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1章

黒い罠

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殿下と話をしながら馬車が停めてある正面玄関に向かうとグレイエが中で待っているのが見えた。
「お見送りありがとうございます。ここまでで大丈夫です。ではまた」そう言って殿下から離れようとした。すると先ほどまで腰に当てられた手が私の手を握っていた。
「家まで送るよ」
「もしかしてこの馬車に一緒に乗られると言うことですか?」
「そうだよ。あっ大丈夫前後にはこちらの護衛もついているし」
「その…馬車の中には義弟が居まして…」
「そうだね。知っているよ」
何が目的なのか全く読めない…だって今日は二人っきりになれないから婚約候補辞退の話はできないし、もう私と話すことなんてないでしょう。グレイエが居ても気にしないのか?
「ほらグレイエ君に謝らないと」
「今日?今からですの?!」
「そうだね」
嘘でしょ。こんなにもすぐに?グレイエがどんな反応するかわからないけどなんとなく居づらいじゃないか。あんな密室でと想像するだけで変な汗かいてきた。
「あのそんな急でなくても」
「リリーナ嬢のご両親にも今日のことはきちんと僕の口から伝えたいし」
「そうですか…」逃げ場がない。覚悟を決めるしかないようだった。
「でも、今日は魔力も使ってきっと疲れただろう?だから寝ててね」
その瞬間握られた手から殿下が何かの魔法を私にかけた。
咄嗟のことだし、魔法石のない私は抵抗もすることもできずその魔法にかかり瞼が自然と下がり身体の力が抜けた。倒れる寸前に殿下に抱き上げられた
腕の感触を感じた。
「これで眠ったね」
そう殿下の言葉が聞こえると少し意識が遠くなりそうだったが何故かそのままいつまでも意識はあり、金縛りの目が開けていられない状況になった。
どう言うことなの?魔法で眠らされたんだろうが何故か意識があるし、脳は覚醒状況ぞ?眠らされる意味とは?もしかして失敗?私があれこれ考えている間にモンスルト家の馬車に運転手に挨拶し殿下が私を抱き上げて乗った。
「グレイエ君急にごめんね。君の義姉さん魔力の消耗の疲労で寝てしまったみたいで僕が連れてきたんだけどそのままモンスルト家までこのまま乗ってもいいかな?」
「殿下!?それは大丈夫なんですか?いろいろと」
「大丈夫だよ」
何が大丈夫なのか私に説明してほしい、切実に。そう言いたいのに私は身体を少しも動かすことができなかった。これは何かの罠か。
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