榊原さんちの家庭の事情

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βだって愛されたい!②

愛され過ぎて困っちゃう

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「あれ? もしかして、ようやくついに?」
「あぁ、本当だ噛み痕が残ってる」

 一縷兄ちゃんとどうにかこうにか身体を繋げて、翌朝ぼんやり朝食を食べていたら双子の兄ちゃんS’に勘付かれ服の首元を引っ張られた。
 でもなんでだ? 今日は襟のある服を着て隠してたはずなのに、なんで分かっちゃうんだろう?

「まぁ、そう言う訳だからお前達も今後四季にちょっかいだすなよ」
「言われなくても」
「と言うか、こんなおっかない匂いぷんぷんさせてる奴に手を出せるαがいたら逆に尊敬するわ」

 ん? 匂い? なんの事だからさっぱり分からない俺は自分が何か匂うのかと、すんと匂いを嗅いでみるのだが、どうにもよく分からない。

「おはよぉ……って、四季兄!?」

 寝惚け眼で起きてきた末弟の樹、何かに驚いたようにやはり俺の項を確認して、途端にうるっと瞳を潤ませ「四季兄が一兄のお嫁さんになっちゃったぁぁ」と泣き出した。
 あう……いや、間違ってないけど、なんで皆そんな一瞬で勘付くんだよ? 全く意味が分からんのだが!?

「やっぱり四季には分かってないんだな」
「βって本当にこの匂い分からないんだ?」

 匂い? やっぱり俺が匂うのか……でもそんな事を言われても俺には全然分からない。

「う~~僕も付けてやるっ! えいっ!」

 何を思ったか樹が俺に抱きついてすりすりと頬を擦り寄せた。

「あ! こら樹!」

 慌てたように一縷兄ちゃんが樹を引き剥がすのだけど、樹はべーと舌を出して逃げていった。

「やるな、樹」
「さすが、怖いもの知らず」
「俺達もやっとくか? 三葉」
「そうだな、やっとくか、双葉」

 よく分からないまま、今度は双子の兄ちゃん達に左右両側から抱きしめられて両頬にキスをされた。

「な! お前達までっ!! 手を出すなと言っただろ!」
「これだけ色んな匂いが付いてたら、きっと誰も手を出さない」
「そうそう、これは牽制のお手伝い。俺達良い仕事したな」
「そういう問題じゃない!」

 ん~? 全く俺には感知できないのだが、どうやら今の俺には兄弟全員の匂いが付いてるって事? 今どんな感じになってんだろ?
 「全くどいつもこいつも」と一縷兄ちゃんが俺を抱き締めた。

 その後しばらく俺はバース性の人間に怖がられたり、不思議な顔をされたりで、どうなってんだろ? って首を傾げた。どう足掻いても俺はβだから、そういうの全然分からないんだよな。だけど、学校の友達に言われた言葉「βの癖に愛され過ぎじゃない?」は、まぁ間違ってないと思う。
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