あなたと二世の契りを

矢の字

文字の大きさ
上 下
2 / 10

合コンの誘い

しおりを挟む
「合コン? またなんで急に?」

 クラスメイトに誘われた近隣女子高生との合コンの誘い、正直そういうものが好きではない俺は眉を顰める。自分はそれを考える余地もなく断ったのだが、何故か一緒に行こうと琥太郎が再び誘いをかけてきたのだ。
 琥太郎もそういう女の子との駆け引きに興味はないといつも断っているのを知っている俺が不審気な表情で琥太郎を見やると、彼もまた少し困ったような表情で「付き合うだけでいいから」と貴澄に両手を合わせた。

「なに? メンツの中に好みの娘でもいたのか? だったら倍率は下げた方が良くないか?」

 正直面倒くさいという態度を前面に出しつつそう言うと「そうじゃないんだ」と、琥太郎はやはり少し困ったような表情だ。

「実はな、向こうのメンツに俺と同じような夢を見てる女の子がいるって小耳に挟んでさ……」
「あ? また、あれか? 前世の姫ってやつ? うわぁ、やめとけやめとけ、そういう女、絶対スピリチュアル系の痛い奴だぞ。付き合ってもメンヘラって苦労するの目に見えてる」
「いや、別に付き合うとかそういうんじゃないんだ、でもちょっと見てみたいし、話くらい聞いてみたいだろ? だけど一人で行くのもやっぱりさ……」

 合コン自体に興味はないくせに、その自称前世の記憶持ちの彼女に興味を惹かれたらしい琥太郎は、それでも一人は心細く、俺を誘う事にしたらしい。

「気が進まねぇなぁ……」
「そう言わずに、な? 一度だけだから」

 自分と同じような体格の大柄な男が小首を傾げる、そういう動作は可愛らしい女子がやってこそさまになるってものでさ、お前がやっても……可愛いなと思う辺り自分もどうかしてるけど。

「しょうがねぇなぁ……」
「やった、貴澄ありがとな」

 にかっと笑みを見せる琥太郎、俺はその笑顔には弱いのだと心の内で思いながら苦笑する。姿形は変わっても、こいつの笑みは変わらない。前世の俺はその笑顔に間違いなく惚れていて、忘れたいのにと心の中で嘆息する。
 恐らく前世の記憶という部分では琥太郎より俺の方が鮮明に覚えている事は多いのだ、琥太郎は自分の名前も姫の名前も覚えていないのだが俺はそれをすでに思い出している。
 その頃俺と琥太郎の間には数歳の歳の差があって、俺はいつも琥太郎を見上げていた。今となってはその目線がほぼ同じなのが不思議で仕方がない。
 それは恐らく死の間際、次に生まれ変わるのならば同等の立場で彼の隣に立ちたいと願ったからだ。夢は叶った。叶ったけれども……

「どうした、貴澄?」
「なんでもねぇよ、んで、その合コンいつ?」
「今週末の土曜日、場所は駅前繁華街のカラオケボックス」

 「了解」と頷いて、瞳を伏せた。どうせ相手は偽者だ、適当に話を合わせて適当に帰ってくればいい。その時、俺はそう思っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

捨て猫はエリート騎士に溺愛される

135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。 目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。 お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。 京也は総受け。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

処理中です...