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強気なΩは好きですか?①
厄介な話
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放課後は部活のある先輩が僕の前に現れるのは決まって昼休みなのだけど、その日僕の調子を察したかのように篠木先輩は僕の前に現れなかった。それはそれで拍子抜けなんだけど、その代わり何故かサッカー部のキャプテンがまたしてもしかめっ面で現れて僕を教室から連れ出した。
「お前、今度は篠木に何を言った?」
サッカー部のキャプテンは先輩が部活を辞めるの辞めないのと揉めた時に僕とも一悶着あったからたぶん僕の事は嫌いなんだと思う。僕も好きじゃないからお互い様だけど。
「何ってなんですか? 僕は何も言ってませんよ」
「そんな訳あるか! 練習嫌いなあいつがあれだけ躍起になって練習にのめり込むなんてあり得ない。オーバーワークなんだよ! 毎日毎日睡眠削ってまで大会の対策練って、あいつはそんな事をする奴じゃない!」
練習嫌い? そうなんだ? サッカーは自分の人生だってくらいの事言ってたから、普通なんだと思ってたのに違うの? しかもオーバーワーク? そんな風には見えないんだけど。僕の前に現れる先輩はいつも穏やかににこにこしていて、そんな姿見た事ないよ。
「お前、篠木が朝何時から朝練してるか知ってるか?」
「え? サッカー部って朝練なんてしてるんですか?」
「当たり前だ! お前、うちがサッカーの強豪校だって事知らないのか!? 毎朝7時半から朝練だ!」
そんな怒鳴られたって知らないよ、だって僕サッカー部になんて興味なかったもん。
「だけど篠木は最近その時間にはもうとっくに一通りの練習を終えている、しかも毎日毎日全国の強豪校のデータを作成してきてみっちり対策まで練ってくる。何時に寝てるかって聞いたら2時には寝てるって言ってたけど、登校時間考えたらどう考えても5時間も寝てないんだぞ! しかもそれが毎日だ! 篠木はうちのチームの主戦力だからな、倒れられると困るんだよ!」
そんな事僕に言われても困る……そう言えば昨日の先輩の顔色はとても悪かったっけ、でも話を聞く限りその体調不良、先輩の自業自得なんじゃない?
「僕は何も言ってないですよ」
「絶対嘘だ! 篠木がおかしくなったのはお前と関わるようになってからだ、絶対お前が篠木に何か余計な事を言ったに違いない」
そんな決めつけ良くないと思う。それに実際僕は何も先輩に言ってない。
「あいつは全国大会の優勝に固執してる。確かにそれは我が部の目標だが、篠木の執着は常軌を逸している」
「全国大会の、優勝……あ……」
そこで僕は思い当たる、そういえば言った! 僕、全国大会優勝したら先輩と付き合うって確かに言った。
「やっぱり心当たりがあるんだな!?」
「……でも、そんなの……」
「篠木にお前何を言った!」
「全国大会優勝したら付き合ってもいいって……」
「はぁ!? お前達既に付き合ってんじゃないのか!?」
「付き合ってませんよ! なんで付き合ってて当然みたいに言うんですか!?」
「いやだって、なぁ?」
なぁ? って何!? 僕達まだ手だって繋いだ事ない清い仲なのに!
「それにしてもお前達付き合ってすらなかったのか……お前も大変だな」
なんでそこで同情されたの!? 意味が分からないんですけど!
「で、お前は篠木と付き合う気はあるのか?」
「え……えっと、まぁ……なくはないですけど……まだちょっと早いかな……って」
「なにが早い?」
「何がって、色々早すぎでしょ!? 僕はまだ篠木先輩の事全然知らないんですよ!? 好きだから付き合えって言われて即決できるほど僕尻軽じゃありませんから!」
「ほぉん」と何故かキャプテンが瞳を細めた。
「お前、サッカー部のマネジャーやる気ねぇ?」
「はい?」
「篠木は才能はあるんだがやる気にムラがある奴でな、今はお前のお陰で暴走気味だが普段はへらへらと要領よくやってく奴だった。サッカーは楽しいからやってるだけで、正直やらなきゃやらないでも生きていける奴だ、そんなあいつをやる気にさせるにはお前の存在はうってつけだ」
「ちょ……待ってくださいよ、先輩はこれ以上篠木先輩が暴走したら困るんじゃないんですか!?」
「だからそんな篠木を操縦するのにお前の存在はうってつけだって言ってんだろ?」
ええ……そんな事言われても僕、困る。
「部のマネージャが嫌なら篠木の専属でいい、上手に操れば篠木のやる気を上げたまま適度に休ませる事もできるし、お前だって篠木を近くで見られる上に人となりも知れて一石二鳥だろ?」
「え? え? そうなのかな……?」
「うちは風紀上女子マネを入れないんだが、お前はそのなりでも一応男だもんな?」
ちょっと引っかかる言い方、だけどまぁ僕が可愛いのは皆が認める所だからね!
「悪い話じゃないはずだ」とキャプテンは更に言い募るのだけど、マネージャーかぁ、僕そういうのあんまり得意じゃないな、というかマネージャーって部の縁の下の力持ち的存在だよね? 僕、向いてない気がするんだけどなぁ。
そもそも僕はお世話するよりされる方が得意だし。
「少し考えさせてください。それと今日篠木先輩学校来てます?」
「それはちゃんと来てるぞ。朝練にもちゃんと参加していたからな。というか、その朝練を見ていて俺はここに居る」
なるほど、今日の篠木先輩は僕に会いに来れないくらい疲労困憊とそういう事なのか。昨日の様子を見る限りではさもありなんだな。
「マネージャー云々は置いておいて、先輩の不調を全て僕のせいにされるのは堪らない、ちょっと篠木先輩に会ってきます」
「待て、篠木のやる気をそぐような事は絶対言うなよ!」
「先輩は篠木先輩を休ませたいんですか? それともこのまま暴走させたいんですか?」
僕が溜息と共にそう問うと、キャプテンは「そこはそれ上手におだてて適度にだな……」だなんて僕に無理難題を押し付ける。
「善処はしますが過度な期待はしないでください、僕は僕のせいで倒れられたら困るので、そこだけはきっちり伝えてきます」
篠木先輩ってホント世話の焼ける人なんだから……
「お前、今度は篠木に何を言った?」
サッカー部のキャプテンは先輩が部活を辞めるの辞めないのと揉めた時に僕とも一悶着あったからたぶん僕の事は嫌いなんだと思う。僕も好きじゃないからお互い様だけど。
「何ってなんですか? 僕は何も言ってませんよ」
「そんな訳あるか! 練習嫌いなあいつがあれだけ躍起になって練習にのめり込むなんてあり得ない。オーバーワークなんだよ! 毎日毎日睡眠削ってまで大会の対策練って、あいつはそんな事をする奴じゃない!」
練習嫌い? そうなんだ? サッカーは自分の人生だってくらいの事言ってたから、普通なんだと思ってたのに違うの? しかもオーバーワーク? そんな風には見えないんだけど。僕の前に現れる先輩はいつも穏やかににこにこしていて、そんな姿見た事ないよ。
「お前、篠木が朝何時から朝練してるか知ってるか?」
「え? サッカー部って朝練なんてしてるんですか?」
「当たり前だ! お前、うちがサッカーの強豪校だって事知らないのか!? 毎朝7時半から朝練だ!」
そんな怒鳴られたって知らないよ、だって僕サッカー部になんて興味なかったもん。
「だけど篠木は最近その時間にはもうとっくに一通りの練習を終えている、しかも毎日毎日全国の強豪校のデータを作成してきてみっちり対策まで練ってくる。何時に寝てるかって聞いたら2時には寝てるって言ってたけど、登校時間考えたらどう考えても5時間も寝てないんだぞ! しかもそれが毎日だ! 篠木はうちのチームの主戦力だからな、倒れられると困るんだよ!」
そんな事僕に言われても困る……そう言えば昨日の先輩の顔色はとても悪かったっけ、でも話を聞く限りその体調不良、先輩の自業自得なんじゃない?
「僕は何も言ってないですよ」
「絶対嘘だ! 篠木がおかしくなったのはお前と関わるようになってからだ、絶対お前が篠木に何か余計な事を言ったに違いない」
そんな決めつけ良くないと思う。それに実際僕は何も先輩に言ってない。
「あいつは全国大会の優勝に固執してる。確かにそれは我が部の目標だが、篠木の執着は常軌を逸している」
「全国大会の、優勝……あ……」
そこで僕は思い当たる、そういえば言った! 僕、全国大会優勝したら先輩と付き合うって確かに言った。
「やっぱり心当たりがあるんだな!?」
「……でも、そんなの……」
「篠木にお前何を言った!」
「全国大会優勝したら付き合ってもいいって……」
「はぁ!? お前達既に付き合ってんじゃないのか!?」
「付き合ってませんよ! なんで付き合ってて当然みたいに言うんですか!?」
「いやだって、なぁ?」
なぁ? って何!? 僕達まだ手だって繋いだ事ない清い仲なのに!
「それにしてもお前達付き合ってすらなかったのか……お前も大変だな」
なんでそこで同情されたの!? 意味が分からないんですけど!
「で、お前は篠木と付き合う気はあるのか?」
「え……えっと、まぁ……なくはないですけど……まだちょっと早いかな……って」
「なにが早い?」
「何がって、色々早すぎでしょ!? 僕はまだ篠木先輩の事全然知らないんですよ!? 好きだから付き合えって言われて即決できるほど僕尻軽じゃありませんから!」
「ほぉん」と何故かキャプテンが瞳を細めた。
「お前、サッカー部のマネジャーやる気ねぇ?」
「はい?」
「篠木は才能はあるんだがやる気にムラがある奴でな、今はお前のお陰で暴走気味だが普段はへらへらと要領よくやってく奴だった。サッカーは楽しいからやってるだけで、正直やらなきゃやらないでも生きていける奴だ、そんなあいつをやる気にさせるにはお前の存在はうってつけだ」
「ちょ……待ってくださいよ、先輩はこれ以上篠木先輩が暴走したら困るんじゃないんですか!?」
「だからそんな篠木を操縦するのにお前の存在はうってつけだって言ってんだろ?」
ええ……そんな事言われても僕、困る。
「部のマネージャが嫌なら篠木の専属でいい、上手に操れば篠木のやる気を上げたまま適度に休ませる事もできるし、お前だって篠木を近くで見られる上に人となりも知れて一石二鳥だろ?」
「え? え? そうなのかな……?」
「うちは風紀上女子マネを入れないんだが、お前はそのなりでも一応男だもんな?」
ちょっと引っかかる言い方、だけどまぁ僕が可愛いのは皆が認める所だからね!
「悪い話じゃないはずだ」とキャプテンは更に言い募るのだけど、マネージャーかぁ、僕そういうのあんまり得意じゃないな、というかマネージャーって部の縁の下の力持ち的存在だよね? 僕、向いてない気がするんだけどなぁ。
そもそも僕はお世話するよりされる方が得意だし。
「少し考えさせてください。それと今日篠木先輩学校来てます?」
「それはちゃんと来てるぞ。朝練にもちゃんと参加していたからな。というか、その朝練を見ていて俺はここに居る」
なるほど、今日の篠木先輩は僕に会いに来れないくらい疲労困憊とそういう事なのか。昨日の様子を見る限りではさもありなんだな。
「マネージャー云々は置いておいて、先輩の不調を全て僕のせいにされるのは堪らない、ちょっと篠木先輩に会ってきます」
「待て、篠木のやる気をそぐような事は絶対言うなよ!」
「先輩は篠木先輩を休ませたいんですか? それともこのまま暴走させたいんですか?」
僕が溜息と共にそう問うと、キャプテンは「そこはそれ上手におだてて適度にだな……」だなんて僕に無理難題を押し付ける。
「善処はしますが過度な期待はしないでください、僕は僕のせいで倒れられたら困るので、そこだけはきっちり伝えてきます」
篠木先輩ってホント世話の焼ける人なんだから……
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