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強気なΩは好きですか?②
突然の出来事
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ある日の放課後、僕は他クラスの女子に呼び出され教室に残っていた。今までこういうパターンだと大体告白って感じだったんだけど、今回の呼び出しはちょっと雰囲気が違ってたから少し不安。
その子は少しおどおどと僕の前に現れて、そんな彼女を遠くから見ている女の子達がいたんだよね。最初は罰ゲーム的なやつかな? とも思ったんだけど、その子が彼女たちの元に戻ると何かをこそこそ話し合っていて、仲が悪そうにも見えなかったから違ったか? とも思ったんだ。
約束通り僕が所在なく教室で待っていると現れたのは件の彼女ではなくとても綺麗なお姉さんだった。
「はじめまして、榊原君」と挨拶を寄越した彼女からは微かに甘い匂いが漂って、僕は彼女がΩなのだと気が付いた。
僕の学年にΩは僕一人しかいないから必然的に彼女が上級生だと分かり僕は少し緊張する。
「僕に何の御用ですか?」
「そんなに警戒しないで、私は雄也がご執心だって言うΩの子に一度会ってみたくて後輩ちゃんに無理言って呼び出して貰っただけなのよ」
雄也……それが篠木先輩の名前だと気付くのに数秒を要した、そして目の前の女性が篠木先輩を名前で呼ぶくらい親しい間柄の人間なのだという事もすぐに察する。
「雄也は昔から少し緩い所があるから、騙されないように私がちゃんと見ててあげないと」
騙される? 僕が先輩を騙す? そんな事僕は考えた事もないのに、目の前の女性が瞳を細めて僕を上から下まで舐め回すように眺めるので、あぁこれは品定めされているのだなと僕にはそれもすぐに察する事が出来た。
「僕は篠木先輩に何もしませんし、してもないですよ。変な言い方止めてください」
「あら、気を悪くしたならごめんなさい。私、あなたとは仲良くしたいと思っているのよ?」
「何でですか? 僕はあなたの事を何も知らないのに突然そんな事言われても困ります」
これ牽制なのかな? 篠木先輩に近寄るなって事? だとしたら僕に言ったって仕方ないのに、それは篠木先輩に直接言ってよ。
「警戒しないでって言ってるのに、私はあなたの事を本当に悪い風には思っていないのよ?」
「こんな突然呼び出しておいてですか?」
そんな良い人ぶって言われても目の前の彼女はΩな訳で、αである篠木先輩を狙っているのは一目瞭然。僕の存在は彼女にとっては目障りでしかないのだろう事は僕にだってすぐに分かる。
「ふふふ、本当にあなた雄也に聞いた通りの子ね、可愛い。私の名前は凛子(りんこ)、雄也から聞いてない?」
「聞いてません」
「あら、雄也ったら薄情ね、あんなに言っておいてって言ったのに」
もしかして元カノなのか? それとも現在進行形の彼女で別れてないだけだったりしたら……何故か胸がつきんと痛む。だって篠木先輩はモテるし彼女の一人や二人いたとしても不思議じゃない。
昨年までは彼女を取っかえ引っかえだったというのも聞いている、だとしたら元カノだって何人いるか分からない。
「私ね、実は大ファンなのよ」
「……? 篠木先輩の?」
そんな事僕に言われても困るんだけど、先輩の拗らせファンなのかと身構えたら、彼女が突然口元を抑えてぶふっと吹きだした。
「やだぁ、ふふ、なんで私が雄也のファンになんてならなきゃいけないの? 違う違う、私が好きなのはあなたのお兄さん達よ、ツインズの双葉と三葉ってあなたのお兄さんでしょ?」
「え……」
榊原双葉と榊原三葉、それは確かに僕の兄だ。二人は幼い頃から双子モデルとして活躍していてユニット名が「ツインズ」なのも間違いない、だけど何? もしかして凛子さん兄ちゃん達の事好きなの?
「もうね、私在学中からずっとツインズの大ファンだったの! 親衛隊にだって入っていたのよ! 眉目秀麗才色兼備、あんな見目麗しい双子見た事ないもの! いつもにこやかに周りに光を振りまいて在学中はそれはもう楽しい毎日だったわ! とても仲の良い二人を見ているだけで癒される日々! でも卒業してしまわれて、雑誌では勿論追いかけているけれど、もう二度と会う事はできないかもしれないなんて思っていたら、雄也があなたに一目惚れだなんて、これはもう運命だと思ったのよ!」
拳を握る美女が一息に萌えを語る、えっと……凛子さん、もしかして兄ちゃん達のこと大好きなんだね?
「不束者だけど結婚して!」
「へ?」
凛子さんにがしっと手を握られ告げられた言葉に間抜けな声が出た。いやでも待って、僕はΩで凛子さんもΩだろ? 結婚ってそんな……それに僕、例え憧れだとしても自分よりも他の人が好きな人と結婚するのはちょっと無理。
その子は少しおどおどと僕の前に現れて、そんな彼女を遠くから見ている女の子達がいたんだよね。最初は罰ゲーム的なやつかな? とも思ったんだけど、その子が彼女たちの元に戻ると何かをこそこそ話し合っていて、仲が悪そうにも見えなかったから違ったか? とも思ったんだ。
約束通り僕が所在なく教室で待っていると現れたのは件の彼女ではなくとても綺麗なお姉さんだった。
「はじめまして、榊原君」と挨拶を寄越した彼女からは微かに甘い匂いが漂って、僕は彼女がΩなのだと気が付いた。
僕の学年にΩは僕一人しかいないから必然的に彼女が上級生だと分かり僕は少し緊張する。
「僕に何の御用ですか?」
「そんなに警戒しないで、私は雄也がご執心だって言うΩの子に一度会ってみたくて後輩ちゃんに無理言って呼び出して貰っただけなのよ」
雄也……それが篠木先輩の名前だと気付くのに数秒を要した、そして目の前の女性が篠木先輩を名前で呼ぶくらい親しい間柄の人間なのだという事もすぐに察する。
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これ牽制なのかな? 篠木先輩に近寄るなって事? だとしたら僕に言ったって仕方ないのに、それは篠木先輩に直接言ってよ。
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「こんな突然呼び出しておいてですか?」
そんな良い人ぶって言われても目の前の彼女はΩな訳で、αである篠木先輩を狙っているのは一目瞭然。僕の存在は彼女にとっては目障りでしかないのだろう事は僕にだってすぐに分かる。
「ふふふ、本当にあなた雄也に聞いた通りの子ね、可愛い。私の名前は凛子(りんこ)、雄也から聞いてない?」
「聞いてません」
「あら、雄也ったら薄情ね、あんなに言っておいてって言ったのに」
もしかして元カノなのか? それとも現在進行形の彼女で別れてないだけだったりしたら……何故か胸がつきんと痛む。だって篠木先輩はモテるし彼女の一人や二人いたとしても不思議じゃない。
昨年までは彼女を取っかえ引っかえだったというのも聞いている、だとしたら元カノだって何人いるか分からない。
「私ね、実は大ファンなのよ」
「……? 篠木先輩の?」
そんな事僕に言われても困るんだけど、先輩の拗らせファンなのかと身構えたら、彼女が突然口元を抑えてぶふっと吹きだした。
「やだぁ、ふふ、なんで私が雄也のファンになんてならなきゃいけないの? 違う違う、私が好きなのはあなたのお兄さん達よ、ツインズの双葉と三葉ってあなたのお兄さんでしょ?」
「え……」
榊原双葉と榊原三葉、それは確かに僕の兄だ。二人は幼い頃から双子モデルとして活躍していてユニット名が「ツインズ」なのも間違いない、だけど何? もしかして凛子さん兄ちゃん達の事好きなの?
「もうね、私在学中からずっとツインズの大ファンだったの! 親衛隊にだって入っていたのよ! 眉目秀麗才色兼備、あんな見目麗しい双子見た事ないもの! いつもにこやかに周りに光を振りまいて在学中はそれはもう楽しい毎日だったわ! とても仲の良い二人を見ているだけで癒される日々! でも卒業してしまわれて、雑誌では勿論追いかけているけれど、もう二度と会う事はできないかもしれないなんて思っていたら、雄也があなたに一目惚れだなんて、これはもう運命だと思ったのよ!」
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「へ?」
凛子さんにがしっと手を握られ告げられた言葉に間抜けな声が出た。いやでも待って、僕はΩで凛子さんもΩだろ? 結婚ってそんな……それに僕、例え憧れだとしても自分よりも他の人が好きな人と結婚するのはちょっと無理。
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