8 / 10
龍之介の真実
しおりを挟む
青天の霹靂、俺はそんな話聞いてない! そもそも龍之介様にそんな恋の相手がいたなんて聞いてない、俺は知らない。
胸が痛い、やっぱりどうやっても俺は舞台の上に上がらせてももらえないのか?
「それにしても清太郎も育てば貴澄みたいになったのかな? ずいぶん大きく育ったよな」
撫でるように頭からおりた腕はそのまま俺の肩を抱き、こてんと俺の肩に頭を乗せた琥太郎の表情はよく見えない。ってか、今までも距離感近いと思ってたけど、今日はいつも以上で心拍が上がる。
お前、俺が昨日どんな気持ちで告白したか分かってんのか!?
「あの頃はまだ俺の腕の中にすっぽり収まるサイズだったのになぁ」
「可愛げなくなって悪かったな」
「はは、俺はお前が育つのを待ってたんだから好都合だ」
? またしても意味が分からない俺が肩に乗ったままの琥太郎の顔を覗き見ると、やはり上目遣いにこちらを見やった琥太郎とばちっと目が合った。
「待ってたって、なに?」
「いわゆる光源氏計画? 俺はあの頃清太郎が俺好みに育つように育ててた」
は!? え? 待って……それってどういう……?
「俺、あの当時は男色で女はからっきしだったんだよなぁ……母親が強烈な人でさ、女全般に嫌悪しかなくて、それでも跡継ぎだし次の後継ぎを作るのも責務みたいなもんでさ、許嫁だった清姫にも興味は欠片もなかったんだけど、家長の言う事は絶対だったし受け入れていたんだ」
龍之介様が男色? え……そんな話、俺、知らない。
「あの頃、清姫が兄上を好きな事も知ってたし、なんなら付き合ってる事も知ってたんだけど、それならそれで二人で子供でも作ってくれたら楽でいいくらいに思ってたんだよな。托卵結構、兄上の子なら別段なんの問題もなかったし」
「はぁ!? そんな、知ってって……あの頃の俺の苦悩はっ……」
「あの頃のお前はホント可愛かったな」
けらけらとやはり能天気に琥太郎は笑う、その笑顔はあの頃の龍之介様の笑顔と変わらない。そして龍之介様は何も知らずに笑っていたのかと思いきや、全部知ってて能天気に笑ってただなんてそんな馬鹿なことがあってたまるか!
「まぁ、そんな中でも許せない事がひとつだけある訳なんだが」
「許せない……事?」
「あの時、あいつら屋敷が火事になってるのに気付きながらそのまま逃げたんだよ! 騒げば自分達が駆け落ちしようとしてたのがバレるから。あの時一言火事だと騒いでくれたらお前だってもっと早くに避難できたはずなのに!」
あれ? その言い方ではまるであの火中、すでに姉(清姫)が屋敷の中にいなかった事も知っていたみたいではないか……
「まぁ、それでも死に際の花嫁衣裳姿のお前は滅茶苦茶可愛かったし、生まれ変わったら絶対嫁にしよって勝手に心に誓ったんだけどな」
「花嫁衣裳……」
「被ってただろ? 姫が祝言で着るはずだった色打掛」
確かに俺はあの時、その辺にかかっていた姉の着物に花瓶の水をぶっかけて火の粉除けに被っていた。あれは花嫁衣裳だったのか……
「んで、その願い叶って現在お前は俺の隣にいる訳なんだが……」
またしても琥太郎がちらりとこちらを見やる。
「龍之介様は、あの時一緒にいたのが俺だって分かってたのか? 清姫じゃなく?」
「断片的な記憶だけじゃ全然だったけど、昨晩するっと思い出したな。そもそもあの火の手があがった屋敷に俺が飛び込んだのはお前が逃げ遅れてるって聞いたからなんだぞ」
「そう……なんだ?」
しばしの沈黙、俺はなんと返事を返していいのか分からない。
胸が痛い、やっぱりどうやっても俺は舞台の上に上がらせてももらえないのか?
「それにしても清太郎も育てば貴澄みたいになったのかな? ずいぶん大きく育ったよな」
撫でるように頭からおりた腕はそのまま俺の肩を抱き、こてんと俺の肩に頭を乗せた琥太郎の表情はよく見えない。ってか、今までも距離感近いと思ってたけど、今日はいつも以上で心拍が上がる。
お前、俺が昨日どんな気持ちで告白したか分かってんのか!?
「あの頃はまだ俺の腕の中にすっぽり収まるサイズだったのになぁ」
「可愛げなくなって悪かったな」
「はは、俺はお前が育つのを待ってたんだから好都合だ」
? またしても意味が分からない俺が肩に乗ったままの琥太郎の顔を覗き見ると、やはり上目遣いにこちらを見やった琥太郎とばちっと目が合った。
「待ってたって、なに?」
「いわゆる光源氏計画? 俺はあの頃清太郎が俺好みに育つように育ててた」
は!? え? 待って……それってどういう……?
「俺、あの当時は男色で女はからっきしだったんだよなぁ……母親が強烈な人でさ、女全般に嫌悪しかなくて、それでも跡継ぎだし次の後継ぎを作るのも責務みたいなもんでさ、許嫁だった清姫にも興味は欠片もなかったんだけど、家長の言う事は絶対だったし受け入れていたんだ」
龍之介様が男色? え……そんな話、俺、知らない。
「あの頃、清姫が兄上を好きな事も知ってたし、なんなら付き合ってる事も知ってたんだけど、それならそれで二人で子供でも作ってくれたら楽でいいくらいに思ってたんだよな。托卵結構、兄上の子なら別段なんの問題もなかったし」
「はぁ!? そんな、知ってって……あの頃の俺の苦悩はっ……」
「あの頃のお前はホント可愛かったな」
けらけらとやはり能天気に琥太郎は笑う、その笑顔はあの頃の龍之介様の笑顔と変わらない。そして龍之介様は何も知らずに笑っていたのかと思いきや、全部知ってて能天気に笑ってただなんてそんな馬鹿なことがあってたまるか!
「まぁ、そんな中でも許せない事がひとつだけある訳なんだが」
「許せない……事?」
「あの時、あいつら屋敷が火事になってるのに気付きながらそのまま逃げたんだよ! 騒げば自分達が駆け落ちしようとしてたのがバレるから。あの時一言火事だと騒いでくれたらお前だってもっと早くに避難できたはずなのに!」
あれ? その言い方ではまるであの火中、すでに姉(清姫)が屋敷の中にいなかった事も知っていたみたいではないか……
「まぁ、それでも死に際の花嫁衣裳姿のお前は滅茶苦茶可愛かったし、生まれ変わったら絶対嫁にしよって勝手に心に誓ったんだけどな」
「花嫁衣裳……」
「被ってただろ? 姫が祝言で着るはずだった色打掛」
確かに俺はあの時、その辺にかかっていた姉の着物に花瓶の水をぶっかけて火の粉除けに被っていた。あれは花嫁衣裳だったのか……
「んで、その願い叶って現在お前は俺の隣にいる訳なんだが……」
またしても琥太郎がちらりとこちらを見やる。
「龍之介様は、あの時一緒にいたのが俺だって分かってたのか? 清姫じゃなく?」
「断片的な記憶だけじゃ全然だったけど、昨晩するっと思い出したな。そもそもあの火の手があがった屋敷に俺が飛び込んだのはお前が逃げ遅れてるって聞いたからなんだぞ」
「そう……なんだ?」
しばしの沈黙、俺はなんと返事を返していいのか分からない。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

残念でした。悪役令嬢です【BL】
渡辺 佐倉
BL
転生ものBL
この世界には前世の記憶を持った人間がたまにいる。
主人公の蒼士もその一人だ。
日々愛を囁いてくる男も同じ前世の記憶があるらしい。
だけど……。
同じ記憶があると言っても蒼士の前世は悪役令嬢だった。
エブリスタにも同じ内容で掲載中です。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる