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お焚き上げで焼き肉を
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「それにしても今日の現場、俺、行かなくても良かったんじゃね?」
故人の遺品を念の為にちゃんとお祓いをして、お焚き上げしながら俺は火の燻り続ける遺品を小枝でつつく。こういうの、本来ならちゃんとした神社仏閣でやるもんだと思うんだけど、お祓い自体は御堂がやれてしまうものだから、ここはバーベキューのできる河川敷。俺達は故人の遺品で現在肉を焼いている。
薪じゃないから匂いと煙がヤバいのだけど、御堂はどこ吹く風だ。
「現場なんて行ってみないとどの程度の霊や妖がいるか分からないんだから、そこは仕方がないね。はい、さあや、あ~ん」
そんな臭い肉食えるかっ! と喚きたい所なのだが、俺はその肉が高級松阪牛だという事を知っている。何が楽しくてわざわざ美味い肉を台無しにして食べようと思うのか……俺は美味い肉は美味い料理にして食べたいんだっ!
俺の傍らではコン太がハフハフとその肉を美味そうに食んでいる、くっそぅ、お前等そういう所だぞっ!
「さあや、食べないの?」
「食うよっ!」
仕事の後は腹が減る、それはいつもの事で背に腹は代えられない。
『そういえば、おいら前から聞こうと思ってたんだけど、御堂とさあやは番なのか?』
「は? つがい?」
「ははは、コン太君、いい所に目を付けたね。そうだよ、僕とさあやは運命という赤い糸で結ばれた恋人同士さ!」
思わず俺は肉を喉に詰まらせゴホゴホと咳き込んだ。
「おまぇ、コン太に嘘を吹き込むなっ! 俺はお前の恋人でも何でもない、ただの同居人だ!」
「今はね、だけどじきにそうなる」
「ならねぇよっ!」
その自信は一体何処から来るのか、俺には御堂の考える事が全く分からない。
『でも御堂とさあやいつもエロいことしてる。そういうのは番同士がする事だって母様は言ってたんだぞ』
エロいこと……エロい事ってなんだ? 俺は誓って潔白だ、そんな破廉恥な事を御堂とした事なんて一度もない!
「確かにさあやは存在自体がエロいしねぇ」
「はぁ!?」
『いや、おいらそこには同意しかねるけど、直接の「気」のやり取りなんて普通の間柄じゃしないんだぞ。そういうのはやっちゃダメだって母様にも言われてる』
「ん? 気のやり取り?」
『そうだぞ、俺達みたいな妖の「気」のやり取りは番関係じゃないなら従属関係だ。だけどさあやは偉そうだし、下僕って感じに見えないんだぞ』
コン太の言っている意味が分からない。気のやり取りというのはたぶん御堂との力のやり取りの事を言っているのだろうが、それはあくまでビジネスで、確かに俺は御堂に雇われてはいるが下僕になったつもりはさらさらない。
「お前は何を言っている? 俺と御堂の関係は仕事上だけの繋がりでそれ以上なんてあり得ない」
『えぇ、でもさぁ、それ続けてると……』
「コン太、ステイ!」
御堂の一言にコン太が急に首輪を掴んで暴れ出した。
『むぅぅぅ! 何すんだよっ!』
「さあやに余計な事は言わなくていい。それに人と妖とではそもそも力の関係性が違うんだよ」
余計な事? 力の関係性ってなんだ?
『分かった、分かったからっ、苦しいんだぞっ! 御堂の馬鹿ぁぁァ!!』
「おい! コン太が可哀想だろ! 乱暴はやめろ」
俺が仲裁に入ると御堂はまた綺麗な笑みを見せて「分かったよ」と頷き、コン太は『御堂なんか嫌いだ!』と俺の腕の中に飛び込んできた。
「なに図々しくさあやに抱っこされてんの?」
『おいらの飼い主さあやだもん! 御堂がそう決めたんだろ!』
「だけど直接制約を結んだのは僕だ」
「お前等喧嘩すんな、それに御堂はやり過ぎ。こんな子供に本気出すなよ」
俺が呆れて御堂に言うと「子供って言ったってそいつは妖だ、とうに100歳は超えてるはずだよ」と返答が返ってきて驚いた。
え? マジで?
思わず腕の中のコン太の顔を覗き込んだら、コン太はふいっと瞳を逸らす。
「そいつは可愛い子ぶってるだけ、そもそも子供の妖なんて存在自体が希薄できちんとした霊場じゃない限り実体を持ったまま存在できる訳がない。廃病院で悪戯できてた時点でそいつは可愛い子供じゃない」
そういえば、最初こいつはやたらと物々しい喋り方してたよな。分が悪いとなったら急に赤ん坊みたいになったけど、もしかして俺、騙された……?
『やっぱり御堂、嫌い』
そう言ってコン太は俺の腕の中にぐいぐいと鼻面を突っ込む。隠れてるつもりか? そういうの頭隠して尻隠さずって言うんだぞ?
故人の遺品を念の為にちゃんとお祓いをして、お焚き上げしながら俺は火の燻り続ける遺品を小枝でつつく。こういうの、本来ならちゃんとした神社仏閣でやるもんだと思うんだけど、お祓い自体は御堂がやれてしまうものだから、ここはバーベキューのできる河川敷。俺達は故人の遺品で現在肉を焼いている。
薪じゃないから匂いと煙がヤバいのだけど、御堂はどこ吹く風だ。
「現場なんて行ってみないとどの程度の霊や妖がいるか分からないんだから、そこは仕方がないね。はい、さあや、あ~ん」
そんな臭い肉食えるかっ! と喚きたい所なのだが、俺はその肉が高級松阪牛だという事を知っている。何が楽しくてわざわざ美味い肉を台無しにして食べようと思うのか……俺は美味い肉は美味い料理にして食べたいんだっ!
俺の傍らではコン太がハフハフとその肉を美味そうに食んでいる、くっそぅ、お前等そういう所だぞっ!
「さあや、食べないの?」
「食うよっ!」
仕事の後は腹が減る、それはいつもの事で背に腹は代えられない。
『そういえば、おいら前から聞こうと思ってたんだけど、御堂とさあやは番なのか?』
「は? つがい?」
「ははは、コン太君、いい所に目を付けたね。そうだよ、僕とさあやは運命という赤い糸で結ばれた恋人同士さ!」
思わず俺は肉を喉に詰まらせゴホゴホと咳き込んだ。
「おまぇ、コン太に嘘を吹き込むなっ! 俺はお前の恋人でも何でもない、ただの同居人だ!」
「今はね、だけどじきにそうなる」
「ならねぇよっ!」
その自信は一体何処から来るのか、俺には御堂の考える事が全く分からない。
『でも御堂とさあやいつもエロいことしてる。そういうのは番同士がする事だって母様は言ってたんだぞ』
エロいこと……エロい事ってなんだ? 俺は誓って潔白だ、そんな破廉恥な事を御堂とした事なんて一度もない!
「確かにさあやは存在自体がエロいしねぇ」
「はぁ!?」
『いや、おいらそこには同意しかねるけど、直接の「気」のやり取りなんて普通の間柄じゃしないんだぞ。そういうのはやっちゃダメだって母様にも言われてる』
「ん? 気のやり取り?」
『そうだぞ、俺達みたいな妖の「気」のやり取りは番関係じゃないなら従属関係だ。だけどさあやは偉そうだし、下僕って感じに見えないんだぞ』
コン太の言っている意味が分からない。気のやり取りというのはたぶん御堂との力のやり取りの事を言っているのだろうが、それはあくまでビジネスで、確かに俺は御堂に雇われてはいるが下僕になったつもりはさらさらない。
「お前は何を言っている? 俺と御堂の関係は仕事上だけの繋がりでそれ以上なんてあり得ない」
『えぇ、でもさぁ、それ続けてると……』
「コン太、ステイ!」
御堂の一言にコン太が急に首輪を掴んで暴れ出した。
『むぅぅぅ! 何すんだよっ!』
「さあやに余計な事は言わなくていい。それに人と妖とではそもそも力の関係性が違うんだよ」
余計な事? 力の関係性ってなんだ?
『分かった、分かったからっ、苦しいんだぞっ! 御堂の馬鹿ぁぁァ!!』
「おい! コン太が可哀想だろ! 乱暴はやめろ」
俺が仲裁に入ると御堂はまた綺麗な笑みを見せて「分かったよ」と頷き、コン太は『御堂なんか嫌いだ!』と俺の腕の中に飛び込んできた。
「なに図々しくさあやに抱っこされてんの?」
『おいらの飼い主さあやだもん! 御堂がそう決めたんだろ!』
「だけど直接制約を結んだのは僕だ」
「お前等喧嘩すんな、それに御堂はやり過ぎ。こんな子供に本気出すなよ」
俺が呆れて御堂に言うと「子供って言ったってそいつは妖だ、とうに100歳は超えてるはずだよ」と返答が返ってきて驚いた。
え? マジで?
思わず腕の中のコン太の顔を覗き込んだら、コン太はふいっと瞳を逸らす。
「そいつは可愛い子ぶってるだけ、そもそも子供の妖なんて存在自体が希薄できちんとした霊場じゃない限り実体を持ったまま存在できる訳がない。廃病院で悪戯できてた時点でそいつは可愛い子供じゃない」
そういえば、最初こいつはやたらと物々しい喋り方してたよな。分が悪いとなったら急に赤ん坊みたいになったけど、もしかして俺、騙された……?
『やっぱり御堂、嫌い』
そう言ってコン太は俺の腕の中にぐいぐいと鼻面を突っ込む。隠れてるつもりか? そういうの頭隠して尻隠さずって言うんだぞ?
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