上 下
34 / 49
1章

知らない記憶

しおりを挟む
グレイエの『信じたい』との言葉に胸が熱くなった。記憶が戻る前の私のなんて邪魔者でしかないのにそんな私を含めその頃の努力を知っていて認めてくれていた。
家族になりたいと言ったのは私だったがこんな風に私を信じて言ってくれるとは思ってもいなかった。
「そっか。グレイエ君は意外にもリリーナ嬢と仲良くやっているわけか」
「仲良くというか…」
「リリーナ嬢が義弟とは仲良くないみたいなこと言ってたから、グレイエ君のこと試しちゃった。さっきのは全部嘘だよごめんね」
「ええっ!?」
グレイエ、驚くことはないのよ…その王子グレイエの答え方次第では本気だったから…
ぐわんっと脳内に音が響くと突然意識が保てなくなった。殿下の魔法が完全に効いてきたのかも知れない。まだ二人がこの後どんな会話するかが気になるのに私はそこで完全に眠ってしまった。





「俺があいつのこと信じてやらなかったからこんなことになった」
「そんな…だからって、どうしてあなたが隣国と戦争する必要があるのですか?死んでしまうかも知れません。このまま公爵家を捨てて私達と逃げましょう」
「俺は逃げちゃダメなんだ。あいつだって最後まで逃げなかった」
「そんなにグレイエ様は、リリーナルチア様が大事なんですか?」
「そうかも知れない。ルセア、ごめんな。一緒にいるって守れなくて」
「私はグレイエ様が無事なら良いのです」
「ルセアそろそろ行くぞ」
「わかった、行くよ。リアン」
これは千代子がやっていたゲームの画面。もしかして魔法で眠らされていたからそのゲームをやっている時の記憶が走馬灯のように流れている状態?すると突然そのゲームの画面から自分視点の映像に切り替わった…







「あんたバカね。逃げればよかったじゃない」
私の前にはモンスルト家の家紋の軍服を着た骸骨が荒地に転がっていた。その地は、リリーナルチアが隣国に嫁いだ地。
きらりと光る首元…そこからグレイエの付けていたネックレスから手紙を見つけた。その手紙は、リリーナルチアに向けてグレイエ本人からのものだった。


手紙には『リリーナ、お前の大事なもの守れなくて、ごめんな。もし、時が戻れるなら戻りたいって思うよ。そしたら今度は絶対にお前を信じるから。だからその時は笑ってほしい』と書かれていた。その文面を見るなり、

「ねぇ、時なんて戻せないのよ。ばか。そんな一生笑えるわけないじゃない』目には涙が溢れ崩れるようにしゃがみ込んだ。
「私はグレイエに生きてほしかった。もし時が戻せるなら私は…」

思い出したこの画面はリアンの恋愛エンド。リリーナは殿下の罠にかかり隣国に嫁がされて…その後出生の事実がわかり戦争に発展。このゲームの舞台の国が滅ぶ前のエピソードでしたよね…見てみればこんなシーンが確かにあったような気がした。いやでも後半のリリーナ視点は知らない。ルセア視点でしかゲームは描かれないのにどうしてグレイエの亡骸をリリーナが見つけたの?これは誰の記憶?
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...