刃のまにまに

矢の字

文字の大きさ
上 下
14 / 19

招かざる客

しおりを挟む
「おばあちゃん、ここは開かないって言ってたのにどういう事! それにあんた達、誰!? 泥棒!?」

 え? 誰だ? なんだ? 人間? 妖?
 この屋敷には限りなく実体に近い妖がたくさんいた。それはたぶんこの土地が龍脈の上に建っていて妖達にも力を与えているからだ。

「うわぁ、でも蔵の中ってこんなになってたんだ! え! 座敷牢!? マジ? やっべ、なにこれ、かっけー!!」

 外から現れたその人物は暗い蔵の中から逆光で現れて、俄かに姿が見えない。けれど徐々に目が慣れてくると、そこに立っていたのは俺と年も大差無さそうな少女……いや、少女というか髪も爪も服装も派手に盛ったギャルが立っていた。

「あの……あなたは?」
「名乗るならそっちからでしょ! あたしはこの家の人間、あんた達の方が部外者! 警察呼ぶよ!」

 そのギャルギャルしい少女は、腰に手を置いて高飛車に言い切った。

「えっと……この屋敷には奥様と数人の使用人の方しか住んでいないと聞いておりますけど? あなたは……あ、申し遅れましたが、私どもは奥様の依頼でこの屋敷の清掃にきた者で怪しい者ではございません」

 さすがの凜々花さんもそのギャルには驚いたのだろう、戸惑いながら俺達の説明をしてくれる。だが、それにしても清掃業者……ある意味間違ってはいないけれど、やはり依頼主以外には無闇に「退魔師です!」とは言わないんだな。

「お掃除業者さん? 確かにこの家、あちこち手が行き届いてないもんね。おばあちゃん歳だから仕方ないけど。でもそのお掃除屋さんがこの蔵に何の用? まさか金目の物でも物色してた? あれ? ミコちゃん……?」
『久しいね、真凛まりん
「わぁ、やっぱりミコちゃんだっ、おっひさ~!」

 何故か座敷童とそのギャルがまるで昔馴染みかのように挨拶を交わす。あまりにもかけ離れた存在の二人が普通に喋っている事に俺達は驚きを隠せない。

「なになに? ミコちゃん、こんなとこで何やってんの? ってか、これって座敷牢? 蔵の中にこんなのあったんだっ! 私も入ってみていい?」
『はは、やめておけ。それより真凛、今日も一緒に来ているのだろ?』
「おじいちゃん? 相変らずミコちゃんはうちのじいちゃん嫌いだよね~タヌキみたいな顔してるけど、別に悪い人じゃないんだよ?」
『お主にとってはそうなのだろうが……』

 座敷童は少し困ったように苦笑する。

「えっと……あの……この方は?」
『タマのひ孫で名を真凛まりんという、一緒に来ているタヌキがタマの娘婿じゃの』

 「招かざる客」先程、座敷童はそう言った。だが座敷童の真凛に対するあたりは柔らかい、恐らく招かざる客というのは真凛の祖父だけを指して言ったのだろう。

「彼女にはあなたが視えるのですね」
『まだ真凛は子供だでなぁ』
「ちょっとミコちゃん! 失礼ねっ、ミコちゃんだってそんなに大差ないでしょ!」

 座敷童が明らかに人ではないのは俺達には分かるのに、真凛と呼ばれた少女は座敷童になんの違和感も持っていなさそうに不満を述べる。これも座敷童の妖としての能力なのだろうか、真凛は座敷童の事を友人か何かだと思っているみたいだ。

『のう、掃除屋、ひとつ頼まれてはくれぬかの?』
「何をですか?」
『このタイミングであやつがここに来たのも何かの縁じゃ、あの強欲をうち祓ってはもらえまいか?』

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! 人外CPにはなりません ストックなくなるまでは07:10に公開 3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...