あなたと二世の契りを

矢の字

文字の大きさ
9 / 10

意外な言葉

しおりを挟む
「んで、貴澄、俺の話を聞いての感想は?」
「俺のせいで龍之介様を死なせてしまって悪かった」
「ぶふっ、真面目か!」
「んなっ、俺は本気でっ!」

 琥太郎はひとしきり腹を抱えて笑い、その後「俺はお前のそういう生真面目な所が大好きだったんだ」と、また俺の頭を撫でた。

「俺は前世でも幸せだったって言ったよな、やっぱそれ間違ってなかったわ。俺は幸せだったよ、お前はあの時、俺の事を好きだと言ってくれたもんな」
「っ……」

 確かにあの業火の中で俺は龍之介様に「お慕いしていた」と告げたのだ。何も言えないまま死んだ俺のたった一回、最後の告白。俺はなんだか気恥ずかしくなってぷいっとそっぽを向いた。

「そんでもって、今生でも懲りずに俺の傍に居てくれたんだ、こんなに幸せなことはそうないだろう。なぁ、貴澄……」

 肩に乗っていた琥太郎の顔がこちらを向いて、ずいっとこちらに顔を寄せるので、俺は思わず後ろに引く。

「ああ、もう近い! 普通に話せよっ、ここ学校だぞ!?」
「学校じゃなかったらいいのか?」

 完全な揚げ足取りに俺はまたぐっと言葉に詰まる。

「間違いじゃなかったら、貴澄、お前はまだ俺のこと……」
「言うなよ! こっちは必死に忘れようとしてるのに!」
「忘れたいのか?」

 俺に寄りかかる様にしていた琥太郎がすっと上体を起こして身を引いた。

「そうか、忘れたいのか……」
「だって……前世は前世、今とは違う、お前だって嫌だろう? こんな俺なんかに好かれたって……」

 どんどん語尾が小さくなる、この感情は多分に清太郎の感情を引きずっている、だから俺には分からないのだ、これが愛情なのか、それとも行き過ぎた友情なのか。
 清太郎は龍之介様を色々な意味で慕っていた、それは間違えようもなく清太郎の初恋だったがその恋心は子供らしく憧れに近いもので、それ以上のものではなかったのだ。
 けれど今は違う、俺はあの頃よりも成長していてその感情には色々なものが付随する、その全てを俺はまだ自身の感情として受け入れきれてはいないのだ。

「俺は初めて会った時から貴澄の事は気になってた。それが何故だか分かってなかったけど、思い出したら全部繋がった。俺はお前に会いたかったんだ、でも貴澄はそうじゃなかったんだな……」
「っ……! お前、俺の話の何を聞いてた!? 俺だって会いたかったに決まってる、でも……」
「でも、なに?」

 静かな瞳がこちらを見やる。やめろ、見るな、俺の全部を暴こうとするのはやめてくれ……

「俺は、お前の可愛い姫になんてなれないだろう……」

 瞳を逸らしてそう言うと、しばしの沈黙の後、琥太郎がぶふっと吹きだした。

「んなっ!」
「おまっ、そんなの気にして、ふひっ、ホント、いや、マジ可愛い~やべぇ」

 ひーひーと笑い転げる琥太郎、俺はそれを憮然と眺めやる。けれど一向に笑い止まない琥太郎にイラっとして俺はぐいっと琥太郎を押し倒した。

「これでもまだ可愛いとか言うのかよっ!」
「え~なに? 貴澄はそっちがいいの?」
「は……?」
「俺は別にどっちでもいいんだ。龍之介はお前が育つの待ってたって俺、言ったよな? それどういう意味だか分かってる? 貴澄が俺のことをまだ好きなら、俺はそういうのどうでもいいんだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。

キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、 ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。 国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚―― だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。 顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。 過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、 気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。 「それでも俺は、あなたがいいんです」 だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。 切なさとすれ違い、 それでも惹かれ合う二人の、 優しくて不器用な恋の物語。 全8話。

長年の恋に終止符を

mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。 そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。 男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。 それがあの人のモットーというやつでしょう。 どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。 これで終らせることが出来る、そう思っていました。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

処理中です...