榊原さんちの家庭の事情

矢の字

文字の大きさ
上 下
13 / 31
強気なΩは好きですか?①

悪夢

しおりを挟む
 僕の肌を撫でる指、胸の突起を摘まんで弾くその感触に身体が跳ねる。まだそこしか触られてないのに下肢が濡れるのが分かって僕は恥ずかしくて仕方がない。

「もう、焦らさないでっ!」
「んん? 樹は何処をどうして欲しいのかな?」

 耳朶を食むようにして耳元に囁かれ腰がずんと重くなった。疼く、僕の本能がこいつを逃がすなと囁きかける。
 だけどこれ、どういうシチュエーション? なんで僕こんな事になってるの?
 僕を抱き込んでいるのは篠木先輩、背後から胸をまさぐり焦らすようにまた乳首を弾いた。

「そこばっかりっ、イヤっ!」
「なんで? 樹はここも好きだろ? それともそんなにここに俺が欲しいの?」

 先輩の指がズボンの上から僕の最奥をさわりと撫でた。たったそれだけの事で僕の身体はまた跳ねる。濡れる。腰に押し付けられた硬いモノ、それが欲しいとΩの本能で身体が受け入れ態勢に入ったのが分かるのだ。
 Ωの身体はαに対してはどこまでも淫乱で、だからこそそこは慎重にならなければならないと分かっている。だって、αはやるだけやって知らんぷりだって出来るけど、Ωは子を孕んだら否が応にも人生の選択を迫られる。だからこそ番選びは慎重にって言われて僕は育った。

「欲しい」

 だけど、抗い難い。鼻腔をくすぐる先輩の匂いが僕を発情させて狂わせる。

「樹は全く仕方がないな」

 背後で先輩が微かに笑ったのを感じる。ズボンを脱がされ押し当てられる先輩のソレにぞくりと背筋に震えが走った所で、けたたましいベルの音に僕は飛び起きた……



「……夢?」

 心臓はいまだばくばくと高鳴って息が苦しい。傍らではまだ目覚まし時計がけたたましいベルを鳴らし続けている。ぼんやりした頭で目覚まし時計を止めて、僕は大きく溜息を吐いた。だって、なんだか下着が冷たい。
 こんなの生理現象だよ、思春期の男子にはよくある事だって分かってる、なのに何だ、この猛烈な脱力感。しかも夢の中の相手、篠木先輩だった……

「樹~早く起きないと遅刻するぞぉ」

 四季兄ちゃんからかかる声、僕はのそりと布団から身を起こし頭を振る。こんなのあり得ない。僕、一体どうしちゃったの?
 Ωは三か月に一度発情期があるから元々性的欲求はそこまで強くない。その代わり発情期にはそれが一気にきて大変なんだけど、それも一週間程度の事だからその時だけやり過ごせば性的欲求とは無縁で生きてこれたのに、なのにこれは一体どういう事だ? 僕、おかしくなっちゃった?

「樹~?」
「うう、起きてるってば……」
「なら良いけど、朝ご飯食べる時間なくなるぞ?」
「分かってる……」

 朝っぱらから気分は最悪、気持ちと身体が別ものみたいになってて気持ちが悪い。僕は先輩に抱かれたいと思うほど先輩の事をまだ好きだとは思わない。なのに僕の身体は僕の気持ちを無視して先輩に抱かれたいとそう思ってるの?
 これは一体どういう事? 頭がおかしくなりそうだよ!

「樹、体調でも悪いのか? 匂いが少しいつもと違うようだが」

 リビングに赴くと長兄の一縷兄ちゃんが新聞から顔を上げて小首を傾げる。バース性のフェロモンは隠し事があまりできない。これは体臭と同じようなものだけど、その日の体調で微かに変わる。βである四季兄ちゃんには全く分からない感覚なんだろうけど、上3人はαだからね。過保護に僕を心配する兄達は僕の小さな変化にも敏感だ。
 
「発情期の匂い?」
「樹の発情期はまだ先だろ?」

 双子の兄達も代わる代わる僕の顔を覗き込み額に手を当てるのだけど、そんな兄ちゃん達に僕は「なんでもないよ、大丈夫」と返事を返す。本当に皆心配性なんだから。

「体調悪いようなら今日は休むか?」
「うんん、発情期がきたら問答無用で休まざるを得ないんだから、行ける時にはちゃんと行かないと。高校は義務教育じゃないんだからこれくらいで休んでたら留年しちゃうよ」
「だからと言って無理をするものじゃない」

 四季兄ちゃんと一縷兄ちゃんが代わる代わる言い募るけど僕は「大丈夫だってば」と苦笑する。本当に、こんな事でいちいち休んでたら卒業なんてできないからね。

「体調が悪化するようだったらすぐに俺に連絡すること、いいな?」

 四季兄ちゃんに釘を刺されて僕はこくりと頷いた。たぶん篠木先輩に会わなけりゃ、これ以上悪化する事はないと思うんだけどね。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

噛痕に思う

阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。 ✿オメガバースもの掌編二本作。 (『ride』は2021年3月28日に追加します)

処理中です...