にする気はないって言え!』と思わなくもないのだけど、俺ってばそういうちょっと弱気な所のあるこいつも心底好きなんだよなぁ……
思わず零れた大きな溜息、隣のライザックがびくりと震えた。
「しょうがない……俺の方こそ、その勝負受けて立つ!」
「な……カズ!?」
「やるからには負ける気ないから!」
「そういう問題ではないだろう!?」
俺達を取り囲む観衆がざわざと騒ぎ始める。やはり何事もなく済むなんてのは甘い幻想だったな。でもまぁ仕方がない、腹の子の為にも父親は必要だろうし、俺も少しは頑張らないと。
俺の視界の端、ハロルド様の口元がにぃと弧を描くのが見て取れる。本当に何なんだろうなこの人。勝負を仕掛けてきたのはロゼッタさんだけど、焚きつけてきたのはハロルド様だ、どんな思惑があるのか知らないけれど、この人は怖い人だなと俺は思う。
嫁と姑は仲が悪いもんだとうちの親父が昔ぼやいていた事があるけど、もしかして既に俺達の嫁姑戦争って始まってんの? 不意打ちじゃなく、せめて開始のゴングはもっと分かりやすくして欲しかったよ……
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