3 / 113
第一章:出会い編
プロローグ③
しおりを挟む
数日後、俺はようやく宿屋の外に出られた。あぁ、世界が変わって見えるようだよ……って、違うじゃん! もうここ明らかに俺の知ってる世界じゃねぇぇぇぇ!!!
「カズ、大丈夫か?」
傍らの大男、ライザックが俺の顔を覗き込む。なんか薄々感づいてたけど日の日差しの中で見るライザックは無駄にイケメンだ。道行く人の中でも際立って格好いい、それは着ている服のせいもあるのかもしれないけれど、ぴしっとした制服はこのオーランド国の騎士団員の制服なのだと聞いた。
「何となく分かってたけど、俺の住んでた世界と全然違う……」
宿屋の中はな、まぁ普通のホテルだった。出入りする宿のスタッフも普通の人達だったし、服が少しだけファンタジーっぽいなとは思ったけど、まぁ普通だった。だけど違う、宿屋の外、人ももちろん歩いているが、何故だかそこには獣面の動物みたいなのも二足歩行で服着て歩いてる。これはもう確実に俺の生きてた世界じゃない。
もしかしたら、どこか外国にいるのかもなんて思っていた俺の希望は儚く消える、外国レベルじゃねぇ、これ完全に異世界だ……
「何がそんなに違う?」
「そもそも俺の世界に獣人はいない。そんでもって、この世界なんで女がいないのさ!?」
そう、道行く人達は右を見ても左を見ても全員男、なんならカップルっぽいのも見かけるのだが、それももれなく全員見た目は男で俺は意味が分からない。
「おんな……とは?」
「子供産む人だよっ! 母親だよっ! あんただって樹の股から生まれてきた訳じゃないだろう!? 一体ここどういう世界なんだよっ!!」
「子なら誰でも産めるだろう……?」
「は……?」
誰でも産めるって何? 言ってる意味が分からないんだけど?
「いや、だからな、相手を見付けて結婚したら、産みたいと思った方が産めばいい話だろう?」
「産みたいって思った方……?」
「あぁ、そうだ。私はどちらかと言えば産むより産んで欲しい方だから結婚相手は産みたいと思うような性質の者を好むが、それ以外に何がある?」
「……ライザックも……産めるのか?」
「それは勿論」と頷かれて、カルチャーショックで声も出ない。こんなに筋骨隆々とした男が妊娠とか、どうなの? それどうなんだ!? そして、この世界には女は一人もいないって事か……嘘だろっ!?
「カズの暮らしていた土地では違っているのか?」
「全然違うよっ! 人には男と女って性別があって、子供は女が産むもんだっ! そんでもって俺は男だっ!!」
ライザックが男である俺をなんの躊躇もなく抱けたのは、そういう世界だからこそか。そして、ワームはそんな人の中に寄生して繁殖するとそういう事か……
「よく分からないな……」と首を傾げるライザック、だけどそれを言いたいのは俺の方だっ!
「それで、これからカズはどうするんだ?」
「どうするもこうするも……どうしよう……」
俺は途方に暮れて項垂れた。こんな訳の分からない土地で一人きり、どうやって生きていっていいのかも分からない。
「もしカズが良ければうちに来るか……?」
「え?」
「ちょうどメイドが一人辞めて人手が不足している、扱いは使用人だが、それでも良ければ……」
「行く!」
俺は即決で片手を上げた。こんな訳の分からない世界で右も左も分からないのにこのまま放り出されてはどうやって生きていっていいのか分からない。俺の命を助ける為とはいえ、俺の貞操をくれてやったのだから、少しくらいライザックの世話になったってきっと罰は当たらないはずだ。
「仕事は大変かもしれないが……」
「大変じゃない仕事なんてないだろう? 路頭に迷う所だったから助かる!」
俺の言葉にライザックは少しだけ笑みを見せて「そうか」と頷いた。
「では、ここからは私とお前は主人と従者という事になるが、大丈夫か?」
「うん! いや、はいっ! か。えっと……ライザック様って呼んだ方がいい?」
「う~ん、それなら旦那様の方がいいな」
ライザックの言葉に頷いて、俺は頭の中で『旦那様』を反芻する。
「では、行こうか」
「はい、旦那様っ!」
こうして俺の異世界生活は幕を開ける。ここから俺の波乱万丈な生活が始まるのだけど、その時の俺はそれを知る由もない。
「カズ、大丈夫か?」
傍らの大男、ライザックが俺の顔を覗き込む。なんか薄々感づいてたけど日の日差しの中で見るライザックは無駄にイケメンだ。道行く人の中でも際立って格好いい、それは着ている服のせいもあるのかもしれないけれど、ぴしっとした制服はこのオーランド国の騎士団員の制服なのだと聞いた。
「何となく分かってたけど、俺の住んでた世界と全然違う……」
宿屋の中はな、まぁ普通のホテルだった。出入りする宿のスタッフも普通の人達だったし、服が少しだけファンタジーっぽいなとは思ったけど、まぁ普通だった。だけど違う、宿屋の外、人ももちろん歩いているが、何故だかそこには獣面の動物みたいなのも二足歩行で服着て歩いてる。これはもう確実に俺の生きてた世界じゃない。
もしかしたら、どこか外国にいるのかもなんて思っていた俺の希望は儚く消える、外国レベルじゃねぇ、これ完全に異世界だ……
「何がそんなに違う?」
「そもそも俺の世界に獣人はいない。そんでもって、この世界なんで女がいないのさ!?」
そう、道行く人達は右を見ても左を見ても全員男、なんならカップルっぽいのも見かけるのだが、それももれなく全員見た目は男で俺は意味が分からない。
「おんな……とは?」
「子供産む人だよっ! 母親だよっ! あんただって樹の股から生まれてきた訳じゃないだろう!? 一体ここどういう世界なんだよっ!!」
「子なら誰でも産めるだろう……?」
「は……?」
誰でも産めるって何? 言ってる意味が分からないんだけど?
「いや、だからな、相手を見付けて結婚したら、産みたいと思った方が産めばいい話だろう?」
「産みたいって思った方……?」
「あぁ、そうだ。私はどちらかと言えば産むより産んで欲しい方だから結婚相手は産みたいと思うような性質の者を好むが、それ以外に何がある?」
「……ライザックも……産めるのか?」
「それは勿論」と頷かれて、カルチャーショックで声も出ない。こんなに筋骨隆々とした男が妊娠とか、どうなの? それどうなんだ!? そして、この世界には女は一人もいないって事か……嘘だろっ!?
「カズの暮らしていた土地では違っているのか?」
「全然違うよっ! 人には男と女って性別があって、子供は女が産むもんだっ! そんでもって俺は男だっ!!」
ライザックが男である俺をなんの躊躇もなく抱けたのは、そういう世界だからこそか。そして、ワームはそんな人の中に寄生して繁殖するとそういう事か……
「よく分からないな……」と首を傾げるライザック、だけどそれを言いたいのは俺の方だっ!
「それで、これからカズはどうするんだ?」
「どうするもこうするも……どうしよう……」
俺は途方に暮れて項垂れた。こんな訳の分からない土地で一人きり、どうやって生きていっていいのかも分からない。
「もしカズが良ければうちに来るか……?」
「え?」
「ちょうどメイドが一人辞めて人手が不足している、扱いは使用人だが、それでも良ければ……」
「行く!」
俺は即決で片手を上げた。こんな訳の分からない世界で右も左も分からないのにこのまま放り出されてはどうやって生きていっていいのか分からない。俺の命を助ける為とはいえ、俺の貞操をくれてやったのだから、少しくらいライザックの世話になったってきっと罰は当たらないはずだ。
「仕事は大変かもしれないが……」
「大変じゃない仕事なんてないだろう? 路頭に迷う所だったから助かる!」
俺の言葉にライザックは少しだけ笑みを見せて「そうか」と頷いた。
「では、ここからは私とお前は主人と従者という事になるが、大丈夫か?」
「うん! いや、はいっ! か。えっと……ライザック様って呼んだ方がいい?」
「う~ん、それなら旦那様の方がいいな」
ライザックの言葉に頷いて、俺は頭の中で『旦那様』を反芻する。
「では、行こうか」
「はい、旦那様っ!」
こうして俺の異世界生活は幕を開ける。ここから俺の波乱万丈な生活が始まるのだけど、その時の俺はそれを知る由もない。
54
お気に入りに追加
2,773
あなたにおすすめの小説
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる