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魔王城はここからで
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「うぅ…」
数秒意識が混濁していたのか唸り声を発しながら、どうにか両腕で上体を起こしたようだ。
物語の序盤一般常識的に―決まった定義があるわけでも無いだろうが―お見送りのとき唸りをあげるような自体にはならないのでは無いだろうか。
しかしユキネには現実起こっている。
お見送りのとき、いきなり神はユキネの溝に拳を繰り出していたのだ。
ほぼ無意識的についさっき授けられた能力にあった身体強化をユキネは発動したようだが、何分魔法の存在が確立していない世界で生まれ育ったので、反応が遅れてしまい交わしきれなかったようだ。
とりあえず一大事にならなかったようで一安心である。
(なんかさっきからずっと、人間に対しての扱い雑じゃ? そもそもモラルに欠け…いやでもあいつ人間じゃないしなぁ)
(――そうだ! ここはどこだよ!
なんか…豪華な部屋? だな。椅子が、一段と豪華…だ。ここって物語でしか見たことないけど、王様がどっしり構えてる玉座の間的なやつか?
ところで封印された魔王ってやつはどこに?)
室内の中央に立ち視線を一周させる。
(いない? この部屋じゃないってことか?)
あたりを忙しなく見渡していると、キラリと輝くものが宙を流れるようにユキネを目指して飛んでくる。
「俺の最愛の人。やっと出会えたな。
俺は魔王ロトス。
ロトス・エステレラなんて呼ばれている。
まず、俺様からしたら戦うのは面倒だ、魔族の誰かが勝手にちょっかいを出しているんだろうが、大々的に魔族が人間に危害を加えたわけではないはずだ。だから理解し難いが、しかし神に頼まれたことで、俺の最愛の人を連れてきてもらったからには聞いてやるしかない。
ちなみに魔物は別物で関係ないぞ。
あいつは、神は一応俺の親友だからな」
「…よろしくロトス。
最愛の人って呼び名が気にかかるけど、一応名乗るよ、ユキネって呼んでくれていいよ。
俺がこのよくわからない展開に引っ張り込まれて一番理解しがたい事柄は、魔王とあいつが友人だったことなんだけど――。
あ、一応言っておくけど俺と勇者は誰が来ようが友達じゃないはずだから! そもそも元の世界に残念ながら友達も恋人もいなかったし。というか作り方知らないし…
ってそうだ封印とかなきゃ、えっと身体どこに…」
「来る予定の勇者の情報は、ユキネの死のきっかけを作り出してしまった人物とだけ。ユキネは周りからの逆恨みで殺されたとは聞いてる。
ちっぽけな奴も居たものだっ」
「いや死んでないから。死ぬ前に面倒くさい展開に巻き込まれてるから!」
「それで俺の身体な。
…?
何処だったか…。
そうそう確かそこの玉座の裏に寄っかかりながら、ああいや座ってたかな、まあいいそこで氷漬けにされていた…はずだ」
ロトスは物を探すかのような物言いをし宙を流れるように玉座の裏まで飛んでいったので、ユキネも後をついていくように覗き見る。
あったあった。とロトスは言い玉座の裏に体育座りで氷漬けにされてる自分の頭の上でグルグル回った。
「本当だ。
どうやって解くんだ? その魂みたいな光が体の中に入れば起きるのか? それとも他者からの干渉、例えば俺が触れて魔力でも流せば良いのか?」
光のくせにニヤけづらを浮かべるように浮遊して見せるロトスに、むっとしたユキネはブツブツ言いながら玉座の裏に体育座りで氷漬けにされている間抜けな魔王に、バシリと手を当てて魔力を適当に流すと、金色な温かく眩しくない程度の発光すぐに、浮遊していた魔王の魂が吸われるように身体に入っていった。
数秒で魂が身体に戻ったのかフラッと身体が動く。
それを確認して話しかける。
「ロトス一ついいか――。
その、体育座りで氷漬けってのを見ると前の勇者が最強だったわけじゃなくて、疲れたから休みたくて…、いや、仕事をサボりたくて氷漬けにされたのか」
そう言いちょうど立ち上がったロトスの顔を眺めたあとユキネは目線をそらしつつ言った。
待っても答えてもらえない為にそらした目線を戻したユキネに、丁度ロトスはユキネに話をするため顔を見たため目が合う。
氷漬けから解かれたロトスは黒髪に赤ぽいピンクぽい眼をした男前な青年だった。一瞬呆気にとられ息を呑みつつ話を聞く。
「大体その通りだ。
前の勇者は罪を問わず魔族と罪を犯した人間を処刑と称して命を奪う、善人ぶってる野郎でな。さほど強いわけでもないのに巻き込まれる周りが不憫だった。
俺と戦うときまで女共を連れていて、危ないから下がってて! だって?
間違いなく堪忍袋の緒が切れる音がしたさ。俺は、まとめて男も女共も討伐し返して、心落ち着かせようとティータイムをしていたら、そこに全帝? とか人間に呼ばれていた男が訪問して仲良くなった後、お互い相談の末俺は封印された。
そしてその当時全帝とやら呼ばれていた男が、俺の親友である現神職の彼だ」
「世も末だな。勇者って何なんだ?召喚条件の見直しをした方が賢明なんじゃないか?
結局この世界の住人であった、全帝でロトスの親友であるあの男が解決できるならば、召喚…する意味ないな。
というか封印されたのも勇者が来たのも結構前だね…。1000年は前なのか…。こっちとあっちの時間差は分からないけど会ったことは流石にないのかな。
それで、これからどうするつもりでいたんだ?
神には、勇者召喚される王国行くなり、学校行くなり、イチャイチャしているなり好きにしろって言われたんだけど」
「そうだなぁユキトが、やりたいことを一つ一つやっていこうか。
俺とは多分一生一緒に生きていく運命だ。
ゆっくり好きなことやりたいことを色々やっていこう」
そう答えたロトスはユキネの頭を優しく撫でながら温かく微笑む。
これは魔王というよりエルフ的なにかなのではと、つい思ってしまう。
その温かさに絆されたのかふらっと歩きギュッと抱きつくと、ユキトには見えていなかっただろうが、ロトスは少し驚いた顔をしながらも頭をなでていない方の手で腰に手を回され包まれるように抱きしめられる。
ロトスの胸に顔を押し当てるとスパイシーな薔薇の香りがした。
その腕の中は居心地が良く眠くなりそうだが同時に、居心地の良い居場所を提供してくれた神や魔王についてとこの国もしくは世界のことを、そしてロトスのことを知りたいとユキネは思う。
「俺は魔王のこととこの国を、一番はロトスのことをたくさん知りたい」
ユキネは顔を押し当てたままググ持った声でそうお願いすると、途端に魔力が一瞬乱れる感覚と共になぜかロトスの膝の上に乗せられていた。
驚きが落ち着いてきた頃、周りを見ると豪華な部屋にいてロトスがベッドに座っていた。ロトスの部屋なのだろうか?
「ほぅ、意外と背も体重もあるなのだな。
腰が細いし、背丈も10は差があったから心配になったが着痩せするタイプか?とりあえず健康そうでなりよりだ。
さて、安心したところで魔王の話をしようか。
まあ話すとしても文章にしたら何行かで終わる内容なんだが、
魔王と言うのはな、魔力と属性が多すぎて寿命が長いやつのこと言うんだ。
それでも普通はなる事は不可能なんだが、実力があるとなるとまた変わってくる。
実際に魔族はいるしなぜか魔族の上に立つと言うのが伝統になってしまっている。
歴代には悪さをしてをしていた人も居たらしいが、ここ1500年は俺が魔王だったから特にそう言うのはなかったな。
だが文献でも残っているんだろう。
勇者がここに訪れるのが絶えないんだ。
この魔王が君臨する国は魔国と呼ばれている。
まあ周りが勝手に呼び出したのだが、この城下には王都もあるし、親が教えるからか流石に学校は無いが、農村も小さな村も存在していて、普通に魔族が暮らしている。」
「へー。
人間と何ら変わりはないじゃん。
人間ってのはやっぱり弱い生き物なんだろうか...?
て事は俺の場合ロトスといるために人間やめちゃったんだと思ったけど、人間なのには変わりはないんだな。
寿命が半端なく長くて、魔力多い人達が魔国に集まっているんだな。
その中でも最も優秀なやつが魔王にされるのか。
ここにそういう人達が来るって事はやっぱり魔族の寿命は長そうだな。どうでもいいが。
あと何年生きるのか寿命なんて聞いてないから知らないけど、これからよろしくロトス。」
膝の上に座らせられていたが居心地が良く無意識につい胸に顔を埋め擦り寄ってしまっていた。
数分経ってから気づいたがロトスも微笑んでいるし、俺もお気に入りになったのでしばらくこのままでいようと思う。
トントンとノックが聞こえ、お気に入りのロトスの膝の上でふわぁーとしていたユキネは少し顔を出し扉を見つめた。
ロトスがのろーっと動くユキネを見ながら入れと声をかける。
小さい音をたて扉が開き銀長髪の背がすらっと高い美丈夫が入ってくる。
「イケメン。
めっちゃイケメン。
俺こっちに来てからイケメンしか見てねぇーな」
「いけめん?何だそれは。」
「うーん。
格好良いとか、男前とか、美青年、美少年、美丈夫、まあとにかく顔や行動が格好良い時に俺の世界で使っていた言葉。」
それを聞き首を傾げ、ロトスはなにか聞こうとしたのか口を開いたが、それより先に銀長髪の男が話に割って入ってくる。
「ロトス様。
おはようございます。
起きたのは誠に嬉しいことではありますが、そちらのロトス様の膝の上に座ってロトス様が大事そうに抱えている男はどなたですか?」
そう言われロトスはギュッと抱えユキネの頭をなでなでしながら答える。
「ああ、俺の嫁だ。
そろそろあの国で勇者召喚があるらしい。
どの人国でももうすぐ学園に入学する時期だろうしな。
これは、ユキネというのだがそのうち妻にするから名字はまあ取り敢えず良いな。
そんな事はどうでもいいんだが、神がユキネを異世界から連れてきてくれてな。
人国には勇者が召喚されると言うのにこちらには味方がいないのか、と気を利かせてくれたらしいのでちゃっかり俺の好みの者を頼んだんだがなぜか女でなく男だったな。
神に確認されたが好みだったんでな、嫁としてもらった。まあ子供いらないし。
1000年以上もの間俺無しで国も回っていたわけだし、取り敢えずユキネ連れてあの人国行ってくる事にしたからこの国頼んだんだ。」
銀長髪の男はハァっとため息をつくも分かりましたと許可してくれた。
あ、そうそうと思い出したかのように顔を上げユキネに自己紹介をしてくる。
「はじめまして。
私はハールと申します。
一応宰相とかやっておりますが、父親継いだだけなので...、ですが能力はあると思っております。
お困りの際はお声がけお願いします。
私を頼らなくてもあなたの未来の旦那様が、きっと色々やってくれると思いますので、ぜひ青春と恋愛を味わい学校を謳歌してきてください。
勇者は弱いですが甘く見ていると封印はされる時は普通にされます。
ここに良くも悪くも例がいるように無傷であれば良いのですが、私としても引き継ぎや時期魔王選びやとにかく面倒くさい事この上ないので頑張って生きてください。
それで?今からあの人国の学校に届け出も出しに行きますか?
そこそこ勉強と、体術魔術がこなせれば新入生として入れるとは思いますよ。
昨日から1ヶ月入学試験受付期間らしいですから。
ちなみにSクラスは学費免除、学食無料、その他諸々色々特典がつくらしいですよ。
魔術体術は難しくても紙で満点近く取れば絶対に入れますので。
陰ながら色々な意味で応援しています。」
「なぜそんなに詳しいのか気になるが...。」
ハールがささっと言いたい事だけ言い帰っていいですか?と笑顔で訴えてくる。
それに気づいていながらも質問しようとするが、うるさいです。サボり魔王。と胡散臭い笑顔でつい止まる。
「い、いや。何でもない。
同盟国や、認識を正しく持っている国は多いとしても少なからずあの国のように魔国を敵とみなして責めてくるのならば、やはりこちらも敵と判断しなければならない。
今回はあの国が勇者召喚をすると言う。
事前に防ぐ事は出来ないにしろ、国・国王は無理にしろ勇者の弱点くらいは見つけてこようと思う。
と言うのは所詮俺の嫁と青春してくる事に対しての言い訳なのだが、情報はそちらに送ろう。
負担をかけてしまうがよろしく頼む。」
「私は別にその事にも怒っていないし、ロトス様の事が嫌いなわけではありませんよ。
寧ろお二人が幸せになる事がとても嬉しく思っております。
私はただロトス様の目覚めが遅かった事には不満はありますが、私はロトス様に使える身。
私の事をしっかり従者兼宰相としてお使い下さい。」
無表情と愛想笑な表情がほころびふわっとお辞儀をする。
ロトス様に忠誠を誓っている身なのだとお辞儀する姿が綺麗で思わず息を呑む。
「ああ、わかっている。
きっと学校に行ってもそこそこには頼み事をするだろう。
では頼もうか、入学試験は何時から何時までだ?」
「はい。
今からですとお昼後になりますね。
ユキネ様の服を着替えてからあの国の王都を散策しながら会場に向かわれてはどうですか?
ロトス様も服を変えたほうがいいと思いますね。
お二方の服のご用意はメイドいたしますので。」
「ああ。
よろしく頼む。
ユキネ、お昼は食べ歩きとしようか。」
にっこり微笑みながら、やはり恋愛は良いものだなと改めて思う。
そんな中でもユキネは王都の食べ物は美味しといいなとか思っていたり...。
「お久しぶりでございます。
ロトス様、やっとお嫁様をもらえたのですね。
とても安心いたしました。」
いそいそとメイド服を着た身なりの清い女性達が服を持って入ってくる。
聞いてすぐに入ってきたのはきっとそうなるよう仕向けたのかと宰相を疑いそうになる。
「心配しなくとも俺の嫁はそのうち出来ると言っていただろう。」
ニヤッと笑うその表情は黒いが無駄に似合っていてまじまじと眺めてしまう。
どうした?と何も言わずに首を傾げ頭をなでなでしてくる。
ちなみに未だ膝の上にいる。
着替えてください、とでも言うようにメイド達に引っ剥がされボーっと立ち尽くす間もなく圧倒言う間にパパっとはや着替えのように着せ替えられ、髪も整えさせられる。
「腰が細く女の私共も折れそうと思うくらい心配になりましたが、身長もあり体重もありそうですね。
何気に腹筋もうっすら割れていて驚きました。
ちなみに身長と体重を聞いてもよろしいですか?」
先程ロトスに声をかけたお姉さんと言った雰囲気のメイドさんに声をかけられ、声をかけられると思っていなかったユキネはとっさに頷く。
「えっと、身長は175cm以上あると思います。一年前すでに175cmありましたから。
体重は最近は測っていないので分かりませんが、多分65kgは最低でもあると思います。
俺の世界ではどちらも平均的でしたが、魔国の女性はとても背が高く美しい体型ですね。」
「敬語は外してください。私共は貴方にも仕える身ですので。
フフ、美しいだなんてありがとうございます。
そうですねー。魔国は魔力も多く、魔族が暮らしているので平均的には背は高いですが、人国の平均身長はユキネ様くらいですので安心して平気ですよ。
さて、後ろにいるロトス様の機嫌が良くなさそうなのでそろそろ行ってらっしゃいませ。
お気をつけてくださいね。」
数秒意識が混濁していたのか唸り声を発しながら、どうにか両腕で上体を起こしたようだ。
物語の序盤一般常識的に―決まった定義があるわけでも無いだろうが―お見送りのとき唸りをあげるような自体にはならないのでは無いだろうか。
しかしユキネには現実起こっている。
お見送りのとき、いきなり神はユキネの溝に拳を繰り出していたのだ。
ほぼ無意識的についさっき授けられた能力にあった身体強化をユキネは発動したようだが、何分魔法の存在が確立していない世界で生まれ育ったので、反応が遅れてしまい交わしきれなかったようだ。
とりあえず一大事にならなかったようで一安心である。
(なんかさっきからずっと、人間に対しての扱い雑じゃ? そもそもモラルに欠け…いやでもあいつ人間じゃないしなぁ)
(――そうだ! ここはどこだよ!
なんか…豪華な部屋? だな。椅子が、一段と豪華…だ。ここって物語でしか見たことないけど、王様がどっしり構えてる玉座の間的なやつか?
ところで封印された魔王ってやつはどこに?)
室内の中央に立ち視線を一周させる。
(いない? この部屋じゃないってことか?)
あたりを忙しなく見渡していると、キラリと輝くものが宙を流れるようにユキネを目指して飛んでくる。
「俺の最愛の人。やっと出会えたな。
俺は魔王ロトス。
ロトス・エステレラなんて呼ばれている。
まず、俺様からしたら戦うのは面倒だ、魔族の誰かが勝手にちょっかいを出しているんだろうが、大々的に魔族が人間に危害を加えたわけではないはずだ。だから理解し難いが、しかし神に頼まれたことで、俺の最愛の人を連れてきてもらったからには聞いてやるしかない。
ちなみに魔物は別物で関係ないぞ。
あいつは、神は一応俺の親友だからな」
「…よろしくロトス。
最愛の人って呼び名が気にかかるけど、一応名乗るよ、ユキネって呼んでくれていいよ。
俺がこのよくわからない展開に引っ張り込まれて一番理解しがたい事柄は、魔王とあいつが友人だったことなんだけど――。
あ、一応言っておくけど俺と勇者は誰が来ようが友達じゃないはずだから! そもそも元の世界に残念ながら友達も恋人もいなかったし。というか作り方知らないし…
ってそうだ封印とかなきゃ、えっと身体どこに…」
「来る予定の勇者の情報は、ユキネの死のきっかけを作り出してしまった人物とだけ。ユキネは周りからの逆恨みで殺されたとは聞いてる。
ちっぽけな奴も居たものだっ」
「いや死んでないから。死ぬ前に面倒くさい展開に巻き込まれてるから!」
「それで俺の身体な。
…?
何処だったか…。
そうそう確かそこの玉座の裏に寄っかかりながら、ああいや座ってたかな、まあいいそこで氷漬けにされていた…はずだ」
ロトスは物を探すかのような物言いをし宙を流れるように玉座の裏まで飛んでいったので、ユキネも後をついていくように覗き見る。
あったあった。とロトスは言い玉座の裏に体育座りで氷漬けにされてる自分の頭の上でグルグル回った。
「本当だ。
どうやって解くんだ? その魂みたいな光が体の中に入れば起きるのか? それとも他者からの干渉、例えば俺が触れて魔力でも流せば良いのか?」
光のくせにニヤけづらを浮かべるように浮遊して見せるロトスに、むっとしたユキネはブツブツ言いながら玉座の裏に体育座りで氷漬けにされている間抜けな魔王に、バシリと手を当てて魔力を適当に流すと、金色な温かく眩しくない程度の発光すぐに、浮遊していた魔王の魂が吸われるように身体に入っていった。
数秒で魂が身体に戻ったのかフラッと身体が動く。
それを確認して話しかける。
「ロトス一ついいか――。
その、体育座りで氷漬けってのを見ると前の勇者が最強だったわけじゃなくて、疲れたから休みたくて…、いや、仕事をサボりたくて氷漬けにされたのか」
そう言いちょうど立ち上がったロトスの顔を眺めたあとユキネは目線をそらしつつ言った。
待っても答えてもらえない為にそらした目線を戻したユキネに、丁度ロトスはユキネに話をするため顔を見たため目が合う。
氷漬けから解かれたロトスは黒髪に赤ぽいピンクぽい眼をした男前な青年だった。一瞬呆気にとられ息を呑みつつ話を聞く。
「大体その通りだ。
前の勇者は罪を問わず魔族と罪を犯した人間を処刑と称して命を奪う、善人ぶってる野郎でな。さほど強いわけでもないのに巻き込まれる周りが不憫だった。
俺と戦うときまで女共を連れていて、危ないから下がってて! だって?
間違いなく堪忍袋の緒が切れる音がしたさ。俺は、まとめて男も女共も討伐し返して、心落ち着かせようとティータイムをしていたら、そこに全帝? とか人間に呼ばれていた男が訪問して仲良くなった後、お互い相談の末俺は封印された。
そしてその当時全帝とやら呼ばれていた男が、俺の親友である現神職の彼だ」
「世も末だな。勇者って何なんだ?召喚条件の見直しをした方が賢明なんじゃないか?
結局この世界の住人であった、全帝でロトスの親友であるあの男が解決できるならば、召喚…する意味ないな。
というか封印されたのも勇者が来たのも結構前だね…。1000年は前なのか…。こっちとあっちの時間差は分からないけど会ったことは流石にないのかな。
それで、これからどうするつもりでいたんだ?
神には、勇者召喚される王国行くなり、学校行くなり、イチャイチャしているなり好きにしろって言われたんだけど」
「そうだなぁユキトが、やりたいことを一つ一つやっていこうか。
俺とは多分一生一緒に生きていく運命だ。
ゆっくり好きなことやりたいことを色々やっていこう」
そう答えたロトスはユキネの頭を優しく撫でながら温かく微笑む。
これは魔王というよりエルフ的なにかなのではと、つい思ってしまう。
その温かさに絆されたのかふらっと歩きギュッと抱きつくと、ユキトには見えていなかっただろうが、ロトスは少し驚いた顔をしながらも頭をなでていない方の手で腰に手を回され包まれるように抱きしめられる。
ロトスの胸に顔を押し当てるとスパイシーな薔薇の香りがした。
その腕の中は居心地が良く眠くなりそうだが同時に、居心地の良い居場所を提供してくれた神や魔王についてとこの国もしくは世界のことを、そしてロトスのことを知りたいとユキネは思う。
「俺は魔王のこととこの国を、一番はロトスのことをたくさん知りたい」
ユキネは顔を押し当てたままググ持った声でそうお願いすると、途端に魔力が一瞬乱れる感覚と共になぜかロトスの膝の上に乗せられていた。
驚きが落ち着いてきた頃、周りを見ると豪華な部屋にいてロトスがベッドに座っていた。ロトスの部屋なのだろうか?
「ほぅ、意外と背も体重もあるなのだな。
腰が細いし、背丈も10は差があったから心配になったが着痩せするタイプか?とりあえず健康そうでなりよりだ。
さて、安心したところで魔王の話をしようか。
まあ話すとしても文章にしたら何行かで終わる内容なんだが、
魔王と言うのはな、魔力と属性が多すぎて寿命が長いやつのこと言うんだ。
それでも普通はなる事は不可能なんだが、実力があるとなるとまた変わってくる。
実際に魔族はいるしなぜか魔族の上に立つと言うのが伝統になってしまっている。
歴代には悪さをしてをしていた人も居たらしいが、ここ1500年は俺が魔王だったから特にそう言うのはなかったな。
だが文献でも残っているんだろう。
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まあ周りが勝手に呼び出したのだが、この城下には王都もあるし、親が教えるからか流石に学校は無いが、農村も小さな村も存在していて、普通に魔族が暮らしている。」
「へー。
人間と何ら変わりはないじゃん。
人間ってのはやっぱり弱い生き物なんだろうか...?
て事は俺の場合ロトスといるために人間やめちゃったんだと思ったけど、人間なのには変わりはないんだな。
寿命が半端なく長くて、魔力多い人達が魔国に集まっているんだな。
その中でも最も優秀なやつが魔王にされるのか。
ここにそういう人達が来るって事はやっぱり魔族の寿命は長そうだな。どうでもいいが。
あと何年生きるのか寿命なんて聞いてないから知らないけど、これからよろしくロトス。」
膝の上に座らせられていたが居心地が良く無意識につい胸に顔を埋め擦り寄ってしまっていた。
数分経ってから気づいたがロトスも微笑んでいるし、俺もお気に入りになったのでしばらくこのままでいようと思う。
トントンとノックが聞こえ、お気に入りのロトスの膝の上でふわぁーとしていたユキネは少し顔を出し扉を見つめた。
ロトスがのろーっと動くユキネを見ながら入れと声をかける。
小さい音をたて扉が開き銀長髪の背がすらっと高い美丈夫が入ってくる。
「イケメン。
めっちゃイケメン。
俺こっちに来てからイケメンしか見てねぇーな」
「いけめん?何だそれは。」
「うーん。
格好良いとか、男前とか、美青年、美少年、美丈夫、まあとにかく顔や行動が格好良い時に俺の世界で使っていた言葉。」
それを聞き首を傾げ、ロトスはなにか聞こうとしたのか口を開いたが、それより先に銀長髪の男が話に割って入ってくる。
「ロトス様。
おはようございます。
起きたのは誠に嬉しいことではありますが、そちらのロトス様の膝の上に座ってロトス様が大事そうに抱えている男はどなたですか?」
そう言われロトスはギュッと抱えユキネの頭をなでなでしながら答える。
「ああ、俺の嫁だ。
そろそろあの国で勇者召喚があるらしい。
どの人国でももうすぐ学園に入学する時期だろうしな。
これは、ユキネというのだがそのうち妻にするから名字はまあ取り敢えず良いな。
そんな事はどうでもいいんだが、神がユキネを異世界から連れてきてくれてな。
人国には勇者が召喚されると言うのにこちらには味方がいないのか、と気を利かせてくれたらしいのでちゃっかり俺の好みの者を頼んだんだがなぜか女でなく男だったな。
神に確認されたが好みだったんでな、嫁としてもらった。まあ子供いらないし。
1000年以上もの間俺無しで国も回っていたわけだし、取り敢えずユキネ連れてあの人国行ってくる事にしたからこの国頼んだんだ。」
銀長髪の男はハァっとため息をつくも分かりましたと許可してくれた。
あ、そうそうと思い出したかのように顔を上げユキネに自己紹介をしてくる。
「はじめまして。
私はハールと申します。
一応宰相とかやっておりますが、父親継いだだけなので...、ですが能力はあると思っております。
お困りの際はお声がけお願いします。
私を頼らなくてもあなたの未来の旦那様が、きっと色々やってくれると思いますので、ぜひ青春と恋愛を味わい学校を謳歌してきてください。
勇者は弱いですが甘く見ていると封印はされる時は普通にされます。
ここに良くも悪くも例がいるように無傷であれば良いのですが、私としても引き継ぎや時期魔王選びやとにかく面倒くさい事この上ないので頑張って生きてください。
それで?今からあの人国の学校に届け出も出しに行きますか?
そこそこ勉強と、体術魔術がこなせれば新入生として入れるとは思いますよ。
昨日から1ヶ月入学試験受付期間らしいですから。
ちなみにSクラスは学費免除、学食無料、その他諸々色々特典がつくらしいですよ。
魔術体術は難しくても紙で満点近く取れば絶対に入れますので。
陰ながら色々な意味で応援しています。」
「なぜそんなに詳しいのか気になるが...。」
ハールがささっと言いたい事だけ言い帰っていいですか?と笑顔で訴えてくる。
それに気づいていながらも質問しようとするが、うるさいです。サボり魔王。と胡散臭い笑顔でつい止まる。
「い、いや。何でもない。
同盟国や、認識を正しく持っている国は多いとしても少なからずあの国のように魔国を敵とみなして責めてくるのならば、やはりこちらも敵と判断しなければならない。
今回はあの国が勇者召喚をすると言う。
事前に防ぐ事は出来ないにしろ、国・国王は無理にしろ勇者の弱点くらいは見つけてこようと思う。
と言うのは所詮俺の嫁と青春してくる事に対しての言い訳なのだが、情報はそちらに送ろう。
負担をかけてしまうがよろしく頼む。」
「私は別にその事にも怒っていないし、ロトス様の事が嫌いなわけではありませんよ。
寧ろお二人が幸せになる事がとても嬉しく思っております。
私はただロトス様の目覚めが遅かった事には不満はありますが、私はロトス様に使える身。
私の事をしっかり従者兼宰相としてお使い下さい。」
無表情と愛想笑な表情がほころびふわっとお辞儀をする。
ロトス様に忠誠を誓っている身なのだとお辞儀する姿が綺麗で思わず息を呑む。
「ああ、わかっている。
きっと学校に行ってもそこそこには頼み事をするだろう。
では頼もうか、入学試験は何時から何時までだ?」
「はい。
今からですとお昼後になりますね。
ユキネ様の服を着替えてからあの国の王都を散策しながら会場に向かわれてはどうですか?
ロトス様も服を変えたほうがいいと思いますね。
お二方の服のご用意はメイドいたしますので。」
「ああ。
よろしく頼む。
ユキネ、お昼は食べ歩きとしようか。」
にっこり微笑みながら、やはり恋愛は良いものだなと改めて思う。
そんな中でもユキネは王都の食べ物は美味しといいなとか思っていたり...。
「お久しぶりでございます。
ロトス様、やっとお嫁様をもらえたのですね。
とても安心いたしました。」
いそいそとメイド服を着た身なりの清い女性達が服を持って入ってくる。
聞いてすぐに入ってきたのはきっとそうなるよう仕向けたのかと宰相を疑いそうになる。
「心配しなくとも俺の嫁はそのうち出来ると言っていただろう。」
ニヤッと笑うその表情は黒いが無駄に似合っていてまじまじと眺めてしまう。
どうした?と何も言わずに首を傾げ頭をなでなでしてくる。
ちなみに未だ膝の上にいる。
着替えてください、とでも言うようにメイド達に引っ剥がされボーっと立ち尽くす間もなく圧倒言う間にパパっとはや着替えのように着せ替えられ、髪も整えさせられる。
「腰が細く女の私共も折れそうと思うくらい心配になりましたが、身長もあり体重もありそうですね。
何気に腹筋もうっすら割れていて驚きました。
ちなみに身長と体重を聞いてもよろしいですか?」
先程ロトスに声をかけたお姉さんと言った雰囲気のメイドさんに声をかけられ、声をかけられると思っていなかったユキネはとっさに頷く。
「えっと、身長は175cm以上あると思います。一年前すでに175cmありましたから。
体重は最近は測っていないので分かりませんが、多分65kgは最低でもあると思います。
俺の世界ではどちらも平均的でしたが、魔国の女性はとても背が高く美しい体型ですね。」
「敬語は外してください。私共は貴方にも仕える身ですので。
フフ、美しいだなんてありがとうございます。
そうですねー。魔国は魔力も多く、魔族が暮らしているので平均的には背は高いですが、人国の平均身長はユキネ様くらいですので安心して平気ですよ。
さて、後ろにいるロトス様の機嫌が良くなさそうなのでそろそろ行ってらっしゃいませ。
お気をつけてくださいね。」
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目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
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…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
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転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
俺の死亡フラグは完全に回避された!
・・・と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ラブコメが描きたかったので書きました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
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